―――さて、大洗が―――サンダース大学付属高校に勝利した数日後に行われた黒森峰女学園と知波単学園の第一回戦。
そしてその試合後、知波単学園の隊長西絹代とともに現れた人物によって、本作の主人公である逸見エリカは、某大戦艦の口癖のごとく面倒なことに巻き込まれていくのであった。
―――大洗の第一回戦の戦いから数日後、今日は自分らの一回戦が始まる。相手は、知波単学園との戦いだが…結果だけを述べるとすれば、黒森峰は一両も失うことなく、完全勝利した。…帝国陸軍の戦車はどうしてあんなに装甲が薄いのかしら。と思うくらい車体に88であけた穴が痛々しく残っていた。
試合後、知波単学園の隊長西絹代(にし きぬよ)がこちらにやってきた。そして西隊長とともに現れたほのぼのとしたオーラを漂わせる人物。…それがいろんな意味で今日一番驚いたことだったかもしれない。
「やっほぉ~♪ 久しぶり―エリカちゃん!」
「………お久しぶり、瞳さん」
私の顔を見た途端、その相変わらずのハイテンションで私に抱きついてくるのは、小学校卒業以来の再会を喜ぶ柚本瞳。…昔からこのハイテンションな瞳がどうも苦手な私は、頬を引きずりながら挨拶を交わした。
そんな瞳は、私の困惑している顔を見た途端、何かを思いついたのか爆弾発言を投下した。
「そうだ! エリカちゃん、クローバーガールズの同窓会がした~~い♪」
その言葉をきっかけに…私はその後、副隊長の職務をこなしつつ半強制的にメルアドを交換させられた瞳のお願いを叶えようと奮闘、いろいろ苦労するはめに。…だから私は“すべての調和してしまう眼力を持つ”瞳が苦手なのだ。
「同窓会はいいけど。具体的にどーしたいわけ?」
「う~~~ん…、それはエリカちゃんに任せた♪」
「……それを他人任せ、投げやりというのよ」
「そーともいう♪ それじゃよろしくねー」とすべてを私に押し付けるようにまだしゃべり足りなそうにこちらの話を一切聞かないでマシンガンのごとくしゃべり続ける西の首襟を鷲掴みて手を振りながら嵐のように去っていく瞳。その後ろ姿を見えなくなるまで見送った私は一言つぶやく
「―――ふこうだああああああああ!」
雲一つもない青々とした大空を見上げながら叫び続けた。
一方、逸見たち黒森峰女学園が知波単学園に勝利した頃、大洗では第二回戦に向けてあらたな戦車捜索が行われていた。
みほは、河嶋ほか各車長とともに今後の作戦を練るため、生徒会室で会議を開く。そしてその会議の中で戦力強化のため、まだ見つかっていない戦車を探すことになった。
それを聞いて大洗の戦車道メンバーほか、学園全体で第二次戦車捜索作戦が発動され捜索がはじまった。
秋山は、三号突撃砲駆逐戦車の特徴などを教えたカバさんチームのメンバーとともに屋上に赴き、カエサルが持ち出した八卦にて、戦車がありそうな方向を特定する。
武部は、様々な雑誌などで覚えた恋愛について相談を一年生で構成されたM3Leeことウサギさんチームから受けていた。そして自分の一度もない男性との恋愛を逆に一年生に励まされる武部。そしてそのメンバーとともに学園艦の艦内に足を踏み入れていた。
五十鈴は、生徒会の小山とともに一回戦で消耗した弾薬や今後必要がありそうな物資などの消耗品の発注書類を手伝いつつ、来週より食堂に新しく出る試作の定食などをおいしそうに食べていた。
冷泉は、気ままなネコのごとく昼寝をしていた。のを見回りにきたそど子に叩き起こされ、不機嫌顔で新たな寝場所を探しているとバレー部ことアヒルさんチームと旧部活棟に向かう西住たちと出くわす。
「あれ? 麻子さん…」
「…隊長か。…ん? 大勢でどこに行くんだ?」
「これから新たな戦車を探しに旧部活棟に向かう予定です。麻子さんも一緒に行きますか?」
「……よかろう」
西住に一緒にと問われた冷泉は小さく頷き、西住たちとともに向かうことにした。
―――そして何十個となる旧部活棟を一個ずつ回ったが何一つ手掛かりがなく、最後の部活棟へ向かう。その途中で冷泉は、若干地面より盛り上がった場所を見つける。しかし、長い間放置されていた場所なので、どこかの砂を盛った場所だと考えた冷泉はそこから目を離し、少し前を歩く西住たちを追うのであった。
そして最後の部室でも手掛かりが見つからず、困り果てる。そんな時、冷泉はおもむろに錆びついた窓を見上げる。
そこから見えた光景に冷泉は愚痴る。
「どこの部だ。こんなところに洗濯物を干しているのは…」
その声で覗き込む西住だったが、そこにあったものに驚愕した声で呟く。
「こ、これって!?」
西住たちが最後の部室を捜索している同時刻の生徒会室。試作品を食べつくした五十鈴は、試作品の感想を書きつつ、生徒会の手伝いを平行作業していた。
そんな五十鈴の前には、一厘の花が花瓶に入れられていた。それを見つけた副会長の小山が嬉しそうに五十鈴に近づいていく。
「花があると和む」
五十鈴が活けた花を見て微笑む。
「そういえば、小山先輩の名前に花の名前がありましたよね…。確か桃と…」
「私は柚子。私じゃなくて…桃ちゃん」
「桃ちゃんと呼ぶな!」と小山に呼ばれた河嶋が勢いよく二人の方を振り返って怒鳴る。
そこに八卦の占いで出た方位に向かったカバさんチームより戦車発見の知らせが舞い込む。
「―――了解した。ルノーB1bisだ、そうだ」
河嶋から告げられた戦車をさっそく昔の書類を漁り始める二人。そして五十鈴が持つ書類に該当する戦車の詳細が書かれた書類を見つけ、読み上げる。
「ルノーB1bis。最大装甲60㎜、75㎜砲と47㎜砲を搭載しているようですね」
それを聞いて角谷がボソッと呟く。
「八九式よりは使えそうだよねぇー」
その言葉にそこにいた全員が苦笑いを浮かべつつ、各自仕事に戻っていく。
その日の夕方、戦車道のガレージの前にルノーと西住たちが見つけた長砲身が運ばれてきた。
だが、学園艦内の捜索に出ていた武部たちが一向に戻ってこない。そう思った矢先、冷泉の携帯に武部から連絡が入った。
「―――遭難、したそうだ」
「え?!」
予想以上の状態に驚くみほ達。そんな中、人命捜索隊が編成され急いで武部らが居る第14予備倉庫に向かうのだ。
真っ暗な中を進む西住たち。だが、誰かが近くにあった物を蹴ってしまいそれがその空間に響き、それに驚くように抱き合う秋山と西住。だが、その音にも動じない五十鈴。そんな姿に秋山は尊敬のまなざしの言葉を贈る。
「大丈夫です」
「ほ、ほんと! 五十鈴殿って本当肝が据わっています」
「ほ、本当だね」
と呟く中、一番後ろにいた冷泉は、暗い中でも顔が青ざめているのが分かるくらい怖がっていた。
「冷泉殿?」
「麻子さん?」
「ゆゆうれいは! 早起きより怖い!!」と、若干怖がる焦点がズレていた。
進む中、今度は秋山の携帯音 砲弾の発射音が響く。
「カエサル殿だ。はい!」
《西を探せ、グデーリアン》
「西部戦線ですね。了解です!」
と、通信を終える。
「グデーリアン?」
「はい。魂の名前を付けてもらいました」
「ですが、西といっても…」
「大丈夫ですよ。コンパス持ってきてますから」
ポケットから取り出したコンパスを辿って西を目指す。
そして遭難者である武部と兎さんチームの七名を無事発見。発見された途端、一年生たちに抱き着かれる武部。それを宥める姿に秋山らはつぶやく。
「武部殿、もてもてですね」
「だが、本人の希望しているのとは、かけ離れているがな」
今の光景を物語るコメントを残す。そんな中、バラバラであるが、新たな戦車の砲門が顔を見せているのを西住が発見するのであった。
無事全員がそろい、お風呂に浸かる。そんな心も体も緩々の中、河嶋が意気込む。だが、それを聞いて落胆な言葉を呟くことに河嶋が激怒する。
「それではダメなんだ! 何があっても勝つんだ」
「―――」それを聞いて全員が無言になる。それ空気を壊すように角谷が小さな声で呟く。
「勝つんだ。勝たないとね。今までの苦労を水の泡にはしたくないよねぇー」
角谷のそれを言葉を聞いてみんなが一気にやる気を出す。
「やるぞー!」
【おぉぉぉ!!】
そんなハイテンションのメンバーを見て微笑む西住に河嶋は、隊長としてこの場を纏めるという。
「西住、しめろ」
「え?」
「やれ」
河嶋にそう言われたみほは不安そうな顔をしながら立ち上がる。そして一斉に自分の方を見る光景に後ずさりするみほ。そんな中でみほは勇気を出して一言いう。
「み、みなさん! 次の試合もがんばりましょう!」
『おぉおお!』
その掛け声とともに…大洗は第二回戦のアンツィオ高校を下し、三回戦にコマを進めるのであった。
大洗とアンツィオ高校の第二試合があった次の日。
その日は、私達黒森峰と継続高校との第二試合が、しんしんと降り始めた雪の下で行われることになった。相手の継続高校は、ドイツの三突とソビエトのSU-100など駆逐戦車を中心とした編成。つまり待ち伏せ。車体が低い分発見がされづらく、さらに高火力の砲身を搭載できることにいろいろ苦戦を強いられそうだ、と思っていた。ただ、隊長は少し興奮したようにソワソワしていた。
「……隊長?」
心配そうに声をかけると隊長は、我に返ったかのように試合前の凛とした表情を浮かべながら私の方を見る。
「なんだ?」
「いいえ。少し興奮なされていたので…」
「……私が?」
「はい。私の目でもわかるくらいに」
「―――原因は多分あれよ」
隊長の目線の先には、継続高校の出店…スイーツショップが並んでいた。
「―――…試合終わったら食べてもいいですよ」
「う、うん…頑張ります」
困惑したように顔をしかめながら言う私の言葉に顔を赤くしながらしょぼんとする隊長。その過保護になるような弱々しい声と小娘みたいな姿にまたしてもほれてもうやろー! と叫びたい私だった。
《―――試合開始!》
―――両校が定位置についたのを確認の上、開始時間を知らせるジャッジの掛け声で試合は始まる。
「パンツァーフォー!」
試合開始直後、隊長の掛け声とともにパンツアーカイルで前進する。そして周りに警戒をしながら軽戦車を先行させ、囮作戦…で敵を炙り出す。そして一本道を挟むようにイトスギの森。その量森に陣地を構築しているのを先行するナチス・ドイツ軍の最速Ⅰ号戦車C型《愛称:アードラー》が知らせる。
「隊長。例の作戦を実行してもよろしいでしょうか?」
「……よかろう」
「ありがとうございます。C分隊! 敵の背後に回り込み、奴らと遊んで来い!」継続高校の背後からC分隊がおちょくりを開始。そちらに砲門を向けた瞬間、パンター部隊で、三突の側面と背後を射抜き、次々と敵車輛を減らす。さらに最大装甲250ミリのヤークトティーガーを二両編成した盾をフラッグ車の全面に配置、その後ろからティーガーⅡの支援砲撃で、残りを食べつくす。
そしてフラッグ車に乗車する隊長のティーガーⅠは、A分隊を率いて陣地から離れた場所に森の中で隠れている可能性がある敵のフラッグ車を撃破するためゆっくりと森へ進行を開始する。それを援護するようにC分隊に伝令を伝える。
「虎ⅡよりC分隊へ。おちょくり作戦は終了。お前たちはA分隊と合流しなさい」
【こちらC分隊分隊長、了解】
陣地の周りを極寒仕様の履帯に換装した軽戦車を率いるヤークトパンターを指揮車輛としたC分隊が次々と敵の間を通り過ぎながらA分隊の後を追う。
そして私達B分隊は、敵の左側面からの高火力の攻撃をしつつ敵陣を破る。
「虎Ⅱより各車両へ。一気に潰すわよ!!」
【ヤボォール!】
中・重戦車の物量と火力で残りの敵を押しつぶすのであった。
敵陣地にいる車輛をすべて倒した時、全車両に戦車道のジャッジの通信が入る。
《継続高校のフラッグ車の撃破確認! よって黒森峰女学園の勝利!》
第二試合も私達の勝利で終わった。
そして試合前の約束通り、隊長は継続高校の売店…ワッフルからホットアイスクリームという、ホットコーヒーの上に極寒のフィンランドのマイナス40℃以上の環境下で作られたアイスクリームを乗せたのを頬張るように食べる。そんな隊長の姿に試合後の癒しを感じている私。そして私の背中には、C分隊の分隊長を務めてもらったヤークトパンサーの車長である直下とヤークトティーガーの操縦手をしていた小梅の二人が頑張ったご褒美として私のおごりで継続高校のスーパージャンボ・ブルベリーパフェをおいしそうに食べていた。
―――そして学園艦の移動の関係上、私たちの第三試合が先に行われた。
その第三試合は、私だけだが因縁と思っている聖グロリアーナ女学院との対決。やはりチャーチルⅦには苦戦したが、私の乗車するティーガーⅡと隊長が乗車するティーガーⅠの前には、無力。
しかし、今回の試合では、加速性と砲撃性が高いコメットにより三両輛が敵の餌食になってしまった。…それも私の指揮の下で、まだまだ感情を抑え切れていないのがアザとなったみたいだわ。一両が撃破された時、思わずいらん子中隊時代の戦法をとってしまった。
全面の傾斜装甲をもつ足の早いパンターと高火力のヤークトパンターを錨型で突撃させるもまるで先読みされたかように本命である丘の横から現れる車輛を次々と攻撃され、二両がコメットにより撃破される。最後は、私のティーガーⅡにより履帯とともにエンジンルームに着弾し、撃破する。
「……」
言葉なき勝利だった。だが、私の戦略は“敗北”の文字が濃く浮き上がっていた。皆が整列する場所に戻って着た時、隊長に小さく睨まれた。
その後
「―――次は、もっと私を頼りなさい」怒ると思ったのに実際かけてもらったのは励ましの言葉。
その一言に私は小さく「…はい」と答えるだけ、これ以上反省したことがないと思う。私の返事を聞いて隊長は、私の頭を軽く二回叩いたのち、皆の元へ向かい初め、その後ろを副隊長としての顔で歩き始める私。
第三試合を終え、撤退準備をしている。そんな時、ダージリン達にお茶会に誘われた。
そのお茶会の席には、またしても小学校時代の…ある意味本音をぶつけ合えれる喧嘩友達といえる子が、聖グロリアーナの色、お姉さまオーラを漂わせていた。…というかアンタ、スポーツ特待生が何故、戦車道にいるのよ?
中学は、スポーツ特待のある学校に進学したはずの彼女が何故ここにいるのか、疑問を感じてしまう私。そんな私の顔を見て一度は驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと笑みを溢す。……しまったすでに包囲網が縮められているようだ。だが、黒森峰に【撤退】という二文字はない。
「……スポーツ万能娘が何故こんな百合学院にいるのよ、千紘」
「……いや~成り行きと言うか、あの瞳にもしつこく勧められちゃってさー。まぁ、私も戦車道が忘れられなくなったのもあるわ」と、私の質問を誤魔化すかのように紅茶を啜り出す遊佐千紘。そんな千紘の凛とした姿に回りの女子が皆、黄色の声を上げながら目を輝かしていた。
「……まぁいいわ。改めてお久しぶり、遊佐」
「ああ、久しぶりだ。逸見」
三年ぶりの再会を喜ぶように握手を交わしつつ、私は千紘の横の席に座る。そして隊長は、ダージリンの真正面の席に座る。
改めてダージリンの口から勝者への言葉を送られる。
「完敗でしたわ」
「……こちらは三両そちらに食われた。あの車両の車長は…」
「……私だ。」
黒森峰の中戦車二両と駆逐戦車一両を打ち取った車輛の車長はと隊長が質問すると遊佐が手を上げる。……なるほど、だから…私たちの思考を知っているから対応できたわけだ。…私もまだまだ策略が勉強不足だわ、と痛感される。
「……そう。見事だったわ」
「?! ありがとうございます」
千紘だと知って隊長は、その能力を評価するように褒めた。それには千紘も眼を点にして驚いていた。
そしてダージリンも隊長が自分の学校以外の部下をほめるとは思ってもいなかったのか、口元を隠しながら驚いている。
ウチの隊長は、とってもやさしいお人なのだ。と自慢したくなるが、今は静かに己の失態を反省することにした。
お茶会が終わった後、私は千紘に呼び止められた。
「エリカ、少し時間あるか? …よかったら少し私の部屋に来ないか?」と誘われた。
「逸見。行ってあげなさい。」
「は、はい。それじゃ…行ってきます」隊長にも許可されたので私は千紘の部屋…贅沢にも一人部屋に通される。
「……」
部屋の装飾にいろいろ言葉を無くす私。…これが日本中でも稀有のスポーツ万能者、スポーツ特待生への学院の配慮なのか? そんな私の背後から突然千紘が抱きついていきた。
そして耳元で小さく呟く。
「……ねぇ、エリカ。私ね…体がとっても熱い…」
「はいはい。アンタは昔から不安なことがあるとすぐに体が発情しちゃって。そのたびに誰かに抱きつく癖。いい加減に直しなさいよね」
小学校時代から続く千紘の性癖を愚痴りながら私は千紘を自分の膝元に座らせる。
「ほら、さっさと気が済むまで私を抱き枕にしなさいよね、バカ千紘」
「サンキュー…エリカ」その言葉を最後に千紘は私を強く抱きしめるのであった。…やばぁ、制服がしわしわに…と思った時にはすでに遅く。千紘は満面の笑みをこぼしながら私の頬に頬を擦り付けるのであった。
―――二時間後、
「……大変申し上げございませんでした…」
やっと不安感から解放され我に返った千紘は、その身体能力をフルに生かして、その場でコンマ1.9秒で正座して私に謝る。それを見ながら千紘によりしわしわでヨレヨレになった制服を手で直しながら小さくため息をこぼす。
「……頭を上げなさい、バカ千紘。アンタのはもう慣れっこよ。それよりも…みほの事だけど…」
「瞳から聞いた。……大丈夫なのか? 西住さんは…」
「もしもの時は連れ戻すという手もあるけど、それじゃ結局何も変わらないわ。あの子にとっても、私にとっても…」
「相変わらず、みほ一筋だなー」
「ち、違う! 私はまほさんに一筋であって、みほは…」
千紘にそう言われ、顔を真っ赤にしながら千紘に言い返す私。そんな私の頭に手を乗せて勢いよく撫でる。
「大丈夫。西住さんもエリカも…“自分の戦車道”がきっとみつかるって!」
「……生意気じゃない、バカ千紘。―――でもアンタの言う通りね。あの子はあの子の道を…私には私なりの道…プライドがあるわ」
千紘の手を払い除けながら立ち上がる。
「もう行くのか?」
「行くわ。隊長が待っているもの」と、その一言を残して私は千紘の部屋を出た。そして正門前で目を閉じながら車に寄り掛かる隊長の姿があった。
「お待たせしました」
「……ん? 制服がシワシワじゃないか」
私の姿を見て不思議がる隊長に私は、言葉を濁らせるように答えた。
「ちょっと、じゃれ合ったんで…」
「あまり激しいことは控えなさいよ」何を連想したのだろう、頬を赤くしながらその言葉を残して車に乗り込む。
「そうします」いろんな意味が籠った言葉で答えながら運転席に乗り込み、黒森峰の学園艦に向かって車を走らせるのであった。
―――今日の練習を終え、副隊長室で書類整理などをしているある日、私に来客が訪ねてきた。
「副隊長、お客さんだよ」
「……誰? まぁいいわ。通してもらえる?」
小梅が私に来客が来たと知らせてくれた。私に客とは誰だろうかと思いながらも小梅にそう言うとすでに廊下で待機していたのだろう、再び扉が開き、直下とともに…これはまた、本当に珍しい客人が私の部屋に訪れた。
「これはこれは―――、大の黒森峰(西住流)嫌いがどんな御用かしら? 中須賀」
そこにいたのは、小学校時代の戦車道…初めて戦車に乗り込むきっかけをもたらしたキーパーソンで六年生最後の夏、祖国ドイツに帰国したはずの中須賀エミが立派な高校生らしい顔つき…不機嫌顔で私の目の前に立っていた。
膝を机につきながら目を細めて言う私にエミも負けじと言い返してくれる。やっぱり私達の間にはチームワーク…人付き合いなどないのだから。
「……相変わらず、口が悪いわね。エーリカ」
「私の名前をそう呼ぶのアンタだけよ。それで? 本当に何しに来やがった」
「―――…何、アンタに一からドイツ式の戦車道の志しを叩き込んでやろうと思ってね…はるばるドイツから帰ってきたんですが、何か?」
「んなもいらんわー。さっさとドイツに帰れ“ドイツの堅物”」
普段言わない口調でエミに言いながら席から立ち上がった。そしてエミの顔数センチまで自分の顔を近づけて睨み、エミも私を睨み返す。
そんなにらみ合う私達をみて小梅は直下に止めようと言い出すも、直下は頬を引きずりながらにやりと笑う。
「いいじゃない。普段隊長一筋のエリカがこんなにも感情を見せることないよー」
「そうだけど~、このままじゃ…」
ちらっとこちらを見る小梅。
「―――」
「―――」
無言でにらみ合う私達から漂う殺気混ざりの重い空気に青ざめるように怖がっていた小梅。
そんな重い空気を壊すように私がエミがここまでくる要件を言い当てる。
「―――瞳の件でしょう」
「―――…察しがいいわね。それとあの件は本当?」
「―――……その場のノリってやつよ。」
「アンタね。その場のノリであの西住さんの母親を納得させるなんて…本当アンタ女?」
「あら? 私が女か疑うって言うなら見せましょうか?」と、不敵な笑みを溢しながら自分のスカートの袖をつかみ捲ろうとするとエミったら顔を真っ赤にして顔を背ける。本当、おバカさん―♪
「や、やめなさい! 散々、アンタとは一緒にお風呂にだって入ったことあるわ!」
「でしょう。裸の付き合いは大切にしないとね♪」
慌てふためくエミをここってばかりにからかう。そんな中、小梅と直下の二人が不思議そうな顔をしながら私達に質問する。
「あのー、例の件って?」
「それも隊長のお母さんを納得させたって…?」
二人の質問に私は、再び椅子に座り直す。そして淡々と空想と現実を混ぜ込んだ小さな物語を語り始める。
みほが聖グロリアーナ女学院との親善試合で敗北し、大洗納涼祭りであんこう踊りを大洗の街中で披露した夕方まで遡る。
その日、珍しくしほさんから呼び出された私は、隊長とともに西住家にお邪魔した。
「それではお母様。部屋着に着替えて参ります。」と、隊長は一旦自室に戻り着替えに戻り、私は応接間でしほさんと対面するように座っていた。
「急に呼び出してごめんなさいね、エリカさん。どうしても貴女の手作りの星型ハンバーグが食べたくなったの。作ってもらえるかしら?」
「それは一向に構いませんが…しかし何故?」
「今朝、嫌な夢を見たの。それがどうしても離れなくて、何かおいしいもので紛らせようと思った時に、あなたのハンバーグを思い出したのよ」
「左様で…。してその夢とは? 差し支えなければ是非ともお聞きしたいですね」
私にそう言われたしほさんは、淡々と夢の内容を話す。
―――それをすべて聞き終えた私は、その夢に出てきた黒森峰が九連覇をできず、翌年の大会で無名校からみほが出てきて、そのまま優勝をする、夢は本当であることと、そのみほに関しての話をする。
「それは正夢です。みほは…戦車道に戻っています」
「―――それは本当ですか?」
「はい。とある情報によれば、みほは大洗という無名校で、戦車道を生徒会が主催で始めたようです。ただ…」
言葉を詰まらせるように言葉を濁らせる。
「なんです。はっきり仰いなさい」
「―――はい。大洗は、しほさんの耳にも入っているどおり、今年度で廃校、別の学園艦と統合される予定です。
おそらく廃校を回避するために…生徒会が学園艦運営委員会に【戦車道で優勝した学校はつぶせないよねぇ~】といったと思われます」
「……今すぐに委員会に…」
「待ってください」
「エリカ? まさかあの子に…」
即座行動に移すしほさんに待ったをかける私。そんな私を不機嫌顔で睨むしほさん。しほさんが考えているようなことじゃないと否定をするように私は首を横に振る。
「いいえ。以前にも言いましたが、みほを倒すのはこの私です。……この際、あの子と戦車道で戦わせてください。…そして、あの子に西住流の正統さを思う存分見せつけたいと思いますが…如何でしょう?」
「……貴女、本当にまほが好きなのね」
「大好きです。女であることをこれほどもどかしいとは思ったことがありません」
きっぱりとした口調でしほさんに言う。それを聞いて時々隊長が見せる惚れ顔をみせるしほさん。…あれ? 私開けてはいけないプラグを立てちゃった?
「まるであの人を見ているみたい。……あ!? これはまほには内緒にしてね。まほは、自分の父親が誰なのか知らないから…」
「―――お察しします。…ですが、さすがに医療の進歩がここまでくると時々怖く感じてしまいます」
「……西住流は、一子相伝の流派。だけどいつまほが…と思って二人目を作ってしまったけど…それが裏目に出てしまったかしら…ね」
「西住流を抜きで話せば、みほはしほさんのように優しい女の子だと、思います。」
「―――わかっています。だからこそ、私はあの子に“勘当”を言い渡すわ」
「…恐れながら、この私逸見エリカも協力させていただきます。」
「よろしく頼むわ、エリカ」
「御意に!」
決意を新たにしたしほさんに深々と頭を下げる私であった。
「―――ってしほさんの夢の話をした後、そーいう段取りで話をしようと考えてはいたんだけど、結局みほのことを話すことができなくて。そのまま流れに流れて、私が作った星型ハンバーグを出した席で、菊代さんが出してくれた…少し度数が強いお水の勢いで【もしみほに勘当言い渡すのだったら、…そ、そのみほを私にくだしゃい!!】って、言っちゃったのよー。
そーしたら【ん? 一向にいいわよ? だけどまほとみほのどっちかしか上げませんよ】って、星型ハンバーグを嬉しそうに食べるしほさんに真顔で言われた…」
「―――」
【―――】
それを聞いた三人は言葉を無くす。しほさんの素顔を知って言葉を無くしたのか、はたまた私の空想話に言葉を無くしているのか…。うむ…判断が難しい。と考えていたら…呆れ返った声で三人にこう言われた。
『このヘタレエリカ』
「不幸ダナああああああああ!!」
その言葉に大洗の坂本龍馬ファンであるおりょうの中の人がつける語尾とともに私は嘆き叫ぶであった。
―――お姉ちゃん、やさしいよ。うん、さすが〇ーナさんだね。
あと、ウチのエリカはエ〇ラと同じヘヤレですが、何か? 可愛いのは自由と正義だよね♪
プラウダ高校戦までのお話。少しダメ文ぷりだけど、温かい目で見て下せば、アタイ嬉しいよ!!
では、次回にむかって パンツアーカイル!!