博麗の巫女の決め方が気になったので書いてみました。

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博麗の巫女の決め方

「霊夢さん、博麗の巫女ってどうやって決めるか知ってますか?」

唐突に文がそんなことを言い出した。

「知ってるわけ無いじゃない。私だって気付いたら博麗の巫女だったし…」

「では教えて上げましょう。仕組みを説明すると分かりづらいので、霊夢さんがどうやって博麗の巫女になったのか、実際にその時の状況を説明して差し上げますね。」

「なんで微妙に上から目線なのよ。まあいいけど。」

 

先代の巫女が居なくなってから一月、八雲紫は次の代の博麗の巫女を決めるために外の世界から巫女になる素質のある人間の子供を探しては神隠しのように攫っていた。

「全く、こういう作業も何回目かしらね。やってて嫌にはならないけど疲れるわ。」

「紫様、真面目にやってください。博麗の巫女は妖怪にとっても重要な役目を果たすのですから。」

「分かってるわよ…私は幻想郷の管理者としてやらなければいけないことはちゃんと果たすけどね、こんなにも沢山集める必要も無かったんじゃないかと思うわ…」

紫の前には32人もの人間、厳密には外の世界の人間の子供、が集められていた。

32人全員が自我と記憶を失い、ただ座っているだけであることを除けば、この状況は屋敷の主人と召使達のように見える。

「仕方ないでしょう、人数が多ければ多いほど術の効力、すなわち博麗の巫女としての能力は上がるのですから。」

「まあそうね、とりあえず始めましょう。藍、幻想郷中に知らせてきて。」

「御意。」

藍は消え、その場には紫と32人の博麗の巫女候補が残った。

「こっちはこっちでやることをやりましょうか…」

そう言って紫が指を鳴らすと、全員の自我が戻り、新しい記憶が刷り込まれる。

「新しい記憶の中では初めまして、私は八雲紫、幻想郷の管理者であり、賢者よ。貴女達にはこれから博麗の巫女になるために、全員で競い合ってもらうわね。1番優秀だった人のみ博麗の巫女になることができるから、頑張って頂戴。」

「ああ、そうそう。競い合う方法は3日後、当日に発表してそのまま始めるわ。だから3日後まで貴女達はこの屋敷で自由に鍛錬してもらって構わない。けれど他の博麗の巫女候補を事前に倒すのはダメよ。このお祓い棒と陰陽玉を渡して、後は私は関与しないからよろしくね。」

そう言って、紫は全員に一つずつ渡し、そのまま消えてしまった。

 

その頃藍は文に博麗の巫女を決める儀式を始めることを知らせていた。

「そろそろやるだろうと思ってましたが、3日後ですか。幻想郷中に知らせたということなら私の文々。新聞で号外を出す必要も無いですね。」

「儀式について、終わった後に博麗の巫女に知られるような行為が禁じられてるのは分かってるだろう。」

「冗談ですよ。私も見には行きますが、地底との取り決めが当日見物に来るだけなら無効になるなら鬼も来るんでしょうね…」

「もちろん地底の方にも知らせてあるからな、来るだろう。」

「鬼はああいう酒の肴になりそうな行事は好きそうですからね…博麗の巫女候補を外の世界から連れてきて、最後の一人になるまで殺し合いをさせるなんて、私はとても思い付きませんよ。」

「毎度毎度一言多い天狗だな、お前は。まあ、とにかく言うべきことは言ったから、失礼するぞ。」

「さてさて、今回はどんな巫女になるのか今から楽しみですねぇ。」

上機嫌になった文はそのまま上空に飛び立った。

 

それから3日後、"競い合い"の当日。

博麗神社の敷地では大勢の妖怪の中で博麗の巫女候補が並んでいた。

そしてどこからともなく紫が現れ、こう告げた。

「えー、こほん、ではこれから博麗の巫女を決める儀式を始めます。ルールは簡単、この表に従って順番通りに一対一で対決して、勝った人同士で次の戦いを。これを最後の一人になるまで繰り返してもらいます。対決の勝利条件は相手を殺すこと。どんな手段でも相手の息の根を止めればそれで終わり、簡単なルールでしょう?」

神社の中がどよめき立つ。

驚いているのは比較的新しい妖怪、すなわち今までの儀式を知らない妖怪の大半と、博麗の巫女候補のほんの一部だ。

前者の中で例外が、この儀式を面白そうに見ている吸血鬼だ。

「なるほど、幻想郷の妖怪共も中々趣のあることをするじゃないか、なあ咲夜。」

吸血鬼は従者に向かって微笑みながら言った。

「そうですね…しかし合理的であるとも言えます。最後の一人が最も強力というのは自明の理ですから。」

「まあ、そんな難しいことは考えずに数十年に一度の行事をのんびり見物させてもらおうじゃないか。」

 

別所では亡霊のお嬢様と半人半霊の庭師が苦い顔をしながら見物していた。

「これでもう何回目かしらねぇ、意図的に冥界の住人を増やすのはやめて欲しいのだけど、幻想郷のためなら仕方ないのかしらね。」

「私も無闇に人間が死ぬのは喜ばしくは無いと思ってますが、幽々子様も紫様にはっきり意見すべきだと思いますよ。」

「そうねえ、それじゃあ今度物申してみようかしら!」

 

そして1番際立っているのは商売をしている河童の周辺だ。

「さあさあ、最後まで残る巫女候補は誰なのか!見事的中させた人には賭け金の10倍のお金を差し上げます!購入期限は最初の対決が始まるまでだよ!皆さん皆さん是非賭けてみてくださいな!」

最後まで残る巫女を当てるという賭けで商売をしている河童が大声で呼び掛ける。

「全く、同族ながら酷い商売をするもんだね。」

大きなリュックを背負ったツインテールの河童が独り言を呟く。

「あやや、商売をしていない河童とは珍しい。貴女は確か、河城にとり、でしたっけ?」

空高くから突然文が降りてくる。

「ひゅい!?て、天狗様、私はこんな酷い商売はしたくないだけですよ。流石にこんな儀式で商売するのは洒落になりませんって。」

「天狗様って…数十年に一度しかない行事なんですから、もっと気楽に呼んでくれていいんですよ?まさか文々。新聞の執筆者である私を知らないってわけでは無いでしょう。」

「わ、分かりました。でも、後ろに…」

「後ろ?」

文が後ろを振り返ると、そこには山の四天王である勇儀と萃香が居た。

「おっ、丁度いいところに河童と天狗が。あんたら、ちょっと呑みに付き合ってよ。せっかく来てあげたのに、鬼であるこの私、伊吹萃香のお誘いをまさか断らないよね?」

「げ、鬼…わ、私は取材中なので失礼させていただきますねー」

そう言って飛び上がろうとした文を勇儀が捕まえる。

「おいおい、鬼に嘘は良くないぞ。さあ、捕まったからには付き合ってもらうぞ。もちろん河童の方も付き合ってくれるんだろうな?」

「も、もちろんご一緒させていただきますー!」

「あやややや…鬼に捕まるとは、今日は厄日ね…」

その後他の河童や天狗、鬼も合わせて半ば宴会のようになり、儀式が終わるまで続いたらしい。

 

そんなこんなで妖怪達が騒いでいると、第一試合が始まろうとしていた。

2人の巫女候補が闘技場型の決闘場の中に入ってくる。

それぞれ指定された位置に着くと、紫が現れた。

「はぁ…なんで審判役まで私が…こほん、2人とも準備はいい?」

紫がそう言うと2人の巫女候補は首を上下に振る。

「それでは、これより第一試合を始めます。」

周囲の物音が一瞬にして消える。

「始め!」

その一声で巫女候補達が動き出す。

巫女候補の中には個人の能力を持っている者まで居れば、基本的な体術すら習得していない者までピンキリだ。

従って、勝負が長引くこともあれば、一瞬で終わることもある。

妖怪達はそんな勝負の中の死に対する恐怖を食事にするために毎回見物しに来るのだ。

第一試合の結果は12番の巫女候補の勝利。

25番の巫女候補が地上に着地する瞬間に、陰陽玉から針を出して目を潰す。視力が無くなったところをお祓い棒で撲殺と中々残酷な勝ち方だったため、妖怪達は盛り上がっていた。

その後も試合は続き、最後の試合となった。

今回の儀式で一番注目されたのは6番の巫女候補…今の霊夢なのだが、

他の巫女候補よりも能力そのものが非常に優れていた。

身体能力や判断力、神術、そして固有の能力。

彼女の固有能力は空を飛ぶ程度の能力。

字面だけ見ると大したことは無いが、実際は無重力を操るような物で、飛び道具を避けるのはもちろん、空中戦に非常に優れている。

能力を応用した奥義のようなものも既に習得していたようで、決勝戦が始まる前に勝敗は見えていた。

試合が始まると同時に6番の巫女候補は能力を使い、今まで見せていなかった奥義を使った。

おそらくは今の霊夢が使う夢想転生と呼ばれるものだったのだろうが、彼女は宙に浮き、周囲から干渉されなくなり、周りには陰陽玉が展開される。

陰陽玉からは今でいう弾幕の弾、もちろん殺傷力は桁違いの物が無数に放出された。

対戦相手である4番の巫女候補は必死に数秒は避けていたが、10秒も経たずに弾に当たり、そのまま後続の弾によって跡形も無く消されてしまった。

「……あ、し、勝負アリ!6番の子の勝ちよ。」

流石の紫でも6番の巫女候補の能力には驚いたようだった。

「今代の博麗の巫女は6番の巫女候補に決まりました!」

彼女の奥義を見て呆然としていた妖怪達も巫女が決まると聞き、今日一番盛り上がった。

「さて、博麗の巫女は貴女に決まったわけだから、貴女の名前を決めなきゃいけないわね…」

紫は他の妖怪に聞かれないように巫女候補に言った。

「そうね、何か希望はある?無ければ私が決めちゃうけど。」

「…希望は無いわ、勝手に決めて…」

巫女候補はそれだけ言って黙ってしまった。

「そうねぇ、それなら6番だから…0、6、…れいむ、幽霊の霊に夢と書いて霊夢でどうかしら?」

「分かった、私の名前は霊夢。博麗、霊夢。」

「それじゃ、貴女は私の屋敷に行ってていいわよ。私はこの妖怪達を解散させておくから。」

霊夢はそう言われると、空を飛び、居なくなってしまった。

「さて、ここからが本番ね。と言ってもあの子の能力は予想を遥かに超えて優秀だから、あまり施しをする必要も無さそうだけど。」

 

集まってきた妖怪達を全員帰させてから、紫は屋敷に戻ってきていた。

「藍!準備はできているのかしら?」

紫の声が屋敷に響き渡る。

直後に藍が紫の目の前に現れた。

「はっ、既に霊夢を待機させております。後は術を施すだけです。」

「藍は用意周到で助かるわ。それじゃあ、最後の工程を終わらせましょうか。」

紫は屋敷の中心に向かった。

屋敷の中心では、霊夢が血によって描かれた魔法陣の中で待機していた。

「博麗の巫女を決める儀式というのは表の顔、裏の顔はただ1人の博麗の巫女の能力を更に高めるための禁忌の呪術。」

「他の巫女候補を殺した巫女候補が殺した相手の力を吸収するように、お祓い棒や陰陽玉に仕込んであった。そして最後に残る1人には他の全員の巫女候補の力が宿る。」

「巫女候補達の血で描かれた魔法陣には力を定着させる効力がある。そして、私が死んだ巫女候補の臓物を捧げ、呪文を唱えれば、貴女は完全な博麗の巫女となるのよ。」

「…大陸の国では遥か昔、蠱毒、として呼ばれていた方法に似ているわね。」

紫は冗談めかすようにクスリと笑った。

「一つだけ聞かせて…博麗の巫女は、私でないといけなかったの?」

霊夢は紫から聞かされた内容に驚く事もなく、問いを発した。

「この呪術を完成させるには本人の器が重要なのよ。あの戦いに勝てなかったような者が器になっても力に耐え切れずに肉体が破裂か、精神が崩壊するでしょうね。」

「そう…それなら、いいわ。早くして。」

霊夢はそれだけ言って黙ってしまった。

「ま、それならそれで始めましょうか。」

紫はそう言って目を閉じ、臓物を手に取った。

「幻想郷の神よ、貴方を恨み、その恨みを糧にしてこの娘に死んだ娘達の力を縛り付ける呪いを掛けましょう。供物として、死んだ娘達の臓物を捧げます。呪縛を成就させた暁には貴方にこの娘の寿命の半分を捧げます…」

そのような呪文を紫が唱えると、臓物は消え、魔法陣は黒い光に包まれた。

「成功したかしらね…」

そう言いつつ紫は指を鳴らす。

「これで霊夢の記憶も書き換えた。初めから博麗の巫女として生まれていた。その記憶だけあれば良いわ…後は博麗神社に送って、終わりね。」

紫はスキマを開き、霊夢をその中に入れる。

スキマを閉じると、もうそこには何の形跡も残っていなかった。

「さあ、今代の博麗の巫女、博麗霊夢。貴女がこれからは人間と妖怪の新しい調停者よ。」

 

「ーーというのが貴女が博麗の巫女になった経緯ですよ。霊夢さん。」

「え、あ、わ、わた、私は幻想郷で生まれ、私は外の世界の?他の巫女候補をころ、この手で殺した?そ、そんなはず、そんなはずは無い…私は博麗霊夢…私は博麗霊夢…ねぇ、あ、文、いつもの冗談でしょ?冗談って言ってよ!」

霊夢は頭を抱えながら混乱し始めた。

「れ、霊夢さん。冗談ですよ、よく出来た話でしょう?人里で物語を書いた人に話を聞いて私が考えてみたんですよ。どうですか?私も物書きになれますか、ってもう物書きでしたね。あはは…」

「な、なーんだやっぱり冗談なのね。ビックリしたわ…紫がそもそもそんなことするはず無いって、私が一番分かってるもの。」

冗談と聞かされて、霊夢はいつもの調子に戻った。

「あ、霊夢さん、私はそろそろ失礼させてもらいますね。取材の予定が入ってるので。」

「そう、それならまた明日、かしら。」

「ええ、また明日、文々。新聞の配達時間にお会いしましょう。」

文はまた明日、という部分を強調して言った後、遥か彼方に飛び去った。

 

「妖怪の賢者様〜、見てたんでしょう?わざわざ私にこんな役を回すなんて私も損な役回りですよ、全く。」

「ええ、バッチリ見てたわ。貴女にこの役目を任せたのは一応貴女も古参組の方で、程よく霊夢と交流があって、"儀式"にも理解があるからと思ったからなのだけど。」

「まあ、貴女に信用されているというのなら悪く無い話ですね。ところで霊夢はあの話を受け入れるには精神がまだ発達していないようですね。」

「先代の巫女はこの年齢で既に受け入れていたけれど、やっぱり今代は力の総和が他の代と比べて強大だったから、力が圧倒的な代わりに精神が未熟なのかしらね…記憶は後でコッソリと弄っておくことにするわ。」

「妖怪の賢者様はどうあってもやはり妖怪の賢者と言ったところですね。結局は人間を良い様に利用しているのだから…」

文が喋り終わる前に、紫が文の喉元に傘を近付けた。

「これ以上喋る必要は無いわよ。天狗風情は私には敵わないのだから、黙って賢者様の言う事を聞いておくべきなのは賢しい貴女なら分かるでしょう?」

「…分かりましたよ。傘は退けてください。私は取材に戻りましょう。」

「ふふ、よろしいよろしい。幻想郷は今日も平和ね。」

二人は会話を打ち切り、幻想郷の空には沈み行く夕陽だけが残り、地上には鮮やかな紫陽花の大群が咲いていた。

 




キャラの口調がズレていたらすみません。

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