勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~ 作:ぐうたら怪人Z
「ハルッ!!」
状況を逐次把握しながら指示を飛ばしている青年に、声をかける。幸い、彼はすぐこちらに気付いてくれた。
「なんでござるかな、アスヴェル殿?」
「私が合図したら、全員を自陣へ
「は、はい? しかしそんなことをすれば戦線が崩壊してですな」
「大丈夫だ! 後は私に任せろ!!」
力強く断言する。熱意が伝わったのか、ハルは数秒の逡巡の後、頷いてくれた。
「わ、分かったでござるよ」
「頼む」
そんな彼へ一つ頭を下げてから、アスヴェルは敵方向へと向き直る。しっかりと“目標”を見据え、静かに精神の統一を図る。
――
その詠唱と共に、周囲の空気が変わる――比喩でなく、大気そのものが薄く発光する。そして一筋の雷光が出現すると、それがアスヴェルを中心として大きく回り始めた。回転は徐々に速度を増し、程なく“雷”は巨大な“光の
これぞアスヴェルが本来用いる、真の闘争術。ただ魔力を垂れ流すだけの魔法とは
「<磁式・極光>」
彼はそれを、“魔術”と呼称する。
――――――――――――――――
「ハル! ハル!! 何が起きてる!?」
「な、何がと申されましても拙者にもすっぱりさっぱり!?」
「なんかすげぇフラグ踏んじまったか!? あの光ってる“輪っか”なんだよ!?」
「ぬ、ぬむむむむぅ!? 見た感じの推測ですが、生み出した“雷”に
「ちょ、ちょっと待て! それってつまり、“荷電粒子砲”じゃねぇか!?」
「っ!? た、退避!! 皆様方、すぐに退避するでござるぅっ!!!」
―――――――――――――――――
ハル号令の下、味方陣営が一気に下がり始めた。その行動に敵は呆気にとられ、一瞬追撃が遅れる。嬉しい誤算だ。
「そちらに恨みは無いが――私を敵に回してしまった不運を呪え」
その宣言と共に、光の環から幾条もの“光線”が
閃光。
炸裂音。
爆発音。
衝撃。
「うわぁあああっ!!?」
「お母さーーん!?」
「にょもぉおおおおっ!!?」
「もう、駄目だぁあああっ!!!!」
そして、悲鳴。
なんか割と余裕ありそうな断末魔を残し、敵クランの人々は爆雷の中へ消えていった。
残ったのは、幾つもの“クレーター”で凸凹になった地面のみ。
「……なになに!? 何が起こったの!? 俺っちはどうしたらいいの!?」
……それと、唯一ターゲットに入れなかったオーバタも。
「嘘だろ、おい!? フィールドが、まるまる吹き飛んじまった!!?」
「ロー●ス島戦記かと思ったら、スレ●ヤーズだったでござる……」
「オレ達、とんでもないことしでかしちゃったんじゃあ……」
やや離れた場所で、ミナトとハルが目を丸くしている。仕方がない、この
しかし彼等への説明は後回しだ。今はただ、逝った友人へと祈りを捧げる。
「サイゴウ……仇は取ったぞ」
「おお! 確かに見させて貰ったぜぇ! やっぱすげえ奴だな、お前さん!!」
「…………へ?」
すぐ隣から返事が来た。見ればそこには
驚いて声が出ないアスヴェルを尻目に、ミナトとサイゴウが会話を始めた。
「あ、おやっさん。もう帰ってきたのか」
「おうよ! この戦争を承諾しちまったのは俺だからなぁ。きっちり結末を見届けなきゃならねぇだろう? おかげで、まだデスペナ解除されてないがな!」
どうも、彼等にとってサイゴウの復活は驚愕に値するものでは無い様子。
(ど、どゆこと? え? どゆこと?)
混乱。錯乱。狼狽。動揺。頭の中がごった返しになっていると、
「あー、負けた負けた」
「何だよ、最後の光!? 説明と、賠償を請求する!!」
「嫌な予感したんだよなぁ、“エルケーニッヒ”って結構武闘派って話じゃん」
今しがた吹き飛ばした敵陣営の人々まで姿を現す。こちらもダメージを受けている様子は無い。
「え? え? え? え?」
予想だにしなかった事態に、アスヴェルの脳は完全にオーバーフローしていた。そこへ追い打ちをかけるようにミナトが詰め寄ってくる。
「おいアスヴェル! なんだよさっきの技! 後でしっかり説明して貰うからな!?」
「それは――それは、こっちの台詞だぁあああああああっ!!!!!?」
魂の絶叫が草原に響き渡った。
◆勇者一口(ではない)メモ
“磁式・極光”
アスヴェルが習得している“魔術”の中で、3番目に威力が高い。
磁場によって雷を亜光速にまで超加速させ、光環を形成する術式――要するに荷電粒子砲。
その
射程距離も魔法に比較して飛躍的に長く、広範囲を薙ぎ払える。
さらに、近接距離の相手には光の環を直接当てるという使い方ができる上、防御手段として環を用いることも可能という、攻防バランスの良い魔術。
弱点は雷が十分な速度に達するまでそれなりに時間がかかること。