勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~   作:ぐうたら怪人Z

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【3】

「ハルッ!!」

 

 状況を逐次把握しながら指示を飛ばしている青年に、声をかける。幸い、彼はすぐこちらに気付いてくれた。

 

「なんでござるかな、アスヴェル殿?」

 

「私が合図したら、全員を自陣へ避難(・・)させてくれ!」

 

「は、はい? しかしそんなことをすれば戦線が崩壊してですな」

 

「大丈夫だ! 後は私に任せろ!!」

 

 力強く断言する。熱意が伝わったのか、ハルは数秒の逡巡の後、頷いてくれた。

 

「わ、分かったでござるよ」

 

「頼む」

 

 そんな彼へ一つ頭を下げてから、アスヴェルは敵方向へと向き直る。しっかりと“目標”を見据え、静かに精神の統一を図る。

 

 

 ――雷槌(イカヅチ)を廻す。光を降臨(オロ)す。虚空(ソラ)を斬り裂く。

 

 

 呪詞(のりと)を紡ぐ。

 その詠唱と共に、周囲の空気が変わる――比喩でなく、大気そのものが薄く発光する。そして一筋の雷光が出現すると、それがアスヴェルを中心として大きく回り始めた。回転は徐々に速度を増し、程なく“雷”は巨大な“光の()”へと変貌を遂げる。

 これぞアスヴェルが本来用いる、真の闘争術。ただ魔力を垂れ流すだけの魔法とは一線を画した(・・・・・・)、人の技術によって魔力を緻密に組上げる御業(みわざ)

 

「<磁式・極光>」

 

 彼はそれを、“魔術”と呼称する。

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

「ハル! ハル!! 何が起きてる!?」

 

「な、何がと申されましても拙者にもすっぱりさっぱり!?」

 

「なんかすげぇフラグ踏んじまったか!? あの光ってる“輪っか”なんだよ!?」

 

「ぬ、ぬむむむむぅ!? 見た感じの推測ですが、生み出した“雷”に磁場をかけて(・・・・・・)超加速させているのかも――」

 

「ちょ、ちょっと待て! それってつまり、“荷電粒子砲”じゃねぇか!?」

 

「っ!? た、退避!! 皆様方、すぐに退避するでござるぅっ!!!」

 

 

 

 ―――――――――――――――――

 

 

 

 ハル号令の下、味方陣営が一気に下がり始めた。その行動に敵は呆気にとられ、一瞬追撃が遅れる。嬉しい誤算だ。

 

「そちらに恨みは無いが――私を敵に回してしまった不運を呪え」

 

 その宣言と共に、光の環から幾条もの“光線”が射出された(・・・・・)。狙いは、敵陣営全て(・・)。烈光が地面を、岩を、そして人を抉っていく(・・・・・)

 

 閃光。

 炸裂音。

 爆発音。

 衝撃。

 

 

「うわぁあああっ!!?」

 

「お母さーーん!?」

 

「にょもぉおおおおっ!!?」

 

「もう、駄目だぁあああっ!!!!」

 

 

 そして、悲鳴。

 なんか割と余裕ありそうな断末魔を残し、敵クランの人々は爆雷の中へ消えていった。

 

 残ったのは、幾つもの“クレーター”で凸凹になった地面のみ。

 

 

「……なになに!? 何が起こったの!? 俺っちはどうしたらいいの!?」

 

 

 ……それと、唯一ターゲットに入れなかったオーバタも。

 

 

 

「嘘だろ、おい!? フィールドが、まるまる吹き飛んじまった!!?」

 

「ロー●ス島戦記かと思ったら、スレ●ヤーズだったでござる……」

 

「オレ達、とんでもないことしでかしちゃったんじゃあ……」

 

 

 

 やや離れた場所で、ミナトとハルが目を丸くしている。仕方がない、この(わざ)を目の当たりにすれば、そうもなろう。強力過ぎる技故に、これまで披露するのは控えていたくらいなのだから。

 しかし彼等への説明は後回しだ。今はただ、逝った友人へと祈りを捧げる。

 

「サイゴウ……仇は取ったぞ」

 

「おお! 確かに見させて貰ったぜぇ! やっぱすげえ奴だな、お前さん!!」

 

「…………へ?」

 

 すぐ隣から返事が来た。見ればそこには死んだ筈の(・・・・・)サイゴウが立っていた。まるっきり無傷な姿で。

 驚いて声が出ないアスヴェルを尻目に、ミナトとサイゴウが会話を始めた。

 

「あ、おやっさん。もう帰ってきたのか」

 

「おうよ! この戦争を承諾しちまったのは俺だからなぁ。きっちり結末を見届けなきゃならねぇだろう? おかげで、まだデスペナ解除されてないがな!」

 

 どうも、彼等にとってサイゴウの復活は驚愕に値するものでは無い様子。

 

(ど、どゆこと? え? どゆこと?)

 

 混乱。錯乱。狼狽。動揺。頭の中がごった返しになっていると、

 

 

「あー、負けた負けた」

 

「何だよ、最後の光!? 説明と、賠償を請求する!!」

 

「嫌な予感したんだよなぁ、“エルケーニッヒ”って結構武闘派って話じゃん」

 

 

 今しがた吹き飛ばした敵陣営の人々まで姿を現す。こちらもダメージを受けている様子は無い。

 

「え? え? え? え?」

 

 予想だにしなかった事態に、アスヴェルの脳は完全にオーバーフローしていた。そこへ追い打ちをかけるようにミナトが詰め寄ってくる。

 

「おいアスヴェル! なんだよさっきの技! 後でしっかり説明して貰うからな!?」

 

「それは――それは、こっちの台詞だぁあああああああっ!!!!!?」

 

 魂の絶叫が草原に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆勇者一口(ではない)メモ

 “磁式・極光”

 アスヴェルが習得している“魔術”の中で、3番目に威力が高い。

 磁場によって雷を亜光速にまで超加速させ、光環を形成する術式――要するに荷電粒子砲。

 その()から放たれる光線が直撃すれば、魔王クラスの相手ですら一たまりも無い。

 射程距離も魔法に比較して飛躍的に長く、広範囲を薙ぎ払える。

 さらに、近接距離の相手には光の環を直接当てるという使い方ができる上、防御手段として環を用いることも可能という、攻防バランスの良い魔術。

 弱点は雷が十分な速度に達するまでそれなりに時間がかかること。

 

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