勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~   作:ぐうたら怪人Z

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幕間2
おお勇者よ、死んでしまうとは情けない!


 時刻は深夜。

 周囲に人の気配はない――しかしそれは時間帯の問題ではなく、場所の問題であろう。

 ここは“ゲーム”のフィールド内、その端にある洞窟の中。

 “ゲーム”は既に終わった以上、この場所を訪れる者などいる筈もない。

 ……一人の例外を除いて。

 

「――うっ――ぐっ――がっ――ぐぁっ――!」

 

 洞窟内に痛々しい呻ぎが響く。先程から延々と続いている声。誰かが藻掻き苦しんでいることの証左。

 

「――ぬっ――が、が、ぎっ――!」

 

 そこに居たのは――アスヴェルだった。頭を掻きむしりながら、激痛にのたうち回っている。昼に見せた余裕ぶった態度からはとても想像できない惨状。

 そんな様子をじっくりと観察して(・・・・・・・・・)からその“少女”は微笑みを浮かべる。

 金色の髪に赤い瞳を携えた、幻想的な姿。この世ならざる程の美貌は、見る者すべてに不吉な(・・・)印象を与えるだろう。そのおぞましさ(・・・・・)は直視することも憚られる。

 

 

「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない――なんちゃって」

 

 

 苦痛に悶える人間を前にしているとは思えない程、その声色はおどけていた。しかしアスヴェルがそれを咎めることはない――今の彼には、己のすぐ傍らに立つ“少女”に気付く余裕すらないのだから。

 

「……まだ死んではいないけど。放っておくと遠からずさっきの言葉が真実になりそうかな」

 

 “少女”は面白そうに笑顔を作り。

 

「そりゃね、やったこともない電子機器操作を片手間でやりながら敵と戦うなんて芸当を披露すれば、そうもなるよ。自前の脳による演算だけであのシステムをクラッキングするなんて、頭の神経が焼き切れておかしくない。よく我慢できたねぇ? いつ倒れてもおかしくない状態でずっと戦っていたのに。“管理室”の連中が馬鹿で助かったね」

 

 何がおかしいのか、ケラケラと声を出して笑った。

 

「それとも無茶を押し通せたことを褒めておくべきところだったかな? まあ、適切な判断だったとは思うよ。ああするしか勝ち目は無かったろうさ。

 だから単純に――そうなったのはキミのスペックが足らなかったせい」

 

 性能(スペック)不足。

 只人には不可能な偉業を成し遂げた勇者に対して、この“少女”は弱いと断じた。

 

「このまま死に至るまでキミの苦しむ様を眺めるのも悪くないけど――ボクに仕えるために(・・・・・・・・・)こんな所まで来た“健気さ”に免じて、今日のところは助けてあげよう。フフ、次は無いから気を付けるんだよ?」

 

 “少女”が手を青年にかざすと、彼の容態がみるみる快復していった。僅か数秒で、安らかに寝息をたてる程にまでなる。

 だがそんなアスヴェルの表情とは逆に、“少女”の顔が僅かに険しくなった。

 

「……やっぱり“コレ”には干渉できないか。ボクからキミを奪い取った(・・・・・)忌々しい力。何の役にも立たないゴミのような能力。“英雄宣告”だっけ? ま、名前なんてどうでもいいけど」

 

 アスヴェルの顔を覗き込む“少女”。

 

「2度とソレを使っちゃダメだよ? そんな力に頼らなくとも、キミは最強じゃないか……人間の中では(・・・・・・)

 

 彼の顔に手を沿える。

 

「さあ、初回はボーナスステージってことで随分と楽な相手(・・・・)だった訳だけど――次からはそうはいかない。せいぜい足掻いて欲しいな」

 

 そして静かに口づけをした。身体も密着させる。自分の胸の膨らみを敢えて彼の胸板に押し付けた。

 ……すぐには離れない。たっぷりと青年の温もりを感じてから、

 

「愛してるよアスヴェル。キミはこんなところで死んじゃダメ。もっと――絶望に塗れてから(・・・・・・・・)息絶えてくれないと、ね」

 

 死の宣告を残し、“少女”は姿を消した。

 

 

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