勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~   作:ぐうたら怪人Z

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【2】

「そうですぞぉ。アスヴェル殿のレベルや能力値を確認したいわけでして」

 

「レベル? 能力値?」

 

 ハルが説明してくれるのだが、分からない単語がさらに増えてしまった。見かねてミナトが口を挟んでくる。

 

「ハル、こいつその辺りのシステム分かってないみたいなんだ。<アイテムボックス>も知らなかったし。たぶん、そういう設定のNPCなんだろ」

 

「おお、そいつは失敬失敬!」

 

 彼女の言葉でハルは頭を下げてくるが――正直アスヴェルにとってはどちらの台詞もいまいち理解できないものであった。しかしいちいち聞き返していては話も進まないので、一先ずここは聞き役に徹することにする。

 

「レベルというのはですな、なんと言いますか――そう、その人の“強さ”を示す目安のことですぞ。そして能力値というのも、筋力とか敏捷性とか、そういうものを分かりやすく数値(パラメータ)化したものなのです」

 

「ほほう」

 

 ハルの説明で、なんとなく掴めてきた。

 

(自分の力を数値で知ることができる技術、ということだろうか。興味深いな)

 

 能力が数値化されるということは、自分の長所短所を具体的に把握できる、ということだ。敵を知り、己を知れば百戦危うからずという言葉もある通り、自己の性能を知ることはそれだけ重要なのである。その人物の総合的な強さが分かるというのも良い。人材を運用するにあたり、大いに役立つ。

 

「しかし残念だな、そのような技術があるなら、是非私も自分のレベルや能力値を確認してみたかったが……」

 

「それなら心配ご無用! アスヴェル殿のステータスも拙者の<スキル>で確認できますぞ!」

 

「おお、それは凄い――いや待て。

 ……他人の能力も見ることができるのか?」

 

「その通りですぞー。まあ、マナー違反ではありますが。人の能力値を見る際には、相手の許可をとるのが通例ですな」

 

「ふむふむ」

 

 つまり、マナーを気にしなければ覗き放題、ということだ。これは少々気を付けておかねばならない案件である。

 

「とりあえずは論より証拠! まずは拙者のステータスをお見せいたしましょうぞ!」

 

「それは有難い」

 

 “ステータス”とやらは気になるものの、いきなり自分の情報が公開されるのは不安が残る。

 

(私にも心の準備というものが必要だ)

 

 まずハルのステータスを見ることができれば、色々と心構えができる。彼も、そういう配慮で話を持ち掛けてくれたのだろう。やはりこの青年は“好い人”だ。

 

「……おいおい、ハル。何もそこまでしなくていいんじゃないか? 相手、NPCなんだぞ?」

 

 と、横からミナトの待ったがかかった。

 しかしハルは彼女を窘めるように、

 

「たとえNPCでも筋を通すのが道理というものですぞ、ミナト殿。どんな時でも礼儀正しく振る舞うのがネットで楽しく生きるコツです。

 ……まあ、メタ的なこと言ってしまえば、どこにイベントのフラグ(・・・・・・・・)があるか分かりませんしなぁ」

 

「へー、色々考えてたんだな」

 

「勿論でござるよー」

 

 会話の内容には理解しにくい単語が多いものの、ともあれ彼女も納得したようだ。

 

「ではでは、拙者の<ステータス>オープンにござるっ!」

 

「おー!」

 

 なんとなく拍手してみる。程なくして、<アイテムボックス>に似た“窓”がハルの傍に現れた。

 

「これが――?」

 

「ステータスにござる。さささ、確認してみて下され」

 

「ほほほう」

 

 興味津々で“窓”を除く。そこに書かれている文字を読んで――

 

 

 Name:ハル

 Lv:128

 Class

 Main:聖騎士 Lv23

 Sub:戦士 Lv30

    僧侶 Lv30

    セージ Lv25

    スカウト Lv20

 Str:205 Vit:311 Dex:105

 Int:150 Pow:188 Luc:75

 

 

(あ、あれ?)

 

 ――読めなかった(・・・・・・)。<アイテムボックス>の時と同じく、見たことも無い文字(・・・・・・・・・)が羅列されている。

 

「……あの、アスヴェル殿? その顔はひょっとして――」

 

「ああ、何が書いてあるのかさっぱり分からない。これ、何語なんだ?」

 

「おうふっ!」

 

 ハルがこちらの様子を察してくれたようだ。せっかく出してくれたステータスをアスヴェルが理解できないと知り、ショックを受けている。

 

「え? なんでなんで? オマエ、日本語読めないの? 言葉は通じてるじゃん」

 

 ミナトは不思議そうな顔。確かに彼女の言う通りだ。言葉は通じているのに文字が読めないというのはおかしい。アスヴェルとしても、彼等は自分と同じ言語を使っているものとばかり思っていた。

 

(どうなっているんだ、これは?)

 

 頭をひねっていると、

 

「あー、これはアレですかなぁ。このゲーム、会話に自動翻訳機能が付いていますから」

 

「……そういえばそんなのあったな。すっかり忘れてたぜ」

 

「アスヴェル殿は別の大陸から来たため、言葉は通じるけれど文字は読めないのですな! むふぅっ、ゲームのシステムをこのような形でシナリオに落とし込むとは! 拙者、感激しましたぞぉ!!」

 

「確かに――凝ってるよなぁ、このイベント。アスヴェルもNPCなのにやたら知能高いし」

 

 2人はどうやら答えに行き着いたらしい。とりあえず意味が分かる範囲でその会話をかみ砕くに、

 

「会話が自動的に翻訳される?」

 

「ええ、その通りですぞ」

 

「……なんだそれ」

 

 さらなる驚愕の事態が発覚した。この大陸では、異なる言語を持つ者同士でも、自由に会話ができるらしい。俄かに信じがたいが、あの文字の件を鑑みるに納得するしかない。

 

「しかし、どういう原理でそんなことが可能なんだ……?」

 

「んー、むー、それはですなぁ……あー、そうそう! 加護! 加護を受けておるのです!」

 

「加護? いったい何の加護だ?」

 

「えー、それはそのー。確かー……か、神様ですぞ! この大陸を管理している神様が、そういう加護を住民に齎したのです!」

 

「なんだってぇ!?」

 

 なんと便利な能力を! 太っ腹な神も居たものである。

 

(こちらの大陸にも来てくれないものだろうか?)

 

 ラグセレス大陸は幾つもの言語が入り乱れており、他国・他種族間での意思疎通が面倒なのである。神との交渉が無茶であることは承知しているが。

 

「……そういやあったな、そんなご都合設定。余りにも使われないもんだからすっかり忘れてたぜ」

 

「……死に設定ですからなぁ、“このゲームでPCが使える特殊能力は、全て神様の加護である”というのも。かくいう拙者も失念しかけておりました」

 

 アスベルが思案している最中、ミナトとハルはこそこそと会話していた。なんらかの相談をしているようだが、どうも要領を得ない内容だ。

 いったい何を話しているのか聞きたかったが、それよりも先にハルが喋りかけてきた。

 

「しかし、困りましたなぁ。これでは、拙者のステータスを見せていないも同じ。アスヴェル殿のステータスを確認する訳には――」

 

 頭を掻きながら、肉付きの良い青年は困ったような顔をする。確かに彼の言う通りだ、が。

 

「いや、構わない。君は約束を果たしてくれた。それをしっかり受け取れなかったのはこちらの問題であって、君の落ち度ではない」

 

 彼は誠意を見せたのだ。誠意には誠意で応えねばならない。

 

「おふぅ、感謝ですぞぉ! ではでは、ちと失敬して――<識別(アイデンティファイ)>!」

 

「む」

 

 一瞬、自信の身体が淡く光った。

 

(ハルが魔法を唱えた、のだろうか?)

 

 程なくして、ハルの時と同じように“窓”が宙に現れる。やはり自分では読めないが。

 

 

 Name:アスヴェル・ウィンシュタット

 Lv:?托シ抵

 Class:逾樊・

 Str:995 Vit:?托シ托 Dex:?托シ厄

 Int:?抵シ包 Pow:?難シ抵 Luc:?抵シ抵

 

 

(どんな塩梅なんだ?)

 

 まさか弱い、ということは無い――筈。

 

(しかしひょっとしたら。いや、万に一つの確率でもしかすると…………おや?)

 

 一抹の不安を抱えていると、ハルとミナトが難しい顔をしていることに気付く。

 

「どうしたんだ?」

 

「ぬむむむむむ、あー、アスヴェル殿のステータスなんですが」

 

「……なんだこれ、バグってんのか? 全然分かんねぇ」

 

「え?」

 

 話を聞くに、どうやらステータスの表記がおかしくなっているらしい。2人にはアスヴェルのレベルも能力値も分からなかったのだとか。

 

「――ふむ。どうやら私を数値化することは君達の技術をもってしても不可能だということだな」

 

「なにドヤ顔しながら語ってんだ」

 

 自分が解析不能と知って、ちょっといい気になっているアスヴェルである。ミナトの方は少々不機嫌なようだが。

 

「いやぁ、無駄足を踏ませてしまって申し訳ありませんですなぁ。ま、ここではもうやることありませんし、ちゃちゃっとこのダンジョンを出ることにいたしましょう」

 

「ああ、そうしよう」

 

 そんなハルの台詞でその場は纏まり、3人は遺跡の出口へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「で、どう思うよ、ハル?」

 

「アスヴェル殿のことですな。正直、測りかねておりますが――」

 

「ステータスが分かれば、少しは推測できたのにー。あれって、やっぱ隠蔽されてたのか?」

 

「でしょうなぁ。筋力(ストレングス)だけは見れましたので――何か“フラグ”を達成することで、他の能力値も開けるのかもしれませんぞ」

 

「アイツの戦闘を見たのが、その“フラグ”かな?

 ……ヌエを一発で倒してたから薄々気付いちゃいたけど、とんでもねぇ数値してたな。カンスト一歩手前じゃねぇか」

 

「一点特化で能力値を上げても、理論上せいぜい400~500程度にしかなりませんからなぁ。あっさり限界突破してくるとは、流石は重要NPC様ですぞ!」

 

「オレはそういうの好きじゃねぇんだよなー。なんかプレイヤー置いてきぼりって感じがして」

 

「はっはっは、ミナト殿はガチな――もとい、公平(フェア)なプレイが好きですからな。ま、運営が設定したことですから、アスヴェル殿に文句を言うのは筋違いですぞ」

 

「分かってるよ!

 ……やたらとボディタッチしてくることには文句言いたいけど」

 

「好かれておりますなぁ、ミナト殿は。しかし話戻りますが――拙者、アスヴェル殿に関してかなり大がかりなイベントの匂いがしておりますぞ!」

 

「大がかりなイベント?」

 

「ええ、そうです。ずばり、新たな世界(サーバ)の解放と予想しました!」

 

「新しい世界!?」

 

「そうですぞぉ! アスヴェル殿の語ったラグセレス大陸というのが、次の冒険の舞台になるのではないかと!!」

 

「それありそう! じゃあ、アイツとのイベントをこなしていくと、その大陸に行く手段が見つかったり?」

 

「きっとそうですぞ! 新しいアイテムやクラス、モンスターもわんさか追加されたり。ふっふっふぅ、心が滾りますぞぉ!!」

 

「他に似たような話は聞かないし――オレ達が一番乗りってことだよな? それどころか下手すると、オレ達がこのイベントのメインプレイヤー(主役)!?」

 

「おおおお、滾って参りましたぁ!!」

 

「おぉっし! こりゃなにがなんでもイベント成功させなきゃな!! やるぞ、ハル!!」

 

「了解ですぞ、ミナト殿!!」

 

 

 

 

 

◆勇者一口メモ

 割とちょろい。

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