「落ち着いてください。これにはわけがあるんです」
「日刊エヴリー! なんでお前はそんなに落ち着いとるんぢゃ! 柔が風ミドリと密会しておるではないか」
「これについては柔さんから話は聞いてます。二人には何もないんです。この後すぐに友人たちが来たそうですから。ただ、問題なのはこれを撮ったのが誰かと言うことなんです」
「こやつが撮ったんぢゃろ!」
「いえ、野波はこの日、取材で東京を離れていました。だから写真を撮るのは不可能なんです」
「なんでそんなことまで知ってるんだ?」
「さて、何ででしょう。まあ、少し考えればわかると思うけど」
「加賀さんか……」
「正解。で、この写真の出所は?」
「言えない。ネタ元は言えないことぐらいわかってるだろう」
「まあね。でも言わないとここから離れられないぞ」
「脅しですか?」
「取引だよ」
野波は黙り込む。耕作は次の一手を打つ。
「会社を休んでまで、NYに来た理由は?」
「聞いてるんでしょう。母が倒れて」
「君の母親は元気だったよ」
「なんであんたにわかるんだ?」
「さて何ででしょうか。でもそれも事実。一つ言えるのは嘘をついて帰国し、母親には休暇だと言っていること。俺は会社の同僚だと言ったら快く家に入れてくれたし、話もしてくれた。だから俺が君が嘘をついていることを母親に話したらどんなに悲しむか」
野波はNYに来た初日に、母親に会いに行っている。その時はいつものように迎え入れてくれて変わった様子はなかった。耕作が何をどこまで知っているのかわからない中、下手なことを言うのは得策じゃないと感じた。
「僕はこの写真のネタ元と無言電話は同じ人だと思う」
「なぜぢゃ?」
「危険な男だと思ったから。それは直感じゃないです。目で見てそう誰でも思います」
「で、誰なんだ? 無言電話もかかって来てて、これからエスカレートする可能性だってあるのに」
「言っておくが、無言電話だけぢゃないからの」
「他にもあるんですか?」
「怪文書が送られてきた。柔宛ての手紙はわしがチェックしてるんぢゃが、同じ人物からの手紙が頻繁に来るようになって内容も次第に不気味なものになっていっての」
「そのこと柔さんは?」
「知るわけなかろう。そのためにわしが水際で食い止めておるんぢゃからな」
耕作はもしかしてというか、ほぼ確信を持って聞いた。
「あの滋悟郎さん。電話ってもしかして変えました?」
「なんぢゃ、気づいたのか」
「ここ数ヶ月全然つながらないじゃないですか。それに今の聞けば誰だって気づきますよ」
「そうぢゃ。ぢゃがな、元々自宅の電話番号で使ってた方を接骨院の方に使って、新しい番号を自宅に変えたんぢゃ」
「そのこと柔さんは?」
「知るわけなかろう」
「滋悟郎さんの心配は分かりますが、連絡つかなくなったってわかったらみんな心配しますよ」
「何を言っておる。ノッポのねえちゃんや虎滋郎には伝えておる」
「鶴亀トラベルは?」
「教えとらん。接骨院の方にかかるんぢゃから問題ないぢゃろう」
「そりゃそうですけど」
「それはいい対策ですよ」
「どういうことだ?」
「付きまとったり嫌がらせをするようなおかしなやつは昔から少なからずどこにでもいたんですが、彼らは電話番号を変えて拒否されたり引っ越しなんかされると逆上して何をするか分かりませんから。自分が否定された気がして、好きな気持ちが憎しみに変わるらしいんですよ」
「危ない奴もいたもんだな」
「そこら辺の男相手なら柔の方が強いに決まっておるが、常軌を逸した変態は何をするか分からんからのわしと玉緒さんで警戒はしておる」
「でも当の本人が知らないんじゃ……」
「怖がらせて下手に避けるよりも、知り合いみたいにしてた方がいいかもしれません」
「ん? ということはそいつは柔さんの知り合いってことか?」
「ええ、まあ……」
「吐け! 誰だ!」
二人に詰め寄られる野波。だが、彼も目的があってNYに来た。それを忘れてはいなかった。
「教えます。でも条件があります」
「なんぢゃ」
「猪熊さんに会って欲しい人がいます」
「わしにか?」
「いえ、お孫さんの方に……」
「柔にか。誰ぢゃ」
「それは……」
野波の真剣な表情に耕作は察しがついていた。
「ラスティじゃないか?」