その後、食事をしながら最近の仕事や恋愛の話題になり、短大時代に戻ったような楽しい時間を過ごした。そしてどういうわけかまた柔道の話題に戻って南田が最後の試合のことを持ち出した。
「ねえ、あの卒業記念試合覚えてる? 松田さんが滋悟郎おじいちゃんに騙されてすごい強いフランスチーム連れて来ちゃって、すごい反省してたわ。相手のデータまでくれて必死だった」
「あの時はナンダが松田さんをすごい剣幕で責めてたわよね。ああいうところが男にモテないところなのよ」
「うるさい! 言うべきことは言わないと男は分からないのよ」
「松田さんは結局、猪熊さんが西海大に編入することを望んでいたけど、あたしたちの頑張りや猪熊さんの気持ちを知って協力してくれましたよね」
「あーなんだかんだで結局、松田さんっていい人だったのよね。マスコミの人なのにお人好しって言うか、汚い部分がないって言うか。あたし、この業界にいるからわかるんだけど、ニコニコしていいことばかり言う人って信用できないのよね。松田さん、全然タイプじゃないけど1回ぐらい……」
「マリリン! 何言おうとしてるの! それに松田さんがあんたなんかになびくわけないじゃない。柔ちゃん一筋なのよ!」
「そーいうナンダも狙ってたりして!」
「バカ言うな! ありえないわ。柔ちゃん安心してね。そんなこと微塵も考えてないから」
「う、うん」
そう言いながらも何だか心配になる。今更、ここにいる友達が恋のライバルになるのは何だか変な感じだからできればやめてほしい。
「色々ありましたが、どれもいい思い出です。こんなあたしが柔道やってしかも試合に勝ったなんて言うと、職場のみなさんも驚いてくれてひ弱そうで気を使われなくてすむんですよ」
「そうよ。あたしも警察学校では基礎をやってたから柔道は楽勝だったし。その柔道通じていい出会いだってあったわ」
「あたしも柔道には感謝してるのよ。今のあたしがあるのはやっぱり短大で柔道やってたおかげだもの。胸が大きいだけじゃなくて引き締まったお尻とお腹がより体の線を強調してね……」
「もーいいから黙ってマリリン」
「あたしも! 柔道やってたっていうと沢山食べても仕方ないって思われて、お菓子貰えるのよ」
「みんな短大の1年半の柔道部の思い出や経験が今も何かの役に立ってるんだね。あたしはそれだけでもうれしいわ」
「富士子さんはその最たる人だもんね。結婚もオリンピックのメダルも手にしたし。柔ちゃんは幸運の女神よね」
「だから今度は猪熊さんが幸せになってください」
「松田さんと!」
小百合もさすがに食べる手を止めた。するとマリリンが席を立った。
「ちょっとトイレに行ってくるわ~」