貴使「どうも、神山貴使です。万物創造ねえ……汎用性は高いと思うけど、その分デメリットも多そうだよな」
政実「だね。けど、使いこなせれば色々な場面で役立つはずだし、欲しい事は欲しいかな」
貴使「そっか。さてと……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・貴使「それでは、第4話をどうぞ」
「ん……」
外から聞こえる小鳥の
「ふあ……朝、か……」
口から欠伸が漏れる中、目を擦りながら独り言ちていたその時、俺はふとある事を思い出した。
「……そういえば、昨日の夜に日記を書くのを忘れてたな。一応、人間の時の小さい頃からの習慣だったわけだし、今更だけど書いてしまおうか」
そして、布団から体を出して文机に近づいた後、文机の一番上の引き出しから新品の日記帳と筆と
「おはよう、皆」
「はい、おはようございます、貴使様」
『おはようございます、貴使様』
「うん。あ、そうだ……すまないけど、一つ頼み事をしても良いかな?」
「はい、なんなりと!」
「それじゃあ……今から昨夜書かなかった分の日記を書くんだけど、墨を
「はい、畏まりました! よし……みんな、行こう!」
『おー!』
綿玉の内の一体である
「お、お待たせしました……貴使様……」
「ありがとう、皆。これで墨を擦る事が出来るよ」
お礼を言いながら俺は桶を受け取った後、それを文机の横へと置き、少し疲れた様子の水亀達をそっと撫でた。そして、それによって水亀達がほわんとした表情になっているのを見て、心が癒やされていくのを感じた後、俺は文机ヘと向かい、墨を摺ってから昨日の出来事を日記帳に書いていった。
「……よし、こんな感じかな。ところで……皆、ちょっと質問しても良いか?」
「はい、もちろんです」
「水亀達はたしか式神のようなモノなんだよな?」
「はい。私達はさる陰陽師によって打たれた式でして、天乃実豊尊様がその陰陽師の命をお救いになった際、そのお礼として私達がこうして天乃実豊尊様や皆様のお世話係として贈られたのです」
「なるほど……って事は、天乃実豊尊様や俺達神使が寝静まった夜には、物語に出てくる式神みたいに紙に戻ってるのか?」
「いえ。こちらへ来た初日に私達も天乃実豊尊様より神力を分け与えられましたので、それを糧として常に動き続ける事が出来ます。もちろん、それを回復するために睡眠や食事は取っていますが、基本的には三日三晩動き続ける事が出来ます」
「へえ……そうなのか。因みに、綿玉達の力って、高める事は出来るのか?」
「はい、可能です。因みに、一時的にではありますが、天乃実豊尊様や神使の皆様と神力を同期させれば、その神力の一部を私達が使う事も出来ますし、その『能力』も使う事が出来ます」
「『能力』……?」
「はい。他の神使の方については分かりませんが、春蛇様達にはそれぞれ固有の『能力』がございまして、神使の皆様と神力を同期させれば、私達もそれを使う事が出来ます」
「なるほど……それじゃあ俺にも『能力』があるのかな?」
「あるはずですが……貴使様の『能力』は私達には分かりかねますので、天乃実豊尊様に『能力』の鑑定をして頂くか貴使様ご自身で目覚めさせて頂くしかありません」
「そっか……まあ、それなら仕方ないし、後で天乃実豊尊様にも話を聞いてみるよ」
そう言いながら水亀達に微笑みかけていたその時、突然腹から大きな音が鳴り、俺は水亀達を見ながら苦笑いを浮かべた。
「あはは……悪い悪い、流石に腹が減ってたみたいだ」
「ふふ……お起きになったばかりですので仕方ありませんよ」
「先程、お台所で料理係の仲間達が朝ご飯が出来たと言っておりましたので、今から居間へとお向かいになればちょうどよろしいかと」
「うん、それじゃあそうしようかな。あ、それと……桶はまだ使うから、そのままにしておいてくれるか?」
「畏まりました。お部屋の掃除はいかがいたしましょう?」
「うーん……もう学校には通わないわけだし、後で自分でやるよ」
「畏まりました。それでは、いってらっしゃいませ」
『いってらっしゃいませ、貴使様』
「うん、行ってきます」
恭しく礼をする水亀達に返事をした後、俺は部屋を出て、そのまま居間へと向かった。そして居間に着くと、そこには炬燵に入りながら話をしている白衣に白紋姿の天乃実豊尊様と白衣に紫色の袴姿の春蛇さん、巫女服姿の夏狐さんと秋兎さんの姿があった。
「皆さん、おはようございます」
「……あ、おはようございます、貴使君」
「……おはよう、貴使」
「貴使、おはよう」
「おはようございます、貴使君!」
天乃実豊尊様と先輩神使の皆さんが返事をしてくれた後、俺はそれに対してニコリと笑いながら頷き、先輩神使の一人である秋兎さんの隣に座った。すると、向かい側に座っている天乃実豊尊様はニコッと笑いながら俺に話し掛けてきた。
「貴使君、先程綿玉達から聞きましたが、君のお世話係に任命した綿玉達に名前を付けて下さったそうですね」
「はい。ただ綿玉と呼ぶのは味気ないので、彼らだけでも何か名前があった方が良いかなと思ったので、特徴から名前を付けてみたんです」
「ふふ、そうでしたか。彼らもその名前をとても気に入ってるようでしたので、もし他の綿玉達からも要望がありましたら、その時は付けてもらっても良いですか?」
「はい、もちろんです」
「……あ、それならその時は私のお世話係の子達もお願いしても良いですか? 今朝、お世話係の子達がスゴく羨ましそうに話をしていたので……」
「あら、それならウチの子達もお願いしようかしら?」
「……出来そうなら私のお世話係も頼む」
「はい、任せて下さい!」
頼られる方向性が何だか違う気もするけど……まあ、頼られるのは悪い事では無いし、その時が来たら水亀達の時みたいに精一杯考えてみよう。
そんな事を考えながら少しだけ誇らしさを感じていた時、「皆様、お待たせ致しました」と言いながら配膳係だと思われる綿玉達が協力しながら一人分の朝食が載ったお盆を1枚ずつ居間へと運んでくるのが見え、俺はスッと立ち上がった。そして綿玉達が運んできたお盆をそっと受け取った。
「あ……」
「俺も手伝うよ。この中では新参だし、お前達だって流石に重いだろ?」
「あ、ありがとうございます……」
「助かります……」
「どういたしまして」
綿玉達のお礼の言葉に対して微笑みかけながら答えた後、俺は綿玉達と協力しながら朝食を次々と炬燵の天板の上へと並べていった。そして数分後、ペコリと頭を下げてから空になったお盆を運んでいく綿玉達に軽く手を挙げて応え、俺が再び秋兎の隣に座ると、天乃実豊尊様は再びニコッと笑いながら話し掛けてきた。
「貴使君、実に自然に手伝いを始めていましたが、もしや人間だった頃もご両親の配膳のお手伝いをしていらしたんですか?」
「あ、はい。中学生くらいからはこの
「ふふ、そうでしたか。ですが、先程の綿玉達のように手伝ってくれる事はありがたいわけですから、ご両親も本当は感謝していたと思いますよ」
「そう……だったら良いですね……」
「はい。さて……それでは、そろそろ頂きましょうか。では……いただきます」
『いただきます』
声を揃えていただきますの挨拶をした後、俺達は朝食を食べ始めた。今朝の朝食はとても脂ののった焼き鮭とほうれん草のお浸し、ホカホカと湯気を立てながらピカピカと輝く白ご飯に油揚にわかめの味噌汁、とメニューだけ見れば一般的な和食だったが、そのどれもがとても美味しく香りもとても良い物だった。
「……昨日も思いましたけど、スゴく美味しいですね」
「ふふ、これらは全て綿玉達が作っていますから、そう言ってもらえて彼らも誇らしいでしょうね」
「そうかもしれませんね。ところで、これらの料理の食材はどこから仕入れているんですか?」
「仕入れ、というよりは届けてもらっていると言うのが正しいですね。大部分はひと月に一度高天原から届けてもらっていますが、他にも以前あるきっかけで出会って力を貸した事がある人間や妖怪や友である神々達の神使、他にも山に棲む獣の方々からも届けてもらっていますよ」
「そんなに……」
「もっとも、その方々もこの前いらっしゃったばかりなので、すぐにはお会いできないかもしれませんが、いらっしゃった時には貴使君にも紹介しますね」
「はい。あ、そうだ……天乃実豊尊様、さっき水亀達から春蛇さん達には固有の『能力』があると聞いたんですが、俺にもそういうのはあるんでしょうか?」
「あるはずですが……そういえば、まだ鑑定を行っていませんでしたね。では、ちょっと見てみましょうか」
そう言った瞬間、天乃実豊尊様の目の色がスーッと薄くなっていくと同時に、俺の胸の辺りから三つの光輝く水晶がゆっくりと現れた。
「天乃実豊尊様……これは一体……?」
「これは『
「え、そうなんですか?」
「はい、『能力』はあっても二つまでしかありませんから。ですが、三つあるのは間違いないですし、これは君が人間だった事が理由なのかもしれませんね」
「ですね……」
つまり、俺の『能力』は狼の姿としての二つの『能力』の他に人間としての『能力』があるわけか。でも、一体どんな『能力』なんだろう……?
そんな事を考えながら天乃実豊尊様が『能力』の鑑定をする様子を先輩神使の皆さんと一緒に見守る事数分、天乃実豊尊様の目の色が戻ると同時に力晶は俺の中へと戻り、天乃実豊尊様はそれを見届けた後、ニコリと笑いながら静かに口を開いた。
「貴使君、君の『能力』が分かりましたよ。どうやら君には、『走力強化』と『嗅覚強化』、『気持ちの共有』の『能力』があるようです」
「『走力強化』と『嗅覚強化』はまだ分かりますけど、『気持ちの共有』っていうのは、具体的にはどういう『能力』なんでしょうか?」
「そうですね……具体的に言うなら、対象に触れる事で、相手の表層の気持ちから心の奥底に秘められた気持ちまでが分かり、それとは逆に自分の気持ちを相手に伝える事が出来る『能力』といったところでしょうか」
「なるほど……」
ようするに、超能力のサイコメトリーとテレパシーを足したような『能力』って事か。信仰集めをする上ではかなり役立つけど、基本的には心の奥底の気持ちなんて知られたくない物だろうし、余程の理由が無い限りは使わない方が良いだろうな。
『気持ちの共有』の『能力』についてそう考えた後、俺は春蛇さん達に話し掛けた。
「ところで、春蛇さん達の『能力』はどんな物なんですか?」
「……私は『軟体化』と『透視』の『能力』を持っている」
「私は『
「あわわっ! それくらい自分で話します! えっと……私は『聴力強化』と『跳躍力強化』の能力を持っています」
「ふむ……となると、『能力』はやっぱりそれぞれの動物の姿に関する物になるんですね」
「そうだな……因みに、『能力』を使う時は自分が使いたい『能力』を思い浮かべる事で、どんな時にでも使う事が出来る。」
「貴使の場合は、『速く走る自分』を思い浮かべる事で『走力強化』の『能力』が、『誰かと自分の気持ちを繋げたい自分』を思い浮かべる事で『気持ちの共有』の『能力』が使える感じね」
「最初は慣れないかもしれませんけど、使っている内に何となくは分かってくると思うので、色々試してみて下さいね」
「はい、分かりました」
先輩神使達からのありがたいアドバイスを貰った後、俺はこれからの事や『能力』の事について考えながら再び朝食を食べ始めた。
「さーて、それじゃあ今日も
朝食を食べ終え、綿玉達と協力して食器を下げ終えた後、俺は狩衣に草履といった格好で拝殿の前に立っていた。本来なら死んでるはずの俺が動物の姿にならずにこうして表に出てくるのはあまり良くないのかもしれないが、天乃実豊尊様曰く、神力や妖力を持っているモノは、その『力』を薄く広げてそれを纏うようにする事で、そういう『力』を持ったモノ以外から姿を隠せるらしく、いざとなったらそれを使えば問題ないと判断したため、こうして表に出て来たのだった。
「まあ、天乃実豊尊様から話を聞いただけで、まだ試して無いから何とも言えないけど、後で詩織や
そう言いながらいつもの要領で掃除用具の準備を始めるため、用具庫へ向けて歩き始めたその時、「あの……」と突然背後から声を掛けられ、「はい?」と言いながら背後を振り返った瞬間、俺はその人の姿に言葉を失った。
え……なんで、この人が……?
その人の姿に俺が困惑する中、その人――俺の従姉妹である
「
政実「第4話、いかがでしたでしょうか」
貴使「『能力』の存在に凛姉さんの登場か……これは次の回からも色々詰め込まれていきそうだな」
政実「そうなるね。だけど、読みやすさや矛盾の無さが無いように気をつけながらどうにかしていくよ」
貴使「分かった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
貴使「ああ」
政実・貴使「それでは、また次回」