クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
お気に入り10人突破!そして第10話突破しました!
基本前書きはこの様なお祝いの言葉の為に使わせていただきます。
「アーキバス!グレイブ!各機エンジン始動!ハウザーは弾薬装填を急げ!」
発着デッキではメイが各員に指示を出していた。
機体を発進させる為の準備が急ピッチで進められている。
そしてそこにライダースーツに着替えた第一中隊のメンバーが集まった。
「シルフィー。ナオミ。アンジュ。三人はグレイブ。ココとミランダはハウザーに乗って」
五人の目の前には白色の機体が置かれていた。新兵用の機体である。自分の機体の場所を指差し、
それぞれ機体に乗り込む。
「これって、あの時の」
アンジュは例のシュミレーター訓練を思い出した。
そこにゾーラ隊長が激励の言葉を送った。
「生娘ども初陣だ!お前達は最後列から援護!隊列を乱さず落ち着いて状況に対処しろ!訓練どうりにやれば死ぬことはない!!」
「イエス・マム!」
やがて発進準備が完了したらしい。全員が風防の為にバイザーを装着する。
「よし!ゾーラ隊!発進するぞ!!」
次の瞬間、それぞれの機体は発進した。機体は隊列を組んで、空を飛行をしている。
「シンギュラーまでの距離!一万!」
「よし。各機戦闘態勢!フォーメーションを組め!」
そう言うと各機はそれぞれの相手とフォーメーションを組んだ。
「アンジュ。シルフィー。二人は私と組むわよ」
サリアの機体が二人に寄ってきた。だが次の瞬間、突然アンジュが隊列から外れた。
「アンジュ機、離脱!」
「離脱ゥ!?」
オペレーターからの通信に皆が驚く。直ぐにサリアがその後を追いかけた。少ししてシルフィーもその後を追いかける。
「アンジュ。そろそろ戦闘空域よ。戻りなさい」
サリアが警告を送る。しかしアンジュは止まらない。機体は尚も加速を続けている。
「アンジュ!戻りなさい!!」
「私の名はアンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです!私は私のいるべき世界、ミスルギ皇国帰ります!!」
「二人とも。戦闘空域に戻らなくていいの!?」
二人を追いかける形でシルフィーがやって来た。
「シルフィー。貴女まで来なくていいのに!それよりアンジュ!止まりなさい!さもないとこの場で
貴女を射殺するわ!!」
サリアが銃を取り出しアンジュに向けた。メイルライダーの中で、戦う前から敵に恐れを為して逃げる。またはアンジュの様に逃亡を図るものがいる。それらに対してはまず説得をする。しかし説得が
失敗した場合は味方が射殺する。それが決まりとなっているらしい。
「・・・」
サリアが照準を合わせようとする。一度だけ頭に
照準が合ったがやめた。出来るだけ急所を外すように調整している。狙いは脚だ。
「アンジュリーゼ様ぁ!」
突然背後から声が聞こえた。振り返るとそこには
ココがいた。
「私も連れて行ってください。魔法の国に!」
「何言ってるのココ!」
「ダメだよココ!戻って!」
ココの後ろにミランダとナオミが来ている。どうやら二人はココを連れ戻そうとしている様だ。
魔法の国。前回アンジュはレターセットを買うため、二人にジャスミンモールの使い方を尋ねた。
そしてその時にミスルギ皇国について話したのだ。
望めば何でも手に入る。美味しいものが食べられる。ココからしたら正にそれは魔法の国の世界である。
こうして六機が一箇所に纏まっている。そして最悪のタイミングで最悪の出来事がついに発生した。
「シンギュラー!開きます!」
次の瞬間、六人の頭上に穴が開かれた。皆が上を向いた。するとレーザーが上空から降り注いできた。
そしてそれはココの機体に直撃した。直撃した
瞬間、ココの身体から鮮血が流れ、そして宙に飛び散った。鮮血の一部が近くにいた機体に付着する。
ココの機体は海面へと落下した。海に沈んでから数秒後、沈んだ付近が光った。機体に搭載された燃料が爆発したのだろう。
「嘘・・・だよね・・・」
「ココ?・・・ココ!?ココ!!」
当初ナオミとミランダは事態が飲み込めなかった。ついさっきまで普通に会話をしていた存在。友達。それが目の前から突然消え去った。
そして上空に開かれた穴からそいつらは現れた。
「なに・・・あれ・・・」
巨大なトカゲに翼が生えた存在。次元を超えてこの世界に進行する存在。
それは次元を超えてこの世界に進行してくる敵、
ドラゴンだ。それなりの数が揃っている。ドラゴンはまずその場にいた五人目掛けて突っ込んできた。
「全員散開するわよ!」
サリアの掛け声がなくとも皆が反射的にドラゴンと距離を取っていた。しかし直後に、オペレーターから恐るべき内容の通信が送られてきた。
「シンギュラーが二箇所に開かれました!」
「何ですって!?」
シンギュラーが二箇所同時に開かれた。普段なら
こんな事は滅多に起こらない。今回その普段滅多に起きない出来事が起きてしまったのだ。
更に最悪な事に開かれたもう一つは、サリア達の
現在位置真逆のゾーラ隊長の現在位置付近なのだ。
言うなればこれは、戦力を分散されたと言える。
「サリア!聞こえるか!」
サリア宛にゾーラ隊長から通信が入った。
「なんでしょう隊長!?」
「こっちにもドラゴンの大群が現れた。悪いがそちらの救援に回せる戦略がない!そっちのメンバーの指揮はお前に任せる!」
「アンジュの罰は?」
「後にしろ!今は生き残る事を考えろ!!」
「了解」
サリアは銃をしまった。
「総員聞け。ゾーラだ。新兵教育は中止する!まずはカトンボどもを蹴散らし、制空権の確保に努める!」
「イエス・マム!」
そういうとゾーラ隊長。そしてヒルダとロザリーとクリス。エルシャとヴィヴィアンは機体を駆逐形態へと変形。ドラゴン達をライフルで撃ち落としていった。
こちらはシルフィー達。
「四人とも!駆逐形態に変形して!隊長達が来るまでの間、私達で生き残る為に戦うわよ!」
サリアとシルフィーは機体を変形させた。しかしサリアの言葉も、今のミランダとナオミには届いていなかった。
「ココ!!ココ!!ココォ!!」
「嘘だよね・・・ココ!返事してよ!!」
「ミランダ!ナオミ!ココの事は今は忘れなさい!でないと次に死ぬのは貴女達になるのよ!!」
「サリア・・・」
彼女の言っている事は最もだ。戦場での迷いは死に直結する。
二人はバイザーを上にあげ、目に溜まっていた涙を拭うと、直ぐにバイザーを降ろした。そして駆逐形態に変形しようとした矢先、再びアンジュが戦線を離脱した。
「アンジュ!何処に行くの!?」
機体を変形させようとしていたミランダだが、中止し、慌ててアンジュの後を追いかけた。
「私は!ミスルギ皇国に帰ります!!」
「何を言っているの!?機体の燃料は一回の戦闘分しか搭載されていないんだよ!?」
そうなのだ。パラメイルは基本燃料を満タンに搭載することなどない。理由は簡単、アンジュの様な
脱走防止だ。アンジュの様な新兵の機体では精々十分が限界だろう。このまま飛んでいけば間違いなく燃料切れで海に墜落するのが目に見えている。
「構いません!あのような場所に戻らないで済むなら!後は自力でなんとかします!!」
なんと身勝手な理屈だろうか。
そんな中ミランダはココの事を考えていた。ついさっきまで平然といた友達。それが今はもういない。この空で、その命が簡単に消えてしまった。
(ココの馬鹿・・・何夢見たんだよ・・・何が魔法の国だよ・・・)
(私達は、ノーマなんだぞ・・・!)
「ミランダ!上!!」
ナオミの通信でミランダは我に帰った。上を見る。するとドラゴンが目前にまで機体に接近していた。
「ひっ!」
次の瞬間、ミランダの身体はパラメイルから放り投げ出された。パラメイルとは飛翔形態時はコックピットが剥き出しなのだ。そしてコックピットに体を繋ぐシートベルトなどはない。
「助け・・・」
【ガブッ】
放り投げ出されたミランダの身体。次の瞬間、その身体を餌とするかの様にドラゴン達が集まってきた。ミランダはドラゴン達によって喰われた。そしてその光景を四人は見ていた。
「そんな・・・ミランダ・・・ミランダ!!」
ナオミは必至に友の名前を叫ぶ。しかし友からは何一つの返事は返ってこない。
ドラゴンはナオミ目掛けて襲いかかってきた。サリアとシルフィーの機体が、ライフルを使いドラゴンを撃ち落とした。
「ナオミ!貴女まで死ぬ気!?」
「!!」
「今は戦いなさいナオミ!生き延びる為に!!」
ナオミは機体を変形させた。今すぐ泣き出したい気持ちを必死に押し殺して。涙目でよく見えないながらも、頑張ってドラゴン達を撃ち墜とそうと狙った。
こうしてシルフィー達もドラゴンと戦いだした。
だがアンジュだけは違っていた。
「いや・・・いやぁぁぁぁぁ!!」
アンジュは悲鳴をあげ、その場から離れた。向かった先はゾーラ隊長達のいるエリアだ。そのエリアのドラゴンがアンジュに迫って来た。
それらをアンジュは滅茶苦茶な動きで避ける。途中で駆逐形態にも変形したが攻撃はしない。ただ恐怖から逃げ、そして避けるだけだ。
追いかけようにも、こちらもドラゴンの掃討で精一杯でそれどころではない。
こちらのシンギュラーに現れたドラゴンの殲滅が終わった頃。既にアンジュの姿は目視では捉えられなかった。
「ナオミ!シルフィー!急いでアンジュの後を追うわよ!あのままじゃアンジュが危険よ!」
「イエス・マム!」
そうして三人はアンジュの後を追いかけた。
その頃ゾーラ隊長達の所に現れたドラゴンは残り
一匹となっていた。しかしそのドラゴンは大きい。
ガレオン級だ。
「後はあんただけだよ!デカブツ!各機、凍結バレット装填!」
凍結バレット。パラメイルの両腕部に装備される
切り札の武器だ。主に大型ドラゴンの撃退用に使われる。
その凍結力はかなりのもので放った凍結弾が海面に命中しようものなら辺り一帯の水が凍りつき、氷原へと変わり果ててしまう程だ。
「こいつでカチンコチンだ!!」
凍結バレットがドラゴンに命中した。命中部分から氷の柱が生えてきた。だがその氷の柱はものの見事に砕け散った。どうやら傷口や急所などに当てないと本来の破壊力を出す事は出来ないらしい。
他の機体も凍結バレットを撃ち込む。致命傷とまでは行っていないが決してノーダメージという訳ではない。
「よし!こいつでトドメだ!」
ゾーラ隊長が凍結バレットを撃ち込もうとした。
その時だった。
「イヤァァァァァァ!!」
アンジュの機体がゾーラ隊長の機体に組みついた。
「何をするアンジュ!離れないか!」
「助けてください!助けてください!!」
しかしアンジュは完全に周りが見えていない。皇室にいた時には一切感じる事のなかった感覚。死と隣り合わせという恐怖。それらの感覚が、今のアンジュを支配していた。
「ゾーラ!」
ヒルダが叫ぶ。大型ドラゴンが二人の機体目掛けて迫ってきた。ガレオン級の尻尾が振り下ろされる。
「キャァァァ!!」
次の瞬間、二人の機体はドラゴンによって、海面目指して叩きつけられた。
「おい!あいつやってくるぞ!」
皆で凍結バレットを放とうとした。しかし全員の
凍結バレットの残弾はゼロであった。
ドラゴンは尚も迫ってきている。そのドラゴンは
ナオミのグレイブ目掛けて突き進んだ。
「ナオミ!凍結バレットの装填を!!」
しかしナオミの機体は動こうとしなかった。
「ナオミ!何やってるの!?早く用意しなさい!」
しかしナオミは動かないでいた。いや、動けないでいた。あの時の記憶がフラッシュバックしている。
実機テストの際、ガレオン級に叩き落とされた記憶。それらが今恐怖として蘇り、それによってナオミの体は硬直していた。
「駄目だ・・・倒さないと、戦わないと・・・じゃないと今度こそ・・・」
必死に心を奮い立たせ、体を動かそうとする。だが身体は脳の発する命令を聞こうとしなかった。
「ナオミ!避けなさい!!」
サリアが叫んだ。既にドラゴンが目前へと迫っている。するとドラゴンの前にグレイブが一機、割り込む風に現れた。それはシルフィーのグレイブだった。
「シルフィー!?」
「はぁぁぁっ!!」
彼女のグレイブがブレードを取り出し、ドラゴンの目らしき部位の間目掛けて突き刺した。飛び散った血が白い機体に赤い斑点を付けた。だがドラゴンは痛みで怯むこともなく、翼をシルフィーの機体に叩きつけた。
グレイブは大きく揺れ、下へと落ちていった。
「シルフィー!?シルフィー!!」
今度も返事は返ってこなかった。
ドラゴンはこちらを睨む風に見た後、咆哮をあげ何処かへと去って行った。先程受けた攻撃の傷は少なからずドラゴンを苦しめているようだ。
「あいつ!逃すか!!」
ヒルダ達がライフルを構える。しかしそこから弾が放たれる事は無かった。ライフルの方も弾切れだ。
「やろぉ!待ちやがれ!!」
「落ち着きなさい!ヒルダ!」
追いかけようとするヒルダの機体をサリアが止めた。
「なんで止めやがる!サリア!!」
「凍結バレット無しでどうしろっていうの!?第一今深追いすれば、機体の燃料が尽きるわ!!」
その通り。既に機体の燃料は危険ゾーンへと到達している。しかも大型ドラゴンには凍結バレットが
有効だがこれも残弾数の方はゼロ。
相手が手負いとはいえ、今追撃に行くのはあまりに無謀である。
「全機、一度アルゼナルへ帰投しろ」
ジル司令から帰還命令が出た。
「アンジュ達三人はどうします?」
「既に回収班を回してある。お前達は一度、アルゼナルへ帰投しろ」
「イエス・マム。全機、アルゼナルへ帰投するわよ」
副隊長であるサリアの指示の元、残されたメンバーは皆機体を変形させ、アルゼナルへと帰っていった。
「・・・・・・」
勝利と言えない戦いを終えた彼女達の目に、喜びなど一欠片もなかった。
一方、墜落した三つの機体。
幸か不幸か、三人の機体はどれも、たまたま下にあった岩礁に落ちていた。パラメイルは機密性が無いに等しい為、海に墜落していれば、そちらの方が
危険だっただろう。
「ううっ・・・んっ」
アンジュの頬に何かが触れた。生温かい液体だ。色は赤色。恐る恐る上を見た。
「!!!」
そこには義眼が外れた、血塗れのゾーラ隊長の姿があった。既にそれは骸へと成り果てている。
「いっ・・・いやぁぁぁ!!」
アンジュは悲鳴をあげると、再び意識を失った。
シルフィーに関しては、身体がコックピットを突き破り外へと投げ出されていた。身体の一部からは血が流れ出ており、その場を中心に血の水溜りが広がってゆく。
「・・・」
彼女からはうめき声も、身体が動く気配も何一つ感じさせなかった。
そんなシルフィーの元に、ある人物がいた。例の如く右目に傷のある黒装束の男だ。
「・・・・・・・・・・」
男はじっとシルフィーを見つめた後、その場から姿を消した。
やはりあの戦闘は何回見ても悔やまれる。ココの件に関しては、自業自得と言ってしまえばそれまでだが、それで済ましていいのか悩んでしまう。