クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
アンジュは格納庫へと辿り着いた。
「遅いぞアンジュ。グズグズするな」
ジル司令はアンジュを連れてある場所へと行った。そこにはメイがいた。その隣にはサリアもいる。
「どうだメイ。出せそうか?」
「うん!20分もあれば!」
そう言うとメイは何処かへと走っていった。おそらく出す為の準備なのだろう。
「さてアンジュ。こいつがお前の機体だ」
目の前の機体に被されていたシートが剥がされた。そこにはパラメイルが一機、存在していた。女神像などが取り付けられており、グレイブでもハウザーでも、アーキバスでもない機体だ。
「かなり古い機体でな。老朽化したエンジン。滅茶苦茶なエネルギー制御。いつ堕ちるか分からないポンコツだ。死にたいお前には打ってつけだろ?名前はヴィルキス」
アンジュはヴィルキスへと歩みを進めた。
「死ねるのですね。これで・・・戻れるのですね。アンジュリーゼに・・・」
「・・・せめてもの情けだ。あの世にこれだけでも持っていけ」
ジル司令が懐から何かを取り出した。それはかつてアンジュから没収した指輪であった。
アンジュはそれを受け取ると指にはめた。
そんな中、サリアが何処か不服そうにジル司令に
尋ねた。
「ねぇジル。どうして?この機体は私が・・・」
「サリア。隊長としての初陣、期待しているぞ」
そんなサリアの言葉を遮るかの様にジル司令が言った。
「イエス・マム」
サリアはそう返事した。二人はロッカールームへと足を進めた。
その頃、シルフィーとナオミはライダースーツに着替え終わり、発着デッキに来ていた。皆が復活したシルフィーの姿に驚いていた、
「シルフィー!本当に目覚めたんだね!」
「へぇ。運がいいんだね、あんた」
「シルフィーちゃん。あまり無理しちゃダメよ」
皆が思い思いの言葉を投げかけた。そんな中、ヒルダがナオミに話しかけてきた。
「なぁナオミ。あんた、戦えるのかよ」
「戦うよ。私は逃げない」
ナオミはかつて、島でのシルフィーの言葉を思い出す。
(最後にどうするか。最後に何をするか。それを決めるのは私自身にしか出来ない事。私はドラゴンと戦う。同じ悲しみを繰り返さない為に)
ナオミは決意を固めた。ドラゴンと戦うと。それは他の誰でもない、彼女自身が決めた事である。
(へぇ。ナオミの奴。一皮剥けてんな)
ヒルダがナオミの目を見て感じた。その目は前をしっかりと見据えていた。
やがてアンジュの機体の準備も整った。皆の機体がカタパルトへ送られる。
「サリア隊。発信します」
サリアの掛け声のもと、新たなる第一中隊はドラゴンの待つ戦場を目指して飛び立った。
「なんでアイツも来たんだよ!?お姉様をあんな風にした奴と出撃だなんて!」
「殺す・・・殺す・・・ぶち殺す」
アイツとはアンジュの事だ。ロザリーは愚痴を零す。クリスなど殺害予告宣言までしている始末である。
「死にに行くんだってよ、アイツ」
「へっ!?」
ヒルダのその言葉にロザリーとクリスは驚く。
「見せてもらおうじゃないか。イタ姫様の死にっぷりをさ!!」
「わー!なんじゃあの機体!?ねぇねぇサリア〜!あのパラメイル見ててドキドキしない?」
ヴィヴィアンがアンジュのパラメイルを見て興奮している。
「作戦中よ!ヴィヴィアン!」
やがて皆の視界に、例のガレオン級が現れた。先の戦闘での傷は完全に癒えていないらしく、身体の一部が凍っている。
「奴は瀕死よ。全機!凍結バレット装填!一気に奴を殲滅する!!」
皆が機体を駆逐形態へと変形させた。だが何故かアンジュだけ変形させなかった。いや、変形できなかったと言うべきか。
(ジル。やっぱり無理なのよ。あの娘には・・・)
サリアが内心でそう思う。するとドラゴンの前面に魔法陣が出た。
(あの鱗攻撃か来る!)
皆が警戒した。だが次の瞬間、海面に同じ模様の魔法陣が現れた。鱗はそこから放たれた。前の魔法陣にだけ警戒していた為、完全に不意を突かれた形になる。
「ワナを仕掛けてたのか!?こしゃくなぁーっ!!」
ヴィヴィアンが驚きながら避ける。しかしサリアの方はもっと驚いていた。
「海面からウロコ!?こんな攻撃は過去のデータにない!」
ウロコの攻撃は尚を続く。ロザリーとクリスが被弾した。
「二人とも下がれ!」
ヒルダはそう言うと二人のそばに駆け寄り、ウロコを撃ち落としていった。
鱗はなんと彼女達めがけて追尾してくる。避けるのが無意味に近い為、皆が鱗をひたすらに撃ち落とす。
不意打ちともいえるその攻撃は、こちらの有利不利を一気に覆した。
(くっ動きが悪い!このままじゃみんなが!)
「ゾーラ隊長。私どうすれば・・・」
「しっかりして、サリアちゃん!今の隊長はあなたよ!」
弱音を呟くサリアをエルシャが激励する。
「サリア!前!前!」
ヴィヴィアンに言われ前を見る。するとガレオン級が迫ってきていた。ガレオン級に機体が捕縛された。
コックピットから出て、サリアが自前のライフルでドラゴンを撃つ。しかしドラゴンには蚊ほどにも効かないようだ。
「サリア!待ってて!」
ナオミのグレイブが凍結バレットを放つ。それらはドラゴンを怯ませる事には成功した。
だがドラゴンはまだ健在であった。魔法陣を展開して火球が放たれた。ナオミはそれらを避けるのに必死であった。
ドラゴンは再びサリアの機体の方を向いた。サリア目掛けて一咆哮する。
(喰われる!)
そう直感し、反射的に目を瞑った。
その時だった。急にガレオン級が振り返った。その先にはアンジュとヴィルキスがいた。
「アンジュ!?」
「もうすぐ、もうすぐよ・・・もうすぐサヨナラ出来る」
「アンジュ!避けなさい!」
サリアがそう言う。次の瞬間、ドラゴンの尻尾がヴィルキス目掛けて振り下ろされた。
「!」
反射的にアンジュは機体を横にずらした。これによって尻尾には命中したが、直撃だけは避けれた。
「も・・・もう一度」
ドラゴンの周りに魔法陣が展開された。今度は魔法陣から火炎弾がヴィルキス目掛けて飛んできた。
「!きゃあ!!」
また反射的に機体を動かす。今度は機体に当てることなく、全て避け切った。
「何してんだよアイツ・・・自分から突っ込んだり、かわしたり・・・」
その行動はヒルダだけでなく全員が理解できないでいた。何よりアンジュも自分の行動が理解できていなかった。
「ダメじゃない・・・ちゃんと・・・ちゃんと死ななきゃ」
ドラゴンがヴィルキスに組みついてきた。
「ガン!」
組みつかれた衝撃で顔をモニターにぶつける。額からは血が流れる。
目の前にドラゴンの顔が映る。ドラゴンは咆哮を上げた。
ドラゴンの顔が目前に迫る。
「ひっ!」
アンジュは反射的に目を瞑る。その刹那、アンジュの脳裏に様々なものが浮かぶ。
レーザーが命中したココ。ドラゴンに身体を喰われたミランダ。コックピットで見た血塗れのゾーラ隊長。
様々な出来事が脳裏をよぎった。これが走馬灯というやつの中。
「いっ・・・いや・・・いや・・・」
母ソフィアの最後の言葉が脳裏をよぎる。
(生きなさい・・・アンジュリーゼ)
「イヤァァァァァァ!」
額から流れた血が指輪に付着した。するとアンジュの指輪が光った。
そしてヴィルキスもそれに応えるかの様に光りだした。それに驚いたドラゴンはアンジュとサリアの機体を放した。
ヴィルキスは空中に舞い、その姿を駆逐形態へと姿を変えた。
「!?」
サリア達が驚いている。そしてジル司令は司令部から黙ってそれを見ていた。
「死にたくない・・・死にたくない・・・死にたくない!!」
アンジュはそう言うとライフルをドラゴンに向けて発射した。
それらは魔法陣で防がれた。反撃として、ドラゴンはウロコをヴィルキスに向けて放つ。
しかし、それらは斬り落とされた。次の瞬間には、ヴィルキスはドラゴン目がけて加速した。鱗などをブレードで斬り落として行く。
「おっ・・・お前が・・・お前が!!」
ヴィルキスはドラゴンの喉元に剣を突き刺した。ドラゴンは唸り声を上げる。
「お前が死ねぇぇ!!!」
ヴィルキスは凍結バレットを傷口に打ち込んだ。すると傷口から氷の柱が現れた。
それは瞬く間にドラゴンの身体に広がっていった。ドラゴンは海面へと落ちていった。落ちた場所を中心に海面が氷原に変わっていった。
「はっはは・・・あはっ・・・・あははは・・・」
涙を流しながら、アンジュはなぜか笑い出した。アンジュにはその理由がわからない。
「こんな感じ・・・知らない・・・」
(昂ぶってんじゃねぇか)
ゾーラ隊長の言葉を思い出す。
「違う・・・!こんなの私じゃない!殺してでも生きたいだなんて・・・そんな・・・汚くて!・・・浅ましくて!・・・身勝手な!・・・」
「それがノーマだ・・・」
アンジュの耳にゾーラ隊長の声が聞こえた。それは幻聴だったのかもしれないが、アンジュの耳にはたしかに聞こえた。
「うっ・・・うっ・・・くっ・・・うっ・・・あっ・・・うあああああああ・・・ああっ・・・うああああ!」
アンジュは泣いた。それを彼女達はただただ黙って見ていた。
ジル司令は上を向いた。その表情には満足な笑みが浮かんでいた。
やがてジル司令が帰還命令を第一中隊に伝えようとする。
「全機、アルゼナルへ帰・・・」
【バババババ】
すると突然、第一中隊に銃撃と鉛弾が襲いかかって来た。
「なっ!なんだ!?」
慌てて機体を操作してそれらを避けた。皆が銃撃された場所を見る。そこにはグレイブとハウザーがいた。見た目は新兵用の機体だ。
「パラメイル!?一体何処の中隊だ!?」
だが直ぐに中隊だという考えは消えた。何故ならそのパラメイル達は、明らかに中隊の数より多く存在している。
グレイブとハウザー。合わせて60機は存在している。
次の瞬間、それらの機体の銃口は第一中隊の機体へと向けられた。そしてそこから銃弾が放たれた。皆が緊急回避する。
「なっ!?なんだ!」
こちらへの銃撃、明らかに敵意を持った攻撃だ。
「やめろ!模擬戦にしては悪ふざけが過ぎるぞ!」
しかしオペレーターの通信に全員が耳を疑った。
「どうなってるの!?ライダーの反応無し!あれは全部無人機です!!」
通信越しにオペレーター達の慌てふためく声がした。
無人機。その名の通り人の乗らない兵器だ。だが
そんな兵器がアルゼナルにあるなど聞いた事がない。
無人機達は第一中隊に襲いかかっている。人がいなければコミュニケーションもとれない。向かってくる以上、倒すしかない。
しかし先程の戦闘での傷などがある。万全の体制で臨むには無理があった。しかし相手は無人機だ。逃げれば間違いなく背中から撃たれる。皆が腹を括って撃ち合う覚悟をした。
しかし撃ち合って直ぐに相手のの異常性が明らかになった。性能がダンチすぎである。パラメイルはカスタムが出来る為、機体には個別に差が出るものだ。
だが、目の前の無人のパラメイル達は、全て同じレベルだ。それも最高クラスの。全ての部品や装甲が最高値まで強化されている。
「あんな硬い装甲。どうやって砕くんだよ!」
「泣き言を言わないで!殺されたくなかったら、戦うしかないわ!」
皆が必死に撃ち合っているなか、事態は静かに変わっていった。無人機の内、シルフィーの元に何機も纏わり付いてくる。
(この機体。私を狙ってる!?)
それらの無人機は、シルフィーに狙いを定めている様に見える。それはシルフィーを他のメンバーと分断させ、孤立させる様にも見えた。
ブレードを取り出し、関節部を狙った。だが無人機は避ける。ブレードは勢いのまま、虚空を切り裂いた。
次の瞬間、無人機のパラメイル四機がワイヤーを射出した。それらはシルフィーのグレイブの手足へと巻きつき、拘束した。
「シルフィー機。捕縛されました!」
腕や足などを操作するが、ワイヤーによって全く動く気配がない。次の瞬間、ワイヤーからは高圧電流が流された。目に見えるほどであり、それらはパラメイルの計器類などをショートさせた。
「グァァァァァァァッ!!!」
そしてシルフィー自身にも、かなりのダメージを与えた。電流が止んだ頃、機体は黒焦げとなっていた。そしてシルフィーの意識はかなり朦朧としていた。薄ら薄ら煙が出ている。
「シルフィー!」
通信越しにナオミの声が聞こえたが、シルフィーには答える力すら残っていなかった。
「待ってて!今助けるから!」
ナオミのグレイブが、ライフルを捕縛している無人機へと放つ。だがそれはものの見事に避けられた。
(意識が・・・持たない・・・)
彼女はコックピットにもたれかかる様に倒れこんだ。次の瞬間、シルフィーの意識は闇に閉ざされた。
そんな中、格納庫の奥深くに眠る、シルフィーが
アルゼナルに来た際に乗っていた謎のパラメイル。
この機体は待っていた。目覚めの時を・・
次回、遂にシルフィーの機体が目覚めます。お楽しみに。
因みに武装と名前はまだ考えていない!