クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第12話 ヴィルキス覚醒

 

アンジュは格納庫へと辿り着いた。

 

「遅いぞアンジュ。グズグズするな」

 

ジル司令はアンジュを連れてある場所へと行った。そこにはメイがいた。その隣にはサリアもいる。

 

「どうだメイ。出せそうか?」

 

「うん!20分もあれば!」

 

そう言うとメイは何処かへと走っていった。おそらく出す為の準備なのだろう。

 

「さてアンジュ。こいつがお前の機体だ」

 

目の前の機体に被されていたシートが剥がされた。そこにはパラメイルが一機、存在していた。女神像などが取り付けられており、グレイブでもハウザーでも、アーキバスでもない機体だ。

 

「かなり古い機体でな。老朽化したエンジン。滅茶苦茶なエネルギー制御。いつ堕ちるか分からないポンコツだ。死にたいお前には打ってつけだろ?名前はヴィルキス」

 

アンジュはヴィルキスへと歩みを進めた。

 

「死ねるのですね。これで・・・戻れるのですね。アンジュリーゼに・・・」

 

「・・・せめてもの情けだ。あの世にこれだけでも持っていけ」

 

ジル司令が懐から何かを取り出した。それはかつてアンジュから没収した指輪であった。

アンジュはそれを受け取ると指にはめた。

 

そんな中、サリアが何処か不服そうにジル司令に

尋ねた。

 

「ねぇジル。どうして?この機体は私が・・・」

 

「サリア。隊長としての初陣、期待しているぞ」

 

そんなサリアの言葉を遮るかの様にジル司令が言った。

 

「イエス・マム」

 

サリアはそう返事した。二人はロッカールームへと足を進めた。

 

 

 

 

 

その頃、シルフィーとナオミはライダースーツに着替え終わり、発着デッキに来ていた。皆が復活したシルフィーの姿に驚いていた、

 

「シルフィー!本当に目覚めたんだね!」

 

「へぇ。運がいいんだね、あんた」

 

「シルフィーちゃん。あまり無理しちゃダメよ」

 

皆が思い思いの言葉を投げかけた。そんな中、ヒルダがナオミに話しかけてきた。

 

「なぁナオミ。あんた、戦えるのかよ」

 

「戦うよ。私は逃げない」

 

ナオミはかつて、島でのシルフィーの言葉を思い出す。

 

(最後にどうするか。最後に何をするか。それを決めるのは私自身にしか出来ない事。私はドラゴンと戦う。同じ悲しみを繰り返さない為に)

 

ナオミは決意を固めた。ドラゴンと戦うと。それは他の誰でもない、彼女自身が決めた事である。

 

(へぇ。ナオミの奴。一皮剥けてんな)

 

ヒルダがナオミの目を見て感じた。その目は前をしっかりと見据えていた。

 

やがてアンジュの機体の準備も整った。皆の機体がカタパルトへ送られる。

 

「サリア隊。発信します」

 

サリアの掛け声のもと、新たなる第一中隊はドラゴンの待つ戦場を目指して飛び立った。

 

「なんでアイツも来たんだよ!?お姉様をあんな風にした奴と出撃だなんて!」

 

「殺す・・・殺す・・・ぶち殺す」

 

アイツとはアンジュの事だ。ロザリーは愚痴を零す。クリスなど殺害予告宣言までしている始末である。

 

「死にに行くんだってよ、アイツ」

 

「へっ!?」

 

ヒルダのその言葉にロザリーとクリスは驚く。

 

「見せてもらおうじゃないか。イタ姫様の死にっぷりをさ!!」

 

「わー!なんじゃあの機体!?ねぇねぇサリア〜!あのパラメイル見ててドキドキしない?」

 

ヴィヴィアンがアンジュのパラメイルを見て興奮している。

 

「作戦中よ!ヴィヴィアン!」

 

やがて皆の視界に、例のガレオン級が現れた。先の戦闘での傷は完全に癒えていないらしく、身体の一部が凍っている。

 

「奴は瀕死よ。全機!凍結バレット装填!一気に奴を殲滅する!!」

 

皆が機体を駆逐形態へと変形させた。だが何故かアンジュだけ変形させなかった。いや、変形できなかったと言うべきか。

 

(ジル。やっぱり無理なのよ。あの娘には・・・)

 

サリアが内心でそう思う。するとドラゴンの前面に魔法陣が出た。

 

(あの鱗攻撃か来る!)

 

皆が警戒した。だが次の瞬間、海面に同じ模様の魔法陣が現れた。鱗はそこから放たれた。前の魔法陣にだけ警戒していた為、完全に不意を突かれた形になる。

 

「ワナを仕掛けてたのか!?こしゃくなぁーっ!!」

 

ヴィヴィアンが驚きながら避ける。しかしサリアの方はもっと驚いていた。

 

「海面からウロコ!?こんな攻撃は過去のデータにない!」

 

ウロコの攻撃は尚を続く。ロザリーとクリスが被弾した。

 

「二人とも下がれ!」

 

ヒルダはそう言うと二人のそばに駆け寄り、ウロコを撃ち落としていった。

 

鱗はなんと彼女達めがけて追尾してくる。避けるのが無意味に近い為、皆が鱗をひたすらに撃ち落とす。

 

不意打ちともいえるその攻撃は、こちらの有利不利を一気に覆した。

 

(くっ動きが悪い!このままじゃみんなが!)

 

「ゾーラ隊長。私どうすれば・・・」

 

「しっかりして、サリアちゃん!今の隊長はあなたよ!」

 

弱音を呟くサリアをエルシャが激励する。

 

「サリア!前!前!」

 

ヴィヴィアンに言われ前を見る。するとガレオン級が迫ってきていた。ガレオン級に機体が捕縛された。

 

コックピットから出て、サリアが自前のライフルでドラゴンを撃つ。しかしドラゴンには蚊ほどにも効かないようだ。

 

「サリア!待ってて!」

 

ナオミのグレイブが凍結バレットを放つ。それらはドラゴンを怯ませる事には成功した。

 

だがドラゴンはまだ健在であった。魔法陣を展開して火球が放たれた。ナオミはそれらを避けるのに必死であった。

 

ドラゴンは再びサリアの機体の方を向いた。サリア目掛けて一咆哮する。

 

(喰われる!)

 

そう直感し、反射的に目を瞑った。

 

その時だった。急にガレオン級が振り返った。その先にはアンジュとヴィルキスがいた。

 

「アンジュ!?」

 

「もうすぐ、もうすぐよ・・・もうすぐサヨナラ出来る」

 

「アンジュ!避けなさい!」

 

サリアがそう言う。次の瞬間、ドラゴンの尻尾がヴィルキス目掛けて振り下ろされた。

 

「!」

 

反射的にアンジュは機体を横にずらした。これによって尻尾には命中したが、直撃だけは避けれた。

 

「も・・・もう一度」

 

ドラゴンの周りに魔法陣が展開された。今度は魔法陣から火炎弾がヴィルキス目掛けて飛んできた。

 

「!きゃあ!!」

 

また反射的に機体を動かす。今度は機体に当てることなく、全て避け切った。

 

「何してんだよアイツ・・・自分から突っ込んだり、かわしたり・・・」

 

その行動はヒルダだけでなく全員が理解できないでいた。何よりアンジュも自分の行動が理解できていなかった。

 

「ダメじゃない・・・ちゃんと・・・ちゃんと死ななきゃ」

 

ドラゴンがヴィルキスに組みついてきた。

 

「ガン!」

 

組みつかれた衝撃で顔をモニターにぶつける。額からは血が流れる。

 

目の前にドラゴンの顔が映る。ドラゴンは咆哮を上げた。

 

ドラゴンの顔が目前に迫る。

 

「ひっ!」

 

アンジュは反射的に目を瞑る。その刹那、アンジュの脳裏に様々なものが浮かぶ。

 

レーザーが命中したココ。ドラゴンに身体を喰われたミランダ。コックピットで見た血塗れのゾーラ隊長。

 

様々な出来事が脳裏をよぎった。これが走馬灯というやつの中。

 

「いっ・・・いや・・・いや・・・」

 

母ソフィアの最後の言葉が脳裏をよぎる。

 

(生きなさい・・・アンジュリーゼ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤァァァァァァ!」

 

額から流れた血が指輪に付着した。するとアンジュの指輪が光った。

 

そしてヴィルキスもそれに応えるかの様に光りだした。それに驚いたドラゴンはアンジュとサリアの機体を放した。

 

ヴィルキスは空中に舞い、その姿を駆逐形態へと姿を変えた。

 

「!?」

 

サリア達が驚いている。そしてジル司令は司令部から黙ってそれを見ていた。

 

「死にたくない・・・死にたくない・・・死にたくない!!」

 

アンジュはそう言うとライフルをドラゴンに向けて発射した。

 

それらは魔法陣で防がれた。反撃として、ドラゴンはウロコをヴィルキスに向けて放つ。

 

しかし、それらは斬り落とされた。次の瞬間には、ヴィルキスはドラゴン目がけて加速した。鱗などをブレードで斬り落として行く。

 

「おっ・・・お前が・・・お前が!!」

 

ヴィルキスはドラゴンの喉元に剣を突き刺した。ドラゴンは唸り声を上げる。

 

「お前が死ねぇぇ!!!」

 

ヴィルキスは凍結バレットを傷口に打ち込んだ。すると傷口から氷の柱が現れた。

 

それは瞬く間にドラゴンの身体に広がっていった。ドラゴンは海面へと落ちていった。落ちた場所を中心に海面が氷原に変わっていった。

 

「はっはは・・・あはっ・・・・あははは・・・」

 

涙を流しながら、アンジュはなぜか笑い出した。アンジュにはその理由がわからない。

 

「こんな感じ・・・知らない・・・」

 

(昂ぶってんじゃねぇか)

 

ゾーラ隊長の言葉を思い出す。

 

「違う・・・!こんなの私じゃない!殺してでも生きたいだなんて・・・そんな・・・汚くて!・・・浅ましくて!・・・身勝手な!・・・」

 

「それがノーマだ・・・」

 

アンジュの耳にゾーラ隊長の声が聞こえた。それは幻聴だったのかもしれないが、アンジュの耳にはたしかに聞こえた。

 

「うっ・・・うっ・・・くっ・・・うっ・・・あっ・・・うあああああああ・・・ああっ・・・うああああ!」

 

アンジュは泣いた。それを彼女達はただただ黙って見ていた。

 

ジル司令は上を向いた。その表情には満足な笑みが浮かんでいた。

 

 

 

やがてジル司令が帰還命令を第一中隊に伝えようとする。

 

「全機、アルゼナルへ帰・・・」

 

【バババババ】

 

すると突然、第一中隊に銃撃と鉛弾が襲いかかって来た。

 

「なっ!なんだ!?」

 

慌てて機体を操作してそれらを避けた。皆が銃撃された場所を見る。そこにはグレイブとハウザーがいた。見た目は新兵用の機体だ。

 

「パラメイル!?一体何処の中隊だ!?」

 

だが直ぐに中隊だという考えは消えた。何故ならそのパラメイル達は、明らかに中隊の数より多く存在している。

 

グレイブとハウザー。合わせて60機は存在している。

 

次の瞬間、それらの機体の銃口は第一中隊の機体へと向けられた。そしてそこから銃弾が放たれた。皆が緊急回避する。

 

「なっ!?なんだ!」

 

こちらへの銃撃、明らかに敵意を持った攻撃だ。

 

「やめろ!模擬戦にしては悪ふざけが過ぎるぞ!」

 

しかしオペレーターの通信に全員が耳を疑った。

 

「どうなってるの!?ライダーの反応無し!あれは全部無人機です!!」

 

通信越しにオペレーター達の慌てふためく声がした。

 

無人機。その名の通り人の乗らない兵器だ。だが

そんな兵器がアルゼナルにあるなど聞いた事がない。

 

無人機達は第一中隊に襲いかかっている。人がいなければコミュニケーションもとれない。向かってくる以上、倒すしかない。

 

しかし先程の戦闘での傷などがある。万全の体制で臨むには無理があった。しかし相手は無人機だ。逃げれば間違いなく背中から撃たれる。皆が腹を括って撃ち合う覚悟をした。

 

しかし撃ち合って直ぐに相手のの異常性が明らかになった。性能がダンチすぎである。パラメイルはカスタムが出来る為、機体には個別に差が出るものだ。

 

だが、目の前の無人のパラメイル達は、全て同じレベルだ。それも最高クラスの。全ての部品や装甲が最高値まで強化されている。

 

「あんな硬い装甲。どうやって砕くんだよ!」

 

「泣き言を言わないで!殺されたくなかったら、戦うしかないわ!」

 

皆が必死に撃ち合っているなか、事態は静かに変わっていった。無人機の内、シルフィーの元に何機も纏わり付いてくる。

 

(この機体。私を狙ってる!?)

 

それらの無人機は、シルフィーに狙いを定めている様に見える。それはシルフィーを他のメンバーと分断させ、孤立させる様にも見えた。

 

ブレードを取り出し、関節部を狙った。だが無人機は避ける。ブレードは勢いのまま、虚空を切り裂いた。

 

次の瞬間、無人機のパラメイル四機がワイヤーを射出した。それらはシルフィーのグレイブの手足へと巻きつき、拘束した。

 

「シルフィー機。捕縛されました!」

 

腕や足などを操作するが、ワイヤーによって全く動く気配がない。次の瞬間、ワイヤーからは高圧電流が流された。目に見えるほどであり、それらはパラメイルの計器類などをショートさせた。

 

「グァァァァァァァッ!!!」

 

そしてシルフィー自身にも、かなりのダメージを与えた。電流が止んだ頃、機体は黒焦げとなっていた。そしてシルフィーの意識はかなり朦朧としていた。薄ら薄ら煙が出ている。

 

「シルフィー!」

 

通信越しにナオミの声が聞こえたが、シルフィーには答える力すら残っていなかった。

 

「待ってて!今助けるから!」

 

ナオミのグレイブが、ライフルを捕縛している無人機へと放つ。だがそれはものの見事に避けられた。

 

(意識が・・・持たない・・・)

 

彼女はコックピットにもたれかかる様に倒れこんだ。次の瞬間、シルフィーの意識は闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、格納庫の奥深くに眠る、シルフィーが

アルゼナルに来た際に乗っていた謎のパラメイル。

 

この機体は待っていた。目覚めの時を・・

 




次回、遂にシルフィーの機体が目覚めます。お楽しみに。

因みに武装と名前はまだ考えていない!

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