クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
アルゼナルへと帰ったアンジュはある場所へと向かった。そこはアルゼナルで散っていった者達の墓地であった。
「さようなら。お父さま・・・お母さま・・・お兄さま・・・シルヴィア・・・」
そう言うとアンジュは自分の髪を掴むと根元部分をナイフで切り落とした。切った髪は宙に舞い、空へ、そして海へ散っていった。
「私にはもう何も無い。何も要らない。過去も・・・名前も・・・何もかも。あなたたちの様に簡単には死なない。生きる為なら地面を這いずり、泥水を啜り、血反吐を吐くわ」
「私は生きる。殺して、生きる!!」
アンジュリーゼは死んだ。今ここにいるのはアルゼナルの一兵士、アンジュだ。そんな眼をしていた。
決意を新たに、アンジュはその場所を去った。
その頃シルフィーは取調室に来ていた。机を挟んだ向かい側にはジル司令がいる。戦闘後。アルゼナルに帰るなり整備士達に囲まれながらジル司令が迫って来た。
「さぁシルフィー。医務室に行った後は取り調べ室に行こう」
そう告げられてシルフィーは半ば連行される形で
医務室で検査を。それが終わると取り調べ室へと入れられた。
「さて。聞きたい事は3つある。手っ取り早く順番に行こう。まず最初に。あの機体はなんだ」
あの機体。シルフィーがアルゼナルに来る際に乗っていた、つまりはシルフィー個人の所有物であるあの機体。どう考えても民間人。それも島で人と出会わずに生活していたシルフィーの持つ様な代物ではない。
「DEM・type・Ω」
「・・・なんだって?」
「あの機体のコード番号だと思う」
そう言うとシルフィーは紙とペンを貰い、モニターで見た文字をそのまま書き写した。
「成る程。DEM。何を表しているのかはわからんが、今後あの機体の名称はオメガとする」
「それでお前はどうやってオメガを手に入れた。
流れ着いて来たとか人と出会ったとか。それらの
理由はあるか?」
「以前言ったはず。あそこで私は産まれた。あれは私にとって揺りかご」
以前の話と進展無し。ジル司令は顔に手を当てて
困り果てていた。
「・・・二つ教えてやろう。お前の年齢は大体16だ。そして二つ目。お前の持つ記憶は十年前のものだけ。つまりお前の中には産まれてから空白の6年間が存在するんだ」
その言葉にシルフィーはあの光景を思い出した。
あの風景。何処かで見た事がある。それだけではない。初めてオメガに乗った際に聞いたあの歌。あれも何処かで聞いたことがある歌だった。
「まぁ覚えてないなら仕方ない。次に二つ目。あの時あの場に現れた機体。あれはオメガに酷似していた。あの機体を知っているか?そして中に乗っていた人物が誰か、知っているか?」
「いえ、初めて見た。誰が乗ってるかも知らない」
「そうか。最後に三つ目。くろ・・・いや。なんでもない。忘れてくれ」
最後の質問をしようとした所で、ジル司令はその
質問をするのをやめた。
(あの男。どう見ても普通ではなかった。エマ監察官とオペレーター達にもあの男の事は口外にするなと命令してある。こいつに教える事はそれが無意味になる事だ。危ない危ない)
「とにかく。今回の戦闘。お前はあの機体を使いこなせていたな」
「以前言ったな。機体がお前を選んだら話は別だと。そしてこのケース。お前はそいつに選ばれたのかもな。お前のグレイブは今回の戦闘で完全に大破している。よって今後はあの機体で戦闘を行え」
「イエス・マム」
「よろしい。では話は終わりだ」
やっと話が終わった。解放されたシルフィーは部屋を後にした。シルフィーが部屋を出て数分後。今度はマギーが取り調べ室にやって来た。
「マギー。シルフィーの身体の検査データはどうだった?」
するとマギーは真剣な面持ちとなった。
「はっきり言う。あの娘、異常だよ」
そう言うとマギーがシルフィーの診察データを見せて来た。
「これは!?」
「普通の人間なら間違いなく死んでるレベルの怪我や傷だ。気楽に考えたとしても、あそこまで普通に生活できるはずがない」
「つまりあいつは何処かで特殊訓練を受けたということか?」
「そう考えるのがベターだろうが、どうしても腑に落ちない。あの子の記憶に偽りがないのは断言できる。医者としての生命も張れる。となると鍵は十年以上前の記憶になる」
「そうか、なら・・・」
「記憶をこじ開けようなんて考えない方がいい。
そんな事したら、最悪あの娘の精神は崩壊する。
きっと、それほど忘れたい過去なんだよ。あの娘の記憶は」
マギーは相変わらず真剣であった。その眼は間違いなく医者として、ドクターとしての眼だった。
「まぁいい。今のあいつとあの機体。利用するだけの価値がある。ならば利用してやる。全ては、
【リベルタス】の為に・・・」
独り言の様にジル司令が呟いた。
タバコの煙を眺めながらジル司令はある事を思い出した。
(あっ、グレイブを損失した分の借金伝達するの忘れてた)
そう思いながら、吸ったタバコを灰皿に押し付けた。
シルフィーは何処か浮かない面持ちをしている。
(私には空白の記憶が存在する。じゃあ、あの光景を私は見たの?)
「・・・私の知らない記憶。私の過去・・・」
そう呟くと、シルフィーは一人、暗い廊下の奥へと消えていった。
そしてその頃アンジュは自室へと帰った。ふとゴミ箱を見ると、ココがくれたプリンが捨てられてあった。
(粗末にするな)
シルフィーの言葉が脳裏をよぎった。
(・・・)
やがてアンジュはプリンを拾い上げると表面のビニールを剥がした。一緒に捨てたプラスチックスプーンのビニールも剥がす。
プリンを一口サイズすくうと口元に持ってきて、そのまま口に放り込んだ。
しばらくして涙が流れ出だ。身体がピクピク震えている。手で口を押さえながらアンジュは一言呟いた。
「・・・まずい・・・」
とある場所。火が暗い洞窟を照らしていた。そしてそこには、シオンを含めた男女4人がいた。全員が黒装束を身に纏っている。
「あの時は援護に来てくれてありがとう」
シオンが二人に礼を言っている。
「気にする事ではない。寧ろ満足な援護が出来なかった事、すまないな」
「でも良かったのかい?あの娘を連れ帰らなくて。あの場にいた連中と敵対したとしても、あの程度の戦力なら私とフリードで蹴散らせたのに」
「いいんだエセル。あの娘、シルフィーは俺たちと違って側にいる人がいる。ならば側にいさせてやるべきだ。その方があの娘の為だ」
「ねぇシオン。一つ聞かせて」
「なんだドミニク」
「シルフィー。問題ないの?」
「大丈夫だ。アルゼナルなら安心だ。腕輪もある」
「いいの?あの娘達のいる所。シルフィーにとって悪いところじゃない。安心。だけど安全じゃない。特に腕輪について知られたら」
「まぁいざとなったら私一人で乗り込んで邪魔者みんな蹴散らしてやるよ」
「そうやって命を軽く考えるのはやめて。エセルの悪いところ」
「はぁっ!?また説教かよ!聞き飽きたね!」
「zzzスピー、スピー」
「寝るなぁ!起きろぉ!!」
「むにゃむにゃ。エセルのデベソ男ォ・・・」
「女だよ!ピチピチの!デベソでもない!てかあんた起きてるよな!?起きててわざと言ってるよな!?」
「やめとけ。知ってるだろ?ドミニクがこういう
性格だってのは。それに俺たちの目的は人殺ではない。わかるな?」
「まぁ、わかってるつもりだよ・・・」
「そう言えばカリスとミリィはどうした?」
「あの二人なら情報集めの為に外に出た。まぁミリィがちゃんとやるかわからないが。ちょうどすれ違いのタイミングだったんだろうな」
「そうか。まぁカリスも一緒なら少しは安心か」
「それにしてもシオン。あんたもガンガン表に出たなぁ。あんな目立つ行動してよ。もう少しリーダーらしく背後で司令を下してほしいもんだね」
「あぁ。今回は前に出過ぎた。今後は他人の前に姿を表す事は自粛しよう」
「・・・・・・」
やがてその場に沈黙が流れた。
「みんな。わかってるよな」
シオンが三人を見回した。
「わかってる。俺たちの願いは一つ」
すると皆が声を合わせて、とある文を詠唱した。
「自分達に居場所はない。ならば自分の手で手に入れる。居場所も、未来も」
言い終わると、シオンは手の上で佇んでいた火を吹き消した。灯が消え、辺りは闇に包まれた。
第2章はこれでおしまいです。第3章に突入する前に、現段階で公開できるオリキャラ図鑑を製作中で、今日の内に投稿できます。
手から火や炎の一つでも出してみたい。
「今のはメラゾーマではない。メラだ」
第3章からは本格的にアニメ本編に突入ですね!