クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
ヴィヴィアンに連れられる形で、二人はジャスミンモールへと足を運んでいた。
「シルフィーは始めて来る所だったね。ここはジャスミンモール。日用雑貨や武器とかが売ってるお店だよ。買うにはキャッシュが必要だけどね」
ナオミがご丁寧に解説する。辺りには買い物などを楽しんでいる客の姿が見える。
「おおっ!新しいの入ってる!!」
ヴィヴィアンは駆け出した。その先にはパラメイル用の武装があった。見た目を言うならば弓矢での弓の部分に似ていた。
「ねぇねぇおばちゃん!これいくら?」
ヴィヴィアンが後ろでキセルを吸っているジャスミンに尋ねた。
「お姉さんだろ!ったく。超硬クロム製ブーメランブレードね。1800万キャッシュってところだね」
「1800万キャッシュ!?私の総合借金の三倍以上もあるの!?」
ナオミが金額を聞いて驚いていた。ナオミだけではなく買い物客なども金額の大きさに騒ついている。
「喜んで!」
そう言うとヴィヴィアンが満面の笑みでキャッシュの入った袋をジャスミンに渡した。これも第一中隊のエース故の稼ぎなのだろう。
「どれどれ。丁度だね。毎度あり」
すると突然バルカンが低く唸り声を上げ始めた。
ジャスミンモールの入り口でワンワンと吠えている。
四人とも入り口を見た。するとそこにはアンジュがいた。制服は以前見た時よりもボロボロになっている。
「・・・制服ありますか?」
そう言うとポケットからキャッシュを取り出して投げ渡した。
「ありますかだって?うちはブラジャーから列車砲まで、なんでも揃うジャスミンモールだよ。待ってな」
そう言うとジャスミンは奥へと足を進めた。しばらくして、制服を持って戻ってきた。
「大体サイズはこれくらいかね?」
そう言うとアンジュに投げ渡した。
「試着室借ります」
やがて試着室からは新品の制服を着込んだアンジュが出てきた。サイズ的にはぴったりの様だ。
「では」
「もう行っちゃうの?アンジュも武器買おうよ」
「いっぱい稼いでるんだろ?」
その言葉にアンジュの足は止まった。 こうして五人は武器コーナーへと足を運んだ。
「これなんてどう!?アンジュの機体にぴったりだと思うけどなぁ」
目の前に巨大な剣が飾られていた。プレートには【天空剣】と書かれていた。
「パラメイルはノーマの棺桶。自分の死に場所だから、自分の好きな風にできるのさ。強力な武器、分厚い装甲、派手なデコレーション。ノーマに許された数少ない自由さ」
ジャスミンが説明する。
「・・・くだらない」
そう言ってアンジュはジャスミンモールを去ろうとする。
「そんなんじゃあ仲間に狙われても仕方ないねぇ」
アンジュが立ち止まり振り返った。
「しかし・・・だ。そんな問題も金が解決する。
安心安全、それに命。買えるのはなにも物だけじゃない」
「・・・買収ですか?」
「流石皇女様。話が早いねぇ」
ジャスミンはどこからか算盤を持ち出すとそれを
使い計算をし始めた。
「手数料込みで、一人当たり1000万キャッシュでどうだい?」
「ほんと、ノーマらしくて浅ましい。一人で大丈夫です・・・わたしは」
アンジュは失笑した後、ジャスミンモールを後にした。
「さて、あんたはどうする?あのパラメイルに何か付け加えるかい?」
ジャスミンがシルフィーに話を振った。
「・・・私、死ぬつもりはありません」
そう言うとシルフィーもジャスミンモールを後にした。死ぬつもりはない。だから棺桶を好きな風に
する必要もない。そういうつもりなのだろう。
「まぁ、誰も死ぬつもりで戦場に出るなんて事はしないだろうねぇ。でもあの二人。中隊に馴染めてないねぇ。・・・なぁナオミ。一つ取り引きをしないか?」
「取り引き?」
「あんたが今後、アンジュとシルフィーの助けになるんなら、パラメイルの燃料や弾薬を安く譲るよ」
「えっーー!!あのケチなジャスミンが値下げするの!?熱でもあるの!?」
隣で話を聞いていたヴィヴィアンが驚きの声をあげる。ジャスミンはケチというイメージを持っているらしい。
「実はあの時現れたパラメイルの残骸。あれがまたかなりの上物でね。懐が温かいのさ・・・って、
ヴィヴィアン!ケチとはなんだい!ケチとは!?」
「助けに・・・でもなんで私が?」
「あんたの中に何かを感じとったんだよ。それに、あんたらが潰しあって困るのは私なんだよ」
アルゼナル内で稼ぎが一番良いのはメイルライダーだ。しかしメイルライダーなどは資格やパラメイルの数などで決して多くない。現在アルゼナルにいるメイルライダーは総勢29人だ。
彼女達が一人でも減るとその分ジャスミンモールも繁盛しにくくなるのだ?
「・・・私も、もう誰にも死んで欲しくない」
「じゃあ取り引き成立だね。二人の事を頼むよ」
「うっほー!ナオミは二人のお母さんになるんだね!」
「そうだよヴィヴィアン。ナオミは二人のお母さんになるんだ」
「誤解を生みそうな発言はやめて!」
ナオミが赤面しながら叫んだ。
「ガス抜きと思って見逃してたけど、流石に目に余るわね」
ブリーフィングルームにて。ここには現在アンジュ。ヒルダ。シルフィーを除いた第一中隊のメンバーが集められていた。
状況説明を簡単にしよう。ロザリーとクリスの二人は相変わらずアンジュへの嫌がらせをしようとした。その結果、全て失敗している。遂にはアルゼナルの備品にまで落書きしようとした為、流石に見逃せなくなった様だ。
因みにヴィヴィアンとナオミの二人は帰り際に捕まったらしい。
「お前達は何とも思わねぇのか!隊長と新兵二人を殺したあいつをよ!」
「でも、アンジュちゃんは三人のお墓をちゃんと建てた。戦場にだって戻ってきた。贖罪はもう果たしたんじゃないかしら?」
「うっ。それは・・・ナオミ!お前はどうなんだよ!?ココとミランダは同期だったんだろ?二人が死んで悲しいよな!?」
「うん。二人が死んだ事はとても悲しいよ。だけど、いつまでも悲しんでいられない。もう誰も死なせたくない。アンジュの事だって」
「だそうよ。二人とも」
二人にとって賛同すると思っていたナオミがアンジュを許していたという事実に二人はぐうの音も出なくなった。
「・・・でっでも!」
「それだけであいつを仲間として認めろってのかよ」
ブリーフィングルームの扉が開いた。そこにはヒルダがいた。
「少なくても、あいつの方は私達のことを仲間なんて思ってない。そんな奴を仲間として認めろっていうのかよ。あんたらみたいな優等生には出来るとしても、あたしらみたいな凡人には無理だね」
「にしても司令は何考えてんだか。あいつにポンコツ機を与えただけで特にお咎め無し。しかもグレイブの損失の借金もちゃらにしちゃって」
「おまけに、シルフィーの奴も、第一中隊に残しやがって」
その言葉に皆の表情が少し変わった。
「なんでそこでシルフィーがでてくるの」
「やれやれ、本当におめでたい連中だな。何仲間だと思ってんだよ。普通に考えて異常だろ。あいつ」
「島で一人暮らししてた。ならあの機体。確かオメガとか言ったな。それはあいつが作ったって言うのかよ。ありえないだろ。しかもあの時現れた謎の
機体。オメガにそっくりだったじゃねえか。偶然の一致ってやつなのかねぇ」
「何が言いたいの?」
「原の底で何考えてるかわからない女。そしてうちらを仲間だと思ってないイタ姫様。そんな奴らと
一緒に戦えるかよ」
「あぁそうか!分かったよ!司令は二人の事を気に入ったんだな!あの司令を垂らし込むだなんて。
ベットの上で仲良く3P。一体司令は責めか受けか、どちらだろうねぇ」
「!!上官侮辱罪よ!!!」
「だったらどうするよ」
サリアがナイフを、ヒルダが銃を取り出しお互いに向け合う。
「駄目だよ二人とも!落ち着いて!」
ナオミが場を鎮めようとする。アンジュとシルフィーと第一中隊の中を取り持つ前に、第一中隊の隊長と副隊長が殺し合いの一歩手前にまで辿り着いてしまった。
「これ以上、同じ隊のメンバーを侮辱する事は許さないわ」
「まだあいつらを庇うとはなぁ」
【ゴン!】
とつぜ鈍い音が響いた。壁をグーで叩く音のようである皆が音の方を向いた。そこにはシルフィーがいた。冷ややかな目をしている。
「シルフィー!まさか聞いてたの!?」
「聞いた。全部ね」
「ならはっきり言ってやるよ。私はあんたを仲間だなんて思ってない。精々戦闘中は背後を気をつける事だな」
「別に、貴女が私をどう思おうと知った事じゃない」
「けっ!親に捨てられた子が!」
「!!!」
次の瞬間、シルフィーがナイフを抜いた。それはヒルダの喉元数センチの所で止められていた。ヒルダの方も拳銃をシルフィーの腹部へと当てていた。
「私の歩く道に入るな」
感情の一切込められていない声でシルフィーは言い放った。
「やめなさい二人とも!それ以上は認めないわ!」
少しの硬直の後に、サリアが二人の間に割って入った
「シルフィー。手を出そうとするのは感心しないわ。ヒルダも。これ以上隊の仲間を侮辱する事は許さないわ」
「はいはい。よくわかりましたよ。隊長様。行くぞ、二人とも」
そう言うとヒルダは部屋を後にした。その後ろをロザリーとクリスが付いて行く。
部屋には五人のうち、四人が安堵の息を漏らす。
「シルフィー。貴女も第一中隊のメンバーなのよ。だから隊のメンバーを刺激させる発言は控えなさい。わかったわね」
「・・・」
サリアの言葉に何も返さず、シルフィーは部屋を後にした。
「あらあら。前途多難ねぇ」
エルシャがため息混じりに一言呟いた。
現在ヒルダ達は廊下を歩いている。
「あの時のあいつ。怖かったな」
「うん。一瞬、目が本気になってたよ」
ロザリーとクリスが先程のシルフィーについて話し合っていた。
「二人とも。この後時間あるよな?」
「ん?あるけど」
「ならちょっと付き合って欲しいんだけど」
そう言うとヒルダはとある部屋の鍵を取り出した。そしてとある部屋の扉を開けた。
その部屋はゾーラ隊長の部屋だ。
「なぁ。なんでヒルダがここの部屋の鍵持ってるんだ?」
「買い取ったのさ。この部屋のものを丸ごと。全部キャッシュで」
「それって・・・んん!?」
ヒルダはロザリーにキスをした。
「この部屋、それだけじゃない。あんたらも全部あたしのモノ。だから全部あたしに任せな。隊長の
敵討ちも。いいね?」
「はっ・・・はい」
「いい子ね」
ヒルダはクリスにキスをする。こうして三人はそのままお楽しみへと移行する事にした。
そしてその頃ブリーフィングルームを出たシルフィーは格納庫に来ていた。自分の機体の整備をする為だ。オメガにコントロールユニットを差し込み、機体を稼働させる。機体の回路などの連結を確認している。だがその間、ヒルダの言葉が頭から離れなかった。
(親に捨てられた子が!)
「・・・そう。私は一人。ナオミと出会うまで誰とも出会った事なんてない」
(空白の6年間が存在するんだ)
ジル司令の言葉と、色々と垣間見た光景などが蘇る。
(じゃああれが、私の中にある空白の記憶だと言うの・・・)
何故この機体の整備の仕方がわかる。何故私は腕輪などをつけているのか。何故シオンという男は私の前に現れたのか。
(考えれば私、何も知らないのね。あの時聞いた歌の事も・・・)
「〜♪♪」
例の歌を口ずさみ始めた。この歌を歌っている時だけ、嫌な事や不安な事などから解放される。
この歌はなんなのか、そんなものは分からない。
だがこの歌は安心できる。それだけは分かっていた。
「ねぇ。私にも整備を手伝わせて」
不意に声がした。下を見るとメイがいた。
「私の機体は私が整備する。他人の手を借りたくない」
そう言うと歌をやめ、シルフィーは内部構造部分の蓋を閉めた。そしてコントロールユニットを取り外すと、そのまま機体デッキを後にした。
今回は少し短めでしたね。
本編のアルゼナルでは赤ちゃんの産まれ方も教えられてないみたいですね。
(ナオミとアンジュのラジオ第二回参照)
そろそろシルフィーとオリキャラの絡みを作ろう。