クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第19話 夜空の激闘

 

アルゼナルでは捜索班の補給作業が行われていた。アンジュにヴィルキス。そしてシルフィーの手がかりは今のところ何一つとして掴めていない中、時間だけが過ぎていった。

 

「補給完了まで後30分です」

 

「遅い!15分でやれ!」

 

様々な人が動いていた。サリア達四人は補給作業が終わるまでの間、水分補給をしていた。

 

「日も暮れたってのにまた捜索かい?精が出るねぇ」

 

ヒルダが水分補給中のエルシャに話しかける。

 

「わっかんないねぇ。生きてるかどうか判んない

奴等を探すだなんて。時間の無駄だと思うけどなぁ」

 

「生きてるかどうか判らないから探すのよ」

 

「ヒルダちゃん達がアンジュちゃんを許せないのも分かる。シルフィーちゃんの事が気に入らないのも分かる。でも二人共、同じ中隊の仲間なのよ?探さないわけにはいかないでしょう」

 

「イタ姫様はともかく、シルフィーの方は今頃、昔みたいに野蛮に戻ってるんじゃないか?」

 

「そんな事ないわよ。シルフィーちゃんは、不器用なだけなのよ」

 

「あの子は島で一人生きてきた。辛い時に誰か甘える事も、苦しい時も誰にも頼る事なく、なんでも

一人でやって生きてきた。だから、人に甘えたり

頼ったりする事が分からないだけなのよ。

本当はみんなといたいはず」

 

「だから私達から歩み寄れば、きっと相手も同じ様に応えるわ」

 

「何より、アンジュちゃん達って似てるのよ。昔のヒルダちゃんに」

 

その言葉にヒルダの顔が曇る。

 

「あまり周囲と関わろうとせずに、只々一人で道を歩いている。そんなところが昔のヒルダちゃんそっくりなのよ。だから放っておけなくて」

 

「似てる?あんなクソ女共と・・・?そんな事言ってると・・・落としちゃうよ?アンタも」

 

エルシャを軽く睨みつけた後、ヒルダはその場を

離れた。彼女の脳裏にはシルフィーに言った言葉が浮かび上がっていた。

 

(親に捨てられた子が!)

 

(似てるだと・・・違う!私は捨てられてなんかない!絶対に!)

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アンジュは。

 

現在アンジュは例の男によって介抱されている。

 

(毒は吸い出したし薬も飲ませた。あとは本人の生命力次第か)

 

ふと砂浜に座礁していた機体の事を思い出す。

 

(・・・ヴィルキス・・・か)

 

彼は昔の、十年前の出来事を思い出す。

 

「父さん!母さん!!」

 

彼は父と母の死体に泣きすがっていた。足音がした。後ろを振り返るとそこには女の人がいた。その人の後ろにはヴィルキスがあった。

 

 

 

 

 

 

「・・・はっ!」

 

アンジュは目を覚ました。体を動こかそうとするが、まだ体に痺れが残っているのか動きがぎこちない。

 

「無理しないほうがいいよ。毒は吸い出したけど、

まだ痺れは残っているはずだよ」

 

「!」

 

目の前には自分の貞操を二度も危険に晒した男がいる。アンジュは彼を睨みつけた。

 

「言っとくけど、動けない女の子にエッチなことなんてしてないからね」

 

彼はアンジュの気持ちを察したのか、そう言う。

 

「まずは食べて休んで回復しないと。話はそれからだよ。はい食事。君、何も食べてないだろ?」

 

「いらないわよ。そんなわけのわからないもの」

 

【グ〜〜〜】

 

アンジュの腹が鳴った。

 

思えば彼女は丸一日程度、何も食事を摂っていないのだ。

 

「変なものなんて入ってないよ」

 

空腹には勝てず、やがてアンジュは口を開く」

 

「・・・不味い」

 

「え?」

 

しかしアンジュはまた口を開いた。どうやら気に入ったらしい。

 

「気に入って貰えて良かったよ。ウミヘビの

スープ」

 

「!?」

 

「少しは信用してくれた?君に危害を加えるつもりは無いんだ」

 

「あんなことしといて、よく言えるわね」

 

「それは事故だって。だからもう、蹴ったり撃ったり吊るしたいはしないで欲しいな」

 

「・・・考えておく」

 

その時アンジュはあることに気がついた。

 

「ねぇ?さっき毒を吸い出したって言ったわよね?」

 

「言ったよ?」

 

「ここから?」

 

アンジュは自分の傷口を見せた。傷口は足の付け根部分。つまりはそういう事だ。

 

「あっいや!その・・・!それは!」

 

「!!!ガブ!」

 

「わーっ噛んだ!痛い痛い痛い痛い!」

 

「噛まないとは言ってない!」

 

次の日、アンジュはヴィルキスの元へと行った。

するとそこに彼がいた。手には工具などが握られていた。

 

「やぁ、もう起きて平気なのかい?」

 

「ええ・・・ねぇ?何をしてるの?」

 

「修理・・・のマネゴトかな?」

 

「出来るの!?」

 

「ここは時々海流に乗ってパラメイルの残骸が流れ着くことがあって。それを調べてたらなんとなく・・・ね・・・」

 

「・・・なんで手で修理を・・・?マナを使えばいいじゃない。パラメイルの事も知ってたり・・・

あなた・・・何者なの?」

 

「タスク・・・俺はただのタスクだよ」

 

少しの間考えた後、その男はタスクと名乗った。

 

「いや、そういうことじゃなくて」

 

「あーやっぱり。出力系の回路がダメになってるのか。でも、これさえ直せば、無線が使えるようになるはずだよ。そうすれば仲間が助けに来るはずだよ」

 

アンジュの質問を遮るかの様にタスクが言った。そしてアンジュの顔色は曇った。

 

「・・・仲間なんていないわ」

 

「え?」

 

「連絡してもきっと誰も来ないし、帰っても誰も

待ってないもの」

 

お互いしばらく黙っていた。

 

「ならさ、しばらくはここにいないか?どうせこの回路を直すには、少し時間がかかる。もちろん、

変なことはしないよ」

 

「・・・そうさせてもらうわ」

 

「そうだ、そこのHEX【ヘキサゴン】レンチを取ってくれる?」

 

「これ?」

 

「!?」

 

この時アンジュはいやらしい視線を感じた。視線の主はタスクだった。直ぐに手に持っていたレンチをタスクに向かってぶん投げた。

 

「痛!」

 

「今なんかいやらしいオーラが出てた!」

 

それから時間は流れた。最初はタスクを木に縛り付けて寝ていたアンジュも、数日経つと、部屋を分けてアンジュと寝るようになった。食料は釣りなどで魚を確保していた。

 

そうして7日が経った。

 

「明日になると無線機が直ると思うよ。そうすれば連絡も取れるようになるはずさ」

 

「ありがとう、でも連絡しても、誰も来ないわ。

あそこに私を探してくれるような人はいない」

 

「それはきっと違うよ。仲間なんだろ?ならきっと必死になって探しているはずだよ」

 

「・・・仲間・・・ね」

 

「まぁ、もしそれでもダメだとした、ここで暮らせばいい。その・・・変なことはもうしないから」

 

そう言うがタスクはこれまで一日最低でも一回は

事故でアンジュの体にダイブしてきたため、あまり

説得力がない。

 

「・・・そうね、それもいいのかもね」

 

そう言うとアンジュは空を眺めた。夜空には星が光輝いていた。

 

「キレイな星空・・・星なんて・・・最近ずっと見てなかった」

 

「君の方が綺麗だよ」

 

その言葉にアンジュは驚く。

 

「タスク・・・」

 

次の瞬間、突然タスクはアンジャに覆い被さった。

 

「ちょっと!どうしたのいきなり!?」

 

「何か来る!」

 

タスクの目線の先を見る。そこには目を疑う光景が映し出された。

 

なんとドラゴンがいた。一体や二体などという生易しい数ではない。ざっと100は超えていた。

 

「ドラゴン!?こんなに!?急いでヴィルキスを・・・」

 

突然鉛玉の雨がドラゴン達に襲いかかった。攻撃の主はそこへと駆けつけていた。

 

それはオメガとそれに酷似した5つの機体であった。

 

「オメガ!?なんでこんなところに・・・」

 

「知っているのかい!?」

 

島の上空は激戦区域へと早変わりした。ドラゴンの死体が海めがけてバタバタと落ちて行く。

 

「なにこれ・・・何が起きてるの・・・」

 

何故この様な事態になったのか、それを説明する

為にはシルフィー側へと話を移す必要がある。

 

 

 

 

 

 

一週間前の話。

 

あの後シルフィーは洞窟へと寝に入った。

 

「・・・?」

 

ふと身体に違和感を覚え、シルフィーは目を覚ました。起きて一番最初に映し出されたもの。それは

ミリィの寝顔であった。

 

「ウォッ!?」

 

離れようとしたが、身体が動かなかった。見ると

ミリィの両腕がシルフィーをガッチリと捕まえていた。抱き枕と間違っているのだろうか。

 

動かそうとした振動でミリィは目覚めた。

 

「ふぁ〜おはようシルフィー。さて朝食集め。一緒に行こ」

 

そう言うとミリィは手を離し、近くに置かれていた麻袋を渡してきた。そしてシルフィーをぐんぐんと引っ張る形で森へと足を進めた。

 

「・・・」

 

シルフィーは仏頂面で黙々と山菜集めに勤しんでいる。隣では既にへばっている、だけど笑顔を絶やしていないミリィがいる。

 

「ねぇねぇ。もう少し笑ったほうがいいよ」

 

「・・・なんで」

 

「だって笑うのって楽しいじゃん!」

 

(笑顔とか周囲の人にみせたら?)

 

「・・・笑う・・・か」

 

この出来事以来、シルフィーは徐々にだがフリード達に心を開き始めた。最初は料理なども自分の分は自分で作るなどしていたが、やがて人に作って貰ったり作ってあげたりと、隔たりは確実に薄くなっていった。

 

数日経てばシルフィーから話しかける程にまで成長していった。やがてシルフィーは五人と楽しく話し合える仲にまで発展した。

 

それは彼女自身にとって、今までの強がりが外れ、彼女本来の素直な姿の現れなのかもしれない。

 

 

 

そんな彼女は現在、夕食の材料集めに島の森へと

入っていった。

 

「えっと、リンゴが必要と・・・」

 

辺りを見回しながら森の奥へと進んでいった。

 

その時である!

 

「リンゴねぇ・・・禁断の果実って知ってるかい?」

 

「えっ?」

 

突然声が響いた。森全体に響き渡るかの様な声である。

 

「むかーしむかし。とある楽園にアダムとイブ。そして神様がいました。神様はアダムとイブにある事を言いつけました。【この木になっている果実を食べてはならん。もし食べれば、この楽園から永久に追放されてしまうぞ】」

 

「誰・・・誰なの!?」

 

シルフィーは必死に辺りを見回した。だが声の主は近づいている事はわかるが、その所在は一向に掴めない。まるで全方位から迫っている様な感覚さえ覚えた。声は尚を話しを続けた。

 

「ところがある日、一匹の野良蛇に唆されてアダムとイブはその果実を食べてしまいました。怒った

神様は二人を楽園から追放しましたとさ。めでたしめでたし」

 

やがて声の主が茂みの奥の方から現れた。シルフィーは身構えたが、直ぐに激しい動揺が襲いかかってきた。

 

「なっ!貴女は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・私?」

 

そう。シルフィーの前に現れた女性。その顔はなんとシルフィーそっくりだ。違う所と言えば精々髪と瞳の色くらいである。

 

シルフィーの髪が雪の様に白色なにの対し、目の前の女性はまるで墨を流したかの様な黒色をしていた。更に瞳の色も違い、紅色の瞳をしていた。

 

だがそれ以外の外観はまさにシルフィーそのものであった。

 

「こんばんは、お人形さん。僕はリラ」

 

「お人形・・・あ、貴女は何を言ってるの?」

 

震えた声でシルフィーは言う。目の前の存在に何故か強く反抗できない。恐怖にも似た感覚に襲われた。

 

「別に、ちょっとした昔話を語ってあげただけだよ。それにしても・・・僕そっくりだねぇ。そうだ!良いもの見せてあげるよ」

 

そう言うと目の前の女性は自分の胸元を少しだけずらした。元からかなり際どい服装をしていた為、

完全にこんにちわとなった。

 

「あっ、ごめーん。間違えちゃった。君はこんなものよりこっちの方が興味あるよね?」

 

ワザとらしく胸を隠すと、目の前の女性は自分の左腕を見せてきた。そう。そこにはシルフィーの右腕にあるものと同じ物がつけられていた。

 

「腕輪!?私と同じ・・・」

 

その腕輪はシルフィーが右腕につけている腕輪と酷似していた。何かが違うのだが、その何かが言葉では言い表せない。それ程までに酷似していた。

 

「この腕輪はねぇ。月の腕輪って言われてるんだよ。君のつけてる腕輪は太陽の腕輪。そしてね、なんとこの二つを合わせると理想の世界が作れるほどの力を得ることが出来るんだ」

 

「理想の世界・・・貴女は一体」

 

「鏡だよ。鏡には自分の姿が写る。君は僕の写し身なんだよ。空っぽの器とでも言えばいいのかなぁ」

 

「・・・ところでさっきの話だけど、なんでアダムとイブは楽園を追放されたのか解る?」

 

何故追放された。それは神様の言いつけを破ったから。普通に考えた場合の答えはこうなる。

 

「答えはね。果実を食べた事で知識と知恵を手に入れたからだよ。アダムとイブは普段から全裸なんだ。でも果実を食べた事で知識と知恵を得た。そしたら自分が全裸な事を恥じて、慌てて葉っぱで秘部を隠したんだよ。神様にもそれでバレちゃったんだ」

 

「じゃあなんで、知識と知恵を手に入れたら楽園を追放されたんだろうねぇ・・・」

 

今度は、少女は勿体つける風に辺りをぐるぐる回り始めた。一周した後、シルフィーの顔に急接近した。そして耳元で囁いた。

 

「答えはね。邪魔だから」

 

「神からしたら、アダムとイブはお人形なんだ。お人形に自分で考える力なんて不必要だよね?だってお人形なんだもの」

 

話している口調は基本的に明るく振る舞われている。だが言葉の一つ一つに、相手を凍りつかせるには十分な冷たさが含まれている。

 

「さてと。お話はこれくらいにして、お人形さんは不必要なものを手に入れてしまったね。知った以上は楽園から追放しないと」

 

次の瞬間、リラはシルフィーの右腕を狙って襲ってきた。狙いは腕輪だと理解した為、間一髪だが避けることに成功した。

 

「甘い!!」

 

リラは尚も襲いかかってくる。右腕の腕輪を掴まれた。腕を振り払い、即座に反撃のパンチを繰り出す。するとリラの体が軽く吹き飛んだ。

 

「もぉ、余計な手間とらせないで。しょうがないなぁ」

 

【パチン】

 

彼女が指を鳴らした。すると島の上空に突如としてシンギュラーが展開された。そこからはドラゴンの群れが現れた。

 

「あのドラゴン。体色が違う!」

 

普段戦っているスクーナー級は赤っぽい色を基調としている。だが今回現れたドラゴンは、見た目こそスクーナー級だがその体色は黒色である。ブリック級やガレオン級。そしてフリゲート級までもが、

黒色であった。

 

まるで何かの部隊かの様に、統率されていた。

 

「精々喰い殺されない様に頑張ってね。活躍は彼に報告する予定だし。それじゃバイバーイ」

 

そういうと目の前の少女は姿を消した。

 

シルフィーは慌てて洞窟を目覚し駆け出した。

入り口ではフリード達五人が身を隠していた。

 

「シルフィー!ドラゴンが来た!ここに隠れてるんだ!」

 

しかしシルフィーはそんな事を聞かず、夢中で奥へと駆け出した。少しして、既に整備が完了しているオメガの元へと辿り着いた。

 

オメガへと乗り込む。機体を稼働させる為のコントロールユニットを差し込む。四つの翼からは放熱が開始された。

 

「おい!一人で戦うつもりか!?よせ!」

 

「どいて!」

 

フリード達の制止を振り切り、オメガは戦場の空へと舞った。

 

直ぐにガトリングを持ち、引き金を引く。

 

「・・・」

 

そこからは何も出なかった。ガトリングなどの弾薬は一切補充されていないのだ。こうなると武装は接近戦用のナイフか格闘戦だけどなる。

 

「はあっ。はあっ」

 

数の暴力は確実に病み上がりに近いシルフィーを

追い詰めていった。五人はその戦闘を見ていた。

 

やがてフリードはある決心をする。

 

「・・・機体の用意を」

 

「フリードさん!?」

 

「・・・本気なの」

 

「あぁ。あのままでは彼女が危険だ。手を貸すぞ」

 

「ったく。しゃあねぇなぁ」

 

そう言うと全員、黒装束からとあるものを取り出した。それは機体のコントロールユニットであった。洞窟の奥へと足を進めた。やがてオメガがあった広い場所へと辿り着く。そのさらに奥地へと足を運んだ。

 

そこにはオメガと酷似した機体が5つ並べられてあった。

 

「バレるだろうな。私達がこいつの乗り手だって事」

 

「それでもだ。行けるとこまで行くしかないだろ」

 

皆がコントロールユニットを差し込む。モニターなどがつき始めた。各モニターには機体の名称の様なものが映し出される。

 

【DEM・type・α】(アルファ)(搭乗者、フリード)

 

【DEM・type・β】(ベータ)(搭乗者、エセル)

 

【DEM・type・γ】(ガンマ)(搭乗者、ドミニク)

 

【DEM・type・Δ】(デルタ)(搭乗者、カリス)

 

【DEM・type・Ζ】(ゼータ)(搭乗者、ミリィ)

 

《STANDING BY COMPLETE》

 

モニターには完全起動された事を表す文字が映し出された。機体のラインが光る。

 

「よし!出るぞ!!」

 

次の瞬間、5つの機体は洞窟の天井を突き破り戦場の空へと舞った。戦闘中のシルフィーにもその機体の姿、そして出た瞬間は映っていた。

 

「あの機体!?洞窟から出た!?フリード達がその乗り手だったの!?」

 

「シルフィー!今は敵を倒す事を考えるんだ!」

 

各DEMはそれぞれ武装を取り出すと、群がるドラゴン達を蹴散らしていった。やがてドラゴン達は移動を始めた。六人はそれを追いかけた。

 

 

 

こうしてアンジュ達のいる島の上空へと辿り着いた。

 

六機のDEMはドラゴン達をひたすらに切り刻み、撃ち落としていく。そんな中、翼にクリムゾンナイフを刺したが倒すには至っていないドラゴンが下の島めがけて落下していった。

 

「皆さん!下の島から人間の生命反応が二つ確認されてます!」

 

「嘘でしょ!?島に人が住んでるの!?」

 

「モニターに写します!!」

 

写されたモニターには、男女二人がそこにいた。その内女性はシルフィーが知っている人間であった。

 

「アンジュ!?なんでこんな所に!?」

 

「知り合いなのか!?」

 

驚く6人の前にガレオン級が3体立ち塞がった。

 

「邪魔だぁぁ!!」

 

ナイフを持ち、接近戦を挑む。まだアンジュの所へは行けないらしい。

 

そしてアンジュ達の前には、ドラゴンが一体落ちてきた。翼を負傷しながらも、起き上がったドラゴンは目の前の二人を標的とした。

 

「くっ!この死に損ない!」

 

そう言いアンジュはナイフを構える。タスクはヴィルキスの側で回路の接続に取り掛かっていた。この回路さえ繋ぎ終えればヴィルキスは動かせるようになるのだ。早くしないと。その焦りが作業を手間取らせた。

 

その間にアンジュがドラゴンと戦闘していた。ドラゴンの翼がアンジュに直撃し、倒れこむ。

 

「逃げろ!」

 

しかし体を強くうち、直ぐには動かないでいた。

ドラゴンの顔がアンジュに迫る。

 

(喰われる!)

 

そう思い目を閉じた時だ。

 

突然ドラゴンが顔を引っ込めた。まるで何かに驚いた風に。そしてドラゴンの前にある男が立ち塞がっていた。黒装束の男であり、右目に傷のある男だ。その男の名はシオン。

 

ドラゴンが怯えた風に一咆哮あげた。口から火球を放ち、シオンを焼き払おうとした。

 

「どうやらお前は、年寄りに対しての敬意が足りん様だな」

 

シオンはその場から一歩も動かず腕を組み、ただ

ドラゴンの放つ火球を上半身だけで避けている。

 

「なんだあの人・・・本当に人間か?」

 

アンジュとタスクは目の前の光景に唖然としていた。次の瞬間、シオンはジャンプした。そしてドラゴンの頭の上に着地した。

 

「攻撃とはこういうものだ」

 

シオンの右手人差し指がドラゴンの頭の一部に突き刺さった。するとドラゴンは一咆哮あげると、力無くアンジュ達の前に倒れ伏した。

 

「いかに巨大な肉体とて、必ず急所というものはある。そこを正確につけば、例え頑丈な肉体だろうと指一本で簡単に破壊できるもの」

 

男は解説しながらアンジュ達の前に歩み寄った。

 

「こうして会うのは二度目かな?」

 

「貴方。あの時アルゼナルで私を蹴り飛ばした人ね」※第11話参照

 

やがて戦闘を終えたシルフィー達もその島へと降下する。

 

「アンジュ!?なんでここにいるの!?その人は?」

 

「貴女こそ。その人達は一体何者なの!?」

 

お互いが無意識の内に、ただ思った内容を口にした。

 

フリード達もシオンの姿を見て驚いた。

 

「シオン!なんでこんな所に!?」

 

「何、帰りにちょっとした寄り道だよ」

 

(なんだこの人達は・・・何が起きてるんだ?)

 

唯一タスクが蚊帳の外となってしまった。目の前に現れたメンバー7人の内、6人は同じ服を着ている。何処かの組織の人間と言われれば間違いなく信用されるだろう。

 

とりあえずお互いが情報を交換しあった。

 

「成る程。つまり君はアンジュの仲間で、アンジュと同じ様に墜落した。そしてこの人達のいる島へと流れ着いたんだね」

 

「まぁそうなるわね」

 

「そういえばフリード。あの機・・・」

 

「とにかく今日はもう遅い。まずは食事にするべきだな」

 

シルフィーの言葉を遮るかの様にシオンが言う。そして何処かから何かを取り出した。それはジョッキと酒。そしてこどものビール。おつまみであった。それらは十分な量が揃えられていた。

 

「おおっ!待ってました!」

 

エセル達は乗り気であった。

 

「君達はいける口かね?」

 

アンジュとシルフィーとタスクは首を横に振った。

 

「そうか。では仕方ないな」

 

やがてこの場にいる全員にグラスが渡った。中には泡立つ金の麦茶が注ぎ込まれる。

 

「二人もどうかな?」

 

アンジュとタスクは顔を見合わせた後、それらを受け取った。

 

「それでは偶然のこの出合いを祝して、乾杯!!」

 

「乾杯!!!」

 

こうしてシオン達大人組は酒を。シルフィー。アンジュ。ミリィ。タスクの四名はこどものビールで

乾杯となった。

 

数時間後には、大人達は完全に出来上がっていた。エセルとフリードは酔い潰れ、ドミニクに至っては、にゃははと笑い上戸となり、カリスは酔っ払っていた。ミリィも酒を奪い、飲み始めると物凄い勢いでそれらを飲み干した。将来は立派な酒豪、又はうわばみになるだろう。

※(お酒は二十歳から飲みましょう)

 

唯一シオンだけが酔わずに尚も酒を自分のジョッキに注いでいた。タスクが皆の介抱に当たっていた。

 

そんな中、シルフィーは一人砂浜にいた。少し後ろからは尚も笑い声が聞こえてきた。一人砂浜に座り、海を眺めていた。

 

「風に飛ばん el ragna 運命と契り交わして♪」

 

「風に行かん el ragna 轟きし翼♪」

 

彼女は歌を歌い始めた。島での不安。あの時現れた自分そっくりな顔をしたリラと名乗る少女。彼女の言った言葉、お人形さん。それらの不安から心を落ち着かせる為に、歌い続けた。

 

「・・・いい歌ね」

 

不意に声がした。振り返るとアンジュがいた。アンジュはシルフィーの隣に座った。

 

「始まりの光 kilari・・・kirali」

 

「終わりの光 lulala・・・lila」

 

アンジュが歌を歌い始めた。その歌はシルフィーの歌う歌と酷似していた。

 

「アンジュ。その歌・・・」

 

「永遠語り。お母さまが私に教えてくれた大切な歌よ」

 

「永遠語り・・・」

 

「貴女の歌を前に聞いた時に聞きたかったけど、貴女はその歌を何処で知ったの?」

 

「・・・覚えてない。気がついたらこの歌を知っていた」

 

「そう」

 

やがてお互いがそれぞれの歌を歌い始めた。すると見事なものとして完成した。

 

「ちょっと見ない間に、お互い変わったわね」

 

「そうみたいね」

 

「・・・あの時はいきなり殴りかかって悪かったわ」※第9話参照

 

「まだ気にしてたの?貴女って意外にマメね。別にいいわよ。過ぎた事だし。それより、貴女はアルゼナルに帰りたい?」

 

「・・・分からない」

 

この答えに一番驚いたのはシルフィー自身だ。フリード達との生活は悪くない。ならば何故一緒にいようとしないのか。

 

「誰も待ってくれてなんていないのかもね・・・」

 

お互い何も言わずにじっと海を眺め続けた。やがて水平線から太陽が昇り始めた。綺麗な景色だ。

 

「アンジュ!シルフィー!」

 

突然タスクが二人の元へと走ってきた。

 

その時だった。砂に足をとられタスクは転倒した。

 

「タスク!?うわっ!!」

 

アンジュとシルフィーはタスクにぶつかり倒れ込んだ。するとお互い胸に何かの違和感を感じ取った。まるで何かに押し潰されてるかの様な感覚である。

 

「!!!??」

 

見てみると、なんとタスクの片腕がそれぞれの胸の上へと置かれていた。しかも顔面に至ってはアンジュの股間へとダイブしていた。またこの展開か。

 

「ごっ、ごめん!今すぐ離れるから!!」

 

慌てて手を離そうとした結果、なんと二人の胸を

揉み始めた。最早事故では言い訳が効かないレベルだが、タスクの為に言おう。これも事故である。

 

「なっ!なにすんのよこのド変態!!!」

 

「・・・」

 

アンジュはそう叫び、シルフィーは無言でタスクに殴りかかった。女としてはあの様な事をされてはたまらないらしい。この時二人の考えがベストマッチした。

 

やがてタスクは砂浜に顔だけ出す形で生き埋めとなった。

 

「酷いよアンジュ!それにシルフィーも!別にわざとじゃなくて」

 

「だとしても多い!!」

 

「それよりタスク。何か要でもあるの?」

 

シルフィーが本題を切り出した。

 

「そうだ!二人とも!ヴィルキスに通信が入ったんだ!!」

 

「なんですって!?」

 

その言葉を聞き、二人は駆け足でヴィルキスへと向かった。

 

「おーい!俺を抜いてから行ってくれぇ!」

 

砂浜には生き埋めのタスクだけが残された。





課題が中々終わらないから更新ペースが遅くなります。

そのくせ課題をやらずに昔のゲームで遊んでいる堕落している作者。皆さんはこんな人間に育ってはいけませんよ。
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