クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
アンジュがモモカさんを買い取ってからしばらくが経過した。
第一中隊は相変わらずアンジュが報酬を独占していた。そして残された少ない取り分もシルフィーが占める形となった。
その為、それを快く思わないヒルダ達によって、先の戦闘では遂にフレンドリーファイアまで発生しかけた。
今回の出撃帰還後も、ロザリーは二人に突っかかっていた。
「いい加減にしろ!この銭ゲバ共!!テメェが報酬独り占めしてるせいでこっちはおまんまの食い上げだ!」
決して稼ぎが無い訳ではないが、それでも差は歴然としていた。するとアンジュはキャッシュを取り出した。
「な?なんだ!?」
「迷惑料。足りない?」
「ふっ・・・ふざけんな!」
「だめだよロザリー!落ち着いて」
今にも掴みかかりそうなんロザリーをナオミが止める。
「お前だってこいつに報酬とられてちゃいつまでも借金生活だぞ!」
「ううっ。痛いところを突くなぁ」
「いい加減にしなさいアンジュ!何故命令が聞けないの!?」
サリアも我慢の限界なのかアンジュに詰め寄よった。
まだシルフィーの方は命令は聞くが、アンジュに
関しては完全にサリアの命令など無視している。
「ドラゴンなら倒してるじゃない」
「そんなんじゃない!これ以上、隊の連携を乱すなら!」
「罰金でも処刑でもお好きに」
そう言うとアンジュは黙って去っていった。サリアが悔しそうに歯ぎしりする。
一方、シルフィーの方はメンバーの話など御構い無しに、黙ってオメガをじっと見つめていた。
「・・・シルフィー?どうしたの?」
ナオミが不思議に思い尋ねる。不意に話しかけられた事に驚いたのか、シルフィーは少し驚いた顔をしていたが、直ぐに穏やかな顔で笑みを浮かべると、その場を離れた。
その夜の事だ。ジル司令の部屋ではジル司令、サリア、メイ、マギー、ジャスミン、バルカンと、以前集まったメンバーが集まっていた。
「ガリアの南端に到達。しかし仲間の痕跡なし。
今後はミスルギ方面で仲間の捜索にあたる・・・か」
「生きてたんだね。あのハナタレ小僧」
ジャスミンがどこか懐かしそうに言う。
「タスクのことか」
「タスク・・・」
サリアが昔の記憶を呼び起こす。最も、まだ本当に子供の頃だった為、あまり記憶にはないが。
「じゃあヴィルキスを直したのも!」
「タスクだろうな。ジャスミン。タスクとの連絡は任せる。いずれは彼等の力が必要になる」
そう言うとジル司令は手元の資料に目をやる。
「さて、本題に入るか。アンジュをヴィルキスから降ろせと」
「アンジュはヴィルキスになれた事で増長してきてます!このままいけば、いつか部隊を危機に陥れる!!そうなる前に・・・!」
「そうなる前にどうにかするのが隊長の務めだろ?」
ジル司令の一言にサリアがハッとする。
「お前ならうまくやれる。期待しているよ、サリア」
そう言うとジル司令はサリアの頭を撫でる。その
光景に、ジルとマギーが無言で顔を見合す。
「それはそうと、二つほど聞いてほしい事がある。まず一つ目だ。このデータと共にタスクから写真が送られてきた。これを見てほしい」
そう言いジル司令は数枚の写真を机の上に並べた。男二人に女四人が映し出されている。シオン達だ。更にはDEMが写されてる写真もあった。
「以前アンジュが行方不明になった時、シルフィーも同じく行方不明になった事がある。そしてこいつらは、シルフィーと一緒にタスクの前へと現れたらしい」
「あれ?でも聞いた話だとシルフィーはアンジュと同じ島に流れ着いたって」
「騙されてたんだよ。私達は」
「この機体。間違いない。以前私達の前に現れた
機体だ。この人達の誰かが機体の乗り手だというの・・・」
「タスクに聞いたところ、一名を除き、残りの全員が機体に乗って来たらしい。少なくても、シルフィーとこいつらには何らかの接点がある事が判明した。タスクの反応を見る限り、彼等との関係の線は0だ・・・サリア。あいつの行動はどうだ」
「特に怪しい点は見受けられません。隊になれた事で増長してる部分は見受けられますが、隊のメンバーとも自分から歩み寄ろうとはしています」
「ジル。まだシルフィーの事を疑ってるのかい?」
ジャスミンが呆れた風に言う。
「当たり前だ。あいつもオメガもあまりに謎な部分が多い。もしリスクがリターンを上回ったら、私としては然るべき処置をするだけだ」
その一言で場の空気が重くなってしまった。数秒の沈黙が場を包み込む
「では次に二つ目。これはタスクからの情報だ。
こいつらが現れた時、シルフィーはドラゴンと戦闘をしていたと報告を受けた。その時のドラゴンは、黒い体色をしていたらしい」
「黒いドラゴン?データにないはずです。初物ですか?」
「初物という点だけなら私とてこの場で言う事は
せん。問題はこのドラゴンが出現した際、一切の
シンギュラー反応が確認されなかった事だ」
「何だって!?」
皆が驚いた。シンギュラー反応。それはドラゴンが現れる際に必ず反応する信号の様なもの。それらを感知し、アルゼナルはメイルライダーを送り出す。これが普通の戦いだ。
だが仮にシンギュラー反応の起こらないドラゴンの進軍があるとする場合、それはこちらにとってかなりの危険である。
「ドラゴン達が進化してるとでも言うの・・・」
今度はジル司令とマギーとジャスミンが顔を見合わせた。
「まぁこのドラゴンはあいつらが報告してこなかった以上初物として扱う事にする。とにかくサリア、隊長のお前には期待してるよ。今後も頑張るんだ」
そう言ってジル司令はサリアを見た。それにサリアは何も言わずに黙って頷いた。
次の日、食堂ではエマ監察官が目の前の光景を否定していた。眉間にシワを寄せ、眉毛はピクピクと震えている。
「ありえない!!ありえないわ!!人間がノーマの使用人になるなんて!ノーマは反社会的で好戦的で無教養で不潔でマナの使えない文明社会の不良品なのよ!」
「はいはい。モモカ、おかわり」
エマ監察官の小言などに耳を貸さず、アンジュは
モモカさんにスープのお代わりを要求する。
「はい!アンジュリーゼ様!」
笑顔で空皿にスープを流し込む。豪勢な食事だが、その全てはアンジュの自腹だ。作ったのはモモカさんだが。
「モモカさん!貴女は自分が何をしているかわかっているの!?」
「はい!私、幸せです!」
人に尽くす事に喜びを感じる。彼女はなんて幸せ者なのだろう。こうも笑顔で言われてはエマ監察官は何も言う事が出来なくなってしまった。
「よかったねモモカ!アンジュと一緒に入れて」
「はぁ」
「?どったのエルシャ?」
通帳を見ていたエルシャが、普段見せないため息をついた事にヴィヴィアンが疑問に思い尋ねてきた。
「もうすぐフェスタの時期でしょ?少ない予算で、幼年部の子供達に何をプレゼントしようか悩んじゃって」
「そうか。今の報酬はアンジュとシルフィーの二人が取り合う形なのよね・・・なんとかしないと」
「どうなんとかしてくれるんだ?」
サリアの独り言にヒルダ達がつっかかる。
「どんな罰も金でなんとかするぜ。あいつらは。
第一聞きやしないだろうねぇ。あんたみたいなやつの言うことなんて」
「・・・何が言いたいの」
「舐められてるんだよ、アンタ・・・隊長、かわってあげようか?」
ヒルダの言葉に、サリアは黙って席を立った。彼女の向かった先はジャスミンモールだ。
(みんな好き勝手ばっか・・・私だって、好きで隊長をやってるんじゃないのに・・・)
店番のジャスミンにキャッシュを投げ渡す。
「・・・いつもの」
「一番奥を使いな」
慣れた口調でそう言うと、ジャスミンはサリアに紙袋を手渡した。それを受け取ると、サリアは試着室へと慎重に足を進めた。
数分後。今度はシルフィーとナオミがジャスミン
モールにやって来た。
「そろそろフェスタだからさ。シルフィーも水着を選ばないと」
「水着ねえ。適当にこれでいいよ」
水着のバーゲンセールの陳列棚のうち、ろくに見ずに適当に一つの水着を手に取った。彼女はあまり着飾る事は好きではなさそうだ。
だがそのみずきを見た途端、ナオミの顔が赤く染まった。
「ダメダメ!絶対それやめた方がいいよ!!」
「何がダメなのよ」
彼女が手にしている物。それは水着とは名ばかりな紐である。胸と秘部に申し分程度の布地があるだけで、残りは紐である。
「もうこれ水着じゃなくて紐じゃん!これは!?
こういうのなんていいと思うなぁ、」
その後、シルフィーはナオミに勧められて、適当な水着を持たされていた。
「全部試すの・・・ジャスミン試着室借りるわ」
「一番奥を使いな」
ながら作業中、キャッシュの勘定をしながらジャスミンが呟いた。やがて思い出したかのようにたった一言呟いた。
「・・・あっ」
試着室内にて。
「愛の光を集めてキュン♪恋のパワーでハートにキュン♪」
「美少女聖騎士プリティ・サリアン!!」
「あなたの隣に突撃よ♡」
・・・この作品は
【クロスアンジュ Another story】である。
間違っても、プリ●キュアでも、リリ●ルなのはでも、ましてや美少女聖騎士プリティ・サリアンでもない。
ではなぜこのような事態に陥っているかについて話そう。
彼女、プリティ・サリアンことサリアは人に言えない趣味が二つある。その内の一つは恋愛小説朗読者だ。
そしてもう一つの趣味、それが今閲覧者の方が目撃しているこのコスプレである。
試着室には元ネタと思われるマンガもおいてあった。
彼女の為に言うが、今の彼女は過度なストレスにより精神的なメンテナンスを実行しているのだ。
プリティ・サリアンでいる時間だけは任務やストレスから解放されている。
彼女はこれをいつか一つの部屋でやりたいと願っている。その日が来るまでは狭い試着室の中でなりきっているのだ。
そして今彼女は鏡に写った自分にうっとりしている。
彼女のテンションボルテージが最高潮に達する。
手に持ったおもちゃの杖を高らかに振り上げると、それを前に振りかざす。
「シャイニング・ラブエナジーで私を大好きに
なぁ〜〜〜れっ♡」
【しゃっ】
不意にカーテンが開かれた。鏡の端の部分には、
シルフィーが写っていた。鏡を経由する形で、お互いの視線がぶつかり合い、そして固まった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・プッ」
【しゃっ】
カーテンが閉ざされた。
「シルフィー?」
ナオミが尋ねてきた。彼女はどうやら試着室内での光景を見ていないらしい。
「これ全部買います」
そう言うとキャッシュを投げ渡し、二人はジャスミンモールを後にした。
こちらは試着室内でのサリアンではなくサリア。
「♨︎卍∞@VII!!!!!!」
現在言葉にならない悲鳴を口から発する事なく試着室の床をのたうちまわっている。既にテンションボルテージは地の底を貫く程に落ちている。
(見られた!知られた!!笑われた!!!)
彼女からしたら既に知られたくない秘密の一つをヴィヴィアンに知られている。それなのにコスプレの趣味まで他人に知られてしまったのだ。
(こんな事・・・みんなに知られたら)
(へぇ〜私達の隊長にこんな趣味があったとわねぇ〜)
(・・・はぁっ)
ヒルダ達の嘲笑う視線とジル司令の失望の眼差しが彼女にははっきりと感じられた。
他のメンバーも例外ではない。おそらくサリアに
生暖かい視線を送りつけるだろう。
なにより彼女の中では、扱いづらい部隊メンバー
リストのトップスリーに名を連ねるシルフィーに
知られた事が一番嫌な事であった。
こんな事が知られたら、おそらく自分の隊長としての僅かに残された威厳も、隊長としての生命も、何もかも終わりだとを感じ取れた。
しばらくサリアは脳内で苦闘していた。
「・・・こうなったら」
やがてサリアはある決意を固めた。そしてその目は親の敵でも見ているような目であった。
風呂場にて。
現在アンジュ、モモカさん、シルフィー、ナオミの四人が入浴中であった。
【ガラッ】
風呂場の扉が開かれた。何気なく見てみるとサリアがいた。何故か制服を着たままだった。サリアは何も言わずにシルフィーの元へと大股で接近してきた。
「・・・殺す!」
突然サリアがシルフィーに向けてナイフを突き刺してきた。刺さる直前、彼女は手で何とかそれを受け止めた。
「何するの!?」
「見られた以上は生かしておけない!」
「見られた!?何を!?」
「しらばっくれる気!?」
実はシルフィーは既にプリティ・サリアンの事などすっかり忘れていたのだ。しかしそれで引き下がるサリアではない。何よりコスプレを笑われたのが
一番気に喰わない点らしい。
「落ち着いてサリア!とりあえず落ち着こう!」
ナオミが背後から羽交い締めにする。
「離しなさいナオミ!離せぇ!」
サリアが動けないこの隙にシルフィーは風呂場から脱出していた。
「煩いわよサリア。少しは静かにしなさい」
隣でモモカさんと流し合いをしていたアンジュが言う。
「アンジュ!貴女のせいでもあるのよ!」
「何よそれ。私には関係ない事でしょ」
「!!関係・・・ないですって!?」
何故こうなったのか。精神的メンテナンスをしたからだ。では何故精神的メンテナンスをしたのか。それはアンジュのせいでもある。サリアの怒りの矛先が今度はアンジュに向けられた。
「こっちはアンタにも迷惑かけられてばかりなのに!関係ないですって!私達はチームなのよ!なのにあんたの方は一人だけ好き勝手やって・・・!」
ナオミを振りほどき、サリアがアンジュに掴みかかる。
「後ろから狙ってきたり!機体を堕とそうとするやつの何がチームよ!」
アンジュがサリアを背負い投げした。サリアの身体は湯船の中へと叩きつけられた。制服の上が脱げた事に気がつき、慌てて手で胸を隠す。
「連中を止めないって事は、あなたも私に堕ちて欲しいんでしょ!あなた達に殺されるなんて真っ平!だから私は一人で戦うだけよ!」
「・・・好き勝手なことばっかり!いい加減にして!」
「そっちこそ!何がチームよ!」
湯船が二人の戦場へと変わった。モモカさんとナオミは止めるに止められず、二人の戦闘を見守っていた。
「私が隊長にされたのも!みんなが好き勝手言うのも!シルフィーに秘密を見られたのも!それを笑われたのも!ヴィルキスを取られたのも!」
サリアはアンジュの胸を揉んだ。それに負けじとサリアの胸を揉もうと手を伸ばす。
しかしそこには手応えがなかった。
「・・・あれ?」
全てを察し、サリアの顔の赤さが最高潮に達した。
「全部アンタのせいよぉ!!!」
「はぁ!?」
ここまでいくと八つ当たりもいいところだ。すると後ろにある扉の開く音が聞こえた。振り返るとエルシャとヴィヴィアンがいた。
「だから、カレーにはカツよりメンチの方が、
て、なんじゃ!?」
「あら、大変ねぇ」
二人は直ぐに現状が理解できたらしい。
「お願いです!アンジュリーゼ様を止めてください!」
「二人とも!アンジュとサリアを止めるのを手伝って!」
モモカとナオミがエルシャ達に頼む。
「・・・ここはお風呂場だもの。溜まってた汚れは先に洗い落とさないとね」
するとエルシャはデッキブラシをアンジュ達に投げ渡した。
二人はそれをキャッチすると直ぐに戦闘が始まった。今度はデッキブラシを使いながらだ。明らかに先程より悪化している。
「後は若い人たちでごゆっくり〜」
そう言うとエルシャ達は二人の手を引っ張りながら中風呂へと戻っていった。
「このド貧乳がぁ!!」
「黙れ筋肉豚ぁ!!」
外の風呂場では、二人の互いに罵り合う声だけが木霊し続けた。
ナオミ達が風呂を上がった際も、まだ争いは続いていた。一体あの場所では、どの様な事が繰り広げられているのか、あまり想像したくない。
ナオミが部屋へと帰ると、先に帰っていたであろうシルフィーの姿がなかった。
「あれ?シルフィー。どこ行ったんだろ?」
疑問に思いつつベットへと入る。疲れからか、直ぐに眠りについた。
「基地の中でも争わなければ気がすまないわけ!?」
司令部ではエマ監察官が二人に呆れていた。あの後二人の争いは一時間ほど続いたらしい。全身傷まみれだった。
「もー!これだからノーマは!!非社会的で好戦的で無教養で不潔で野蛮で!」
今回のアンジュはとばっちりであるが。
「らしくないな、サリア」
「別に・・・」
「始末書50枚!明日の朝までに提出!」
エマ監察官はそう言うと二人に50枚の紙を渡した。
「はっ!」
サリアは直ぐに返事をした。
「・・・なんで私まで・・・ハックシュン!」
アンジュは愚痴をこぼしながらくしゃみをした。
それぞれが部屋へと戻る。
「お帰りなさいませ、アンジュリーゼ様」
「モモカ、始末書代わりにやって、私はもう寝る」
「喜んで!アンジュリーゼ様!」
アンジュはそう言って紙をモモカに渡すと、ベットに倒れ込み、暫くして眠りについた。
アンジュとサリアが風呂場で争っている間。シルフィーはある機体の前に来ていた。オメガだ。
「・・・あの夢がただの偶然とは思えない。教えて。貴方は何者なの。何で名もなき島で私といたの。貴方は、私を知っているの?」
彼女の中に芽生えた疑問。それらと向き合うためにここにいる。これまでの夢を思い出し、少し身体が強張ったが、直ぐに腕を枕にうつらうつらし始め、やがて彼女の意識は深い闇に溶けていった。
「・・・ここは」
シルフィーが目を覚ました。覚ますなり辺りの異変に気がつく。今現在、彼女のいる場所がオメガのコックピットではない。再び見ているのだ。夢と自覚している夢を。
辺りの様子は薄暗い。されど見えない程の暗闇ではない。近くに太い枝が落ちていた。少し先には火が灯されていた。枝を拾いあげ、その火につける。
見事な松明の出来上がりだ。これによって辺りが見渡せる程度の明るさが保てた。
周囲には石の様な物が並び立っている。
それらの中の一番奥の文字を見てみる。見たことのない文字だ。習った記憶がない。それなのに、何故か書いてある文字が読めてしまうのだ。
【あなをほれ】
壁に記された通り、片手で穴を掘ってみる。すると突然、目の前の壁が崩れ落ちた。
その奥へと進んで行く。するとそこにも石の様な並びはあった。今度は数がおおいが、その石全てに掘って書いたと思わしき跡がある。だが、その全てが上から何かを上書きしたかの様に、文字として読めなかった。
唯一、この部屋の一番奥の壁にのみ読める文字があった。それは文字というよりは文であった。
【真実を受け止める勇気がある者よ。嘘に挑む覚悟に満ちたものよ。汝望むならば、この扉をあけてみせよ。そこに永遠の希望が眠っている。扉を開くには●●●●●●・・・】
最後ら辺の文は全く読めなかった。まるで何かの汚れの様なものが上から被さっているみたいだ。
「ん?」
ふと、文字の横を見た。そこにも文字が彫られていた。だがその内容は明らかにこれまでの内容とは違う変化があった。
【きょうからここがわたしのおへや。ひんやりしていてどこかきもちいい】
【パパがおともだちをつれてきた。わたしとおないどしくらいのこ。にたものどうし、ともだちともだちー】
【きょう、みんなとおちゃかいをひらいた。わたしのいれたこうちゃにみんながわらってのんでくれた】
【パパがどこかにおでかけしたみたい。むかったばしょはわかる。パパだけずるい。わたしもついていくんだい】
ここで終わっている。この内容。先程までのとは
明らかに違う。走り書きの様な執筆で日記の様な内容が記されていた。雰囲気としては、まるで覚えたての知識を自慢している子供の様な内容であった。
【カッ!】
突如として背後が眩しくなった。それと同時に熱気も立ち込めてきた。来た入り口を大急ぎで戻る。するとその場所は先程までの洞窟とは違っていた。
外だ。先程までいた洞窟の部屋とは違っている。外である事だけが判明していた。
外は黒煙と爆炎が辺り一帯に立ち込めていた。黒煙がシルフィー目掛けて吹きかかってきた。黒煙を思いっきり吸ってしまい、呼吸困難に陥った。
(ゲボッ、ゲホッ。ダメ。意識が・・・あれ?)
意識を失う直前、シルフィーはあるものを見た。
黒煙と爆炎が吹き荒れる中、そこに佇む黒き謎の姿を・・・
【ガバッ】
夢から目覚めた。全身が汗まみれであり妙な匂いを放っていた。時刻は午前4時過ぎであった。
「はあっ。はあっ。はあっ。はあっ。」
肩で息をしていた。身体を流れる汗を手で軽く拭こうとする。その時、汗とは違う感覚を皮膚に感じた。ザラザラと粉っぽい。
シャワー室へと駆け込む。朝早いため誰もいない。一人、脱衣所の電気をつける。蛍光灯が二、三度点滅をした後、安定した光を放ち始めた。
「!!!」
目の前の光景に二、三歩程度後ずさる。鏡に写された自分。その全身は煤まみれであった。黒い粉のプールにその身をダイブしたかの様に。更に煤にだけ注意が行っていたが、手を見てみると、何と泥と砂が付いていた。
彼女は衣類を簡単に手洗い、その身の汚れもシャワーで流し落とした。髪に付着した煤が流れ落ちる。その光景を見ながら彼女は確信した。
(間違いない。オメガは何かを伝えようとしている。私の知らない、私に関する何かを・・・)
暫くの間、シャワー室には湯の流れでる音だけが響き渡った。
どうしてもオリジナルシナリオ要素は夢とかで出すことしかできないなぁ。
なお、シルフィーはモモカさんが部屋に来た事でナオミの部屋に住み着いている設定にしています。
今回は話を詰め込みすぎた感があるけど
KI☆NI☆SU☆RU☆NA☆!!