クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第24話 初物激戦

 

アンジュとサリアの風呂場での騒動から一夜が

明けた。

 

モモカさんがアンジュのキャッシュで作った朝食を持って、アンジュを起こしに向かっていた。

 

「おはようございます!アンジュリーゼ様。朝食をお持ちになりました」

 

当のアンジュはシーツにくるまっていた。

 

「反省文でしたら私が夜の内に書き終えましたのでご安心ください」

 

モモカさんは夜の内に始末書を仕上げていたのだ。

 

因みに始末書の内容だが、簡単に書くとこのような内容である。

 

【わたくし、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギは

落ち度は一切無く、何かを改める事は出来ませんがわたしの存在そのものが完璧すぎるのであるなら

それなりの落ち度は感じています】

 

・・・もはや始末者ではなく自慢書である。こんな物をエマ監察官が見たら、間違いなく眉間のシワ数が今の三倍に増えるだろう。

 

「アンジュリーゼ様?」

 

モモカはアンジュの異変に気がついた。何故か全くの無反応に近かったのだ。不思議に思い、アンジュの顔を覗き込む。すると頬の辺りが若干赤くなっていた。

 

「アンジュリーゼ様!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風邪ェ!?」

 

ブリーフィングルームでは、アンジュ以外の第一

中隊の皆が集まってアンジュが風邪をひいたと連絡を受けていた。

 

「湯冷めしたらしいわ。アンジュの風邪が治るまでの間、アンジュ抜きで第一中隊は動きます」

 

「休んだら罰金幾らだっけ?」

 

「一日100万キャッシュ」

 

「破産しちゃえ」

 

ヒルダ達がいつものように悪口を言う。

 

「さて、それじゃあ訓練を開始するわよ」

 

そう言うと皆ロッカールームへと足を進めた。

 

その後は普段通りの訓練をしていた。アンジュが

いない点を除くと何も普段と大差はないものだ。

 

 

 

 

アンジュが倒れてから数日が経過した。サリアが

隊長となってから毎日欠かさずつけている日誌を書いていた。

 

【隊長日誌、3月6日。今日も滞りなく訓練を進める。アンジュがいない事で部隊に規律が戻ってきた気がする。アンジュが戻ってきても、この現状を

維持するため、復帰後のアンジュの扱いには十分な注意を払おうと思う】

 

サリアは隊長日誌を書いていた。因みに規律が戻ったと思っているが実はゾーラ隊長の部屋ではヒルダ達がレズプレイをしている事に、サリアは気づいていない。

 

サリアは付け加える風に、シメの文を書いた。

 

【本日の死亡者・・・0】

 

サリアは格納庫へと来ていた。そしてヴィルキスを見ていた。

 

するとそこにメイがいた。どうやらヴィルキスの

整備をしているみたいだった。

 

「ヴィルキス・・・どう?」

 

「アンジュが使うとボロボロになるからメンテナンスが大変!でも仕方ないか。稼ぎも危険も独り占めしてるんだから」

 

「え?」

 

「整備してるとね・・・感じるんだよ。

【ライダーの気持ち】が」

 

「もう誰も死なせない。ドラゴンの攻撃は全部一人で受ける。そんな気持ちが伝わるんだよ」

 

「・・・考えすぎじゃない」

 

「そうかもね。でも、アンジュもシルフィーも少しずつだけと、私達に歩み寄って来てるよ。オメガを整備してて、シルフィーの気持ち、少しわかる様になってきたんだ」

 

「ほら。シルフィーって、最初にここに来た時、近寄りがたい感じだったじゃん。何処かお互いに他人行儀だった。でもそれが今では私達と同じ道を歩いている感じがするんだ。きっと、シルフィーが遠慮しないのは、私達の事を認めてくれたからじゃないかな・・・仲間として」

 

「・・・考えすぎよ」

 

今度は上の空で返事をした。

 

「でも、二人が専用機に乗るようになってから、誰も死んでないよね。第一中隊は」

 

その言葉にサリアが驚く。そして自室に戻ると隊長日誌で調べた。第二第三中隊は疎らながらも死者が出ている中、第一中隊だけ、二人が専用機に乗り出してからの死亡者は常に0だった。

 

「・・・ベテラン揃いだからでしょ。考えすぎね」

 

するとそこに警報が鳴った。ドラゴンが出現したのだ。直ぐに皆がパイロットスーツへと着替え、それぞれのパラメイルへと乗り込む。

 

「隊長より各員へ。今回アンジュは休み。今回の

戦闘は八機で編隊を組む。戦闘空域に入り次第

全機密集陣形!戦力不足は火力の集中で補う!」

 

「イエス・マム!」

 

「全機出撃!!」

 

その掛け声のもと、アンジュを除いた第一中隊の

全機体が射出された。因みにアンジュは今、部屋の扉の前のモモカさんとにらめっこをしていた。

 

「どいて・・・いかなきゃ・・・」

 

「ダメです!お通し出来ません!」

 

「あんたを養うのにも・・・金がかかるのよ」

 

そう言うとアンジュはその場に倒れこんだ。

 

「アンジュリーゼ様ぁ〜」

 

 

 

 

こちらは戦闘中域に向かう第一中隊。

 

「シンギュラーまでの距離!2800!」

 

「了解。全機セーフティ解除!」

 

オペレーターの通信後、サリア達は全機戦闘態勢をとる。

 

「シンギュラー、開きます!」

 

すると空間からドラゴンの群れが現れた。その内の一匹のドラゴンは巨大の一にに尽きた。近くの孤島に着地したそれの大きさは、恐らくガレオン級以上だろう。

 

「でかっ!!」

 

「サリア、あのデカブツはどんなやつ?」

 

「あんなの・・・見たことない」

 

ヒルダの質問にサリアが答える。

 

「見た事ない?」

 

(サリアが見たことないドラゴン・・・)

 

皆の中で目の前のドラゴンに対する回答が出た。

 

「あのドラゴン!初物か!!」

 

「初物?」

 

ヒルダ達が興奮する中、シルフィーだけがその意味を理解できないでいた。

 

「過去に遭遇例のないドラゴンの事だよ」

 

シルフィーの疑問にナオミが答える。

 

「こいつの情報持って帰るだけでも大金持ちだぜ!ついてきなロザリー!クリス!報酬はあたしらだけで山分けだ!」

 

ヒルダが二人を連れて隊列を離れる。

 

「待ちなさいヒルダ!勝手な行動はやめなさい!」

 

サリアの注意をヒルダ達は無視した。

 

「なんか髪の毛がピリピリする」

 

「え?」

 

ヴィヴィアンが謎の言動を放つ。

 

(動きは鈍重。背中は重装甲って事は・・・)

 

ヒルダが腹部に回り込む。そのドラゴンの腹は決して固いとは言えなかった。

 

「ビンゴ!!ぷよぷよじゃないか!狙いは腹だ!

一気に決めるよ!!」

 

「っしゃぁ!」

 

三人が腹部を目指す。

 

「ぴりぴりぴりぴりぴりぴり」

 

ヴィヴィアンがつぶやき続けていたがやがて何かに気がつく。

 

「ヒルダ!もどれぇ!!」

 

「え!?」

 

次の瞬間、大型ドラゴンのツノが光った。 その

途端、大型ドラゴンを中心に魔法陣が展開された。

 

そしてその中にいたヒルダ達の機体が急に落下した。

 

「な!?何だこりゃ!?」

 

「うっ動けねぇ・・・」

 

「一体・・・なんなのこれぇ」

 

三人の疑問に、オペレーターが答えを出した。

 

「大型ドラゴンの周囲に高重力反応!!」

 

「重力!?」

 

巨大ドラゴンを中心に、重力空間が広がる。サリア達のパラメイルも重力に捕まり、機体が地面に叩きつけられた。ハウザー二機がライフルを構えるが、重力の影響で照準が全く定まらない。

 

こうしている間にも、重量負荷がパラメイルに襲いかかっていた。遂に、ロザリーとクリスの機体が嫌な音をたて始めた。

 

(死ぬ!)

 

二人とも直感的にその事を感じ取った。

 

「ちっ!おい!なんとかしろ、サリア!!」

 

「だから待てと言ったのよ!!」

 

「二人とも!今は通信で争ってる場合じゃないよ!」

 

ヒルダとサリアの通信にナオミが割り込む。その通信に更に割り込む者もいた。

 

「サリア達!何してるの!?早く起き上がりなさい!」

 

通信越しにシルフィーの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「それを今考えてるところ!重力から抜け出す方法を!」

 

「重力!?何を言ってるの!?今止まる余裕があるのか!」

 

何やら会話が噛み合っていない。何かが変だ。外部カメラを起動させてみる。

 

「・・・・・・え?」

 

皆が目の前の光景に呆気にとられていた。自分達の機体が動けない中、何故かオメガだけは何の問題も無く、高重力空間で活動していた。

 

「シルフィー!貴女の機体は動けるの!?」

 

「何言ってんの!?そっちは動けないの!?」

 

シルフィーも驚いていた。彼女からしたら、突然

サリア達が動かなくなった事が不思議でたまらないらしい。

 

「ちっ!仕方ない!!」

 

次の瞬間、シルフィーはサリア達の機体の手足を掴むと、魔法陣の外に放り投げた。魔法陣の外ということで高重力から解放された。

 

「あいつ・・・」

 

魔法陣内では、シルフィー対ドラゴンの戦闘が繰り広げられていた。高重力を放つドラゴンは、それ以外の攻撃方法を持たないのか、取り巻きのドラゴンどもが援護していた。

 

(重力発生源はツノか?とにかく、ツノを破壊すればそれで・・・)

 

シルフィーがガトリングを持ち出し、簡単な標準を定める。

 

その時だった。突如として空間が歪み始めた。歪みの向こうからはドラゴンの増援が送り込まれてきた。弾はそこから現れたドラゴンを貫くも、本命のツノを狙う事は出来なかった。

 

「援軍!?」

 

「そんな!シンギュラー反応は確認されていません!!」

 

「じゃあ目の前のアレは何なんだよ!!」

 

オペレーター達とサリア達が慌てふためく中、目の前のシンギュラーから、奴等は現れた。シルフィーはその存在を知っていた。以前交戦した黒い体色のドラゴン。それらが目の前にいるのだ。

 

「こいつら、あの時現れたタイプか!!」

 

黒いドラゴンは総合スペックが他のドラゴンより遥かに高くなっている。その事は誰の目にも明らかであった。普通のドラゴンを猫で考えるなら黒いドラゴンは最低でも虎である。

 

(こいつら!以前より強くなってる!?)

 

黒いドラゴンの何匹かは魔法陣外にいるサリア達の方にも迫ってきた。皆がライフルを構え放つ。だが、その鉛玉はスクーナー級でさえ、掠りもしない。

 

「!伏せろ!」

 

声と共にドラゴンの背後からガトリングの弾丸が飛んできた。凍結バレット弾も含まれており、ドラゴンの数体は凍りついていた。

 

サリア達はすんでの所で伏せた為、流れ弾に当たる事はなかった。

 

「戦えないなら下がってて!こいつら、普通の

ドラゴンじゃない!」

 

「何言ってるの!?大体貴女一人でどうにか出来ると思ってるの!?」

 

「じゃあその状態の貴女達が加わればどうにかなるの!?」

 

「あーもー!だから言い争ってる場合じゃないってば!!」

 

シルフィーとサリアの言い合いも、ナオミが止めに入った。

 

雄叫びと共に巨大ドラゴンのツノが更に光輝いた。それに応えるかの様に、地面に展開されていた魔法陣が更に広がった。それは魔法陣の外にいたサリア達にも襲いかかって来た。

 

【ベキベキベキベキ】

 

再びパラメイルが嫌な音を立て始めた。

 

(部隊の全滅だけは避けなければ・・・最悪の

場合・・・機体を捨ててでも・・・)

 

「ゴホッゲホッ」

 

すると通信から咳が聞こえてきた。その咳の主と、その主の機体の名を、皆は知っていた。

 

「ヴィルキス!?アンジュなの!?」

 

何故アンジュがいるか、話は少し前に遡る。

 

「どうしても行くとおっしゃるなら!この格好で

行ってください!」

 

モモカが用意した格好。どてらにマフラーとマスクをしていた。

 

「あ〜ふらふらする・・・とっとと終わらせよ」

 

「行くなアンジュ!重力に捕まるだけよ!」

 

「大丈夫よ〜いつも通り私一人で十分・・・」

 

(くっ・・・!どいつもこいつも・・・!)

 

「いい加減にしろ!このバカ女ァ!!」

 

「!?」

 

「あんた一人で何とか出来るほどこのドラゴンは

甘くない!死にたくなければ隊長の命令を聞きなさい!」

 

「はっはい」

 

あのサリアがこんな迫力を出すとは、風呂場での

揉め事の時のよりも強気な声だった。

その勢いにアンジュは押された。

 

「そのまま上昇して!シルフィーはアンジュに向かってくるドラゴンを撃破して!」

 

お互いが言われた通りの行動をする。

 

「修正!右3度!前方20!」

 

「右ってどっちだっけ?」

 

「逆!!」

 

(サリアちゃん・・・まさか!)

 

エルシャはサリアの思惑を理解した。

 

「・・・なんか落ちてない?」

 

「そのままでいいわ!」

 

しかし実際ヴィルキスは落ちている。

 

「・・・やっぱり落ちてる!」

 

「熱でそう感じるだけ!」

 

だがヴィルキスは落ちている。巨大ドラゴンが目前まで迫ってきていた。

 

「今よアンジュ!蹴れぇぇぇ!!」

 

「け・・・蹴るうぅぅぅ!?」

 

次の瞬間、ヴィルキスの蹴りは、ドラゴンの左ツノをへし折った。それと同時に地面に展開されていた魔法陣が消滅した。

 

「機体が自由に動く!」

 

「よっしゃ!少し遅れたけど今から稼ぎまくるぜ!」

 

重力から解放され、皆が意気揚々としていた。

 

すると次の瞬間、黒いドラゴン達の動きが止まった。そしてシンギュラーが開かれた。そこから黒のドラゴン達は撤退を開始した。

 

「あいつら!逃げやがった!」

 

「ちっ!稼ぎが減っちまった!」

 

(逃げた?あれ程の戦闘力を持ってる個体が?群れごと?)

 

「サリア!敵は残ってるぞ!」

 

シルフィーの言葉に現状を思い出す。高重力場を発生させるツノがへし折られたうえ、弱点まで知られている以上、もはや例の巨大ドラゴンに怖さなど微塵も感じなかった。

 

第一中隊が総出となり、残ったドラゴンの殲滅に当たった。

 

 

戦闘が終わり、第一中隊全員が帰還した。帰還するなり皆が今日の報酬を受け取りに行った。

 

「こんな大金。夢見てぇだ!」

 

「夢じゃないよ!」

 

皆が大金を手にはしゃいでいた。今回は初物のバーゲンセールに近い形だった為、機体の修理費や借金を差っ引いても溢れんばかりの大金を手にできたのだ。

 

ただ一人、アンジュを除いて。

 

「少ない・・・」

 

「ツノを折っただけでしょ」

 

今回一番稼ぎが悪かったのはアンジュだ。

 

サリアの言う事は正論であった。すると突然アンジュは右手を出してきた。

 

「迷惑料・・・あなたの命令に従ったせいで取り分が減ったのよ」

 

「・・・さっきの言葉取り消すわ」

 

そして今回一番の功績者。一番稼ぎが良かったのはシルフィーだ。

 

「・・・シルフィー。今回は助かったわ。ありがとう」

 

サリアが言い終わると、ヒルダとロザリーとクリスの方を向いた。

 

「どう?これだけの大金よ。満足した?」

 

「あっ、ああ」

 

「こうして大金を手にしたのは、アンジュのおかげよね?」

 

「まぁ・・・そうだな」

 

「こうして生きているのは、シルフィーのおかげよね?」

 

「・・・うん」

 

「戦闘中にアンジュを狙ったり、シルフィーに難癖つけたりするの、もうやめなさい。二人とも、同じ第一中隊のメンバーなのよ」

 

「アンジュも。ドラゴン達を必要以上に多く狩るのはやめなさい。シルフィーだって。親しき中にも礼儀ありって言葉があるわ。少しは遠慮ってものを知りなさい」

 

お互いが顔を見合わせていた。

 

「私は・・・いいよ」

 

最初に切り出したのはクリスだった。

 

「確かに、二人がいなかったら、間違いなく私は死んでたし」

 

「まぁ・・・確かにな・・・わかったよ」

 

ロザリーも続けて言う。二人はシルフィー達を認めたのだ。そんな中、ヒルダだけが不満を露わにしていた。

 

「あんたら何言いくるめられてるんだ!?」

 

「別にそう言うわけじゃ・・・」

 

「でも・・・今回は流石に二人のおかげだし・・・」

 

「ちっ!裏切り者どもめ・・・」

 

そう言うとヒルダは一人、不機嫌にその場を離れた。

 

「大丈夫。いつかきっとヒルダちゃんも二人を認めてくれるわよ。それじゃあみんな!風呂場に行きましょうか!」

 

エルシャが言うとヒルダを除いた全員が風呂へと足を進めた。

 

 

 

風呂場にて。

 

「いーち、にーの!さーん!」

 

次の瞬間、アンジュとシルフィーの身体は浴槽へと投げられた。

 

「なっ何すんのよ!」

 

「なによいきなり」

 

「ふふっ、今までの事、お湯に流すのよ」

 

エルシャがそう言うと、皆が風呂へと飛び込んだ。

 

 

【隊長日誌、3月7日。こうして今回もドラゴンを

倒す事ができた。ヴィルキスにはアンジュが乗る。思うところもあるが、今はそれでいい。シルフィーの事も、彼女が何者なのか。そんなものは今はいい。二人とも、今は第一中隊のメンバーなのだから。だから私は隊長として、やるべき事をやるだけ。リベルタスのその日まで。隊長日誌終わり】

 

【・・・追記、本日も死亡者は0】

 

そう記すと彼女は立ち上がった。このままいけば、9人の内誰も死なない。部隊が上手く回っていける。そう信じていた。

 

あの事件が起きるまでは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある部屋にて。

 

「リラ!いるか!?」

 

大声と共に部屋の扉が蹴破られた。そこには一人の女性がいた。その女性はテーブルに足をのせて寛ぐリラを睨みつけていた。

 

「これはこれは隊長様。一体どうされたのかな?

そんなにプンスカしちゃって」

 

「しらばっくれるな!どういう事だ!?我が黒の

部隊が撤退したとは!?仮に全滅間際ならばまだしも、兵力はまだ75%以上も残されていたではないか!!」

 

「確かにあのまま戦えば奴等は皆倒せたのかもしれない。だけどご自慢の黒の部隊がたった一機の機体で4分の1近くの被害を被ったと考えると、戦いに勝利しても部隊の損失は80%を大きく超えるだろうね。そうなると後々響くよ」

 

「・・・・・・」

 

「現に重力操作を可能とするドラゴンは別の一機の機体の蹴りで物の見事に無力化されたじゃないか。あの時点で撤退しないと、こちらの被害が増えるだけだ」

 

「・・・よかろう。今回の事は初の合同演習であるが故に、我が部隊の連携に失敗がついてしまったという形で大目に見よう。だが忘れるな。我ら黒の部隊は、そこらの部隊とは違うということを。今度はこの様な無様な結果にはならん」

 

「それは大変楽しみな事で」

 

「・・・ところで、例の計画はどうなっている」

 

「ああ。あの計画の方ね。既に三機の試作機が作られている。君の部隊に回す分もじきに完成するだろう。さて、今日の設計は終了。早く向こうに戻らなきゃ」

 

「なんだ?もう行くのか」

 

「おや?知らなかったのかい?僕はこう見えて多忙な人間なんだよ。色々とやる事が多くて。僕自身が動く方が向いてるんだよ」

 

不気味な笑みを浮かべ、リラはその部屋から立ち去った。

 

 

 

一夜があけて朝となった。アンジュの部屋では、

あの事件を引き起こす起爆剤が今、投げ込まれようとしていた。

 

「まったく。昨日は散々な目にあったわ」

 

「でも良かったです。こうして熱も下がって・・・え!?」

 

モモカさんはアンジュの身支度の手伝いをしていたが、突然立ち上がり、マナのウインドを開いた。

 

「どうしたの?」

 

「マナから通信です!ってこれ!皇室の極秘回線からです!!」

 

「なんですって!?」

 

「とにかく出てみます!」

 

マナのウインドからはsound onlyとモニターに表示されている。そしてそこから、悲痛な叫びが聞こえてきた。

 

「モモカ聞こえる!?モモカ!?」

 

通信を開くと、そこにはアンジュの妹、シルヴィアからの通信であった。

 

「シルヴィア様!?」

 

「シルヴィア!」

 

「アンジュリーゼお姉さまとは会えた!?そこに

お姉さまはいるの!?」

 

通信から聞こえてくる声は、どう聞いても異常事態である事がうかがえた。彼女の身に何らかの危機が迫っているかの様に。

 

「ひっ!嫌!離して!離してよ!助けてお姉様!

アンジュリーゼお姉様ぁ!」

 

すると通信は切られた。モモカさんが折り返しで

通信を試みるが、一向に繋がる気配はない。二人とも、ただ呆然と虚空を見つめる事しか出来なかった。

 

(そんな・・・シルヴィア。あなたの身に一体何が

あったの!?)




アニメの8話終了で第3章は終了の予定です。

次の回は原作一番の和み回と思うので可能な限り和ませた雰囲気を出したいなぁ・・・

余談ですが私は現在花粉症です。

鼻のかみすぎで鼻の下がヒリヒリする。目も痒い。なぜこんなに花粉症は辛いのだ!!

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