クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第26話 ビキニ・エスケイプ

 

 

アンジュは離れの扉を開いた。そこにはミスティがいた。様子を見る限り、リラに何かされた感じはない。その事にまず安心した。

 

「久しぶりね、ミスティ」

 

「あっ、アンジュリーゼ様!」

 

「かつてはね。今はただのアンジュよ。それより、私に何か用があるの?」

 

「未だに信じられません・・・私の永遠の憧れで

あったアンジュリーゼ様が・・・ノーマだったなんて・・・」

 

「・・・ミスティ、あなたは優しすぎるわ。私は

ノーマだった。それが現実なのよ」

 

「・・・」

 

その言葉にミスティは押し黙ってしまった。

 

「さてと、これで満足よね。それじゃあ今度は私の番ね。頼みたい事があるの」

 

「なんですか!?私に出来る事なら手伝います!

何でも言ってください!」

 

「そう。それは良かったわ」

 

するとアンジュはナイフを抜いた。そして満面の

笑みで尋ねた。

 

「手伝ってくれる?脱走」

 

 

 

 

 

 

こちらはシルフィーとナオミ。二人は現在とある会場に来ていた。何やら長蛇の列が作られており、おそらくアルゼナル殆どのメンバーはここに集まっているのだろう。

 

「ねぇ。これから何が始まるの?」

 

「大運動会。フェスタの二代名物の一つだよ。賞金も出るからみんなが意気込んで参加するんだ。

シルフィーも参加する?」

 

「遠慮しておく。今の手元のキャッシュでもやっていけるし」

 

「そう。じゃあシルフィー。私は行ってくるね」

 

そう言うとナオミは参加希望者の列へと並んだ。

 

こうして参加する者と観戦する者とでの境界線が

引かれた。尚、司会はジャスミンが務めている。

 

「さぁ!さぁ!!さぁ!!!賞金100万キャッシュの大運動会の始まりだぁ!みんな賞金目指して頑張りなぁ!」

 

「イエェェェェェイ!!!!!」

 

次の瞬間彼女達のテンションボルテージが一気に

最高潮に達した。

 

「元気がいいなぁ!それじゃあ最初の競技に行ってみよう!最初の競技は!恐怖!溶ける水着でパン食い競争だ!」

 

何やらユニークな名前の競技である。その後も挟んで運べ!おっぱいたまごなどユニークだが、競技者は大真面目な何処か可笑しい大運動会は繰り広げられた。

 

 

 

 

そんな中、アンジュとミスティはジャスミンモールへと来ていた。水着を着用していたバルカンがいたが、皿いっぱいのハンバーガーであっさり餌付けに成功した。銃やグレネードなど、様々な武器を

カートに乗せていた。

 

「処刑!?」

 

アンジュはミスティから聞かされた言葉に驚いていた」

 

「はい。アンジュリーゼ様がノーマであることを隠していた。国民を欺いたため、ミスルギ皇室の人達はいずれ・・・」

 

「そんな・・・シルヴィア・・・」

 

アンジュは武器を入れたカートを押しながら店を出た。キャッシュの入った袋をバルカンの横に投げ捨てる。一応人質的に扱うため、ミスティの腕は縛っていた。

 

そしてこちらはヒルダとモモカさんであった。

 

「マナを使えるあんたなら、これ、動かせるよな?」

 

それはローゼンブルム家の紋章付きの輸送機だった。

 

「できますが・・・何のために?」

 

「決まってるだろ?脱走だよ」

 

その言葉にモモカは驚く。

 

「・・・お断りいたします。私が従うのはアンジュリーゼ様だけです」

 

「だったら死ぬかい?いいのかい?だ〜い好きな

アンジュリーゼ様のお世話ができなくなっちまうよ?」

 

ヒルダが拳銃を突きつける。するとそこにアンジュとミスティがやってきた。

 

「・・・モモカ!?」

 

「アンジュリーゼ様。それにミスティ様!」

 

「これはこれは・・・イタ姫様」

 

「モモカ!なんであなたがヒルダと一緒にここにいるの!?」

 

「この方が、脱走するから輸送機を飛ばせと!」

 

「脱走!?・・・どうしてなの?」

 

「あんたには関係ないだろ?」

 

そう言うとヒルダはアンジュ達に銃を向けた。咄嗟にアンジュもカートの中からアサルトライフルを手に取り、ヒルダに向ける。

 

「させないわそんな事。これは私が使うから」

 

「はぁ!?」

 

ヒルダは驚いた。まさか自分以外にも脱走を企てる存在がいた事に驚いた。するとモモカが驚きながらたずねる。

 

「もしかして!シルヴィア様の為にですか!?」

 

「私はあの子から自由を奪ってしまった。だから私が守る!私が・・・。モモカ!あなたもついてきてくれるわよね!?」

 

「もちろんです!アンジュリーゼ様のためなら!

シルヴィア様のためにも!」

 

「へぇ〜利害の一致ってやつか。なら話は早い。

一時休戦ってやつでいこうぜ」

 

「断るわ。あなたは信用できないから」

 

「いいのかい?それじゃあ誰が輸送機の拘束を外すんだい?」

 

「拘束?」

 

「そうだよ。この輸送機は整備のために色々と拘束してある。警報システムを解除せずに外せば警報装置が作動するよ。かといって無理に飛べば機体損傷。これ、あんたに解除できるのかい?」

 

「・・・」

 

アンジュは黙り込んでしまった。

 

「あたしはできる。なんてったってこの日のためにずっと準備してきたんだから。どう?協力しない?」

 

暫く考えていたがアンジュはやがて武器を下ろした。

 

「わかったわ。一時休戦ね」

 

 

 

 

こちらは大運動会組。こちらでは今年の優勝が決定したらしい。

 

「さぁ今年の大運動会!優勝はなんと!意外も

意外!大穴中の大穴!サリア隊のクリスだぁ!」

 

今年の大運動会の優勝者、それはクリスであったのだ。普段、影が薄い分、周囲の驚きも大きいらしい。

 

(これで、ヒルダとも仲直りできるかな?)

 

クリスのこの心が、今回の優勝へと繋がる動力となったのだ。

 

「さぁさぁさぁ!30分後には花火の時間だ!最後の締めだ!!トイレとかは今のうちに行っトイレ!」

 

ジャスミンがそう言うと皆が散り散りにその場を離れた。フェスタ最後のイベント。それを万全の体制で迎えたい者もいるのだ。

 

「ナオミ。私トイレ行ってくる」

 

そう言いシルフィーはその場を離れた。だが、何処のトイレも混んでいた。並ぶにしてもそれなりの時間がかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、司令室ではオリビエが一人、ガラスに顔をくっつけていた。フェスタの時とはいえドラゴンが現れない保障などない。その為オペレーターや

保安部の数名は、普段と同じ様に作業をしていたのだ。

 

「あーもー。折角の花火なのに、ここから見えるかなぁ。・・・?」

 

不意に背後に気配を感じた。振り返り確認しようとする。

 

【ドスッ!】

 

彼女の意識は闇に閉ざされた。そこにはヒルダがいた。司令部のパソコンをいじり、準備をしていた。

 

「例のシステム解除キーは・・・バッチリ。これで拘束具を解除しても警報はならないな。早いとも戻らねぇと・・・」

 

「ヒルダ。何してんのよ」

 

背後からの声に心臓が飛び出るくらい驚いた。咄嗟に拳銃を引き抜き、振り返りざまに発砲した。

 

そこにはシルフィーがいた。弾丸はどうやら外れたらしい。

 

「危ない!いきなり何すんのよ!」

 

「な!何でここにいやがる!!」

 

「トイレよ。何処も混んでたから、ここの近くのトイレを使ったの。そしたら司令部から音が聞こえたから来たわけ。それよりヒルダ。あんた何してんのよ」

 

彼女の目には、うつ伏せで倒れるオリビエも写っていた。ヒルダの手には拳銃が握られている。何があったかを想像するのは容易いことであった。

 

「こんなところとはおさらばすんだよ。あたしは

ここを出て行くんだ。さて。聞いた以上、あんたには眠ってもらうよ」

 

ヒルダが拳銃を突きつけてきた。

 

その時であった。

 

「おい!お前何をしている!!」

 

先程の銃声を聞きつけ、保安部の係の人が駆けつけてきた。ヒルダは再び、条件反射的に撃ってしまった。幸い弾は逸れたらしく、保安部の身体に命中はしなかった。

 

「貴様!何をする!こい!」

 

今日が仕事の保安部は、ヒルダやシルフィーの様に水着ではなく、ちゃんとした装備であった。銃弾の尽きたヒルダが敵う相手ではなかった。

 

「離せ!離せよ!!今日しかないんだ!チャンスは!ママが!ママが待ってるんだ!!」

 

その言葉にシルフィーの表情が少し変わった。

 

「!・・・ママだって・・・」

 

「何をわけのわからない事を!取調室に来い!何があ・・・」

 

【ドスッ】

 

「うっ・・・」

 

保安部の裏首筋に手刀が入り込む。保安部の女性は顔を歪めその場に倒れ伏した。シルフィーが保安部を倒したのだ。

 

「・・・行きなさい」

 

「あんた。何で」

 

「・・・カリスが言ってた。帰る場所で待ってる人がいる人は幸せ者だって」

 

「誰だよそいつ・・・まぁいい。時間がないから。

礼は言わないぜ。あばよ」

 

そう言うとヒルダは司令室から駆け出して行った。

 

「・・・」

 

シルフィーは何も言わずに、気絶しているオリビエと保安部の女性の介抱をした。

 

(ママ・・・か)

 

シルフィーの心の中に何かが突っかかっている。

 

人間とは母親の母体から産まれる。そうアルゼナルで学んだ。彼女は、自分がオメガから産まれた思っていた。それ以外は知らなかっただけだ。そう信じて疑わなかった。

 

(私が生きてる。じゃあ私にもお母さんがいたってこと・・・じゃあ私のお母さんは、何で私をあの島に・・・らしくないな。こんな事考えて。早いとこ戻るか。花火ってのを見逃したくないし)

 

やがて考えるをやめ、シルフィーもその場を離れ

ナオミ達の所へと戻った。

 

会場では既に花火を見る為の席取りが繰り広げられていた。

 

「シルフィーちゃん。こっちこっち」

 

呼ばれた方を向く。そこにはアンジュとヒルダを除いた第一中隊が集まっていた。集まっている場所へと向かう。隣には第二、第三中隊のメンバーもいた。

 

「全く。ヒルダってば何処に行ったんだろ」

 

クリスが愚痴る風に言った。それにシルフィーは何も答えなかった。

 

「さぁ!それじゃあフェスタ恒例!最後のシメ!!打ち上げ花火だぁ!!!」

 

ジャスミンのシャウトに合わせ、空めがけて無数の花火が打ち上がった。しばらくするとそれは空中し、夜空に綺麗な模様を浮かび上がらせた。

 

「わぁぁぁぁ!!!」

 

「綺麗」

 

「やっぱフェスタのシメはこれでなくっちゃ!」

 

皆がその花火を目に焼き付けていた。

 

(みんな満足してるみたいだね。今年のフェスタも

大成功か)

 

「おいジャスミン!」

 

ジャスミンの所にエマ監察官とジル司令。そしてマギーが来た。その背後からはバルカンもくっついて来ている。

 

「どうしたんだい?みんな大慌てで?」

 

「それが、ミスティ・ローゼンブルム様がどこにもいないのよ!」

 

「何だって!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前。

 

発着デッキではアンジュとモモカが輸送機へ、荷物の運搬をしていた。そこにヒルダも戻ってきた。

 

「運搬を急げ!フェスタが終わっちまう!」

 

彼女は針金を取り出した。そしてそれをある所に

差し込んだ。しばらくかちゃかちゃしていたが、

やがて近くにあった蓋が開かれた。

 

そこにはさまざまな装置などがあった。彼女の狙いは拘束具の解除システムと緊急射出システムだ。

 

ヒルダはタイミングを見計らっていた。狙いは花火が打ち上がる時。モモカさんはマナを使い、輸送機の機能を作動させていた。

 

「・・・・・・今だ!」

 

そう言うとヒルダはその装置のスイッチを切った。これによりタイヤを固定していた拘束具が外れる。

 

「よし!成功だ!」

 

すると輸送機が少しずつ進んでいく。

 

「おい!待てよ!」

 

ヒルダが走りながら言う。しかし輸送機は加速を続けた。そしてアンジュがヒルダに向かって言い始めた。

 

「ブラジャーの恨み、忘れてないから。あのせいで大変な目にあったのよ!」

 

「そんな昔の事!」

 

「それだけじゃないわ!散々後ろから狙ってきた事!手下を使った嫌がらせ!ペロリーナの着ぐるみの臭さ!」

 

「最後の何だよ!」

 

「とにかくあなたは信用できない!せいぜいお友達と仲良く暮らしてなさい。モモカ!後部ハッチ閉めて!」

 

「でっ・・・ですが・・・」

 

「ふざけんなぁ!!」

 

そう言うとヒルダはスロープに飛び移り、そしてしがみついた。

 

「ふっざけんな!このために!何年も何年も待ったんだ!生き残るためなら、ゾーラのおもちゃにもなった!面倒な奴とも友達になってやった!なんだってやってきたんだ!」

 

その迫力はアンジュを驚かせた。

 

そこにジル司令達も駆けつけてきた。だが、時既に遅しである。

 

「ずっとこの日を待ってたんだ!・・・絶対に!

ママのところに帰るんだ!!!」

 

「!ママ・・・」

 

すると輸送機が遂に離陸を始めた。ヒルダが

バランスを崩す。

 

「ウワァァ!」

 

落ちそうになったヒルダが手を伸ばした。ヒルダの手をアンジュの手が握っていた。何故そのような事をしたのかはアンジュ自身にも分からなかった。

 

「・・・モモカ!一人追加するわ!」

 

「!はい!アンジュリーゼ様!」

 

そうしてアンジュ達を乗せた輸送機はアルゼナルを離陸した。

 

その場には、ジル司令、エマ監察官、マギー。ジャスミン。そしてバルカンだけが残された。

 

「なんて事なの!!ノーマの脱走を許したばかりか、ミスティ様も誘拐されるだなんて!!」

 

あまりの出来事に、エマ監察官が倒れてしまった。

 

「簡単に買収されちまいやがって!何のための番犬だい!全く!」

 

ジャスミンはバルカンを睨みつけている。バルカンは小さく縮こまる。

 

「ジャスミン。坊やに連絡を。あと、第一中隊のメンバーを全員集めてくれ」

 

ジル司令がそう言うと、駆け足でその場を離れた。

 

 

 

ノーマの脱走。アルゼナル創設以来、初の出来事である。

 

そしてこの出来事が、アンジュとヒルダ。更には第一中隊。何より、シルフィーに深い爪痕を残すことになる事を、この時はまだ誰も知りはしなかった。




第3章はこれでおしまいです。次回から第4章へと移行します。

なお、第4章開始前にオリキャラ図鑑②を製作してからです。多分今日中に投稿できますのでそのつもりで。

次の章から、オリキャラ達もそれなりに絡んでいかせる予定です。
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