クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
第27話 外の世界へ
「ええっ!?本当なんですか!?」
フェスタ終了後、アルゼナルの司令部に第一中隊が急遽集められた。そしてジル司令から放たれた一言に皆が動揺していた。
「ああ、本当だ。アンジュとヒルダが、アルゼナルを脱走した」
「嘘だろおい。脱走って」
「しかもヒルダまで・・・」
「・・・」
唯一、シルフィーだけはヒルダの脱走を知っていた為、驚きは薄かった。
(そうか。ヒルダはお母さんの所に帰ったのか・・・それにしてもアンジュが脱走するとは)
「明日、第一中隊のメンバーから特別任務を与える者を選定する。各員。自分がそれに選出されるか可能性がある。それを心に留めておけ」
緊急の集まりは、その一言で解散となった。
風呂場にて。
野外風呂では解放された第一中隊全員がお湯に浸かっていた。今日のフェスタで手に入れた入浴剤を巻いて極楽中である。しかし、周りのメンバーの雰囲気から、極楽感は一切感じ取れない。
「・・・」
普段なら談笑も出来る場所なだけに、この沈黙を
痛いほど感じていた。
それに耐えきれなくなったのか、一人、また一人と無言で風呂から上がって行く。
シルフィーも風呂場から出て、脱衣所で髪を乾かしていた。普段はヘアゴムで束ねている事が多いが、こうして髪を下ろした自分を見てると、リラを連想してしまう。まるで自分自身を見ているみたいで
不愉快だ。
何故彼女は自分と酷似した容姿をしているのか。
何故私と同じ腕輪をつけているのか。
鏡の中の自分を睨みつける。鏡の中の自分も同じ風に睨みつけていた。
「・・・ねぇ。シルフィー。どうしたの?怖い顔
して」
背後からの声に驚く。鏡の自分ばかり見ていたが、右端にナオミの心配する顔が写り込んでいたのだ。
「なっ、なんでもない。早く部屋に戻るか」
ドライヤーを切り上げ、二人は部屋に帰る。唯一の窓から月明かりが部屋を淡く照らしている。昼間の騒ぎが嘘の様に外は静まり返っていた。
まずナオミがベットに潜り込む。同じ様にベットの
半分にシルフィーが潜り込む。
「それじゃあおやすみ」
「おやすみ」
「・・・」
「・・・スッー」
今日の大運動会で疲れたのか、ナオミは直ぐに眠りに落ちた。だが、シルフィーだけが中々寝付く事が出来なかった。
一時間程度経っただろうか。
(全然眠れない・・・水でも飲むか)
シルフィーがベットを出ようとした時。不意に背後からナオミが抱きついてきた。その手は小刻みに震えていた。
「どうしたの?突然」
「・・・夢を見たの。シルフィーがアルゼナルから出て行く夢を。それだけじゃない。その後、皆んながアルゼナルから出て行って・・・私一人だけが、アルゼナルに残されて・・・」
ナオミの声は何処か泣き声混じりであった。
「目が覚めたら、ベットから出ようとしてた。だから、このままシルフィーが戻ってこないんじゃないかって。アンジュ達みたいに、脱走しちゃうんじゃないかって・・・」
「・・・」
やがてシルフィーはナオミの抱きしめに対して、
抱きしめ返した。
「バカね。私は二人と違って脱走なんて事しないわよ。二人は外に島を求めたのかもしれない。けどね、私にとっては、ここが私の居場所なのよ」
「シルフィー・・・」
「ナオミはあったかいね・・・今だけ、このまま
抱きしめていたい」
その夜。いつもの様に一つのベットを二人で分け合う形で寝ていた二人は、お互いが向かい合う様に抱きしめながら眠りに入った。その顔には、安らぎの表情が浮かべられていた。
朝となった。ブリーフィングルームにはジル司令の招集の元、第一中隊のメンバーが集まっていた。
「全員集まったな」
「イエス・マム・・・もちろん、脱走した二人はいませんが」
「まずはじめに、二人が脱走に使用した輸送機が
発見され、その中からミスティ・ローゼンブルムが見つかった」
「・・・誰ですか?」
「まぁ偉い人だ。とりあえず彼女が無事発見された事を、エマ監察官に後で報告するか」
「あの、二人はどうなんですか?」
ナオミが質問を切り出した。
「実はあの後、アンジュの姿が目撃されたとの情報があった。向かった先の方角。そしてアンジュの
過去を考えると、おそらく行き先はミスルギ皇国だ」
「そこで極秘任務だ。それはミスルギ皇国に潜入し、アンジュを連れ戻すことだ。そしてこの任務
だが、ナオミ。お前に与える事とする」
「わ、私にですか!?」
「ナオミが?すげぇな」
「おめでとう。ナオミちゃん」
「ナオミってばスッゲェー!」
ジル司令の決定に周囲が騒めいた。ナオミが選ばれた事に周囲が様々な反応をする。
そんな中、一人だけこの決定に納得できない者がいた。サリアだ。
「待ってください!どうしてナオミなんですか!
納得のいく説明をしたください!!」
「言った通りだ。今回のこの任務。これにはナオミが一番の適任だと判断したまでだ」
「それなら私も行きます!二人で行った方が効率
だって・・・」
「サリア。お前は隊長だ。お前がいない間にドラゴンどもが現れない保証はどこにもない。お前が隊を纏めずにどうする」
「でも!」
「サリア!わかってくれ・・・」
ジル司令のその言葉にサリアは何も言えなくなってしまった。
「この任務について。何か質問はあるか?」
「あの、ヒルダはどうなんですか?アンジュと一緒にいるんですか?」
「ヒルダを発見したという情報は入っていない。
捜索は進めているが、今はアンジュの方が優先だ。他に質問は?」
今度は誰も何も聞かなかった。
「よし!確実解散!ナオミ。パラメイルの増槽処置が終わり次第、作戦行動に当たれ。なお、極秘任務の為、こちらからの通信はない。そちらも通信を控えろ」
「イエス・マム!」
こうして各自解散となった。
第一中隊は皆で朝食をとっていた。普段ならヒルダとロザリー。そしてクリスの三名は分かれている。だがヒルダはいない。その為二人とも、今回は食事の輪に混ざっていた。
「ねぇ聞いた。第一中隊のメンバーが昨日。アルゼナルから脱走したんですって」
「マジで?」
「マジマジ。大マジよ。大マジ」
「しかも二人も脱走したらしいよ」
「どうなるんだろうね。第一中隊」
食堂内では、既に二人が脱走したという噂話で持ちきりであった。こういうのは、誰が言わずとも噂話として知られ渡るものらしい。
この様な会話に第一中隊のメンバーは、皆が口に出さずとも、肩幅の狭い思いをしているのは明らかであった。
「今日は射撃訓練から始めるわ。各自定刻までに
集まっている様に。それまでは自由時間よ」
そうサリアが言うと、各自が食堂を後にした。シルフィーも時間まで寛ごうと部屋へ戻る道を歩いていた。
その時だった。
「あの、シルフィーさんですか?」
不意に声をかけられた。振り返るとそこには一人の少女がいた。恥ずかしがり屋なのか下を俯いており、顔はよく見えなかった。
「そうだけど。貴女は?」
「これを司令から預かりました」
シルフィーの質問に答えず、少女は一通の封筒を
差し出してきた。中には手紙が入っているらしい。
「あのっ!確かに渡しましたから!」
そう言い残し、少女は駆け足で廊下の曲がり角へと去っていった。訝しげにその場で開封してみると、そこには命令文章がつづられていた。
【シルフィー。お前にもアンジュ奪還の命を与える。速やかに行動に移れ】
「・・・」
内容に暫くは呆然としていたが、やがてため息が
一つ出た。
「何よ。どうせならあの場で言えばいいのに」
愚痴を零しつつ、手紙を持ちロッカールームへと向かった。そこでライダースーツを着込み。バイザーを装備し、発着デッキへと向かう。
発着デッキではナオミとメイが話し合いをしていた。ミスルギ皇国に辿り着く為の道のりでも話し合っているのだろう。二人は向かってくるシルフィーに気がついた。
「あれ?シルフィー。何でライダースーツ来てるの?」
「なんか私もナオミと同じ様に命令を受けたわけ。これがその文章」
「どれどれ・・・この字。確かにジルの字だ。判子だって司令の物だし。わかった。それじゃあオメガに増槽処置を施すから発進が遅れる。その事をジルに伝えてくるよ」
そう言いメイは近くの通信機を取った。二、三コールの後、アルゼナル司令部へと繋がった。
「どうしたメイ。何かあったのか?」
相手はジル司令であった。
「ああジル。シルフィーにもナオミと同じ命令を与えたんでしょ。だからオメガへの増槽作業で予定の発進時刻より少し遅れるよ」
「そうか。あまり遅くなるなよ」
そう言うと通信は切られた。
「二人とも少し待ってて。直ぐに終わらせるから。お前たち!朝飯の前にもう一作業するぞ!」
「は、はい!」
整備士達の作業が終わるまで、二人は地図のレクチャーなど様々な知識を叩き込まれた。
「ちょっと安心したよ。シルフィーも来る事になって」
「私としては驚いたわ。なんせ突然文書で突然来るんだし」
「・・・本当は心細かった。一人まだ見知らぬ場所に行く事が。でも、もう心細くないね」
そう言いナオミは笑った。オメガへの増槽処置は
予定の30分もかからずに終わった。
「よーし。増槽処置作業完了!ニ機をエレベーターに乗せて!」
グレイブ。そしてオメガは発進エレベーターへと
乗せられ、着々と発進準備に取り掛かっていた。
「ナオミ!発進します!」
「シルフィー!発進する!」
二人の機体はアルゼナルから射出され、空を舞った。
(待っててアンジュ。必ず迎えに行くから・・・)
整備士達は射出された二つの機影が見えなくなるまで見届けた。
「さーて。それじゃあ朝飯でも食べる・・・」
【ジリリリリ!ジリリリリ!!】
突然に発着デッキの通信機がけたたましく鳴り響いた。慌てて取ると、電話口の相手はジル司令であった。
「メイ!今すぐ司令部に来い!」
その一言で通信は叩き切られた。慌ててメイが司令部へと入っていく。すると突然ジル司令が目の前まで迫ってきた。
「おい!何でオメガが発進した!!」
「え?だってジルが命令したじゃん。シルフィーにもアンジュを連れ戻して来いって」
「バカを言うな。何故私がそんな事をしなければいけないんだ」
「だってシルフィーから命令書を受け取ったよ。それに電話越しでだって答えてたし」
「命令書だと!?電話だと!?バカを言うな!」
「何言ってるのジル!確かに通信越しで聞いた際は、シルフィーにも命令を送っている雰囲気だったよ!ほら!これが命令書!」
メイが慌ててポケットから受け取った命令書を取り出した。それを直ぐにひったくる。そこには確かに、シルフィー宛の命令文章の内容が書かれていた。ダメ押しとばかりに、通信履歴にも、ジル司令とメイとの先程のやり取りが記録されていた。
「バカな!身に覚えがないぞ!この通信内容だって知らん!」
「でもこの字。あんたのだろ。紙と判子だってちゃんと命令書専用の物を使用されているし。第一この声。どう聞いてもあんたの声だろ」
どう見ても、どう聞いてもそれはジル司令のそれである。だが、当のジル本人が全く記憶にない。
寝ぼけて書いたり話したりする様な内容でもない。
「一体何がどうなっている・・・」
司令室に痛い沈黙が広まった。得体の知れない
恐怖。それがこの場を支配しようとしていた。
「・・・とにかく。あの子はジルの命令だと思って行ったんだ。二人と違って脱走じゃない。きっと
戻ってくるだろうさ」
ジャスミンが落ち着いた風に言った。この一言で何とか場の空気は持ち直された。
「今は信じておやり。きっと帰って来るって」
ジャスミンが司令の肩に手を乗せ言い聞かせた。
そんな彼女達を物陰から伺う存在が一人いた。シルフィーに手紙を渡した少女である。
「仕込みは完璧。さて、アンジュ。彼女にはもう
一働きしてもらおうか」
そう言うと次の瞬間、少女はリラの姿となり、煙の如くその場から消え失せた。
今回はこの場を借りて、実施するアンケートの簡単なご説明をさせていただきます。
まず、アンケートは三択となっています。そしてゲーム、クロスアンジュ・天使と竜の輪舞trでの出来事を元として、一部手を加え変えさせていただきました。
肝心のアンケート内容。それは!
ナオミの今後について!以下の三択から選ぶがよい!(何故か上から目線)
まず①。これはドラゴンルートです。このルートの特徴はアニメの第14話がオリジナルへと変化される点です。
次に②。これはエンブリヲルートです。このルートの特徴はゲームをプレイしている方ならわかる通りです。ナオミがあぁなります。
最後に③。これはオリジナルルートです。これはこの作品のオリキャラのシオン達と共に歩くルートです。それ以外の事は伏せさせていただきます。
もし、アンケートについてのご質問がある場合、
感想欄に書くなどでご質問ください。ただし、
ネタバレになる様なご回答は出来ませんので
ご了承ください。
追記。アンケートの期間は第4章の最終話投稿後の24時間後です。その為早めの投票を済ませる事を推奨します。
今後、ナオミにどの様なルートを辿って欲しいかを以下の三つから選びなさい。
-
①ドラゴンルート
-
②エンブリヲルート
-
③オリジナルルート