クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第28話 裏切りの故郷

 

 

シルフィーとナオミがアルゼナルを出てからそれなりの時間が経過した。陸地が見えてきたその時には、すでに陽は沈みかけていた。

 

やがて夜になると、二人は人気の少ない廃れた森の適当な場所に機体を降ろすと、現在位置を地図で

確認した。

 

「ええと。今いるのがここで。こうやって行くと・・・明日の朝にはミスルギに行けるんだね」

 

「なら今日はもう寝よう。一日中飛びっぱなしで

疲れた」

 

そう言うとシルフィーは横になった。しばらくしてそこからは寝息が聞こえてきた。

 

何気なくシルフィーを見ると、例の腕輪が目に入った。試しにそれに触れてみる。特に何の変化もない、ありふれた腕輪に見える。

 

しかし以前見た時と違い、何処か変な雰囲気であった。以前見た時と同じだが、何かが違う。その何かが解らないのだ。

 

(・・・気のせいかな?)

 

ナオミは特に気にせず横になる。

 

(それにしても、アンジュとヒルダ。今頃何してるのかな・・・)

 

そう思いつつ、ナオミは意識を闇に閉ざしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アンジュはアルゼナルを脱走した後、とあるガソリンスタンドでヒルダと別れ、現在ミスルギ皇国に来ていた。追放された身である為、堂々と

街中は歩けず、裏路地を使っていた。

 

そんな彼女はある場所を目指していた。とある扉の前に辿り着く。

 

ドアを開ける。そこはかつてアンジュが所属して

いたエアリア部の部室であった。

 

「誰?忘れ物でもしたの?」

 

「久しぶりね・・・アキホ」

 

その声に慌てて振り返った。彼女の名はアキホ。

彼女はアンジュと同じエアリア部のメンバーだった。

 

「ア、アンジュリーゼ様・・・」

 

「元気そうね」

 

「か・・・髪、切られたんですね・・・に、似合ってますよ・・・」

 

アキホは震えていた。彼女からしたら追放された

はずのアンジュが目の前にいるのだ。

手に持っていたマナランプを落とす。するとそれはマナを失い、光は儚く消え去った。

 

「ご、ごめんなさい!助けて!あれはその・・・

つい!!許して!」

 

アキホは蹲り、怯えていた。あの日、洗礼の儀で彼女はアンジュに対して化け物だの怪物だの散々な事を言っていた。その仕返しが来ると思っていたのだ。

 

だが、アンジュは違っていた。

 

「私が何かすると思ったの?」

 

アンジュはそう言った。彼女からしたらここにきた理由はエアリアを使うためである。そもそもアキホがいる事自体が予想外でもあった。

 

「安心して、何もする気は無いわ。ただ、エアリアのバイク借りるわ。それとここに来たことは、誰にも言わないでね」

 

「はっはい!言いません!」

 

「そう。そっちはどう?モモカ?」

 

アンジュはモモカの近くにあったエアリアに駆け寄る。

 

その時である!

 

アキホは後ろ手でマナを使った。それはエマージェンシーコール。言うなれば110番通報の様なものだ。

 

そして、それをアンジュが見逃すわけがなかった。

 

「そう・・・やっぱり、あなたもそうなのね」

 

「来ないで!化け物!」

 

遂に醜い本性を表した。アキホは逃亡しようとしたが、アンジュに足払いされる。アキホはバランスを崩して倒れた。

 

直ぐにアンジュはアキホを拘束する。手足を縛り、ついでに口にガムテープを貼り付ける。

 

「行くわよ。皇宮へ!」

 

「はい!」

 

モモカがマナを使い、バイクを起動させた。ガレージの扉が開き、そこから発進する。バイクは道の横にある排水溝を移動していた。

 

「アンジュリーゼ様・・・」

 

「大丈夫・・・わかってたから」

 

アキホのあの態度。我が身可愛さ故の態度であった。アンジュの事はノーマ。ただの化け物と捉えていたのだろう。

 

自分自身がノーマだと知らない頃だったら、間違いなくアキホと同じ態度をとっただろう。

 

「ありがとうモモカ。貴女は貴女ね」

 

彼女はこんな私に付いてきてくれた。それだけで嬉しかった。彼女だけは信頼できる。そんな人が側にいるだけで、アンジュにとって、本当に嬉しかった。

 

そしてアンジュはシルヴィアの事を考えた。こんな私に助けを求めてきた大切な妹。見捨てられるはずがない。

 

(待っててシルヴィア。必ず助けるから!)

 

 

 

 

 

 

街中は警官のパトカーが走り回っていた。あの後、アキホが拘束を自力で解き、通報したからだ。

 

アンジュは排水溝から出ると、物陰に身を隠し、

様子を伺った。しばらく経ってパトカーが通り過ぎるのを確認した。

 

「飛ばしますよ!アンジュリーゼ様!」

 

一気に物陰から外へと飛び出した。近くにいた男と女が驚いていた。宙に舞ったエアリアから、とある建造物が見えた。

 

(暁ノ御柱・・・)

 

アンジュの視界の片隅に暁ノ御柱が見えた。あそこで起きた出来事がアンジュの中でフラッシュバックする。

 

自分の事をノーマだと公表した兄ジュリオのことを。自分の目の前でマナが砕け散った事を。自分を庇い銃で撃たれた母ソフィアの事を。

 

アンジュにとって、あそこは今のアンジュの始まりの場所のようにも思えた。

 

「左!」

 

アンジュがモモカに指示を飛ばす。

 

「よろしいのですか?どんどん皇宮から離れていますが・・・」

 

「ええ!このまま進んで!」

 

すると目のが突然眩しくなった。よくみると前にはパトカーが並んでいた。

 

「待ち伏せ!?」

 

アンジュが驚き、バイクを止めた。すると上空から輸送機がライトでアンジュを照らした。

 

「どうします!?アンジュリーゼ様!?」

 

「決まってる!強行突破よ!!」

 

アンジュは銃を目の前のパトカーに向けて乱射した。警官達はマナで自分の身を守る。

その間にアンジュは横道へとバイクを進めた。

 

数台のパトカーは銃弾の雨を浴び、次の瞬間爆発した。

 

「お願いです!絶対捕まえてください!」

 

最後尾のパトカーに乗っていたアキホが警官に泣いてすがる。

 

「ご安心ください!穢らわしいノーマに逃げ場所などありません!」

 

そう言うとそのパトカーは前のパトカー達の後を

追っていった。

 

アンジュと警官達によるデットチェイスが始まった。

 

アンジュは時折銃でパトカーを攻撃するが、マナの光によってそれらは防がれてしまった。

 

すると最も距離的に近いパトカーから警官が身体を乗り出した。手は謎のポーズを取っていた。

 

「捕縛結界!?」

 

次の瞬間、その警官の手から、マナで作られたネットが出された。それはモモカを包むと、捕縛した。ノーマであるアンジュはモモカがいなくなると、

エアリアのバイクは使えなくなってしまうのだ。

それが狙いなのだろう。

 

「モモカ!」

 

アンジュがそのネットに触る。ノーマである彼女はマナの光を破壊する事ができる。そのためネットも彼女が触れた途端に粉々に砕け散った。

 

「モモカ!弾倉!」

 

アンジュは今持っている銃の弾倉をモモカに頼んだ。

 

「えーい!マナではなくネットガンを使え!」

 

警官の一人が周りに指示を飛ばす。彼らはネットガンを装備して、再びアンジュ達を狙った。

 

そうしている間にアンジュは銃の弾倉交換を済ませていた。

 

後ろを振り返り、銃を撃つ。しかしマナの光で防がれる。相手側はネットガンを放った。それらを全て避ける。現段階ではアンジュ達は防戦一方であった。

 

さらに空からは輸送機がゆっくり降下してきた。後ろのハッチは空いており、そこから兵士達がネットガンを放つ。しかしそれらもアンジュは避け切った。

 

「私を・・・舐めるなぁっ!!」

 

アンジュはそう言うとモモカから手榴弾を受け取った。ピンを口で外すと、輸送機めがけて投げつけた。

 

ネットガンを使うために、高度を落としていた事が仇となり、その手榴弾は輸送機のエンジン部分に

入った。次の瞬間、エンジンは大爆発を起こした。

 

機体制御が取れない輸送機は、隣を飛んでいた輸送機に突っ込むと、二機ともまとめて森の中へと落ちていった。

 

次の瞬間、二機の輸送機は大爆発を起こした。これに驚いたのか、パトカーの速度が少し遅くなる。

 

アンジュは加速して、パトカーとの距離を出来るだけ離していく。

 

しばらく走っているとアンジュの目的の場所が見えてきた。それは小さな小川のような用水路であった。

 

「モモカ!突っ込んで!」

 

「ええ!?はい!わかりました!」

 

最初はモモカも驚いていたが、直ぐに意を決して

用水路の上にバイクを走らせる。

 

小さな滝の部分にアンジュ達は突っ込んだ。するとアンジュ達が消えた。

 

後ろを追跡していたパトカー達も突っ込む。しかしその穴は小さく、パトカーのような車では入る事が出来なかったその突っ込んだパトカーの後ろから一台、もう一台と突っ込んでいく。

 

こうしてパトカー達は次々と玉突き事故を起こし、爆発していった。アキホの乗っていたパトカーだけが一番最後尾だったこともあり、事故にならずに

済んだ。

 

アンジュ達はその道を進んでいた。

 

「後は道なりに進むだけ!そうすれば皇宮の正面に出れるはずよ!」

 

「知りませんでした。このような道があったとは・・・」

 

モモカは驚いていた。一体この道はなんなのか?

疑問を感じずにはいられなかった。

 

「皇族だけが知っている秘密の抜け道よ。昔はよく、夜はここから皇宮の外に遊びに行っていたわ」

 

「まぁ!そんな事してたんですか!アンジュリーゼ様!」

 

モモカは頬を膨らませていた。

 

しばらくすると出口が見えてきた。皇宮を流れる川へとでた。川岸にたどり着くと、バイクを乗り捨てた。皇宮内の探索にはバイクは向いていないのだ。

 

入り口に向かって進んでいると、突然目の前が明るくなった。見てみると、そこには武装した兵士達がいた。

 

「お姉さま!?アンジュリーゼお姉さま!」

 

上のバルコニーから声がした。見てみるとそこにはシルヴィアの姿があった。

 

「シルヴィア!」

 

「助けて!アンジュリーゼお姉さま!」

 

「待っててシルヴィア!直ぐに助けるから!」

 

何名かの兵士がアンジュを捕まえようと襲ってきたが、アンジュは全て返り討ちにした。途中モモカも兵士に襲われていたが、それも難なく助け出す。

 

そしてアンジュは残りの兵士達に銃弾を放った。

まさか撃ってくるとは予想外だったのか、兵士達は皆散り散りとなって逃げていった。

 

妹のいるバルコニーの兵士達も怖気付いたのかシルヴィアをそのままにして皆一目散に建物の中へと

逃げていった。

 

「シルヴィア!もう大丈夫よ!降りて来て!」

 

「アンジュリーゼお姉さまぁ!」

 

シルヴィアはマナの力で車椅子を浮遊させた。

 

「シルヴィア!」

 

アンジュがシルヴィアへと駆け寄った。姉妹の素晴らしい再開の時である・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ザク!】

 

突然アンジュの左腕に冷たい何かが刺さった。鋭利な物であり、鉄製であった。傷口から赤い液体が

一線流れ落ちる。それはナイフであった。

 

そのナイフの持ち主を見た。そのナイフの持ち主はシルヴィアであった。

 

「アンジュリーゼ様!大丈夫ですか!?」

 

モモカの心配する声も、今のアンジュには届かないでいた。現状が理解できないでいた。

なぜシルヴィアが私にナイフを刺しているのか?

何故?アンジュの思考が追いつかない。

 

「シル・・・ヴィア・・・?」

 

「馴れ馴れしく呼ばないで!あなたなんて姉でも

なんでもありません!この化け物!!」

 

その言葉にアンジュの表情が絶望に染まる。

 

「どうして?どうしてなの!?どうして生まれてきたの!?」

 

そんなアンジュなど御構い無しにシルヴィアがまくしたてる。

 

「あなたさえ生まれて来なければ!お父さまが処刑される事も!お母さまが死ぬ事も!私が歩けなくなる事も!全部!全部なかったのよ!!」

 

「これらの事全て!なかったはずなのよ!あなたさえいなければ!みんなみんな!幸せだったのよ!お母さまを返して!返してよ!この化け物!この化け物!!化け物!!!大っ嫌い!!!!」

 

シルヴィアは泣いていた。だがその涙の奥には、

アンジュに対しての明らかな憎悪と憎しみ。そして怒りが込められていた。

 

「シルヴィア様・・・」

 

モモカはただその言葉を呆然と聞いていた。それはアンジュも同じだった。アンジュが膝をつく。

 

「そん・・・な・・・」

 

この時アンジュは自分が騙されていた事に気がついた。全てが嘘だったのだ。初めから全てが。

 

兵士達もグルだったらしい。再び一箇所に集まり

アンジュ達にネットガンを放つ。アンジュには、

もはや避ける気力すらなくなっていた。側にいた

モモカもネットガンの餌食となった。

 

「無様な姿だな。アンジュリーゼ。堕ちぶれ果てた皇女殿下。その末路に相応しい」

 

シルヴィアとは違う声がした。その声の方を見る。

 

するとそこにはジュリオ・飛鳥・ミスルギがいた。アンジュをノーマだと暴露し、アンジュを陥れた

張本人がそこにいた。

 

「ジュリオ・・・お兄さま?」

 

「そうそう。その間抜け面が見たかった。これで

誘き出した甲斐があったというものだ」

 

「え・・・?」

 

「言ってくれるじゃないか。殆ど僕が手引きしてあげたのにねぇ」

 

アンジュの前にある人物が降り立った。リラだ。

 

「本当。惨めで滑稽だよね。いい様におびき出されちゃってさぁ」

 

リラが二人を見下し、嘲笑しながら蔑む。

 

「そんな・・・そんな・・・」

 

「さぁ、断罪を始めよう。アンジュリーゼ。お前という罪のな・・・」

 

ジュリオの言葉など、今のアンジュの耳には入らなかった。兵士達がアンジュ達を連れて行く。

 

「クックックッ。はーっはっはっは!」

 

皇宮の庭には、ジュリオの高らかな笑い声が響いた。

 

やがて笑い終わるとジュリオはリラの方を向いた。

 

「リラとか言ったな。貴様の言う通り、アンジュリーゼの処刑は明日の夜とする。これでいいな」

 

「あぁ。もちろんさ。協力した甲斐があったよ。

あぁ今から明日の夜が楽しみだなぁ」

 

そう言うとリラはその場をゆっくりと離れていった。

 

(舞台の土台は出来上がった。後はそこに役者が昇り始めて舞台は完成する。差し詰め、囚われの姫を救う為に勇者が来るとでもなっているのか・・・笑止とはこの事か)

 

リラはそう思いつつ歩いていた。

 

「見たかシルヴィア。アンジュリーゼのあの間抜け面。本当に惨めだな。我々に利用されていたと知らずに」

 

「そうですねお兄さま。利用されてたのに気づかず。本当に無様で滑稽ですこと」

 

背後から聞こえたその声に足を止める。

 

(ふっ。本当に惨めで無様で滑稽なのは、今も利用されている事に気づけない、本当の間抜けの方だけどね。明日の夜が楽しみだよ。果たしてその間抜けな薄ら笑いが続けられるかどうか・・・)

 

左腕の腕輪をさすりながら不気味にほくそ笑んだかと思うと、ゆっくりと歩き出した。




アニメではヒルダ関連の話もありましたが、向こうは私自身が書くのに心を痛めてしまう為誠に勝手ながら省略させていただきました。

この作品では何があったのかは省略的に書きますが、もし気になる方は本編を見る事を推奨します。

今後、ナオミにどの様なルートを辿って欲しいかを以下の三つから選びなさい。

  • ①ドラゴンルート
  • ②エンブリヲルート
  • ③オリジナルルート
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