クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第34話 竜の歌

 

 

反省房。ここにアンジュとヒルダが収監されてから今日で7日目である。現在二人は、とある事に苦しんでいた。体臭である。はっきり言って二人とも

洗っていない野良犬の匂いである。

 

「贅沢言わないから、せめて水浴びさせて・・・」

 

アンジュが独り言を呟く。

 

その頃、司令部ではジル司令がある人物と話していた。

 

「エマ監察官。職場復帰おめでとうございます」

 

「ええ。お陰で体調は万全になりました」

 

エマ監察官は、アンジュが脱走した日から今日までなんとずっと寝込んでいたのだ。その為第4章から今回までの出来事は一切知らない。

 

そんな時であった。突然司令部に警報が鳴り響いた。オペレーターの三人が事態を確認する。

 

「シンギュラー反応です!」

 

「何ですって!?電話は来てないのに!」

 

普段はシンギュラーの反応が起きた場合、電話がアルゼナルへとかけられる。しかし今回はその電話なくシンギュラー反応が発生したのだ。

 

「シンギュラーポイントの場所は!?」

 

「それが・・・アルゼナル上空です!!」

 

次の瞬間、アルゼナル上空にシンギュラーが開かれた。

 

「数確認!スクーナー級!37!84!258!!

敵多数により計測不能です!」

 

ジル司令が基地の無線を全て開いた。

 

「総員聞け!第一種戦闘態勢を発令する!シンギュラーが基地上空に展開した。大量のドラゴンが現在降下中だ!パラメイル第二第三中隊は全機発進!」

 

「アルゼナル内部の者は白兵戦用意!対空火器、

銃火器の使用を許可する!総力を持ってドラゴンを殲滅せよ!これは、ドラゴン最大の侵略だ!!」

 

慌てて全員が備えられていた銃などを装備する。

基地の設備などで弾幕を張れる機銃なども展開された。

 

エマ監察官も動揺しながらもオペレーターから銃を受け取る。

 

するとスクーナー級の一体が司令室へと突っ込んできた。オペレーターの三人は退避する。

ドラゴンが威嚇のつもりか咆哮をあげる。

 

その時だった。

 

「悪い奴!死んじゃえ!」

 

次の瞬間、エマ監察官は手にした銃をドラゴンに

向けて乱射する。オペレーター達はその場に伏せた。エマ監察官は錯乱状態であった。ジル司令が義手の方でエマ監察官の首をチョップする。エマ監察官は気を失った。

 

その後ジル司令がドラゴンにとどめの一撃を撃つ。ドラゴンは動かなくなった。

 

しかし先程のドラゴンが突っ込んできた影響で、

通信機とレーダーが働かなくなってしまった。

 

「現時刻を持って司令部を破棄する!以降、通信は臨時司令部で行う」

 

「イエス!マム!」

 

 

 

 

発着デッキでは、第一中隊は戦力の都合上、後方待機となっていた。皆がアサルトライフルなどを手にし、内部に侵入しようとするドラゴンを撃っていた。

 

「だいぶ数は減ったんじゃないかしら?」

 

「エレノア隊とベティ隊に感謝ね」

 

「ちっきしょう。折角の稼ぎ時だってのに」

 

その時であった。彼女達の耳に信じられないものが聞こえてきた。

 

「〜♪」

 

「なにこれ・・・歌?」

 

そう。歌である、こんな戦場で歌が聞こえてきたのだ。ドラゴン達はその歌を聴くと突然撤退を開始したのだ。何の歌か、全くわからない。しかし、ナオミにだけは心当たりがあった。

 

「この歌。確か前にシルフィーが歌ってた・・・」

 

「・・・!おい!あれは!?」

 

第二第三中隊の視線の先。シンギュラーの穴からそれは降りてきた。その見た目はどう見てもドラゴンなどではなかった。赤いボディのそれの見た目は

パラメイルだ。パラメイルが三機いたのだ。

 

「何あれ・・・」

 

「何処の機体だ!?」

 

第二第三中隊のライダー達は皆動揺していた。パラメイルがシンギュラーから現れたのだ。しかも歌を歌って。

 

するとそのパラメイルのボディが金色に輝きだし、両肩の部分が開かれた。金色へと変わったパラメイルの両肩から放たれた光は、第二第三中隊のパラメイルを巻き込み、アルゼナルへと直撃した。

 

発着デッキが激しく揺れる。

 

「・・・・・・!!これは!?」

 

サリアが外を見た。なんとアルゼナルは先程の攻撃でその面積の半分近くが破壊されたのだ。

 

「おっおい。今の・・・なんだよ」

 

「嘘・・・アルゼナルが・・・」

 

皆がその目を疑った。つい先ほどまでそこにあったはずの施設が一瞬にして吹き飛んだのだ。臨時司令部もこれには動揺を隠す事が出来なかった。

 

「先程の攻撃で第二中隊、全機ロスト!!第三中隊は隊長含む四名がロスト・・・アルゼナルにも被害が!!」

 

しかし絶望はこれだけではなかった。

 

「これは!?ドラゴンの増援反応を確認!モニターに写します!!」

 

モニターに映し出されたドラゴン達。それらの体色は皆黒色であった。それだけではない。黒のドラゴンの先頭には、こちらも謎のパラメイルが存在していた。その数なんと四機。

 

黒いドラゴン達の数も先程のスクーナー級の比ではない。さらにブリック級にガレオン級。フリゲート級までもがいた。

 

普段のスクーナー級も再び降下してきた。おそらくあれの巻き添えを喰らわないためにあえて一旦下がっていたのだろう。残された第三中隊の数機が迎撃にあたるが、最早戦いにならず、弱腰であった。

 

 

 

その頃、アルゼナルの反省房では。

 

「何よ今の光!それにさっきの揺れは!?」

 

「!!伏せろ!」

 

反省房の外壁を突き破り、スクーナー級のドラゴンが入ってきた。衝突した影響か、そのドラゴンは既に生き絶えていた。

 

「アンジュリーゼ様!ご無事ですか!?」

 

入り口にモモカさんがやってきた。鉄格子は先程

ドラゴンが突き破り、自由に出入り出来る様に

なっていた。

 

「モモカ!?」

 

「うっ!」

 

二人を見たモモカさんが顔を顰め、鼻をつまんだ。かなり臭いらしい。

 

「モモカ!一体何が起きたの!?」

 

「わかりません!ですが、ドラゴンが攻めてきたと・・・」

 

「とりあえず発着デッキだ!そこに行けばなんかわかるだろ!」

 

「そうね。早く行きましょう」

 

「ああっ!その前にお風呂に!」

 

「・・・それもそうね」

 

モモカの提案にアンジュがのった。

 

「そんな事してる場合じゃないだろ!」

 

そしてすぐにヒルダにつっこまれた。こうして三人は発着デッキを目指して走り出した。

 

その頃、臨時司令部ではジル司令がサリアに通信を送っていた。

 

「サリア。現時刻を持って、残されたパラメイルの指揮系統をお前に集める。残存する勢力を纏め上げ、ドラゴン共を殲滅せよ!そして現時刻をもってアンジュ、ヒルダのニ名を機体と共に第一中隊に

復帰させる」

 

「なんでアンジュを復帰させるんですか!」

 

「ヴィルキス無しでこの状況の打開は不可能だ。

お前達も早く出撃しろ」

 

「だったら!私がヴィルキスで出るわ!それなら!」

 

「黙れ。今は命令を実行しろ」

 

「・・・私じゃ・・・ダメなの?・・・」

 

サリアが呟く。

 

「ずっと・・・貴女の力になりたいと思ってたのに・・・なのにアンジュなの・・・アンジュなんて!ちょっと操縦が上手くて器用なだけじゃない!命令違反して!脱走して!!反省房送りなのに!!!なのに!それなのにアンジュなの!?」

 

「そうだ」

 

何の躊躇いも戸惑いもなく放たれた一言。その一言によって、サリアの中にあった何かが粉々に砕け散るのを感じた。

 

「・・・馬鹿にして!」

 

そう言うとサリアがアーキバスを降りた。ある機体へと向かうため・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルゼナルがドラゴンの侵略を受けた時と同じく、こちらはシルフィー。この数日のうちに彼女の身体はやせ細っていた。その見た目は骨と皮だけと言っても差し支えないほどに衰えていた。

 

「・・・これは?・・・」

 

横たわる彼女の頭に何かが浮かび上がってきた。それはこれまでのアルゼナルでの生活場面であった。

 

(これが走馬灯か・・・えっ!?)

 

走馬灯を見ているうちに、彼女はその異変に気がついた。初めてナオミとあった時のこと。皆で風呂に入った事。フェスタでの出来事。それらが鮮明に思い出された。

 

ある一点を除いて。

 

(おかしい!おかしい!!おかしい!!!だって・・・だって、数日前まで、確かに一緒に生活してた!してたはず!なのに・・・なのに!)

 

「みんなの顔が・・・思い出せない・・・」

 

彼女の脳裏に浮かんだシーン。それらの顔には全て靄がかかったかのように顔が一切思い出せなかった。まるで、思い出が無くなったかのように。

 

ふと髪を触る。そこには普段あったものが無くなっていた。ナオミがくれた大切なものが。

 

(ヘアゴム。似合うかなと思って)

 

(ならばこれもお前には不要だな)

 

「・・・嫌だ・・・嫌だ。嫌だ!お願いだ!失くならないでくれ!大切な物なんだ!友達がくれた、とても大切な!」

 

重い身体を引きずり、這うように谷底へと転がり落ちてゆく。数十メートル程転がり落ちただろう。全身傷だらけとなりながらも、決して動きを止めなかった。地面に這いつくばりながら、必死に宝物を探し続けた。

 

「探し物はこれか?」

 

背後から声がした。振り返るとそこにはシオンがいた。その手にはヘアゴムが握られていた。

 

「大切なものなら、もう失くすんじゃないぞ」

 

そう言うとシオンは彼女の髪を縛った。縛り終えると今度は何かを手渡した。それは黒装束であった。

 

「まずは着替えろ。背後を向いててやる」

 

数分後。

 

「結構似合うじゃないか」

 

「下がスースーするんだけど」

 

「我慢しろ。その服は正装だぞ。まず初めに飲め。

そして食え。もう一週間も飲まず食わずだろ?」

 

そう言うと水と骨つき肉を手渡した。彼女にとっては数日ぶりの飲食であだだ。彼女は腹を空かせた野良犬の様に喰いついた。シオンは何も言わずに、食べ終わるまで見守っていた。

 

「エセルが島で言った事。覚えているか?あの時お前は、俺たちと一緒に歩く道を蹴飛ばしやがった。なんでだ?」

 

「それは・・・」

 

「名もなき島で俺はお前を見てた。はっきり言って、ケツの青い三流以下だった。ただ腹が膨れて、喉が潤せて、そして寝床があれば他の事はどうでもいい。そんな人間だった」

 

「そんなお前が、あの時、俺たちと行く道ではなくアルゼナルの道を選んだ。理由は俺たちの事が信用できない。それだけじゃないはずだ。お前の中の大切な何かが、お前を動かしたんじゃないのか?」

 

「・・・」

 

「本当に大切なものは、自分から捨てない限り失くなったりはしない。かつて、俺の先生が教えてくれた言葉だ」

 

「お前は捨てたのか?自分の大切なものを。失いたくないものを全部・・・その手で」

 

(ちゃんと話せば、みんなだってわかってくれるよ!!だから!)

 

最後に話したナオミとの会話が言った言葉が脳裏をよぎる。

 

「・・・・・・私、話し合ってみるよ。自分の事」

 

その言葉を聞いたシオンの顔には安堵の笑みが浮かんでいた。

 

「仮免は卒業だ。これを持っていけ」

 

そう言いながらシオンは右手首に何かを装着させた。それは一見デジタル腕時計の様にも見えた。

表面には何かのプレートが差し込まれていた。

 

「スマッシュメモリー。もし有事の際にはこのプレートをコントロールユニットの蓋を外した箇所に

差し込め。そうすれば使い方は理解できる。ただし本当に有事の際限定だ。普段は差し込むのを控えろ」

 

「それとこれ。もう失くすんじゃないぞ」

 

そういうと左手に、オメガのコントロールユニットをしっかりと握らせた。

 

「それじゃあついて来い」

 

谷底の奥をしばらく歩いていると、砂浜へと辿り着いた。フリード達がいた。その背後にはオメガがあった。だが、それは彼女の知るオメガではなかった。しかし、それでいてどこか懐かしさも感じた。

 

「これは?」

 

「お前が自暴自棄になっていた間にこちらで一通りの改修作業を行った。基本装備はナイフとガトリングからビーム兵器に変更。主な武装はムラマサブラスター。平たく言えば銃剣だ。他にも様々な兵装を搭載している。これなら今後の戦いも渡り合っていけるはずだ」

 

「・・・貴方達。一体何者・・・なの?」

 

「以前言っただろ?答えを急ぐ必要はない。いずれ、全てがわかる時がくる。それより早く乗り込め。相棒が待ってるぞ」

 

「相棒?それって一体・・・」

 

「行けばわかる」

 

言われた通りコックピットに乗り込み、オメガのコントロールユニットを差し込む。モニターなどに光がともった。

 

その時である。

 

「久しぶりだな」

 

「!!誰!?」

 

突然謎の聞こえてきた。辺りを見回すが声の主が何処にいるかが分からない。シオン達を見たが首を横に振っている。

 

「誰!?一体何処にいるの!?」

 

「お前の尻の下だ」

 

慌てて飛び起き確認する。そこにはシートが敷かれているだけで特に人の気配は感じ取れなかった。

 

「言い方が悪かったな。私は今、お前が乗っている存在だ」

 

その言葉に一つの結論へと辿り着いた。

 

「まさか・・・オメガ!?」

 

「そうだ。デウス・エクス・マキナ・タイプ・オメガ。正式名称は機械生命体第一号。

DEUS EX MACHINA tyep Ωだ」

 

数秒の沈黙がその場を包んだ。

 

「・・・オメガが喋ったぁッ!!!??」

 

「何を驚く事がある。お前だって普通に喋っているではないか」

 

「え・・・で、でも!なんで!?話して、て、鉄が、鉄の塊が」

 

「何がおかしい。お前だって水とタンパク質の塊のくせに話せているだろう。何も驚く事はない。そんな事より、こんな所で油を売っている暇があるのか?現在アルゼナルは、ドラゴンに襲われているぞ」

 

「なんだって!?」

 

その言葉に動揺した思考を落ち着け、整理する。

一呼吸置いて、ハンドルを握りしめる。

 

「アルゼナルの道順を私は覚えている。お前は私の指示したルート通りに私を動かせ」

 

「・・・なんか妙に偉そうね」

 

「一つだけ言っておく。お前は私をより正確に動かす為の生体パーツだ。もし不甲斐ない動きを一瞬でも見せたら戦場だろうと空中だろうとコックピットから放り出す。本来私が乗せるべき相手はマスターなのだからな」

 

「そのマスターって誰の事?」

 

「その質問には答えん。では行くぞ」

 

そう言うとオメガは飛翔ではなく、地面を走行し始めた。砂浜を抜け、海の中へと潜り、数秒後に浮上した。

 

「少しは臭いはマシになったな」

 

次の瞬間、オメガは飛び立った。その速度はこれまでのオメガと比較しても、かなりのものであった。機体はアルゼナルを目指し、飛び立った。

 

シオン達は機影が消えるその時まで、黙ってオメガを見続けた。機影が消えた頃、六人はその場にしゃがみ込んだ。やがてフリードがシオンに話を振る。

 

「後悔しているのか?オメガを起動させたことに」

 

「・・・」

 

「それとも、自分の言った言葉に後悔してるのか?自分自身を騙すために」

 

「・・・そうなのかも・・・な」

 

「あの様子だと、時期に記憶を思い出すだろう。どうする?また封印するつもりか?あの子の記憶を」

 

「・・・そのつもりはない。そのつもりは・・・」

 

「・・・シオン。アルゼナルを襲撃してるドラゴンだけど、その中に黒の部隊が現れたらしい。しかも、例の機体も連れて・・・」

 

「龍神器・・・か」

 

シオンは暫くの間何かを考えていたが、やがて意を決した風に立ち上がった。

 

「私も出よう」

 

そう言うとシオンは右手を宙にかざした。次の瞬間、突然シオンの目の前に巨体が現れ、降り立った。それをシオンはじっと眺め、一言呟いた。

 

「久しぶりに力を貸してもらうぞ。DEM・tyep・ν(ニュー)




機械生命体第一号のオメガに関してはTFの様な自ら考え行動する超ロボット生命体として捉えてください。そして遂にシオンのDEMも登場だけはさせれました。

尚、ドラゴン側の機体についてはこの段階ではまだ秘密にしておきます。次回辺り少し辺り特徴を出す程度です。

この回の時点では、敵の正体がまだ不明な為、どう書くか悩むんだよなぁ。
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