クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第37話 ドラゴンの真実

 

 

アンジュは風呂場から出ると、すぐにヒルダ達の元へと向かった。既に他のメンバーは集まっていた。

 

「遅いぞアンジュ!」

 

そう言いながらヒルダは銃を手渡した。

 

「私とアンジュで発着デッキを探す。ロザリーとクリスは居住区を。ナオミとエルシャはサリアを反省房から出して、ジャスミンモールを頼む。残りはここで待機だ」

 

ここでヒルダはある事に気がついた。この場にヴィヴィアンがいないのだ。

 

「おい。ヴィヴィアンはどうした?」

 

「それが、部屋を探したけど、何処にもいないのよ。ヴィヴィちゃん」

 

「まさか、もうドラゴンに・・・」

 

皆の中で嫌な想像が膨らむ。

 

「今はドラゴンの排除が優先事項だ!ヴィヴィアンの方は後回しだ!喰われたからじゃ手遅れだ!」

 

「イエス・マム!!」

 

銃を持ち、アンジュ達は散らばった。

 

その頃、ジル司令はマギーのところへ来ていた。

そして囁く様に言った。

 

「マギー。ありったけの抑制剤を用意しておけ」

 

それにマギーは黙って頷いた。

 

アンジュ達はドラゴンを探す為にアルゼナルをくまなく捜索していた。やがて通信機にエルシャからの通信が入った。

 

「食堂でドラゴンを発見!」

 

「今ドラゴンは外へと逃げた!これから追いかける!捜索班は外に集合だ!」

 

最初に外に出たのはアンジュと途中で合流したナオミであった。二人は銃を構えながら、アルゼナルの外部分へと出る。そこにドラゴンはいた。今はアルゼナル上空をぐるぐる飛んでいる。

 

そしてドラゴンの旋回する下には先客がいた。

シルフィーだ。

 

「シルフィー!?」

 

「危ないわよ!離れて!!」

 

しかし彼女はアンジュ達の言葉など聞こえていないのか、おぼつかない足取りでドラゴンの飛ぶ方へと歩いて行った。やがて立ち止まると、ドラゴンに向かって手を伸ばした。

 

「おいで。いい子だから。ね?」

 

するとドラゴンはシルフィーの元へと降りてきた。二人が慌てて銃を構えるがドラゴンの様子がどうもおかしい。攻撃性がないどころか、彼女に懐いている風にも見えた。

 

そしてシルフィーの様子も何処か変であった。普段見てきた彼女とはまるで違う。言うなれば、身体はシルフィーだが中身は別人という言葉がぴったりであった。

 

「おい!何やってんだあいつ!?」

 

背後からヒルダが来た。その背後にはロザリーと

クリス。エルシャとサリア。そしてモモカさんがいた。今来たメンバーも銃を構えるが、それをアンジュとナオミが降ろさせる。

 

「何するんだ!?」

 

「銃を下ろして!ドラゴンとシルフィーの様子が!」

 

ドラゴンがシルフィーと向かいっていると、ドラゴンは何かを口ずさみ始めた。そのメロディーをアンジュは知っていた。

 

「これは、永遠語り!?」

 

「・・・」

 

やがてシルフィーはその歌に答える様に、永遠語りを歌い返した。しばらくして歌が終わると、ドラゴンはその身をシルフィーに寄せてきた。

 

「そう。貴女は戻りたいのね」

 

「キュー」

 

「何も言わなくていい。大丈夫。今、戻してあげるから」

 

彼女はそう言うと右腕をドラゴンの首筋へと当て、静かに目を閉じた。すると彼女の腕輪が突然光り輝いたかと思うと、次の瞬間、煙が発生した。

 

そして。その煙の中から、聞き慣れた声がした。

 

「ここでクイズです!人間なのにドラゴンなのってなーんだ?」

 

「!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙から現れた人影はなんとヴィヴィアンであった。

 

「ヴィヴィアン!?」

 

皆が驚きの声を上げる。

 

「あっ、違うか!ドラゴンなのに人間?あれれ?

あれれ?意味・・・わかんないよ・・・」

 

「私は分かった。ヴィヴィアンはヴィヴィアンって事でしょ?私が私であるのと同じで。お帰り、

ヴィヴィアン」

 

ヴィヴィアンはシルフィーに抱きついた。それを

彼女は優しく受け止めた。そこにマギーがやってくると何かをヴィヴィアンに注射した。するとヴィヴィアンは眠り始めた。

 

【ガシッ!】

 

突然シルフィーがマギーの空いている片手を掴んだ。掴んだ手には注射器が握られており、その針先は真っ直ぐにシルフィーへと向けられている。

 

「それよりヴィヴィアンの方を」

 

彼女は普段の彼女に戻っていた。マギーは残念そうな顔をした後ヴィヴィアンを連れ、そそくさとその場を離れていった。

 

「お、おい、どーなってんだ、今の・・・」

 

「ドラゴンの中からヴィヴィアンが出てきた様に

見えたけど・・・」

 

ロザリーとクリスは困惑している。おそらく皆が同じ気持ちなのだろう。

 

「ねぇ。今のって・・・」

 

ナオミは疑問に思いシルフィーに尋ねた。

 

「・・・確か、近くにドラゴンの死体処理場があったわね」

 

「シルフィー?」

 

「・・・辛い現実を見るかも知れないわね。私達」

 

それだけ言うとシルフィーは近くの焼却場を目指して歩いて行った。第一中隊のメンバー達は顔を見合わせた後、シルフィーについていった。

 

 

 

死体の焼却場ではジャスミンがせっせとドラゴンの死体を穴へと入れていた。バルカンが吠えたことでジャスミンはシルフィー達の存在に気がついた。

 

「あんた達!来るんじゃないよ!!」

 

そう言いながら、手にしたジッポライターを穴の中へと放り込む。ガソリンに引火し、穴の中から火柱が噴き上がった。シルフィーが穴の中を覗き込むと、一言だけ呟いた。

 

「・・・・・・・・・やっぱり」

 

「おい。一体こんなところに何が・・・!?」

 

「・・・嘘でしょ」

 

皆が穴の中の光景に絶句する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴン達の死体。その中には、【人間】の死体も混ざっていた。

 

「なに・・・これ・・・」

 

「なんで・・・なんで人の死体があるの?」

 

エルシャとクリスが当たり前の疑問を聞いてきた。それに答えるものは第一中隊のメンバーにはいなかった。焼かれているその人間は、アルゼナルの人員の者ではなかった。

 

「この人達は・・・一体誰なの!?」

 

誰かの叫ぶ様な声がその場に響いた。皆、その答えに予想がついていたが、それを否定したくて、別の可能性を考えたくて、必死に目の前の現実の意味する答えを否定した。頭では理解しているにも関わらず。

 

そして、鉄槌の様な言葉が彼女達に振り下ろされた。

 

「よくある話だろう。化け物の正体が実は人間でしたなんて話」

 

後ろを振り返る。そこにはジル司令がいた。手にはタバコを握っており、当たり前の様にふかしている。

 

「現にそこに生きた実例がいるじゃないか」

 

ジル司令は顎でシルフィーを指した。それが指し示す答えは一つであった。

 

「ヴィヴィアンがドラゴン。シルフィーもドラゴン。じゃあドラゴンの正体は・・・」

 

「ご名答。人間だ」

 

「ドラゴンの正体が・・・人間・・・そんな、私達、これまで何体もドラゴンを・・・」

 

皆がこれまでの戦いを振り返った。ドラゴンと対峙し、パラメイルの武器などでドラゴン達を殺してきた自分達の姿を。ドラゴンを殺して、キャッシュを稼いで喜ぶ自分達の姿を。

 

そして・・・ドラゴンは人間であった・・・

 

「ウップ!!」

 

アンジュの胃から何かがこみ上げてきた。アンジュは手で口を抑える。手の隙間から多少嘔吐物が漏れる。その背中をモモカが優しく摩る。

 

「気に入ってたんだろ?ドラゴンを殺して、お金を稼ぎ、好きな物を買う生活が」

 

「!くたばれクソ女!!」

 

アンジュがジルを睨みつける。しかしジル司令は気にもせずシルフィーの方を向いた。

 

「正直そいつには驚いたよ。もしこいつがスクーナー級の見た目をしたら間違いなくドラゴンの正体が発覚したんだしな。運良くこれまで遭遇例の無い初物タイプだったからよかったものを。これで追い出した意味もなくなったな」

 

「じゃあ!司令は全てを知っていて、シルフィーをアルゼナルから追い出したんですか!?」

 

「あぁ。真実を知れば、戦えなくなるだろ?ドラゴンと」

 

その言葉にシルフィーは何の反応も示さなかった。黙って軽蔑の視線をジル司令へと向けていた。

 

少しの時間の後、アンジュが憤慨した。

 

「ふざけるな!もういい!もうたくさんよ!!もうヴィルキスには乗らない!!ドラゴンも殺さない!!リベルタスなんて糞食らえよ!!」

 

「私はもう、戦わない!!」

 

「それもよかろう。このまま神様に飼い殺しにされるのがお望みならな。言っておくが全てを知った

以上、こいつもヴィヴィアンも追放するつもりはない。まぁ精々喰い殺されない様に気をつけるんだな」

 

その時であった。

 

「普通の人間の肉は生だとあまり美味しくないよ。食べるなら焼く事をお勧めするよ。ミスルギの豚達みたいに」

 

この場の暗い雰囲気とは無縁な、明るい声が響き渡った。この声の主をシルフィーは知っていた。

 

(この声!?まさか!?)

 

辺りを見渡し、そしてある人物を発見した。その人物は木に逆さでぶら下がっていた。自分と同じくらいの毛量が地面へと垂れ下がっている。その隙間から紅色の瞳がこちらを見ていた。リラだ。

 

「リラ!」

 

「久しぶりだね、お人形さん。それと堕ちた皇女様。とりあえずミスルギから無事に生還出来た事を褒めてあげるよ。すごいすごーい。パチパチー」

 

「それにしても、まさかアルゼナルに帰って来るだなんて。せっかくアルゼナルから追い出す為に色々と手回ししたのに。残念」

 

そう言いリラは目の前にジャンプしてきた。反射的に皆が数歩程度後ずさる。そしてナオミ達は困惑した。目の前にシルフィーと同じ顔の存在が現れた事に。

 

「し、シルフィーが・・・二人?」

 

するとリラは穴の方へと歩いてきた。そして穴の中からドラゴン。いや、人間を取り出し、それをかじった。

 

「あーだめだめ。こんな焼き加減じゃレアの印は

あげられない。炭を食べた方が美味しいね」

 

【バァン!】

 

警告なしに発砲音が響いた。ジル司令の手にした

拳銃の銃口は煙を上げていた。そしてその銃弾の行き先は・・・

 

ジル司令の右肩であった。激痛がジル司令を襲う。

 

「司令!?」

 

「ジル!大丈夫かい!?」

 

慌ててサリアが駆け寄る。バルカンがリラに飛びかかるが思いっきり地面に蹴り伏せられた。項垂れるバルカンをリラは蹴飛ばした。まるで道端の石ころを蹴る感覚で。

 

「道具は人間の持つ総合身体能力を底上げする名目で使うものだ。初めから道具に頼って勝負を挑んだ時点で負けなんだよ。ん?ジル司令」

 

すると突然リラは何かを考え込んだ。手にしたかじりかけの人間の頭部を穴の中へと放り投げる。

 

「ジル・・・あぁ!思い出したよ!確か・・・」

 

「10年前、世界を壊そうなんて勇みよく世界に喧嘩売って、結局ボロボロにされて泣いて逃げた負け犬だっけ?」

 

「!ジルを侮辱するなぁぁっ!!!」

 

「青いんだよ!!」

 

サリアが手にしたマシンガンを放つ。しかし放たれた弾丸は全て、彼女の手の中に簡単に収められていた。

 

「なっ!?銃弾を手で止めた!?」

 

「あのさぁ。そんなポンコツで僕に傷をつけられるわけないじゃん。相手を痛める銃弾ってのは確か」

 

「こんぐらいの速さだろぉ!!?」

 

「ガアッ!?」

 

次の瞬間、彼女の手にあった弾丸はサリアの手の甲を貫いた。指で弾いただけの弾丸が。サリアの手から銃が落ち、手の甲からは血が流れる。

 

「道具に頼ってもこんな体たらくしか出来ないお前は負け犬の中の負け犬だ」

 

すると彼女は後ろを振り返った。

 

「どうだい?誰か撃ってみるかい?背中に眼はないから怪我の一つ。いや、上手くいけば致命傷を与えられるかもな」

 

「・・・」

 

誰一人として、撃つ者はいなかった。リラは再びこちらを振り返った。その顔は不気味なまでに満面の笑みを浮かべていた。

 

「君達って暇なのかな?早くこの場から消えなよ。僕がここに来たのはここに来るであろうある人物達と出会う為だよ。君達に用はないね。ここで何かするつもりはない。どの道する必要がないしね」

 

「さてと。そろそろ奴等もやって来る頃だろう。いや、もうやって来ているか」

 

「そうだろ?さっきから背後の木陰で隠れて様子を伺っている君達?」

 

少しの間、場が固まった。すると木の陰から何人かが出てきた。その総数は六人。シオン達だ。

 

「シオン!?」

 

「久しぶりだねシオン。それに他のみんなも。それとも、黒き魔法使いとでも言うべきかな?」

 

「肩書きなどどうでも良い。何故お前がここにいる」

 

「嬉しくないのかい?この10年間、君達は僕を必死になって探してたじゃないか。その僕がわざわざ君達に会いに来たのに」

 

(なっ!?シオン達はリラと知り合いなのか!?)

 

シオンは気まずそうに、驚くシルフィーの方を一度だけ見た後、その視線を目の前のリラへと戻した。

 

「・・・何が狙いだ」

 

「なぁに。君達がここに来た理由は大体予想がついてる。でもね、それだとこっちが困るんだよ。だからちょっと僕とお茶の一つでもしないかな?ちょうど僕以外の相手もいる事だし」

 

「相手?」

 

「エンブリヲだよ」

 

その言葉を聞いた途端、シオン達とジル司令の表情が一気に変化した。それを見てリラはほくそ笑んだ。

 

「さぁ。お誘いを受けるかい?」

 

「・・・分かった。受けよう」

 

「待て!貴様ら!エンブリヲを知っているのか!?」

 

ジル司令の呼び止めなどをガン無視し、七人はその場から姿を消した。

 

「なんなのよ一体・・・」

 

呆然としていたアンジュ達であったが、慌てて現状を理解すると、ジル司令とサリアとバルカンを連れて、医務室へと駆け足で向かった。

 

だが、運んでいる最中の彼女達の表情は、重く暗い物であった。自分達のしてきた戦いの真実。その

重さに。これまでの自分に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくし、ミスルギ皇国では今日の夜出る艦隊の編成が行われていた。その艦隊に、猛毒なる牙を搭載して、アルゼナルを目指す為に・・




久しぶりにリラが出ましたね。何故彼女はシルフィーとほぼ同じ姿なのでしょうか。それらの疑問もいずれ答えが出るでしょう。その時まで、様々な推測などをしていただければ、幸いです。

第5章は後3話を予定としています。オリジナル
シナリオをいつ挿入するかに悩んでいます。
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