クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
リベルタス。ジル司令達が密かに計画していた人間達への反逆。その計画が遂に実行へと移される。
サリアの元にジル司令からの通信が入った。
「サリア。アンジュを必ず連れてこい」
「イエス・マム」
サリアとの通信が終わるとジル司令はオペレーター達とある場所に来ていた。それは極秘裏に作られていた潜水空母【アウローラ】であった。
「各員持ち場につけ!」
「イエス!マム!」
発着デッキでは、準備を整えたヒルダ達がいた。
「出撃します!」
かつての第三中隊が出撃する。その直後のことだ。発着デッキ入り口に何かがやってきた。それは鉄の円盤であった。次の瞬間には円盤達は周りに刃を
展開し。発着デッキをガリガリと削りながらやってきた。
「総員退避!」
ヒルダの掛け声のもと皆奥へと逃げる。地面を削りながら進む円盤突如として爆発した。
「なっこれは!?」
爆風が引き、ヒルダ達が見たもの。それは発着デッキ入り口を瓦礫で塞いでいる光景であった。さらに先程の爆発で、エレベーターシャフトまで破壊されていた。
「ヒルダ隊長!空中に未確認円盤が!」
アルゼナル外では第三中隊のメンバー達が謎の円盤。ピレスロイドと戦っていた。ピレスロイドから鹵獲ワイヤーが放たれる。
「隊長!ターニャとイルマが連れていかれた!」
「連れていかれた!?どういうことだ!?」
空一面に大量のピレスロイドが展開された。発着
デッキではピレスロイドの攻撃が終わると、兵隊達が乗り込んできた。狙いはヴィルキスらしい。
「整備班集まれ!敵の狙いはヴィルキスだ!各員!最重要事項をヴィルキスの地下への搬入とする!
手動でやるんだ!」
メイが激励の言葉をかける。そうしている間も銃撃戦は続いていた。
そして人間達は至る所にはいりこんだ。
ある箇所では一箇所無理矢理集められ、必要な素材で判ると問答無用で殺す。そして医務室ではマギーとエマ監察官がいた。人間達はエマ監察官も殺そうとしていた。ノーマじゃないと叫ぶ彼女をマギーが助ける。
マギーがヴィヴィアンを連れ出すため、医務室に入る。するとそこには人間達がいた。ヴィヴィアンを確保していた。
「第二目標であるメイルライダーを発見」
「その子をどうする気!?」
マギーが銃を向ける。人間達はマギーを狙いながらヴィヴィアンを連れて外へと出ていった。
発着デッキでは、銃撃戦が尚も続いている。
「もうだめだ・・・私達死ぬんだ」
「死の第一中隊がこんな事で死んでたまるかよ!」
「今更隊長面しないで!」
諦め掛けていたクリスをヒルダが激励する。しかしクリスはそれに怒る。その時だ。クリスを狙っている兵士がヒルダに見えた。
「クリス!」
クリスを庇い、銃弾を受ける。しかしヒルダは怯むことなく銃で兵士を撃つ。兵士に命中し海へと落ちていった。
「なんで・・・助けたの?」
「誰も死なないし死なせない。それがあたしら死の第一中隊だろ?」
ヒルダが傷口を抑えながら言う。
(アンジュ、あんたも戦ってるんだろ?)
こちらはサリアとアンジュ。現在二人は今最下層を目指していた。正確に言うなら、アンジュは最下層へと無理矢理連れて行かれていた。
人質のつもりなのか、モモカはジャスミンによってマナが使えないようにされていた。
「ヴィルキスがまだ降ろされてない!?わかった。アンジュを届けたら私も発着デッキに向かう」
サリアは通信でメイと話していた。
「ここ。危ないんでしょ。避難準備なんてしてる場合なの?」
アンジュがサリアを睨む。サリアの手には銃が握られており、銃口はアンジュに向いていた。
「・・・あんたには大事な使命があるの。だから無傷でジルの元に送り届ける」
「その過程で仲間が何人死のうと知ったこっちゃないって言う気?」
アンジュが睨みつけながら言う。
「・・・仕方ないのよ。これが私の・・・最期の
使命だから・・・」
「くだらない。あんたもあの女と同じね。つまらない使命感に囚われてるだけの変人。巻き込まれる者達はいい迷惑ね」
【パチン!】
サリアがアンジュにビンタする。
「何もわかってないくせに!!自分がいかに特別な存在なのか!わかっているの!?」
「わかりたくもないわ!」
「てはアンジュリーゼ様!息を止めてください!」
その時、モモカさんの意識が覚醒した。そしてエプロンから何かを取り出した。それは胡椒であった。それを床に叩きつける。胡椒が空中に散布される。
「くっしょん!待ちなさいアンジュ!くっしょん!」
サリアが叫ぶがそれはアンジュ達には既に届いていなかった。
「サリア!どうした!?」
「アンジュに逃げられた!!」
「必ず連れもどせ!」
そういいジル司令は通信を切った。するとジル司令の元に外部から通信が来た。繋げるとタスクであった。
「アレクトラ!アンジュはどうした!?」
「逃げられた。お前もアンジュの拿捕に協力してくれ」
「・・・わかったよ・・・」
そう言うとタスクは通信を切った。
「いつでもお料理するために持ってて良かったです」
「大胆な事をするわね!」
「アンジュリーゼ様の影響です!くっしゅ」
すると通路を不気味に照らしていた赤ランプも消えた。電源盤が落とされたらしい。アンジュとモモカはマナを灯として走っていた。
すると曲がり角から何かとぶつかった。それはシルフィーとナオミであった。
「アンジュ!それにモモカさん!」
「ナオミ!?それにシルフィー!?貴女達、何処に向かってるの!?」
「発着デッキ。パラメイルが必要だと思うから」
「奇遇ね。私もよ。それじゃあ早く行きましょう!」
こうして四人は合流した。しばらく通路を走っていると、食堂へとたどり着いた。
マナの光で映し出された食堂の光景に四人は唖然とした。目の前には真っ黒に焦げた死体がそこらじゅうに転がっている。
ミスルギ皇国で焼け死んでいった人間達の死体。そしてつい先日見たドラゴン、いや、人間達の死体。これらの光景がフラッシュバックする。
「うっぷ!」
「オエッ!」
「アンジュリーゼ様!ナオミさん!待ってて下さい。直ぐにお水を!!」
モモカさんが水を汲みにシンクの方へと駆けてゆく。アンジュ達は蹲っている。そんな中ただ一人、シルフィーだけは違っていた。黙ってその光景を眼に焼き付けていた。そしてその時であった。
「大切な物は失ってから初めてその価値がわかる。いつの時代も変わらないな」
「!?誰だ!!?」
背後から男の声がした。三人が振り返る。するとそこには兵士とは思えない人間が立っていた。スーツ姿の金髪男である。
「それにしても酷い事をするものだ。こんな事を許した覚えはないのだがな・・・この虐殺を命じたのはジュリオ君だ。ここから北北東14kmの所に彼はいる。アンジュ。君を八つ裂きにする為にね。この子達はその巻き添えに近い形だ」
するとスーツの男はシルフィーの方を向いた。
「成る程。君が人間の心を持つ怪物だとしたら、
ジュリオ君は怪物の心を持つ人間と言ったところか・・・これを見たまえ」
男は何かを投げてきた。白い紙である。そこにはとある文字が黒く書かれていた。
【ZERO計画・・・】
その文字を見た途端。彼女の心に何かが引っかかった。ZERO計画。何処か遠い昔に聞いたことのある、その言葉に・・・
「キャァァァ!」
突然聞こえた悲鳴がシルフィーを現実へと引き戻した。すでにスーツ姿の男はいなかった。
先程、モモカさんの悲鳴が聞こえた。振り返るとそこにはモモカさんに銃を向けている兵士がた。モモカさんはマナのバリアでなんとか自分の身を守っている。
「モモカ!」
咄嗟にアンジュが銃で兵士を狙い撃つ。
「ぐぁぁ!貴様はアンジュリーゼ!」
「答えなさい!この虐殺を命令したのはお兄様なの!?」
アンジュが銃口を向ける。
「まっ待ってくれ!俺は隊長とジュリオ陛下の命令に従っただ・・・」
その言葉を聞いた次の瞬間。アンジュは兵士を撃った。兵士は死んだ。しかしアンジュは撃つのをやめない。
「アンジュリーゼ様!もう大丈夫です!モモカはここにいます!」
モモカがアンジュに必死に抱きつく。この時アンジュはやっと落ち着いた。慌ててその場から離れようとした。しかしシルフィーはその場から動こうとはしなかった。
「シルフィー?」
不安そうにナオミが声をかける。その時突然壁が
崩れ落ちた。そしてそこにはオメガがいた。
「遂にそこまで思い出したか」
「オメガ・・・」
「来い、人間。シオン達が待っている。話す時がきたんだ。何故お前があの島にいたのか。何故お前の右腕に腕輪がついているのか。何故お前の中に空白の記憶が存在するのか。その答えを教える時がきた」
「それとシオン達からの謝罪伝言だ。こうなったのはミスルギであいつを殺さなかったのこちらのミスだ。申し訳ない事をした、と」
「・・・確か、北北東14kmだったよね?」
「シルフィー?」
「・・・シオン達のせいじゃない。あの時、最初に殺さなかった私の・・・だからオメガ。少し付き合ってくれる?」
「よかろう」
オメガはシルフィーを乗せ、人型へとその身を変えた。
「人間達。発着デッキの瓦礫とゴミを少しだけ掃除したが、まだ大量にいる。加勢してやれ」
それだけ言うと、オメガはアルゼナルから離れていった。
「私達も行くわよ!!」
そしてアンジュ達は発着デッキへと辿り着いた。発着デッキではまだ銃撃戦が繰り広げられていた。アンジュは人間達の銃弾を掻い潜り、ヴィルキスへの乗り込む。
「邪魔!」
ヴィルキスで人間達を轢き殺しながら、アルゼナルの外へと飛び立つ。ナオミの機体もそれに続いた。時を同じく、外ではタスクが人間達に攫われたヴィヴィアンを助けていた。
そんなタスクの視界にヴィルキスが写る。
「何!?あのじゃじゃ馬め!」
「ポテチ・・・」
タスクを他所にヴィヴィアンは寝言を呟いた。タスクがヴィヴィアンを見た。
外に出てピレスロイドを片っ端から撃墜していくアンジュ。すると後ろからアンジュを追いかけて、アーキバスに搭乗したサリアがやって来た。
「戻りなさいアンジュ!戻って使命を!」
しかしアンジュは戻らない。ピレスロイドを相手に尚も前進し続けて行く。サリアもピレスロイドを撃墜する。
「一体何が不満なのよ!貴方はアレクトラに選ばれたのに!私の居場所も・・・役目も!全部奪ったのよ!それくらい!」
「・・・好きだったのよ。私、ここでの生活が好きだった。最低で最悪で劣悪で。何食べてもクソ不味かったけど・・・ここでの暮らしが好きだった。
それを壊された!あいつに!」
ヴィルキスはアーキバスに斬りかかった。簡単にアーキバスの腕が斬り落とされる。
「邪魔をするなら・・・殺すわ!」
その時アンジュの指輪が光った。ヴィルキスが赤く光り輝く。そしてアーキバスのもう片方の腕も斬り落とす。
「アンジュ!許さない!勝ち逃げなんて絶対に許さない!アンジュの下半身デブ!!」
サリアは呪詛の言葉を言いながら、機体とともに海へと落ちていった。 アンジュはそれを見た後、ジュリオの元目掛けて突き進んでゆく。
その頃発着デッキではヒルダ達が発進しようとしていた。
「よし!出るぞ!」
ヒルダとロザリーが発進した。クリスもそれに続く。その時だ。生き残っていた兵士がいた。その兵士は銃口をクリスに向けた。
クリスの頭に銃弾が命中する。機体がが大きく横に逸れ、壁に衝突する。機体から激しく火花と煙が上がる。
「クリス!」
ヒルダとロザリーが同時に叫ぶ。しかしクリスからの返答は返ってこなかった。
「待ってろクリス!今助けてやるからな!」
「ありがとう・・・ロザ・・・」
絞り出す様な声を出した次の瞬間、ハウザーは大爆発を起こした。兵士もその爆発に巻き込まれ死んだ。
「クリスゥ!!!」
「チキショウ!・・・テメェら全員ぶっ殺す!!!」
ロザリーが泣きながら、しかしその瞳には確かな
怒りが込められていた。ピレスロイドにその怒りをぶつける。
ヒルダもピレスロイドを撃ち落としていく。そしてその頃、エルシャは幼年部の子供達の所に辿り着いた。だがそこに、既に生きていた頃の幼年部の子供達はいなかった。
その場にいるのは骸と成り果てた子供達。皆が無抵抗に殺された事がわかる。
「そんな・・・・・・」
床に転がっているオルゴールが虚しく鳴り響いていた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
エルシャが子供達の亡骸の前で泣き崩れる。
その時エルシャは気がついてなかった。背後にスーツ姿の男か近づいてきたことを。そしてその男は時を同じくして、既に動かなくなっていたクリスの所にも現れた。
「・・・これは!?」
しばらく飛んでいて、アンジュとナオミが見た光景。それはミスルギの艦隊が跡形もなく破壊されている残骸であった。唯一半壊状態で健在している艦。エンペラージュリオ一世。その付近にはオメガがホバリングをしていた。
機体越しに二人が艦内を覗き込む。そこには目も当てられない光景が広がっていた・・・
時間的に少し前に遡る。
「全ての巡洋艦とイージス艦との交信途絶!」
「どうなっている!?つい先程までは沢山いただろうが!」
「謎の高熱源反応が本艦めがけて接近!!」
すると突然オペレーターの頭を銃弾が貫いた。そしてブリッジの外装が剥がされ、ある人物がそこへと舞い降りた。
「き、きっ、きっ!貴様は!」
ジュリオのシルフィーが立った。彼女が床に落ちていた鉄パイプを拾い上げた。次の瞬間、それは突然剣へと形状変化した。
「ひっ、ひぃぃぃ!!!来るな化け物!来るなぁ!!」
手に持った銃をデタラメ放つ。弾丸の一つが彼女の頬を掠める。赤色の血が一筋流れ落ちる。今の彼女はそんなものでは怯みはしない。
「ひぃ!ひぃ!!ひぃぃ!!!」
最早逃げる事も碌な命乞いも出来ない。無様に右手で払いのける動作だけをしている。その様は彼が命じたノーマ虐殺と同じ。確実に迫っている死の恐怖に怯えるというものであった。
彼女の眼には、一欠片の容赦も情けもなかった。
【ザクッ】
まず右腕が斬り落とされた。痛みに叫ぶ間もなく左腕を斬り落とす。両手を捥がれたジュオリは激痛に這いつくばる。直ぐに両脚を叩き斬る。
物陰でその様子を伺う者がいた。リィザだ。
(なんて事だ。早く姫様達に報告しなければ)
リィザは翼を生やしたかと思うと、急いでその場から飛び立った。
そしてアンジュ達が見た光景。それはすでに生き絶えたジュリオの胴体。死んだ骸。それを滅多刺しにするシルフィーの姿であった。
「・・・シルフィー・・・」
二人の眼には一瞬だけ、彼女の姿がミスルギで見せたあの状態になっている錯覚を覚えた。
その時である!
「おめでとう。その様子だと記憶の方は戻りかけてるみたいだね」
場違いな明るい声が響いた。彼女の眼前に一人の女の顔が入る。そのそっくり具合は相変わらず、一瞬鏡と見間違う程であった。
「リラ」
「安心しなよ。指揮官は見ての通り潰された。ピレスロイドも時期に燃料不足でただの鉄くずになる。この様子だと後数分でこの戦闘は終わるかな。だから・・・ちょっと僕に付き合ってよ」
彼女が手にしたカードを上空へ投げ飛ばす。すると待機していたオメガが突然叫びだした。
「その艦から飛び降りろ!!急げ!!」
オメガの言葉が先か、身体が先か。反射的に海面目掛けて飛び込んだ。海面スレスレの箇所でオメガに回収してもらった。
そして次の瞬間、エンペラージュリオ一世は大爆発を引き起こした。
「何が起きたの!?」
「上を見てみろ!」
三人が空を見上げた。すると突然空が裂け、そこから一つのロボットが降臨した。その姿はボディラインが黒く塗られてる以外はオメガそっくりであった。その手のひらにはリラが乗っている。
「オメガ!?」
「忘れているだろうから紹介するよ。僕のDEM・tyep・ZERO」
「久しぶりだな。オメガ。いや、機械生命体
第1号。私は機械生命体第25号。ゼロ」
「リラが生きていた事から薄々予想はしていたが。貴様も健在だったか!」
「まぁね。君達のせいで死にかけたけど、僕もこいつもなんとか生き延びたよ。そんな事より始めようじゃないか。君が僕。勝った奴が負けた奴の腕輪を手に入れる戦いを」
「・・・分かった。応じるわ」
こうして二つのDEMは目にも止まらぬ速さで何処かを目指し飛び立って行った。ナオミが慌てて二人の後を追いかける。アンジュも後を追いかけようとした。
その時であった!
「やぁ。アンジュ」
突然自分を呼ぶ声がした。振り返るとそこにはとある機体がいた。そしてその人物はそのコックピットの箇所にいた。
「貴方は、さっきの!?」
「私の名はエンブリヲ。そしてこれは私のラグナメイル。ヒステリカ」
ラグナメイル。ヴィルキスと同じ神の兵器。
「それにしてもアンジュ、君は美しい。君の怒りは純粋で白く、何よりも熱い。理不尽や不条理に立ち向かい焼き尽くす炎のように。気高く美しい炎だ」
「な、何を言っているの!?」
「アンジュ!そいつは危険だ!今すぐ離れるんだ!」
振り返るとそこにはアーキバスに搭乗しているタスクがいた。その背にはヴィヴィアンを背負っている。
「無粋な・・・」
すると突然エンブリヲが歌を歌い始めた。それに応えるかの様にヒステリカの両肩が開かれた。
「この歌は、永遠語り!まさかあの兵器!?」
ヴィルキスに備わる兵器。ディスコードフェザー。それをヒステリカも備えている。両肩から光が放たれ、アーキバス目掛けて突き進んだ。
ヴィルキスがアーキバスを庇うように割り込む。
「アンジュ!」
その時、アンジュの指輪が光った。
次の瞬間、エンブリヲの機体から光が飛んできた。その光が機体に命中する直前、ヴィルキスとアーキバスの二機が突然消えた。放たれた光は、その場に残る虚空を切り裂いた。
「・・・ほう。つまらない筋書きだが、悪くない・・・ん?・・・成る程。彼女達も飛んだか。
勝手にZEROまで持ち出したか。助けた恩を忘れて・・・」
「だがこちらは面白い展開になりそうだな」
それだけ言うと、エンブリヲとヒステリカはその場から姿を避けた。
少し前、時間にしてアンジュがエンブリヲと対面していた頃。
(こいつ、強い!)
先程から繰り広げられる戦闘は、オメガの攻撃が
命中しない。全て避けられている。
「人間。よく聞け。この戦闘から離脱するぞ」
遂にオメガが警告を発した。
「まだ。もう一回アクセルモードを使えば」
「馬鹿者!アクセルモードはそう易々と使える形態ではない!もしまた使えば、お前の身体はGの負担に耐えられずバラバラになるぞ!」
そんな言葉を無視し、彼女はメモリーを差し込んだ。オメガの体色が黒に。ボディラインが銀色へと変色する。
《START UP》
撹乱のために上下左右に激しく動き続ける。するとゼロは突然動かなくなった。
「チャンス!これでぇぇぇ!!!」
オメガの渾身の一撃。その一撃はゼロの必要最低限の移動であっさりと受け流された。機体は海面へと叩きつけられ、元の形態へと戻る。
(まさか!?あの攻撃を避けたのか!?)
「それぞれのDEMには特徴がある。オメガの特徴がアクセルモードへの変化の様に。ゼロにも特徴があるんだよ。ゼロの特徴。それは未来予測システム。対象物の十秒間の行動を予想するシステムさ」
「さて、以前は横槍が入り煮え湯を飲んだがこれでもう貴様に勝ち目はない。ここで死ね」
ゼロが一気に接近してきた。するとそこにナオミのグレイブが間へと割り込んだ。ブレードを持ち出して鍔迫り合いを行う。
「ナオミ!?」
「シルフィー!今のうちに下がって!」
「ったく。割り込みは良くないよ?」
ゼロはグレイブをあっさりと圧する。機体性能の差ではない。乗り手の腕の差が顕著に表れていた。
「キャァァッ!」
「君達が僕に勝てるわけないだろ?とりあえず目障りだから君から潰す事にするよ」
ゼロのサーベルがナオミのグレイブへと向けられる。たが、その隙をオメガは見逃さなかった。
「チャンス!跳ぶぞ人間!!」
すると突然オメガのボディラインが紅く光輝いた。そして次の瞬間、辺りの空間が捻れたかと思うと、オメガとグレイブの姿は何処にもなかった。
「・・・向こうに跳んだか。ならこっちもそれなりの用意をしないとな」
空が再び裂けた。リラはゼロと共にその裂け目へと入って行った。その裂け目は直ぐに閉じ、何事もない空が続いていった。
アルゼナルの最下層の潜水艦内ではオペレーター達の準備も終了間際であった。
「注水開始!」
その言葉と共に注水作業が始まる。
「アルゼナル内部に生命反応無し。生存者の収容。完了しました」
オペレーターのヒカルがジル司令に報告する。
「メインエンジン臨界まで残り10秒。注水率80%を突破。注水隔壁閉鎖完了」
「交戦中のパラメイルには、集合座標を暗号で送信しろ」
「了解!」
「拘束アーム解除。ゲート開け!微速前進!アウローラ発進!」
その掛け声のもと、アルゼナルの生存者を乗せた
アウローラは発進した。
リベルタスという反逆を始める為に。
現在シルフィーは高速で飛翔しているオメガの翼にぶら下がっていた。辺りを見渡してもそこには一面の暗闇が広がるだけであった。
「いいか!絶対に手を離すな!!」
オメガが激励の言葉をかける。しかし彼女の身体にかかる負荷は相当なものである。アクセルモードの時の負担など、これに比べれば屁でもない。それでも必死に落ちない様に機体の翼を掴み続けていた。
「踏ん張れ!何とか耐えろ!」
しかし、彼女の疲労などは遂に限界を迎えた。体と機体を繋ぐ右腕がついに機体から離れた。
シルフィーの身体は宙へと浮かんだ。自身とオメガを繋いでいた最後の糸。その糸が切れたのを両者は確認した。直ぐにオメガの姿は闇で見えなくなった。
そしてシルフィーの意識は、底知れぬ暗闇の奥へと堕ちていった。
二話に分けずに一話に纏めようとした結果、詰め込み過ぎた感がありますね。反省しよう。
遂に第5章が終了です。次回からは第6章です!そして6章の終盤から7章はオリジナルシナリオが展開されます。その点を予めご了承ください。
なお、オリジナル図鑑3は本編の都合上、第6章終了時に製作します。
追記。第40話は以前のアンケート結果でドラゴンルートになった為、アニメの14話を省略する形になります。その点もご了承ください。