クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
「ううっ・・・ここは?」
アンジュの意識が戻る。彼女の目前にはとある顔があった。最初はぼやけて見えていた顔がはっきりと映し出されていく。
「おいーっす、アンジュ」
「ヴィ、ヴィヴィアン!?」
そう。ヴィヴィアンだった。そこにはドラゴン姿ではなく、アンジュ達のよく知る姿のヴィヴィアンがいた。服装はドラゴン達の服を着ていた。
「ヴィヴィアン。元に戻れたのね。良かった・・・でも、どうやって?」
「ここでクイズです!なぜ人間の姿に戻れたのか、分かりますか!?
「分からない。答えは?」
「それはね・・・えっと・・・なんだっけ?」
「D型因子の配分を調整しました。これでもう、
外部からの投薬なしでも人の姿を保てるはずです」
「ということでした!」
「・・・あの。貴女は?」
アンジュは突然現れたその人物に多少驚く。
「私はドクター・ゲッコー。医者です。ねぇ貴女?どこか痛いところはない?」
「別に。何処も痛くないわ」
「そう。サラマンディーネ様が手加減してくれたのですね」
その言葉にアンジュはどこか悔しそうだった。全力を出さずとも倒せるとでも言いたいのだろうか。
「でもよかったねアンジュ。タスクはとっても心配してたよ」
隣のベットに座っていたナオミが一言付け加えた。
「タスク・・・そういえばタスクは?」
アンジュが気になりそう呟く。
次の瞬間である。
「たすけてぇー!」
医務室にタスクの悲鳴が響き渡った。それは隣の部屋からした。アンジュ達は急いで隣の部屋へと駆けつけた。
「!!?」
・・・そこにはタスクが全裸でベットに縛り付けられていた。しかもその周りには女性が沢山いた。
一言で言うならハーレム状態だ。皆タスクのあるものを見ていた。
「ちょっと!タスク!何やってるのよ!」
アンジュはタスクを助けようと近づいた。その時だった。アンジュが機材につまづいた。前に倒れこむ。その時タスクの顔がだいぶ緩んだ。
賢者タイムの様な時間が流れた。それは実際は数秒であるがアンジュとタスクにとっては何時間にも
感じられた。
・・・普段タスクにされていた事を今度はアンジュがしたと思って貰いたい。しかもアンジュは口を開いて股間に埋め込んだ。
アンジュの口の中にあるものが咥え込まれた。白い白濁液が口の中に出された。
周りの女性達が歓喜の声を上げていた。アンジュが慌てて起き上がる。
「なによこれ・・・嘘・・・なんで全裸なの!?私・・・一体!」
アンジュが口元を触る。そこには・・・白い・・・液体が付いていた。それは口の・・・中にも・・・あった・・・
【ゴクン】
アンジュの耳に嫌な音が聞こえた。その音はまるで液体を飲み込んだときのような音である。アンジュは条件反射的にそれを飲み込んでしまったのだ。
「おおっ!グゥレイトォ!」
ヴィヴィアンが歓声の声を上げた。ナオミに至っては手で顔を覆いつつも指の隙間からチラ見している。
「ちっ違うんだアンジュ!これは!」
「ご協力感謝しています、ミスタータスク。人型の成人男性の体なんて珍しいですから。勉強になりましたわ。【性教育】の」
「せ・・・性教育!!?」
「はい」
「へぇ・・・人が大変な目に遭っているのに・・・そう」
アンジュがつまずいた際に床に落とした機材のうち、ピンセットと羽箒を拾い上げた。一体これで
何をどうする気なのだろうか?
「やっやめろ・・・アンジュ落ち着いて・・・」
「このケダモノォォォ!!!!」
その部屋には、タスクの悲鳴が響き渡った。
少しして、ナオミが医務室へと戻る。そこのベットにはシルフィーが腰掛けていた。
「あっ、シルフィー。検査はどうだぅた?」
「それが何かよくわからないのよ。息を吸って吐いてその息を検査したって。結果は問題なしだけど」
「あっ、ゲッコーさん。あの・・・あっちの部屋。大丈夫です?」
今も向こうの部屋ではタスクの悲鳴と女性の歓喜の声が響き渡っていた。
「ええ。あの子達には自習をさせていますのでご安心を」
その時ナオミはある事を思い出した。
「そう言えば、ゲッコーさん。シルフィーの事なんですけど」
「どうかされましたか?」
「実はシルフィーも、ドラゴンだと思うんです」
「本当ですか?羽も尻尾も生えてませんよね?ですが分かりました。でしたら少し血液を頂いて遺伝子
照合検査をさせてください」
注射針が左腕に刺される。そこから血液を少し抜き取る。
「では、この血液を検査をします。多分明日には出てると思いますで」
それだけ言うと彼女は、医務室を出て行った。
その少し後、アンジュはある場所で手を洗っていた。そしてその後そこでうがいもした。まるで
ばっちいものを洗い流す様に。
「アンジュ、落ち着いた?」
ヴィヴィアンがタオルを差し出した。それを受け取る。
「私汚れちゃった・・・男って欲求不満ならトカゲでもなんでもいいのね!」
憎々しげにタオルを地面に叩きつけた。あの後もタスクは解放されずに同じ目に遭っているのを見ていたからこう思うの仕方ない。
「その様子では、もう平気なようですね」
背後から声がした。振り返るとサラマンディーネがいた。その後ろにはナーガとカナメがいた。そしてもう一名もいた。
「ラミア。あの子です。遺伝子照合で確認しました。あなたの娘に間違いありません。行方不明になったシルフィスの一族。あなたの子
「ミィ・・・本当にミィなの!?良かった!」
するとラミアと言われた女性が泣きながらヴィヴィアンに抱きついた。ヴィヴィアン本人は困惑していた。
「だっ!誰!?私はヴィヴィアンだよ」
「この匂い・・・懐かしい、ミィの匂い・・・」
「いや、だから、私はヴィヴィア・・・ん?くんくん?」
ヴィヴィアンはその女性の匂いを嗅ぎ始めた。それは優しい優しい匂いである。
「なんだろうこの匂い・・・私知ってる!エルシャみたいな匂いがする!あんた誰?」
「あなたの・・・お母さんよ・・・」
「お母さん!!お母さんって何?」
「あなたを産んでくれた人よ」
ヴィヴィアンの質問にサラマンディーネが答える。
「ヴィヴィアンの・・・お母さん」
「そうです。彼女は十年前に母を追って、向こうの世界へ迷い込んでしまったのでしょう」
「皆、祭りの用意を。祝いましょう。仲間が十年
ぶりに帰って来たのですから」
そう言うとサラマンディーネは手を合わせた。神にこの幸福を祈る様に・・・
こうして夜となった。皆の手には行灯が保たれていた。
「殺戮と試練の中、この娘を彼岸より連れ戻して
くれた事に感謝します」
サラマンディーネは一礼した。そのあと手に持ったその行灯を空へと放った。それに続き皆が行灯を空へと放つ。サラマンディーネの言葉を皆が復唱する。
「アウラよ」
「アウラよ!」
アンジュ達もこの祭りを見ていた。これを見ているとフェスタを思い出す。花火は激しい音もあったが、夜空に広がった花火の美しさ。心を打たれた点では同じであった。
「不思議な光景だね」
後ろを振り返ると性教育を終えたタスクと検査を終えたシルフィーがが来ていた。タスクはちゃんと服を着ていた。
「機嫌直しよ。本当に何もしてないんだし・・・俺の心は君だけのものだ」
「体は違うんでしょ?ばーか」
アンジュはそう言うが顔ではどこか照れていた。アンジュが笑う。それにつられてタスクも笑う。
四人は空を見上げた。空には行灯が無数にあった。
「同じ月だ」
タスクは月を見ていた。
「星もね」
シルフィーは星を眺めている。
「・・・もう一つの地球・・・か」
「未だに夢なのか現実なのかよくわからない。でも一つだけ良かった事がある。ヴィヴィアンが人間で」
「これからどうなるの・・・私達・・・こんなもの見せて」
「知って欲しかったのです。私達の事を」
後ろを振り返る。そこにはナーガとカナメがいた。
「そしてあなた達の事を知りたい。それがサラマンディーネ様の願いです」
「知ってどうするの?・・・私達はあなた達の仲間をいっぱい殺した・・・あなた達も私達の仲間をいっぱい殺した・・・」
「かつて、アウラは言いました。人間は罪を赦し、相手を許せると。そして、許し合った先に進む事も出来ると。きっと姫さまも、アウラと同じ事を言われると思います」
「姫様からの伝言です。どうぞごゆるりとご滞在ください」
そう言うとナーガとカナメの二人は軽く会釈をして、その場を後にした。
「ごゆるりと・・・か」
「信じるの?」
「どうかしら?でもヴィヴィアンは楽しんでるわよ」
少し離れた場所では、ヴィヴィアンが母親と夜空を眺めていた。
「・・・帰るべきだろうか・・・アルゼナル。リベルタス。エンブリヲ。・・・もしもう戦わなくてもいいのなら・・・」
タスクのその問いかけに三人は何も答えられず、ただ空を見上げていた。
「すいません。少しお時間よろしいですか?」
不意に背後から声がした。振り返るとそこには一人の女性がいた。
「初めまして。貴女方が向こうの世界の来訪者ですか?」
「はい。あのっ。誰ですか?」
「これは失礼しました。私はロシェン。かつてはアウラの助手をしていましたが、今は黒の部隊の総帥をしています」
総帥。言ってしまえば軍隊の中で一番偉い人だ。
「総帥!?そんなに偉い人が一体何の様です?」
「何。大したことではあらません。皆さんの回収した機体の修理が完了したので、それのご報告に来ました。それに、貴女方がどの様な人なのか、少し見たくなりましてね。少しお話しをしませんか?」
「ロシェン様!」
突然ロシェンさんの背後で声が聞こえた。見るとそこにはアスカがいた。
「アスカ。何事ですか?」
「大巫女様達がお呼びです。その事を伝えに来ました」
「わかりました・・・アスカ。この人達をあの場所へと案内しなさい」
「あの場所といいますと?」
「レーテの土地です」
「なっ!レーテ!?」
驚きのあまり大声を上げる。すると付近にいたドラゴン達も妙にざわつき始めた。アスカは慌てて平静を装った。
「はっ!わ、わかりました!」
「では皆さん。私は大巫女様に呼ばれているのでこれで。今度はそちらの世界について、少し話をしたいですね。最後にシルフィーさん。少しお耳を拝借します」
ロシェンさんはシルフィーの耳元へと寄った。そしてシルフィーにだけ聞こえるくらいの声でこう呟いた。
「ファイル」
「えっ?何ですって?」
「いえ、なんでもありません。忘れてください」
そう言うとロシェンさんは大巫女様のいる場所へと歩いてった。その場に残ったアンジュが呟く。
「レーテって何よ?」
するとアスカはアンジュの口を慌てて塞いだ。
「バカ!軽々しく口にするな!説明する。だから付いて来い」
するとアスカは辺りを伺いながら、こっそりと近くの茂みへと入っていった。シルフィー達は顔を見合わせた後、その茂みにこっそりと入って行く。
そこは自然の道が続いていた。目の前で先導する
アスカは足音さえ立てない様に慎重に歩みを進める。
やがてある場所へとたどり着いた。そこには一つの民家があった。しかしそこは既に崩れた廃屋でもあった。そしてそこには一つの石碑が建てられており、こう記されていた。
【レーテの悲劇跡地】
「レーテの悲劇。それはここで起きたいたたまれない事故の事だ」
「事故?」
「・・・かつて。まだアウラがこの世界にいた頃、この場所で起きた事故の事だ。その事故の起きた場所がこのアウラの家、そして土地の名はレーテ。だからレーテの悲劇と呼ばれている」
そしてアスカは皆の顔を一通り見た。
「・・・これから話す事はむやみに口外するな」
アスカはそう注意すると一つ咳払いをした後、語り始めた。
「レーテの悲劇。それはアウラの住む家が火事によって全焼。そしてアウラはレーテの悲劇の唯一の生存者なのです。この事故は民だけではなく、アウラにも深い悲しいを与えました」
「何故ならばアウラは、レーテの悲劇で大切な我が子を失ったのです」
「ええっ!?子供を!?」
「そうです。その子は生まれつきの光線過敏症で苦しんでいました」
「光線過敏症って?」
「主に太陽などの日光の影響で皮膚がただれる病気の事だ」
「よく知っているな。その為写真は愚か、人目に触れる事もありませんでした。そしてこの事故によって子供とベビーシッター数名が死亡。アウラは全身を火傷する大怪我を負ってしまった・・・」
「なんでこんな場所に連れてきたの」
しかしシルフィーの質問をアスカは無視する。
「・・・どうか彼女達の魂に安らぎが訪れんことを」
アスカはその場のお墓に手を合わせると静かに冥福を祈った。シルフィー達も何も言わずに冥福を祈る。燃え盛る炎に包まれ、苦しんで死んでいった彼女達の為に・・・
そんな中、アスカは一つの疑問を抱いていた。先程のシルフィーの言葉は、彼女にとっても気になっているのだ。
(何故だ?何故ロシェン様はこの者達をここに?)
我が事ながらこの章だけでも結構オリキャラ増えるなぁ。まぁ黒の部隊とかわざわざ分かるくらいだし、こうなる事はかくごしてましたけどね。
後何気に今日一日で二話投稿できたんだな。