クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第49話 砕かれた腕輪

 

 

「私が、死んでる・・・?」

 

「そうだよ。死んでる」

 

あっさりとした答えが返ってきた。

 

「ふ、ふざけたこと言うなよ!じゃあ今この場にいる私は何なんだよ」

 

その焦りにより、普段の面影は何処にもなかった。

 

「その腕輪の力は自己再生能力。だから君は死ぬほどの怪我をしたとしても、何度もそれらを乗り切ってる」

 

「たとえそれが、意識不明の重体で、生存確率が5%を切っていても、たとえ高圧電流の直撃を浴びたとしても、たとえ長時間、水中から出られずに流され続けていたとしても、たとえ一週間飲まず食わずでも、そして体の血液の80%程失っても、そりゃ生きていけるよね」

 

全て心当たりがあった。言われてみれば確かに彼女はあまりに死地を乗り越えすぎである。

 

「自己再生・・・」

 

先ほど戦闘。彼女の出血量に対し、傷口が見当たらなかった点を考えると、アンジュ達も否定できなかった。

 

「・・・論より証拠が必要かな」

 

お互いの腕輪が突然光った。

 

するとこれまでに感じたことのない違和感が右手を襲った。いや、この感じ、数回ほどある。歯が抜けそうなときに感じるぐらぐら感であった。

 

見ると腕輪が少し膨張しており、外そうと思えば外れそうであった。リラが月の腕輪を中央に投げ捨てる。

 

「もし、それを否定するならこの場で腕輪を外してみるといい。もしそれで、私は生きていると言えたなら、この腕輪をくれてやるばかりか、仲間共々この場を見逃してやるよ。まっ、後者に関しては、君に仲間がいればの話だけどね」

 

この言葉に皆が確信した。リラは何一つの嘘もハッタリもついていない。答えを知る者ゆえに出せる

絶対の自信。それが彼女にはあった。

 

「シルフィー!あんな挑発乗るな!」

 

「必死だねぇ。それもそのはずか。だってシオン達は、全てを知ったうえで君を仲間に引き込んだんだからねぇ」

 

魔人族メンバーの顔がこわばった。それをシルフィーは見逃さなかった。

 

「うそ、だよな・・・」

 

「知らないのか?そいつ等、特にシオン。そいつはお前を殺そうと・・・」

 

「お前なんかに聞いてない!」

 

「・・・この写真を見な」

 

リラにより写真が数枚ばらまかれた。アンジュ達もその写真を見た。

 

そこには身体中に生命維持装置の管が繋がっているシルフィーが写っていた。ただ一つ、両腕がないことを除いて、それはリラ以上に、いや、

シルフィーそのものであった。

 

「これって・・・」

 

「そいつが私達の母体となった存在さ・・・シオンにとってあんたは、そいつの代わりなんだよ」

 

「・・・ねぇシオン。正直に答えてよ・・・私は、仲間・・・だよな・・・」

 

(この戦いが終わったら、俺たちみんなで名もなき島で過ごそう)

 

彼女にとって、その言葉は少なからず心の支えにもなっていた。仲間を助ける為に捨て、一人に戻ると決めていた彼女にとって、気休めとはいえ、それは温かい言葉だった。

 

「お前は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗作だ」

 

鉄槌の言葉が振り下ろされた。オメガが何かを言っていた。多分シオンを罵っているのだろう。だがシルフィーにとって、そんな事はどうでもよかった。

 

「あ・・・アアアァァァァァ!!!!

 

その絶叫は、永く、されど一瞬で鳴り止んだ。シルフィーが腕輪を外した直後、彼女電池の抜けた玩具の様に、その場に崩れ落ちた。

 

直後、腕輪を回収しようと先に動いたのはリラであった。狙いを同じにしていたシオンと奪い合いになる。

 

「悪いね!こいつはもらってくよ!」

 

一瞬にしてシオンは吹き飛ばされた。手負い故に、まともに張り合う体力すら残されていないらしい。直ぐにドラゴン達に取り押さえられた。

 

「くそ!放しやがれ!」

 

「ちょっと!離しなさいよ!」

 

シオン達だけでなく、アンジュ達も力ずくで組み伏せられた。これにより完全に生命与奪が相手側に奪われた。

 

オメガに関しては、魔人族のメンバーが実質人質となっている為に行動を起こす事が出来ない。

 

「さて、アダムとイブは知恵の果実とされるリンゴを食べ、知恵を得た。故に神から追放された。君達は知りすぎた。だから始末しなきゃねぇ」

 

ナイフを手に、リラがゆっくりと歩みをこちらへと進めている。

 

「待てリラ」

 

突然彼女を制止する声がした。その主はロシェンであった。

 

「ここまでたどり着いた褒美だ。お前たちに死ぬ前に良い物も見せてやろう。リラ。腕輪を渡しなさい」

 

「・・・ふん!シルフィーが死んだ以上、こんな

ものに用はない。好きにしな」

 

太陽と月、二つの腕輪を投げ捨てる。それをロシェンが拾い上げた。直後、満面の笑みを浮かべる。

 

「遂に・・・腕輪がそろった」

 

すると腕輪は共鳴するかのごとく、眩い光を放っている。

 

「真実のアカシックレコードよ!いまこそ姿を現すがよい!!」

 

腕輪が宙に浮かんだ。一体何が起きるのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【・・・コトン】

 

「・・・・・・は?」

 

「?」

 

腕輪は光が静まると、重力に従い、下へと落ちていった。そこからは、何も出てこないし、何も起きない。

 

「ばっ!馬鹿な!!何故だ!!腕輪は二つそろっている!!物を出し入れするには、腕輪が二つ必要なはずだ!!なのに何故出てこない!!」

 

ロシェンが、普段見ていた態度からは想像でも出来ないほど狼狽している。腕輪をぶんぶん振っているが、何も出てこない。

 

「リラ!!!貴様どういうことだ!!!」

 

「知らない!!僕が誕生したとき、既に腕輪は僕の左腕につけられていた!!今以外で、一度も中身を取り出せる機会はなかったはずだ!!」

 

となると、答えはただ一つしかない。

 

「初めから腕輪は、偽物だったのか!!!」

 

「貴様ぁ!!本物の腕輪は!!アカシックレコードはどこにある!!!」

 

倒れている。シルフィーにつかみかかる。だが彼女の眼にもう光は宿っていない。つい先ほど、その光は完全に消えたのだ。

 

(アカシックレコード?でもそれってあいつが持ってたんじゃ)

 

アンジュ達はそれを見ていた。だから余計にわからない。何故アカシックレコードを狙っているのか。

 

「くそっ!こんな眉唾物!!!何の価値もない!!!!」

 

「よせぇぇぇぇぇ!!!!」

 

シオンの叫びも虚しく、次の瞬間、腕輪はロシェンの手によって、粉々に砕け散った。

 

その時であった。

 

腕輪が砕かれる直前、腕輪から光る玉が浮かび上がった。

 

「なんだこれ!オーブ!?」

 

やがて光の玉がはじけたかと思うと、そこに一人の人間が立っていた。黒装束をまとっているおり、魔人族の関係者なのは理解できた。

 

男はフードを目深にかぶっており、その上に白い帽子も被り、ハードボイルドな雰囲気を醸し出していた。男はゆっくり歩み始めた。

 

「ウワアッ!人間ダァ!殺して・・・」

 

「邪魔」

 

【ドゴッ!】

 

「ギャアァッ!」

 

皆が目を疑った。この男はあの改造ガレオン級、

カーネイジ級をグーパンチで殴り倒したのだ。人間がどうか疑わしくなってきた。その男はリラの前で足を止めた。

 

「なっ!なんだお前は!?」

 

頭に被っていた帽子を外した、次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リラァ!!大きくなったなぁ!!」

 

・・・前言撤回。ハードボイルドの雰囲気は影も形もなかった。その男は突然リラを抱えると、嬉しそうにぐるぐると回り始めた。

 

「なっ!なんだお前!!いきなり何を!!」

 

余りに突然なことに、リラは困惑していた。慌てて男を突き飛ばし、距離を取る。謎の男の方も困惑していた。

 

「?・・・なんだこの匂い。リラだけどリラじゃないみたいだ」

 

「せっ、先生!!!」

 

声の主はシオンである。

 

「おお!おまえら!その恰好・・・」

 

捕らわれている皆を見て、ついに事態を察したようだ。

 

「SMごっこだな。俺も混ぜてくれ」

 

ちっとも分かってなかった。

 

「すいません。昔みたいにツッコミたいんですけど

時間がないんです!ほら、背後見て!」

 

そこにはすでに動かないシルフィーがいた。

 

「リラが二人・・・だと・・・」

 

「・・・先生。これは・・・」

 

唖然としていた男だが、やがて何かひらめいたらしい。

 

「そうか!リラは双子になったのか!で、なんで寝てるんだ?」

 

どう考えても場違い、いや、出てくる作品が違いすぎである。一番部外者が言いたいことを言えたのは、アンジュであった。

 

「だっ!誰よあんた!!!」

 

「なっ!俺様を知らないだと!!ガーン!!」

 

すると男は、いまだノびているカーネイジ級の胴体の上に昇りあがった。

 

「おうおうおう!遠い奴は音に聞け!近ぇやつはその目に刻め!!俺様は神たる存在!!!魔人族、

デルザー軍団の大首領!!!その名も不知火(しらぬい)様だぁ!!世界よ!俺様が帰ってきたぞ!!!」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

多分、この場の全員が思っているだろう。なんて

反応すれば良いのか。いきなり現れ突然変な事を言い出されても困ります。すると当然拘束が緩くなった。見ると見知らむ女性がドラゴン達を倒していた。

 

「あーあ。人柱から解き放たれた直後なのに、相変わらずの俺様ルールね」

 

「!!?誰!?」

 

「あら私?私はデルザー軍団、最高幹部のエリスよ。よろしく、坊や達。いや、男女比率的にお嬢ちゃん達かしら?」

 

「それともう一つ。突然で悪いけど、そこ危ないわよ」

 

また天井が崩れ落ちた。そこにはこれまで見たことのない機体が存在していた。色々と考えるに、恐らくDEMだろう。

 

「またなんか来た!!」

 

「何こいつ!?」

 

「もうどおにでもなれぇ」

 

もはや彼女達のキャラが半分崩壊している。その

機体はオメガと同じ人工知能を備えていた。

 

「長いお勤めご苦労様です!マスター!!」

 

「おお!ファントム!なぁ、さっそくで悪いけど、この状況を分析して説明してくれ。握手会じゃなさそうだし」

 

「答えは単純です!マスター達は敵陣のど真ん中で蘇りました」

 

「あー。なるほど。大体理解した。で、シオン。この男が敵か?」

 

不知火は銃をとりだすとタスクに突き付けた。

 

「先生!違います!この男はドラゴンではありません!!」

 

慌ててシオン達がフォローしている。もう前半部分のシリアスな雰囲気など失せていた。

 

その頃、まだ慌てふためいているロシェン達であったが、ようやく調子を無理矢理取り戻しかけていた。

 

「魔人族の偉い奴か!」

 

「偉いじゃない!超偉いナイスガイだ!!」

 

訂正する必要性を感じない。

 

「魔人族は皆殺しだ!」

 

「敵対するなら相手になってやる!行くぞファントム!戦闘開始だ!」

 

「無理です」

 

対戦するであろう雰囲気にいきなり消火器を吹き付けられた。。

 

「何故だ。理由を30字以内で説明せよ」

 

「ここに移動するまでにディーゼルエンジンが

お釈迦になりました」

 

「でぃ、ディーゼルエンジン・・・」

 

その言葉をアンジュは知っていた。まだアンジュがノーマだと判明する前、歴史の教科で習った事がある。あの機体はそんな過去の遺物が搭載されているのか。

 

「あの機体は使えないらしいな!あいつを倒したらでかい褒美が手に入る!」

 

「悪いが、その首頂くぞ!!」

 

勢い良く、黒の部隊のドラゴン達が飛びかかった。

 

「くそ!こうなったら・・・」

 

【ゴキッ!】

(首の骨の折れる音)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・え?」

 

皆、目の前の光景に再び思考が停止した。こいつは何をしている?

 

血がポタポタと滴る音が聞こえる。それと同時に噴水の様に勢いよく吹き出している血飛沫。手元に自分の首が握られていた。

 

そしてその首が一言。

 

「首ならやるよ。ほれ」

 

「ウゲェェッ!!!」

 

「オロロロロ!!!」

 

「気持ちわるっ!!!」

 

あまりの気持ち悪さに、その場にいたエリス以外の全員が吐いた。胃に物がなくなるまで吐き続けた。恐怖のあまり、黒いドラゴンの半分はその場から

慌てて逃げていった。

 

「ふっ。俺様が神々しすぎたか・・・これは罪だな」

 

男は何事もなかったかのように首を元あった場所へと戻した。すると首の切断面が癒着し、首が再び繋がった。

 

「無理無理!!こっち来んな!!」

 

「いやぁ!来ないで!!」

 

「あっち行って!!」

 

周囲の人間は完全にドン引きしており、彼と物理的に距離を離そうとしている。

 

そこに、シオンの狙っていた隙が生まれた。

 

「今だ!飛び込め!!」

 

掛け声を合図に、DEMに飛び移る。シオン達は皆、開かれた穴へと飛び込んだ。不知火は動かないシルフィーを背負うと、エリスと共に穴へと入っていった。

 

「人間。ゲートを使うなら護衛してやる」

 

オメガがゲートを護るように立ちはだかる。唖然としていたアンジュ達であったが、直ぐに行動を起こした。

 

「とにかく!私達もあの穴を通るわよ!!」

 

「魔人族の元に下れと言うのですか!!」

 

「どのみちこの場にいたら間違い殺されるわよ!

いいから突っ込むわよ!!」

 

残されたメンバーも機体に乗り込む。妨害しようドラゴン達が突っかかってくるも、腐っても鯛(大破してもDEM)らしく、スクーナー級には善戦している。

 

アンジュ達とサラマンディーネ達もゲートを通る道を選んだ。彼女達が通った直後、穴は塞がり、何事も無かったかのように消えていった。

 

「ちっ!!まぁいい。少し計画が狂ったが、大きな修正は必要ない。それにしても・・・あいつら

一体・・・待てよ」

 

「・・・なるほど。どうやらまだ、探し物をあきらめるには早すぎたらしいな」

 

邪悪な笑みを浮かべると、ロシェンは気分の悪そうにしている大巫女の元へと歩み寄った。

 

「安心してください。大巫女様。何も貴女の命をこの場で奪おうとは思ってません。貴女にはまだ利用価値があるので・・・」

 

その時ロシェンは気づいていなかった。彼女の背後にいたリラはとても不服そうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、アンジュ達は、ここが何処かわからないでいた、見た感じ、廃れた街中らしい。周囲を見渡し。逃げ遅れたメンバーはいないことが把握された。

 

そしてほんの少し先に、シオン達はいた。

 

「急いでスマートブレインの地下格納庫でDEMのオーバーフォールを!後シルフィーをカプセルの中に・・・って!なんでお前たちが来てる!」

 

魔人族メンバーがアンジュ達の存在に気づき、武器を構えようとした。

 

【パチン!!】

 

武器を構えるより先に、乾いた音がその場に響く。見るとナオミがシオンにビンタをしていた。その様は、普段の彼女からは想像もできなかった。

 

「なっ、ナオミ・・・」

 

「なんで・・・何でシルフィーの事、最初から話してくれなかったの!!」

 

「あなた達。シルフィーがこんな事になった理由も、知ってるんじゃないの・・・」

 

あまりに気まずい雰囲気が場に流れた。

 

すると不知火は帽子を目深にかぶり、シオンをグーで殴った。あまりの強さに、体が壁にめり込んでいる。再び掴みかかりそして殴った。それはシオンは避けようとせず、甘んじて受けた。

 

「おいシオン。俺が人柱になってから、魔人族に、デルザーに。そして娘に何があったのか・・・全て話せ」

 

先ほど見ていたナルシストでちゃらんぽらんな雰囲気は、静かな怒りによってかき消されていた。

 

「・・・わかりました。全てをお話しします」

 

【ポツッ】

 

ふと顔に何かが当たった。雨だ。見ると雨が降りだしていた。しかも強い。

 

「ひとまずあのビルに入りましょう。濡れて風邪をひいてしまいます」

 

「え?全部の雨粒良ければよくない?」

 

見ると不知火とエリスが高速移動をしていた。目に映っているのは全部残像らしい。

 

「すいません。自分そこまで肉体鍛えてません」

 

アンジュ達は改めて思った。

 

(この二人だけ人間じゃねぇ・・・)





今回でようやく、オリキャラ内においての主要人物の登場させる事が出来ました。

(実のところ今回のキャラクター達は、本来登場する予定はない、緊急登板に近いのですが、それはオリジナル図鑑③に載せる予定です)

因みにシルフィーのこれまでの件だが、実は全てこの作品内で実際に負ってたんだ。一体何話で負ったのか、是非探してみよう!

最後に一つ、言っておくべき事がありす。

これはクロスアンジュです!!!(当たり前の事実)
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