クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
「私が、死んでる・・・?」
「そうだよ。死んでる」
あっさりとした答えが返ってきた。
「ふ、ふざけたこと言うなよ!じゃあ今この場にいる私は何なんだよ」
その焦りにより、普段の面影は何処にもなかった。
「その腕輪の力は自己再生能力。だから君は死ぬほどの怪我をしたとしても、何度もそれらを乗り切ってる」
「たとえそれが、意識不明の重体で、生存確率が5%を切っていても、たとえ高圧電流の直撃を浴びたとしても、たとえ長時間、水中から出られずに流され続けていたとしても、たとえ一週間飲まず食わずでも、そして体の血液の80%程失っても、そりゃ生きていけるよね」
全て心当たりがあった。言われてみれば確かに彼女はあまりに死地を乗り越えすぎである。
「自己再生・・・」
先ほど戦闘。彼女の出血量に対し、傷口が見当たらなかった点を考えると、アンジュ達も否定できなかった。
「・・・論より証拠が必要かな」
お互いの腕輪が突然光った。
するとこれまでに感じたことのない違和感が右手を襲った。いや、この感じ、数回ほどある。歯が抜けそうなときに感じるぐらぐら感であった。
見ると腕輪が少し膨張しており、外そうと思えば外れそうであった。リラが月の腕輪を中央に投げ捨てる。
「もし、それを否定するならこの場で腕輪を外してみるといい。もしそれで、私は生きていると言えたなら、この腕輪をくれてやるばかりか、仲間共々この場を見逃してやるよ。まっ、後者に関しては、君に仲間がいればの話だけどね」
この言葉に皆が確信した。リラは何一つの嘘もハッタリもついていない。答えを知る者ゆえに出せる
絶対の自信。それが彼女にはあった。
「シルフィー!あんな挑発乗るな!」
「必死だねぇ。それもそのはずか。だってシオン達は、全てを知ったうえで君を仲間に引き込んだんだからねぇ」
魔人族メンバーの顔がこわばった。それをシルフィーは見逃さなかった。
「うそ、だよな・・・」
「知らないのか?そいつ等、特にシオン。そいつはお前を殺そうと・・・」
「お前なんかに聞いてない!」
「・・・この写真を見な」
リラにより写真が数枚ばらまかれた。アンジュ達もその写真を見た。
そこには身体中に生命維持装置の管が繋がっているシルフィーが写っていた。ただ一つ、両腕がないことを除いて、それはリラ以上に、いや、
シルフィーそのものであった。
「これって・・・」
「そいつが私達の母体となった存在さ・・・シオンにとってあんたは、そいつの代わりなんだよ」
「・・・ねぇシオン。正直に答えてよ・・・私は、仲間・・・だよな・・・」
(この戦いが終わったら、俺たちみんなで名もなき島で過ごそう)
彼女にとって、その言葉は少なからず心の支えにもなっていた。仲間を助ける為に捨て、一人に戻ると決めていた彼女にとって、気休めとはいえ、それは温かい言葉だった。
「お前は・・・」
「失敗作だ」
鉄槌の言葉が振り下ろされた。オメガが何かを言っていた。多分シオンを罵っているのだろう。だがシルフィーにとって、そんな事はどうでもよかった。
「あ・・・アアアァァァァァ!!!!」
その絶叫は、永く、されど一瞬で鳴り止んだ。シルフィーが腕輪を外した直後、彼女電池の抜けた玩具の様に、その場に崩れ落ちた。
直後、腕輪を回収しようと先に動いたのはリラであった。狙いを同じにしていたシオンと奪い合いになる。
「悪いね!こいつはもらってくよ!」
一瞬にしてシオンは吹き飛ばされた。手負い故に、まともに張り合う体力すら残されていないらしい。直ぐにドラゴン達に取り押さえられた。
「くそ!放しやがれ!」
「ちょっと!離しなさいよ!」
シオン達だけでなく、アンジュ達も力ずくで組み伏せられた。これにより完全に生命与奪が相手側に奪われた。
オメガに関しては、魔人族のメンバーが実質人質となっている為に行動を起こす事が出来ない。
「さて、アダムとイブは知恵の果実とされるリンゴを食べ、知恵を得た。故に神から追放された。君達は知りすぎた。だから始末しなきゃねぇ」
ナイフを手に、リラがゆっくりと歩みをこちらへと進めている。
「待てリラ」
突然彼女を制止する声がした。その主はロシェンであった。
「ここまでたどり着いた褒美だ。お前たちに死ぬ前に良い物も見せてやろう。リラ。腕輪を渡しなさい」
「・・・ふん!シルフィーが死んだ以上、こんな
ものに用はない。好きにしな」
太陽と月、二つの腕輪を投げ捨てる。それをロシェンが拾い上げた。直後、満面の笑みを浮かべる。
「遂に・・・腕輪がそろった」
すると腕輪は共鳴するかのごとく、眩い光を放っている。
「真実のアカシックレコードよ!いまこそ姿を現すがよい!!」
腕輪が宙に浮かんだ。一体何が起きるのだろうか・・・
【・・・コトン】
「・・・・・・は?」
「?」
腕輪は光が静まると、重力に従い、下へと落ちていった。そこからは、何も出てこないし、何も起きない。
「ばっ!馬鹿な!!何故だ!!腕輪は二つそろっている!!物を出し入れするには、腕輪が二つ必要なはずだ!!なのに何故出てこない!!」
ロシェンが、普段見ていた態度からは想像でも出来ないほど狼狽している。腕輪をぶんぶん振っているが、何も出てこない。
「リラ!!!貴様どういうことだ!!!」
「知らない!!僕が誕生したとき、既に腕輪は僕の左腕につけられていた!!今以外で、一度も中身を取り出せる機会はなかったはずだ!!」
となると、答えはただ一つしかない。
「初めから腕輪は、偽物だったのか!!!」
「貴様ぁ!!本物の腕輪は!!アカシックレコードはどこにある!!!」
倒れている。シルフィーにつかみかかる。だが彼女の眼にもう光は宿っていない。つい先ほど、その光は完全に消えたのだ。
(アカシックレコード?でもそれってあいつが持ってたんじゃ)
アンジュ達はそれを見ていた。だから余計にわからない。何故アカシックレコードを狙っているのか。
「くそっ!こんな眉唾物!!!何の価値もない!!!!」
「よせぇぇぇぇぇ!!!!」
シオンの叫びも虚しく、次の瞬間、腕輪はロシェンの手によって、粉々に砕け散った。
その時であった。
腕輪が砕かれる直前、腕輪から光る玉が浮かび上がった。
「なんだこれ!オーブ!?」
やがて光の玉がはじけたかと思うと、そこに一人の人間が立っていた。黒装束をまとっているおり、魔人族の関係者なのは理解できた。
男はフードを目深にかぶっており、その上に白い帽子も被り、ハードボイルドな雰囲気を醸し出していた。男はゆっくり歩み始めた。
「ウワアッ!人間ダァ!殺して・・・」
「邪魔」
【ドゴッ!】
「ギャアァッ!」
皆が目を疑った。この男はあの改造ガレオン級、
カーネイジ級をグーパンチで殴り倒したのだ。人間がどうか疑わしくなってきた。その男はリラの前で足を止めた。
「なっ!なんだお前は!?」
頭に被っていた帽子を外した、次の瞬間。
「リラァ!!大きくなったなぁ!!」
・・・前言撤回。ハードボイルドの雰囲気は影も形もなかった。その男は突然リラを抱えると、嬉しそうにぐるぐると回り始めた。
「なっ!なんだお前!!いきなり何を!!」
余りに突然なことに、リラは困惑していた。慌てて男を突き飛ばし、距離を取る。謎の男の方も困惑していた。
「?・・・なんだこの匂い。リラだけどリラじゃないみたいだ」
「せっ、先生!!!」
声の主はシオンである。
「おお!おまえら!その恰好・・・」
捕らわれている皆を見て、ついに事態を察したようだ。
「SMごっこだな。俺も混ぜてくれ」
ちっとも分かってなかった。
「すいません。昔みたいにツッコミたいんですけど
時間がないんです!ほら、背後見て!」
そこにはすでに動かないシルフィーがいた。
「リラが二人・・・だと・・・」
「・・・先生。これは・・・」
唖然としていた男だが、やがて何かひらめいたらしい。
「そうか!リラは双子になったのか!で、なんで寝てるんだ?」
どう考えても場違い、いや、出てくる作品が違いすぎである。一番部外者が言いたいことを言えたのは、アンジュであった。
「だっ!誰よあんた!!!」
「なっ!俺様を知らないだと!!ガーン!!」
すると男は、いまだノびているカーネイジ級の胴体の上に昇りあがった。
「おうおうおう!遠い奴は音に聞け!近ぇやつはその目に刻め!!俺様は神たる存在!!!魔人族、
デルザー軍団の大首領!!!その名も
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・・」
多分、この場の全員が思っているだろう。なんて
反応すれば良いのか。いきなり現れ突然変な事を言い出されても困ります。すると当然拘束が緩くなった。見ると見知らむ女性がドラゴン達を倒していた。
「あーあ。人柱から解き放たれた直後なのに、相変わらずの俺様ルールね」
「!!?誰!?」
「あら私?私はデルザー軍団、最高幹部のエリスよ。よろしく、坊や達。いや、男女比率的にお嬢ちゃん達かしら?」
「それともう一つ。突然で悪いけど、そこ危ないわよ」
また天井が崩れ落ちた。そこにはこれまで見たことのない機体が存在していた。色々と考えるに、恐らくDEMだろう。
「またなんか来た!!」
「何こいつ!?」
「もうどおにでもなれぇ」
もはや彼女達のキャラが半分崩壊している。その
機体はオメガと同じ人工知能を備えていた。
「長いお勤めご苦労様です!マスター!!」
「おお!ファントム!なぁ、さっそくで悪いけど、この状況を分析して説明してくれ。握手会じゃなさそうだし」
「答えは単純です!マスター達は敵陣のど真ん中で蘇りました」
「あー。なるほど。大体理解した。で、シオン。この男が敵か?」
不知火は銃をとりだすとタスクに突き付けた。
「先生!違います!この男はドラゴンではありません!!」
慌ててシオン達がフォローしている。もう前半部分のシリアスな雰囲気など失せていた。
その頃、まだ慌てふためいているロシェン達であったが、ようやく調子を無理矢理取り戻しかけていた。
「魔人族の偉い奴か!」
「偉いじゃない!超偉いナイスガイだ!!」
訂正する必要性を感じない。
「魔人族は皆殺しだ!」
「敵対するなら相手になってやる!行くぞファントム!戦闘開始だ!」
「無理です」
対戦するであろう雰囲気にいきなり消火器を吹き付けられた。。
「何故だ。理由を30字以内で説明せよ」
「ここに移動するまでにディーゼルエンジンが
お釈迦になりました」
「でぃ、ディーゼルエンジン・・・」
その言葉をアンジュは知っていた。まだアンジュがノーマだと判明する前、歴史の教科で習った事がある。あの機体はそんな過去の遺物が搭載されているのか。
「あの機体は使えないらしいな!あいつを倒したらでかい褒美が手に入る!」
「悪いが、その首頂くぞ!!」
勢い良く、黒の部隊のドラゴン達が飛びかかった。
「くそ!こうなったら・・・」
【ゴキッ!】
(首の骨の折れる音)
「・・・・・・・・・え?」
皆、目の前の光景に再び思考が停止した。こいつは何をしている?
血がポタポタと滴る音が聞こえる。それと同時に噴水の様に勢いよく吹き出している血飛沫。手元に自分の首が握られていた。
そしてその首が一言。
「首ならやるよ。ほれ」
「ウゲェェッ!!!」
「オロロロロ!!!」
「気持ちわるっ!!!」
あまりの気持ち悪さに、その場にいたエリス以外の全員が吐いた。胃に物がなくなるまで吐き続けた。恐怖のあまり、黒いドラゴンの半分はその場から
慌てて逃げていった。
「ふっ。俺様が神々しすぎたか・・・これは罪だな」
男は何事もなかったかのように首を元あった場所へと戻した。すると首の切断面が癒着し、首が再び繋がった。
「無理無理!!こっち来んな!!」
「いやぁ!来ないで!!」
「あっち行って!!」
周囲の人間は完全にドン引きしており、彼と物理的に距離を離そうとしている。
そこに、シオンの狙っていた隙が生まれた。
「今だ!飛び込め!!」
掛け声を合図に、DEMに飛び移る。シオン達は皆、開かれた穴へと飛び込んだ。不知火は動かないシルフィーを背負うと、エリスと共に穴へと入っていった。
「人間。ゲートを使うなら護衛してやる」
オメガがゲートを護るように立ちはだかる。唖然としていたアンジュ達であったが、直ぐに行動を起こした。
「とにかく!私達もあの穴を通るわよ!!」
「魔人族の元に下れと言うのですか!!」
「どのみちこの場にいたら間違い殺されるわよ!
いいから突っ込むわよ!!」
残されたメンバーも機体に乗り込む。妨害しようドラゴン達が突っかかってくるも、
アンジュ達とサラマンディーネ達もゲートを通る道を選んだ。彼女達が通った直後、穴は塞がり、何事も無かったかのように消えていった。
「ちっ!!まぁいい。少し計画が狂ったが、大きな修正は必要ない。それにしても・・・あいつら
一体・・・待てよ」
「・・・なるほど。どうやらまだ、探し物をあきらめるには早すぎたらしいな」
邪悪な笑みを浮かべると、ロシェンは気分の悪そうにしている大巫女の元へと歩み寄った。
「安心してください。大巫女様。何も貴女の命をこの場で奪おうとは思ってません。貴女にはまだ利用価値があるので・・・」
その時ロシェンは気づいていなかった。彼女の背後にいたリラはとても不服そうな顔をしていた。
現在、アンジュ達は、ここが何処かわからないでいた、見た感じ、廃れた街中らしい。周囲を見渡し。逃げ遅れたメンバーはいないことが把握された。
そしてほんの少し先に、シオン達はいた。
「急いでスマートブレインの地下格納庫でDEMのオーバーフォールを!後シルフィーをカプセルの中に・・・って!なんでお前たちが来てる!」
魔人族メンバーがアンジュ達の存在に気づき、武器を構えようとした。
【パチン!!】
武器を構えるより先に、乾いた音がその場に響く。見るとナオミがシオンにビンタをしていた。その様は、普段の彼女からは想像もできなかった。
「なっ、ナオミ・・・」
「なんで・・・何でシルフィーの事、最初から話してくれなかったの!!」
「あなた達。シルフィーがこんな事になった理由も、知ってるんじゃないの・・・」
あまりに気まずい雰囲気が場に流れた。
すると不知火は帽子を目深にかぶり、シオンをグーで殴った。あまりの強さに、体が壁にめり込んでいる。再び掴みかかりそして殴った。それはシオンは避けようとせず、甘んじて受けた。
「おいシオン。俺が人柱になってから、魔人族に、デルザーに。そして娘に何があったのか・・・全て話せ」
先ほど見ていたナルシストでちゃらんぽらんな雰囲気は、静かな怒りによってかき消されていた。
「・・・わかりました。全てをお話しします」
【ポツッ】
ふと顔に何かが当たった。雨だ。見ると雨が降りだしていた。しかも強い。
「ひとまずあのビルに入りましょう。濡れて風邪をひいてしまいます」
「え?全部の雨粒良ければよくない?」
見ると不知火とエリスが高速移動をしていた。目に映っているのは全部残像らしい。
「すいません。自分そこまで肉体鍛えてません」
アンジュ達は改めて思った。
(この二人だけ人間じゃねぇ・・・)
今回でようやく、オリキャラ内においての主要人物の登場させる事が出来ました。
(実のところ今回のキャラクター達は、本来登場する予定はない、緊急登板に近いのですが、それはオリジナル図鑑③に載せる予定です)
因みにシルフィーのこれまでの件だが、実は全てこの作品内で実際に負ってたんだ。一体何話で負ったのか、是非探してみよう!
最後に一つ、言っておくべき事がありす。
これはクロスアンジュです!!!(当たり前の事実)