クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
今回で50話突破です!今回の話を読み思ったこと。
理想と現実の差は激しい。
理由づけも少々強引な気もするし・・・
でも、気にしなぁい!(ある一線を超え吹っ切れた)
外は豪雨が降り続いている。まるで今の自分たちの心境のようだ。いや、それ以上だ。嵐の海など敵ではないほどに、皆の心は荒れ果てていた。
スマートブレイン本社内。集まった部屋内でシオン達やアンジュ達、サラマンディーネ達が傷の手当てをしていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
皆何も喋ろうとしなかった。パラメイルや龍神器、そしてDEMの緊急メンテを行う為に地下格納庫へと出向いた時、そこで見た物体。写真に写っていた生命維持装置の管が体中に存在するシルフィーである。その体に両腕はなく、隣に入れられ同じように眠るシルフィーとの違いはそこしかなかった。
不知火を残し、皆ごその場を後にし、部屋へと戻った。
「・・・何も聞かないんだな・・・」
長い沈黙の後、シオンが口を開いた。きっと誰かが願っていた話し合いの為の起爆剤。それが今投げ込まれた。
「あれは・・・シルフィーは生きているの・・・」
アンジュが最もな疑問を呈した。
「・・・学問上では生きている。だが・・・」
あれで生きているものなら、ゾンビの方が生きているらしさが湧き出ているものだ。
「・・・何故、あの娘が、アウラの血を・・・」
「その辺りについては、俺から説明しよう」
エレベーターの扉が開き、不知火が戻ってきた。
「あの娘、お前さん達がシルフィーと呼んでいた
女性。あれはリラ。俺とアウラの間で出来た娘だ」
「やはり、この男がアウラの伴侶。ハーフなのですか。あの娘は・・・」
「先に言っておく。俺はアウラを愛している。アウラもきっと同じはずだ。邪な考えも思想もない。
ただお互いに愛し合い、そして交わり、あの娘は
産まれた」
「・・・少し変だとは感じていました。娘については病気で人前に出られないと理由づけされていたのですが、何故かその父については一向に触れられなかったことに・・・」
「そうか。アウラのやつ、リラを守る為に、そんな嘘を・・・俺はあの子が5歳の時、アウラから託された。その時のアウラは、全身大やけどだった。
リラに至っては、見るに堪えない状態だった」
「でも、あなた達は、なんで腕輪を砕いた途端に現れたの?腕輪の中にでもいたの?」
「それについては、俺が説明しよう」
シオン達が口を開いた。
「先生とエリスが腕輪内で人柱となった理由。それはシルフィー、いえ、リラを救うためだったんだ」
「俺たちの身体にドラグニウムは毒に等しい。たとえ微量とはいえ、それを溜めこめば身体の組織は崩壊して、死を迎える。元々リラはドラゴンと魔人族のハーフだったが、それ故に、少し厄介な点があったんだ」
「一つ目は、彼女はドラグニウムを無意識のうちに吸収してしまう事。もう一つ。ドラグニウムは吸収こそできますが浄化はできない事。最後に、普通のドラゴンなら心臓にドラグニウムの結晶があるが、リラの場合はそれが脳にあること・・・」
皆が言葉の意味を理解した。体内に自身を蝕む毒をもち、さらに毒を無意識に取り込み、その濃度は上がってゆく。そして解毒は自力では不可。そしてその毒自体が脳に定着していること。
つまりドラグニウムを手術で切除するといった手法が使えないのだ。脳を入れ替えるなど、彼女という存在を消すに等しく、まず使えない。
彼女は生まれた途端、死へのカウントダウンが始まっていたのだ。
「アウラのところにいたときは、アウラが浄化をしていたみたいだから、何とかやっていけたみたいだが・・・こっちにはそんな浄化できる魔術も設備もなかった・・・だがな、あの腕輪は人柱を置くことで装着者の身体の一部として扱われる。俺の魔術は自己再生。要は自分の死んだ細胞を生き返らせることができる」
「だから俺は人柱となる道を選んだ。俺が人柱になることで、リラには自己再生が付与される。そうなれば止まった心臓も、組織が崩壊した細胞も修復される。だが、腕輪がその機能を果たすには、もう一人の人柱が必要だった。そこで名乗りを上げたのがエリスだ」
「まぁ、私は数合わせみたいなものね」
不知火とは別に、エリスはのほほんとしていた。
「次の質問、デルザー軍団はどうなった」
「結論から言わせてもらいます。スマートブレインに取り込まれました」
「先生とエリスが人柱となった後、デルザー軍団は当時№3だったタカ派のゴンドウをリーダーとして、ドラゴンの殲滅を理想に掲げました。シルフィー、いや、リラはドラゴンと魔人族のハーフです。当然彼女も、殺す対象に選ばれましたよ」
「でも、一応魔人族でもある為に彼女は処刑ではなく、国から追放されました。当然、必死になって縋り付いてきました。土下座までして・・・」
「それをお前は・・・見捨てたのか」
「・・・できる限りのことはしました。対ドラグニウムコーティングされたこのローブなど、彼女の存在は魔人族に害はないと説明したのですが、最終的にはゴンドウとの信望の差で惨敗しました。そして追放されてから一か月後、龍魔大戦が勃発しました」
「そこでリラは、自分の得た力を見せつけてきましたよ。当時の戦場、オメガだけで劣勢を盛り返しその後に残りの23機のDEMを引き連れて、取引を持ちかけました。自身の元に下るのなら、この23機DEMを貸し与えるという契約を。それは当時、機械文明がない魔人族にとって、まさに喉から手が出るほど欲しい代物でしたよ。こうしてデルザー軍団は軍事組織・・・いえ、傭兵部隊、スマートブレインの傘下に入りました」
「なんでそんな周りくどい事を・・・」
「リラにとっては、復讐だったんでしょうね。自分を捨てた者達が、自分の足元に跪き、そして頼らざるを得ない事。それが彼女の復讐・・・」
「・・・そうか。どのみちもうデルザー軍団は存在しない。それが聞けて十分だ。次だ。カプセル内の両腕の無い娘。あれは間違いなくアウラが産んだリラだ。ではあの黒髪のリラと、両腕のあるリラは何者だ」
「・・・ZERO計画。かつてゴンドウが実行した、人間を意図的に作り出す計画。黒髪のリラは当時のリラを母体に創り出された人工人間です」
「ZERO計画は聞いたことがある。だが倫理的に問題視され、封印された筈では?」
「龍魔大戦の長期化によって、その封印も解かれましたよ」
「俺たちと戦ったリラはゴンドウによって産み出された純血な魔人族。そしてそのリラとの戦闘で、偶発的に生まれた存在。それがアンジュ達が知るシルフィー、アウラが産み落としたリラと同じハーフだ」
「?どういうことだ?」
「詳しいことは後で話す。だからこれ以上、ZERO計画関係は何も聞かないでくれ」
「・・・そうか。後でその口から語るのなら、今は何も聞かないでおく」
不知火は手元にあった水を一口飲む。
「最後だ。一体魔人族は・・・どうなった?」
一番の核心に今触れた。恐らくドラゴン達も気になっていた点であろう。突然世界から消えた魔人族。一気にシオン達の顔色が強張る。目に見えるほど体がガタガタ震えている。
「すいません。それだけは答えたくないです・・・一つ言えるとしたら、俺たちは本来、この場にいる存在ではなかったということだ」
この時のシオン達の表情はとても複雑だった。先程とは違い、後悔、懺悔、無念、怒り。この世のあらゆる負の感情がそこに集結していた。
「そろそろ私達の質問もいいかしら?」
これまで黙って聞いていたアンジュ達が手を上げる。
「シルフィーがそっち側についたのは、例の魔人化が進行した際、私達を巻き込まないため?だとしたら自己再生って効いてないんじゃないの?」
「・・・実は二つの出来事が彼女を死へと一気に近づけた。一つ目は彼女がつけていた腕輪が、一時的に機能停止状態となったこと。おそらくリラの仕業だ。これによって細胞は崩壊後、再生することができなくなった。そしてもう一つ、これがまずかった。その機能停止状態で彼女がドラグニウムの溜まり場に行ったことだ。そこでドラグニウムを多量に吸収したこと」
「まっ!待って!まさか、そのドラグニウムの溜まり場って・・・」
アンジュの中にある想像が浮かび上がる。
「お前の考えてる通りだ。ミスルギ皇国の事だよ」
アンジュ達の世界のマナはドラグニウムで出来ている。アルゼナルではマナを使う存在は精々エマ監察官くらいである。だが他の場所は違う。マナで溢れ返っている。つまりシルフィーにとっては毒のたまり場なのだ。そして対処法で有った腕輪は機能停止状態。これが彼女を死へと一段と早め、結果、ミスルギでの魔人化が発動。あの惨劇を引き起こしたのだ。
「・・・この際だ、正直に言おう。実をいうとアルゼナルが襲撃された件、本当なら止めることだってできた」
アルゼナル組が驚愕の表情でシオン達を見た。
「襲撃の事実を伝える為と、シルフィーを回収するためにアルゼナルへと足を運んだんだ。そこで、リラと出会った。そこで伝えられたよ。僕はミスルギ艦隊との戦闘の最中、あいつと戦う。邪魔をするなって。あの時、既にシルフィーはもう腕輪の力でも延命がギリギリだった。はっきり言って、匙を投げてたよ。そして俺たちにとって、腕輪が二つ揃わなければ、先生とエリスを解放することは出来ない」
「だから無視する事にした。所詮他人だと自分に言い聞かせながら」
「あんた達・・・なんて事してくれたのよ・・・」
「我ながら最低な決断をしたと思っているよ」
「最後の質問。シルフィーを助けることはできるの?」
「できる」
その質問に答えたのは不知火だった。
「方法はあるが手段がない。だが絶対に助ける。一番早い方法が、腕輪を使い、また俺が人柱になることだ」
その言葉は決して揺るがない覚悟が秘められていた。
「あんたたちの過去やシルフィーについてはよくわかった。結論から言えば、あんた達は最低ね」
「自分でも自覚しているさ・・・」
「でも、私はあんた達に協力する」
皆が驚いてアンジュの方を向いた。
「あんた達の為じゃない。シルフィーの為よ。彼女には返さなきゃいけない借りがあるし、それを返すだけよ。第一、元の世界に戻ろうにもヴィルキスは流れでオーバーホール中だし。なら戻れるまでの時間で、やれる事をやるだけよ。サラ子。貴女はどうするの?」
「私はドラゴンです。ドラゴンとして、侵略者たる魔人族の味方になることなどできません」
ドラゴンとして当然の返答である。
「・・・ですが、ロシェンの態度が気になります。彼女は何かを隠している。それは昔の歴史的な史実であると私は思います」
「ってことは・・・」
「魔人族の味方をするわけではありません。昔の真実を知るために、アンジュ達の味方をするのです」
「アンジュ、ドラゴン・・・いや、サラマンディーネ」
「手を貸してほしい。魔人族のリラとしてではなく、シルフィーを救うために」
「ええ。手を貸してあげるわよ」
三人が固い握手をした。ここからが再出発だなのだ!
「・・・とは言ったものの、これからどうするつもり?」
その言葉に押し黙る。皆口だけで、ノープランらしい。そんな中、サラマンディーネが口を開く。
「私としては一つ、気になることがあります。あの時、アウラの塔でロシェンが言った言葉」
「真実のアカシックレコード。それには腕輪が関係していて、あの腕輪は偽物でした。では本物の腕輪が存在するのではないでしょうか?」
「だが、恐らく本当の腕輪の在り処を知ってるのはただ一人。シルフィーだけだ。それもリラの頃、数百年前の記憶だぞ」
でもこの調子じゃ聞くに聞けない。いきなり躓いた訳だ。するとエリス当たり前のような顔で言った。
「あら。簡単じゃない。精神世界でシルフィーの精神体に聞けばいいだけじゃない」
アンジュ達は口を揃えていった。
「・・・は?せいしんたい?せいしん・・・せかい?」
どうやら、まだ魔人族の特徴を、アンジュ達は把握しきれていないみたいだ。
その頃、竜の都では。ロシェンと大巫女様が話しあっていた。
「何故だロシェン!なぜクーデターなぞ!」
「知っているのですよ。大巫女様。アウラが何処に囚われているのか。そしてアウラを奪還する手立ては整っていることも。ですが、アウラを奪還されては困るんですよ」
「何故だ!何故アウラの助手であるお前が、アウラ奪還の妨害を!一体何故!?」
「アウラの・・・助手。ははっ。あーっはっはっはっは!!!」
その言葉を聞いた途端、ロシェンが突然狂った様に大爆笑した。
「そうさ!所詮私はアウラの助手。アウラという輝かしい存在の影がお似合いな存在さ」
ロシェンが自嘲気味に話す。
「アウラ。あいつはこどもの頃から大人に混じって研究所で研究をしていた、天才と呼ばれる存在だ」
「覚えているか。Dwarsを。あの時私は、新たなエネルギーを研究。開発していた。そしてその研究は軌道に乗り、あと一歩で完成するはずだった。なのに・・・
「なのに貴様らは!アウラ達がドラグニウムを発見したことで、私の研究を用済みとばかりに中止にさせた!そればかりか私を除け者にし、不要な研究に時間と予算を食い潰した無能者と烙印を押し、批判した!!」
「その時私は決めたんだよ!この力でも届かぬ高見があるのなら、そこにいる存在を引きずり下ろすだけだ!!!」
「かといって、アウラをこのまま見捨てるなど、許されるはずが・・・」
「それが、私にはできるんですよ。議会を従えることが。そして大巫女様。あなた自身の口から、その議会の決議事項を発表してもらいましょうか!おい!牢に閉じ込めておけ!」
黒の部隊の兵が、大巫女を拘束しながら、地下へと降りてゆく。
「リラ。何か不服なのかい?」
「別に。それよりとっとと僕のドラグニウムを浄化しな。こっちは浄化がないと危険なんだから」
「安心しろ。すぐに浄化の用意をしよう。しかしよかったな。お前の目的が果たせて・・・最強のサイボーグ」
皮肉めいた口調で肩をたたきながら、ロシェンは議会へと歩いて行った。その場にはリラだけが残された。
(そう。僕はシルフィーを・・・リラを倒した。これで僕は最強の力を有していることになる・・・目的は果たされた)
(じゃあ、僕はこれから何をすればいい?リラは僕が殺した。これから僕は、何を目標に生きていけばいい・・・)
答えの出ない自問自答をしながら、リラはその場へと佇み続けた。
これで第六章もおしまいです。一応第二以降の新キャラなどの情報を載せたオリジナル図鑑を作る予定です。
第七章もオリジナルシナリオです。目標としては60話で第八章、つまり原作シナリオに戻りたいです。
そして今後を読んでいくうえで私から一言いいたい。考えるな!感じろ!
・・・ちゃんと理解できるような代物を作っていきます。