クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story 作:クロスボーンズ
第7話 ようこそ、死の第一中隊へ
ここは幼年部の教室。ここでは幼女達が楽しそうに授業を受けていた。
先生と思わしき女性がスライドショーを始めた。
「マナの光。それは人類に与えられた幸福の光でした。マナの光により、世界から争いはなくなり人々は平和を築き上げてきました。
「しかしそんな中、この平和を脅かす存在が現れました。ドラゴンです。ドラゴンは次元の壁を超えてこの世界に侵攻してきます。そして極稀に、マナの光を拒絶する存在が世界に現れました」
「それがノーマ。つまり私達です。マナの光を拒絶する私達は、法律によって厳しく管理されなければなりません。そして、私達はドラゴンを倒す為に、ライダーや整備士などを目指しいます。それが人間として出来損なった私達ノーマの唯一つの許された生き方だからです」
「ここアルゼナルでは、マナの光を持たないノーマたちを教育し、世界の役に立てるように育成します。いいですね皆さん?」
「イエス・マム!」
幼年部の子供達が元気よく返事をした。
ノーマと判明した者の殆どが赤ん坊である。流石に子供のうちから銃などを持ったりドラゴンと戦う訓練はさせないようだ。
まずここで自分達ノーマの生き方について教わるらしい。
そして幼女達の後ろでは、一際目立つ存在が二人いた。シルフィーとアンジュだ。更にその背後にはジル司令とエマ監察官もいた。
シルフィーはスライド写真に写されたドラゴンを見ていた。そしてアンジュはというと、黙って下に俯いていた。
二人が目覚めたのはほぼ同時であった。
取調室にて。
「いつまで寝ている。起きろ!」
ジル司令によって二人とも叩き起こされた。まずシルフィーが目覚めた。そして目覚めた先にはボロボロになっている少女の顔があった。アンジュの顔だ。
「誰!?」
朝起きたら目の前に知らない顔があれば動揺の一つもするものだ。その声に反応してアンジュも目覚めた。そしてアンジュも同じ様な反応をしていた。
「ばっ!バケモノ!!」
お互いが慌てて距離をとった。
そしてお互いが身体の違和感に気がついた。何かが身体に触れている。自分の身体を見てみると、服を着ていた。どうやら寝ている間に着せられた様だ。
「それがお前達の制服だ。それよりさっさと来い」
腕を引っ張られ、二人とも取り調べ室を後にした。
こうして二人は幼年部の子供達に混じって授業を
受けていたわけだ。
「さて、シルフィーはさておき、アンジュ。わかったか?」
「もうすぐ・・・ミスルギ皇国から解放命令が届くはずです!」
アンジュが必死に絶望の中から希望を見出そうとしている。しかしそんなアンジュの言葉をジル司令は無視する。
「監察官。現時刻を持ってアンジュ。並びにシルフィーの教育課程を終了。両者共に第一中隊に配属させる」
「第一中隊に!?二人ともですか!?」
ジルの放った単語にエマ監察官が反応する。
「既にゾーラに話は通してある。ほら、いくぞアンジュ」
「はっ、離してください!!」
そう言うとジル司令はアンジュの腕を掴んで、幼年部の教室を後にした。無論、アンジュの戯言などジル司令は聞く耳を持たなかった。シルフィーとエマ監察官もそれに続いた。
そんな二人を双眼鏡を使って遠くから眺めている
存在がいた。ゾーラ隊長だ。
「ほう。あれが噂の皇女殿下か。いいねぇ、やんごとなき御方の穢れを知らない身体。甘くて美味しそうじゃないか」
「しかも確かシルフィーとか言ったな。あいつも第一中隊に配属されるとは。これは退屈しなさそうだなぁ」
そういうとゾーラは隣にいたヒルダの胸を揉んだ。
「あっ・・・」
ヒルダの口から甘い声が漏れる。
「新しく入った娘なら誰でもいいんでしょ・・・」
現に昨日、ゾーラ隊長はシルフィーをベットの上に誘おうとしていた。そう思うのが当たり前である。その意見に隣にいたロザリーとクリスも頷いた。
「なんだ〜?妬いてるのかぁ?可愛いなぁお前達は!!」
「隊長!だからスキンシップは程々にお願いします!新兵から揉み方が痛いと苦情も出ています!!」
「はいはい、だから気を付けますよ〜サリア副長〜」
昨日と同じで、サリアの注意などゾーラ隊長には蚊ほどにも効かないようだ。それにサリアは頬を膨らませる事しか出来なかった。
「サリアちゃん。ちょっと借りるわね」
そう言うとエルシャはサリアの手元から資料を拝借した。
「ココちゃん、ミランダちゃん。この二人が新たに入る子よ。一人は既に昨日会ったわね。二人とも歳上だけど仲良くしてあげてねぇ」
「はっはい!」
二人は元気よく返事をした。
(そうか。シルフィーもメイルライダーになるんだ)
(じゃあ、シルフィーもドラゴンと戦うんだ・・・)
「ナオミ?何ぼーっとしてるの?」
ぼーっと外を眺めていたナオミにミランダが話しかけた。
「あっ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「ねぇねぇ!シルフィーがメイルライダーになるって事は、あの戦い方がまた見れるの!?」
ヴィヴィアンが興奮しながら皆に尋ねる。おそらくドラゴンに機体を突っ込み、そして貫通させたあの戦い方の事を言っているのだろう。
「残念だけど、シルフィーには新兵用のグレイブが与えられるわ。残念だけど、あのパラメイルは没収らしいわ」
新兵用のグレイブ。所謂ノーメイクだ。あの様な得体の知れない型破りな機体を使わせる訳にはいかない。もっとも、あの機体は未だに動かないらしいが。
「なーんだ。つまらーん」
「そもそもあんな戦い方・・・無茶苦茶よ。駆逐形態や武器を使わないばかりか、機体を突っ込ませてドラゴンと戦うだなんて。もしグレイブであんな戦い方をしたら、いつか・・・」
「ねぇねぇサリア。クイズ!」
サリアの言葉を遮る様にヴィヴィアンが話しかけてきた。
「誰が一番最初に死ぬかな?」
「えええっ!?」
物騒な単語にココとミランダとナオミが驚く。
「死なないように教育するのが私たちの役目でしょうがぁ!!」
そう言いながらサリアはヴィヴィアンの頭をグリグリした。結構痛いやつだ。
「痛い痛い痛い!死ぬ!!死ぬって!!」
「あらあら。今日も仲がいいわねぇ」
・・・仲が良いと言うのかこれは?
そしてアンジュとシルフィーはジル司令に連れられ、第一中隊の面々の前に来ていた。
「司令官に敬礼!」
ゾーラ隊長の掛け声のもと、第一中隊の皆がジル司令に敬礼した。
「後は頼むぞ。ゾーラ」
そう言うとジル司令は来た道を帰っていった。
「死の第一中隊へようこそ生娘共。私が隊長の
ゾーラだ」
そう言うとゾーラ隊長は二人の尻を揉み、前に押し出した。
「サリア。早速だが紹介してやれ」
「イエス・マム。第一中隊副長のサリアよ。こちらから突撃兵のヴィヴィアンとヒルダ。軽砲兵のロザリーと重砲兵のクリス。そして・・・」
「これ全部・・・ノーマなんですか」
俯いたままアンジュが放った一言。そのたった一言はその場を凍りつかせるのには十分であった。
「これって・・・」
「私達はノーマはモノ扱いか?」
「このアマ・・・」
ヒルダとロザリーがアンジュを睨む。
「そうだよ!私もアンジュもシルフィーもみんな
ノーマだよ。よろしくねー!」
「・・・よろしく」
ヴィヴィアンの言葉にシルフィーは返事をするが、アンジュは頑なにその事実を否定する。
「ちっ、違います!!私はミスルギ皇国!第一皇女!!アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです!!!断じてノーマなどではありません!」
「でも使えないんでしょ?マナ」
ヴィヴィアンの言葉にアンジュは狼狽える。
「こ、ここはマナの光が届いていないだけです!ミスルギ皇国に帰ればきっと!」
「・・・はぁ」
シルフィーが呆れて溜息をついた。この世界はマナの光で溢れている。シルフィーでさえ昨日、教科書で学んだ事だ。
「あーっはっはっは!ったく司令め。とんでもないやつを 回してきたぞ。状況認識もロクにできない
不良品が紛れてるじゃないか」
あまりの滑稽ぶりにゾーラ隊長が大爆笑した。
「不良品が上から偉そーにほざいてるんですか」
「痛すぎ・・・」
「ふっ、不良品は貴女達の方で・・・」
次の瞬間、見事な足払いがアンジュに襲いかかった。仕掛けたのはヒルダだ。
「身の程を弁えな!イタ姫様!」
「まぁまぁみんな。そのくらいにしておきましょうよ」
エルシャが事態を収拾しようとする。
「ああっ!?こう言う勘違い女は最初の内にシメとくべきなんだよ!」
「そうなの?」
「まぁそうなんだけど」
いやそこは否定しろよ。
「それとお前!シルフィーとか言ったな」
ヒルダがシルフィーを指差した。
「何?」
「いいか!一つ教えてやるよ!ここはあんたのいた島じゃない。その事を自覚しないと、こいつみたいに痛い目見るよ」
「それ昨日聞いた」
「ちっ!どうやら今痛い目に遭わないと分からないらしいな」
「殺る気?」
ヒルダの言動にシルフィーも身構える。いつでもヒルダに襲いかかれる様に準備をしている。ヒルダの方も、いつでも迎え撃てるように構えていた。両者共に殺気にも似た雰囲気を全開にしている。事態はまさに一触即発となっていた。
そしてこの事態を収めたのはゾーラ隊長だった。
「まぁまぁヒルダ。それにシルフィーも。同じノーマ同士仲良くやろうぜ。無論、そこのお姫様もな」
そう言うとゾーラ隊長はヒルダとシルフィーの頭の上に手を乗せた。
アンジュは何処か不服そうで、そして悔しそうであった。
「それでは訓練を始める!ロザリー!クリス!エルシャ!あんたらは一緒に来な!遠距離砲撃戦のパターンを試す!!サリアとヒルダとヴィヴィアンは
新兵の訓練だ!しっかりやんな!それじゃ各自持ち場につけ!」
「イエス・マム!」
そう言うと皆がそれぞれの行動に移った。
「ヴィヴィアンはココを、ヒルダはミランダをお願い。シルフィー。ナオミ。アンジュ。三人は私と来なさい」
「わかった」
「シルフィー。ここでは上官に対しての返事はイエス・マムよ。覚えておきなさい」
「イエス・マム」
そうして四人はその場を後にしようとした。ふと
背後を見てみるとアンジュが来ていない事に気がついた。アンジュはその場で立ち止まっていた。
「アンジュ?どうしたの?」
ナオミが疑問に思い尋ねた。
「私は・・・アンジュリーゼ。何人たりとも、私に命令をすることなど出来ません!」
次の瞬間、アンジュの背後にサリアが回り込む。その手にはナイフわ持っており、それをアンジュの
喉元数センチのところに突きたてている。
「覚えておきなさい。ここでは上官の命令は絶対よ。良いわね?」
流石に命の危険を感じたのか、アンジュは小刻みに頷いた。頷いたのを確認するとサリアはナイフを喉元から離した。
「さてと。じゃあ三人とも、付いて来なさい」
そう言うとサリアは再び歩き出した。シルフィーとナオミもそれに続いた。今度はアンジュも大人しく付いてきている。
ロッカールームにて。
「いったい何ですかこれは!?」
アンジュは渡されたものに動揺していた。それは服の様なものであったが、妙に露出部分が多い。特に胴体の前面と臀部が露出していた。
長時間行動と排泄の問題を解決する為に、この様な造形となったらしいが、はっきり言ってエロい。
「ライダースーツ。それに着替えて。シルフィー。貴女のライダースーツはこれ」
シルフィーに黒いライダースーツを渡しサリア自身も着替え始めた。因みにナオミは白のライダースーツに着替えている。
「こんな破廉恥なものを・・・ん?」
アンジュは渡されたライダースーツに奇妙なものを見つけた。それはどす黒さを秘めた赤い液体のシミ。もう乾いていたそれは血であった。
「前の人の血ね。持ち主は死んだわ」
「死んだ・・・こんなもの着るくらいなら、裸でいた方がマシです!!」
「そう」
次の瞬間、サリアはアンジュの腕を掴み、廊下へと追い出した。すぐさまドアに鍵をかけアンジュを閉め出す。
「ちょっと!開けて!開けなさい!!」
ドアを叩く音がロッカールームに聞こえるがサリアはそれを無視した。
「あの、開けなくていいんですか?」
ナオミが疑問に思いサリアに尋ねる。
「いいのよ。少し頭を冷やさせるべきね。それよりナオミ。シルフィー。二人は着替え終わったの」
ナオミは着替え終わっており、シルフィーももう少しで着替え終わるところであった。やがてサリア自身も着替えが終わった。そしてドアノブの鍵を開けた。
開けた途端、アンジュが転がり込んできた。
「着替える気になった?それともまだ裸でいる?」
(学園で教わった通りです!!下品で野蛮で暴力的で・・・)
そう思いながら、アンジュはサリアを睨み付けると憎々しげにライダースーツを受け取った。だが受け取ったはいいものの、何故か着替えようとしなかった。
「貴女待ちなんだけど。早く着替えて」
「・・・あの、手伝ってください」
恥ずかしそうにアンジュがサリアに頼んだ。その言葉にサリアが驚いた。
「貴女一人で服も着た事ないの!?子供以下ね」
アンジュの顔が赤くなった。
その後シルフィーとナオミはアンジュが着替え終わるまでその場で待機していた。
物語はアニメ本編に突入しました!
理想としては、メビウスの時とは違ってシルフィーは隊のメンバーと最初はうまくいかない風に描きたいですね。