クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第8話 シュミーレーター訓練

 

アンジュの着替えが終わり、四人はある場所へと辿り着いた。

 

それは数字の書かれた謎の箱であった。

 

それはパラメイルのシュミレーターボックスだ。既にココとミランダは中に入っており、ヒルダとヴィヴィアンの指導を受けている。

 

「三人とも、右から順に入って行って」

 

そう言いシルフィー達は箱へと入って行った。サリアはパソコンで、シュミレーターのレベルを調整し始めた。

 

(ナオミは少しだけレベルを上げてみるか。問題は

シルフィーとアンジュね。果たしてどれ程できるか・・・)

 

(・・・初めから出来るなんて思ってない。まずは

飛ぶ感覚を体に馴染ませないと)

 

そう思いながら、調整が終わったサリアは、まずアンジュに目の前の機械などについての説明をし始めた。

 

「これがメインスロットル。これはインジケーター。これはプリナムチャンバーの加圧の測定器。

それでこれが・・・」

 

「なんなのですか?これは?」

 

アンジュが疑問を投げかける。彼女からしたら一方的に色々な事を言われているため、情報の整理がついていないのだ。

 

「パラメイル。私達ノーマの棺桶よ」

 

そう言うとサリアはアンジュのシュミレーターの扉を閉めた。

 

「さて。次はシルフィーね。準備は・・・」

 

見るとシルフィーは既に準備が完了していた。

 

「貴女。使い方がわかるの?」

 

「なんとなく」

 

「・・・まぁいいわ。問題なさそうだし。それじゃあ始めるわよ」

 

そう言うとシルフィーのシュミレーターの扉も閉めた。

 

「さて、ナオミは大丈夫だと思うけど、復習のつもりで聞いて。3人とも、まずは飛ぶ感覚を身体に叩き込みなさい。パラメイルで飛ぶという事はこんな感覚が身体に襲い掛かる。だからその感覚に慣れなさい」

 

「ナオミ機。コンフォームド」

 

「・・・シルフィー機。コンフォームド」

 

ナオミの言葉をシルフィーも真似した。だがアンジュだけは未だに理解が追いついていなかった。

 

「なっ、何を・・・」

 

「訓練開始!」

 

サリアの宣言と共に次の瞬間、三人に激しいGが襲いかかった。シュミレーターとはいえそれはまるで、本当にパラメイルに乗っている様な感覚である。

 

サリアはアンジュのモニターに集中する事にした。

 

「キャァァァ!!」

 

「アンジュ!操縦桿から手を離さない!次!

加速!」

 

先程までの速度より更に加速した。

 

「キャァァァァ!!!」

 

「前を見なさい!実戦はこんなものじゃないわよ!!」

 

そんなサリアの言葉などアンジュには届いていなかった。悲鳴をあげ、ただ動揺している。

 

「次は上昇!その後急降下!!」

 

シュミレーター用のパラメイルが上昇した。その

瞬間、アンジュの中にある感覚が湧き上がった。

 

(今の感覚。これって・・・)

 

だが次の瞬間、機体は急降下を始めた。これによって先程の考えは悲鳴に上塗りされた。

 

「キャァァァ!!」

 

「地面に激突するわ!機首をあげなさい!」

 

万が一に備え、シュミレーターの緊急停止装置に指を伸ばした。シュミレーターとはいえ、墜落などの衝撃もかなり激しいらいし。

 

そしてアンジュの中に先程の感覚が再び湧いてきた。

 

(この感覚・・・間違いない。これは・・・)

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アルゼナルの医務室にて。ここでは医者であるマギーがジル司令の身体のメンテナンスをしていた。

 

「あ〜あ。こんなに真っ赤に腫れあがっちゃって・・・ジュクジュクになってるじゃない〜」

 

ジル司令の義手の外れた所をマギーが消毒している。傷口に傷薬は染みるらしく、ジル司令は目を瞑ってきた。その動作がマギーの中の何かを興奮させていた。

 

マギーは血を見ると興奮するタイプの様だ。

 

「痛い?痛いよね!もっと痛めつけてあげようか!?」

 

「酒臭いよマギー!」

 

「痛っ」

 

マギーの脳天にチョップした。どうやら酒で酔っていたようだ。因みに現在の時刻は真昼間である。

 

そんな様子をジャスミンは椅子に座りながら眺めていた。その手には、ジル司令の義手を持っており、そのメンテナンスをしていた。

 

「こりゃあダメだねぇ。外側のボトルは全部おしゃかになっちまってる」

 

「そこでだ!今回新たに仕入れたこのミスルギ皇国製の新ボトル!これをつければ元気百倍!!ち〜とばかし値がが品質は折り紙三枚付きだよ!!!」

 

ジャスミンが元気よく宣伝をしている。ジャスミンはアルゼナルにある、ジャスミンモールの店主なのだ。

 

ジャスミンモールは後に訪れるため、今は特に深い追求はやめておこう。とにかくジャスミンはお金儲けなどの商売根性が強いのだ。

 

「司令部のツケで頼む」

 

慣れた口調でジル司令が言う。さぞツケは溜まっているのだろう。

 

「あいよ、これでもう平気だろ」

 

そう言うとジャスミンは義手をジル司令に渡した。

 

「ふむ、なかなかの良さだな」

 

ジルはその義手を装着し、評価する。

 

「しかしもう少しデリケートに扱って欲しいもんだねぇ。そいつはお前さんほど丈夫にはできてないんだよ」

 

「暴れ馬がいるんじゃしょうがないだろ?」

 

そう言うとジル司令はタバコを取り出し、一服し

始めた。

 

「でもいいのかい?例の皇女殿下。第一中隊なんかに放り込んで」

 

「ダメなら死ぬ。それだけさ」

 

ジルはそう言うと煙を吐き出した。

 

 

 

「そう言えばもう一名いたね。シルフィーとか言ったっけ。あの娘も入れてよかったのかい?」

 

するとジル司令の顔色が曇った。

 

「あいつは不審な点が多い。とりあえず過去の航空事故やアルゼナルでのM・I・Aなども調べてみたが、航空事故の線はゼロ。M・I・Aの該当データもなしだ。それに」

 

「それに?」

 

「・・・あいつは島が沈んだと言った。だがナオミの証言から日付を特定したところ、その日は島が沈んだという事実は愚か、海には大きな地震一つなかった」

 

「なんだって!?」

 

ジル司令が放った一言に二人は驚いた。島が沈んだとなれば、被害などの関係ないとはいえ流石に世間が騒ぐものである。

 

しかしエマ監察官によると、そんな情報はマナには記載されていないらしい。

 

「あいつを信用するにはまだ早い。どうせならナオミがあのパラメイルで帰還してくれればよかったものを・・・危険ならいっそ・・・」

 

「ジル。私はあの娘のライダーとしてのセンスは高いと思う。だから第一中隊でも戦っていけると私は思うね。でもねジル。バカな事だけは考えるんじゃないよ」

 

ジャスミンが釘をさすかの様にジル司令に念押しした。

 

「・・・どんな奴でもダメなら死ぬ。それだけさ」

 

そうジル司令は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(この感覚は・・・エアリア!)

 

エアリア。それはかつてアンジュのしていたスポーツの一種である。簡単に説明するならそれは、空中バイクでぶつかり合うスポーツだ。それはラクロスに似ている。二人組を組んで、選手はスティックを振り回し、ボールを奪う。そして相手チームのサークル内に入れてポイントを稼ぐ。

 

最終的にポイントの高い方が勝者となる。紳士淑女の嗜みとして行われるスポーツである。そしてアンジュはかつて、エアリア部だったのだ。

 

地面に激突する瞬間、アンジュはハンドルを切り、機体を上昇させた。

 

(持ち直した!?あの状況で!?)

 

機体を持ち直したアンジュにサリアは驚いた。

 

しかし更に驚く事態に直面した。シュミレーター中の五人のモニターの内、一人だけ場違いなモニターの状態になっている。

 

シルフィーだ。彼女だけ既に飛行訓練を終え、なんとドラゴンとの模擬戦に突入していた。しかもかなりレベルの高いドラゴンの様だ。

 

シルフィーはそれらのシュミレータードラゴンと戦っていた。引けを取らない、良い戦い方である。

 

「なんなの・・・この娘達・・・」

 

サリアは呆然とする事しか出来なかった。因みにナオミは、現在機体を上昇させようと努力している所だ。

 

 

 

 

訓練が終わりシャワー室にて。

 

「うっぷ。オエェェー」

 

「ココ。大丈夫?」

 

「少しは楽になった?」

 

シュミレーター訓練の反動かココが青い顔をしてバケツに向かって嘔吐している。その背中をナオミとミランダが優しく摩っていた。

 

皆が訓練でかいた汗などを洗い流していた。

 

「いやぁ。大したものだな。皇女殿下は。それにシルフィーも。初めてのシュミレーターで漏らさないだなんて。しかもシルフィーに関してはドラゴンとの模擬戦まで辿り着くとは」

 

ゾーラ隊長が純粋に二人の腕前を賞賛している。

 

「そういやロザリー、あんたの初めてのシュミレーターの時はどうだった?」

 

自分の身体を拭かせていたロザリーに話を振った。

 

「あ、いや、私の初めては、そうですね・・・」

 

ロザリーが顔を赤らめた。おそらくあまり人には言えない様な過去なのだろう。

 

「気に入ったみたいね。あの娘達の事」

 

隣でシャワーを浴びていたヒルダが呟く。

 

「あぁ。悪くない」

 

ゾーラ隊長は色々な意味で二人を気に入っているようだ。

 

「ねぇねぇサリア!アンジュとシルフィーって何!?ちょー面白いんだけど! !」

 

サリアの隣でシャワーを浴びていたヴィヴィアンが身体を乗り出して聞いてきた。その目はキラキラと輝いていた。

 

「・・・そうね。二人とも、凄いとしか言いようがないわね」

 

サリアは、自分の背後でシャワーを浴びているアンジュを見た。アンジュは他人とは関わろうとせずに黙々とシャワーを浴びている。

 

「そういやシルフィーの奴。どこ行きやがった?」

 

この時ヒルダは、シャワー室にシルフィーがいない事に気がついた。

 

「あぁ。確か居残りで訓練してるはずよ」

 

「まじで!?あんないい成績叩き出したのに、更に自主練してんのかあいつ!?」

 

アンジュ以外の皆が驚いた。あれほどの好成績を叩き出しておいてまだ足りないのか。

 

「そんな長い訓練じゃないわ。機体が動かなくなるまでどれだけドラゴンを倒せるか。所謂スコアアタックよ」

 

「ヴィヴィアン。もしかしたら第一中隊のエースの座、シルフィーに奪われちゃうかもな」

 

「うっひょー!これは負けてられないねぇ!」

 

【ガチャ】

 

噂をすればなんとやらだ。シャワー室の扉が開いた。そこからシルフィーがやって来た。

 

「あっ。シルフィー。自主訓練終わったの?」

 

「ええ。所でナオミ。何してるの?」

 

シルフィーはナオミ達の所へ行くと、大体の事情を察しココの背中を摩り始めた。

 

「あっ、ありがとう」

 

「気にしないで」

 

3人で摩った影響か、だいぶココの調子も良くなった様だ。

 

 

 

 

シャワーが終わり、シルフィーはアンジュと共にサリアに連れられていた。サリアによって、二人はある扉の前に来ていた。

 

「ここが貴女達の部屋。二人で使いなさい」

 

そう言うとシルフィーに部屋の鍵を渡した。

 

「待ってください!こんな野蛮なノーマと同じ部屋を使えと言うのですか!?」

 

アンジュの失礼な発言も、シルフィーは特に気にすることもなかった。

 

「じゃあ廊下で寝泊まりする??」

 

「そっ、それは・・・」

 

サリアの発言にアンジュはロッカールームでの出来事を思い出す。

 

「はいこれ。足りないものがあるならこの範囲内で揃えて。朝5時に点呼だから、くれぐれも寝坊しないように」

 

そう言うとサリアは、二人に多少のキャッシュを渡しその場を後にした。余談だがキャッシュとはこのアルゼナルで使う金額の単位である。

 

部屋の前にはアンジュとシルフィーが残された。

 

「ノーマと同じ部屋を使えと言うのですか」

 

「そんなに嫌なら廊下で寝たら?別に部屋にいようなんて無理強いするつもりもないし」

 

そう言うとシルフィーは部屋に入って行った。部屋の中は左右対称に近いものだった。ベットにタンス

とこざっぱりとした部屋であった。

 

彼女は右側スペースを使う事にした。とりあえず渡された荷物などをベットの脇に置くと、ベットに倒れこんだ。安物の固いベットだが、彼女は特に思うところはないようだ。

 

(疲れた。寝よう・・・)

 

そのまま眠ろうとして目を閉じる。数分の静寂が訪れた。

 

【カチャ】

 

しばらくしてアンジュが扉を開けて入ってきた。

左側のスペースしか残されていない為、左側のベットに足を進める。

 

「なんで私がこんな目に・・・」

 

アンジュは現在の自分の境遇を嘆いていた。

 

「なんで野蛮なノーマと一緒に寝泊まりしなければいけないのですか・・・」

 

「 私はノーマじゃない。ノーマなんかじゃないのに!なのになんで!!」

 

「うるさいんだけど」

 

流石に寝ようとしている所に独り言をうるさく言われてはイラッとくるものである。

 

「うるさいのは貴女です!私はアンジュリーゼ・

斑鳩・ミスルギです!不敬なるぞ!」

 

「寝ようとしているの。邪魔しないで」

 

「やはりノーマは野蛮で身勝手な非人です!マナ

社会の廃棄物です!」

 

「・・・貴女もそのノーマなんでしょ」

 

シルフィーのこの一言でアンジュがさらにヒートアップした。

 

「違います!私は貴女と違って人間です!!この人間ならざる化け物!!」

 

「いい加減に寝たいから静かにして」

 

「貴女は化け物ですね!いえ貴女だけじゃありません!あの者達も。ノーマはみんな化け物で・・・」

 

「黙れ」

 

シルフィーの有無を言わせぬ一言にアンジュは怯む。先程までの言葉と違い今の言葉は静かに、されど何処か怒りにも似た感情が込められていた。

 

「貴女が私をどう見ようと知った事じゃない。でもね、ナオミ達も化け物って言うのは許せない。

ナオミは・・・友達だから。だから黙れ」

 

これによってアンジュは何も言えなくなった。やがてシルフィーの横たわるベットからは、微かな寝息が聞こえ始めた。

 

(化け物が友情ごっこですか!!)

 

憎々しげにシルフィーを睨みつける。

 

そんななか、ふとアンジュの目にタンスが映った。タンスの扉を開ける。そこには沢山のドレスがあった。自分のベットに目を移す。するとそこにはメイドがベットメイクをしていた。

 

「お姉様ぁ」

 

自分を呼ぶ声がした。窓の側により開ける。外には皇室のアンジュの自室の部屋の風景が見えた。そしてそこには両親と、馬に乗った兄と妹がいた。

 

「お母様。シルヴィア。モモカ。馬を用意して」

 

アンジュが振り返り呼んだ。

 

だがそこには先程までの幻想の世界ではない。暗いアルゼナルの一室が目の前には広がっていた。

 

アンジュは何かが崩れ落ちた気分となった。ベットに座り、壁に寄りかかる。部屋にある唯一の窓から月光が差し込んでいる。

 

「寒いわ。モモカ」

 

アンジュは小声で一言、かつて世話をしてくれた侍女の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルフィーとアンジュの部屋の窓の下は断崖絶壁である。そしてこの断崖絶壁に男が一人いた。右目に傷のある黒装束の男だ。

 

「・・・・・・」

 

男は目を閉じていた。それは寝ているかの様にも

見えた。だが実際は瞑想をしているに近い状態らしい。やがて口を開いた。

 

「アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ。皇室から生まれしノーマ」

 

「そして・・・歌を継ぎし者・・・」

 

そう言うと男はその場から姿を消した。

 

 





シルフィーの性格は、仲間思いだが不器用というか素直になりきれないところがあり、それが原因で
周囲と衝突してしまうキャラ設定にしようと思います。

基本はクール系で行きたいなぁ。
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