クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Another Story   作:クロスボーンズ

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第9話 嵐の前の静けさ

 

アンジュがアルゼナルに来てから数日が過ぎた。

 

ジル司令は新兵達の訓練データを見ていた。激しい訓練だが、新兵全員なんとかついていけていた。勿論アンジュもついていけている。

 

エマ監察官が報告書を読み上げる。

 

「例の二人の新兵ですが。基礎体力に反射神経。格闘対応能力に野外戦。更には戦術論の理解度。全てにおいて平均値を上回っています」

 

「優秀じゃないか」

 

「ノーマの中ではですが」

 

ジル司令の発言に、エマ監察官が付け足すように

言ってきた。

 

「アンジュ、並びにシルフィーはパラメイルの操縦に特筆すべきものがあり・・・か」

 

ジル司令は格納庫の隅を見つめた。そしてその後、アンジュの指輪を取り出し眺めた。

 

やがて指輪をしまうと、例の機体を調査している

メイの元に足を進めた。

 

「メイ。例のパラメイルの調査はどうだ。何か進展はあったか?」

 

「全然ダメ。動く気配を微塵も感じ取れない」

 

「そうか・・・」

 

ジルはその機体を眺めた後、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台は食堂にて。現在ここでは食事が配られている。

 

「うわぁ。やったあ」

 

ココが喜んでいるもの。それはプリンだ。ここアルゼナルではこの様なデザートは滅多に出ないのだ。ココはプリンを自分のポーチに入れた。

 

「またとっておくの?」

 

「だって、今食べるのは勿体ないじゃん」

 

「たかがプリンで。ココはお子様だなぁ」

 

ミランダがそう言うと二人は席を探し始めた。するとそこに二人と同じ様に席を探す存在と出会った。

 

「あっ、ナオミにシルフィー」

 

「ココ。それにミランダも」

 

自然と四人で食べる流れとなった。その為席を探した。

 

すると四人の視界にある人物が映った。アンジュだ。テーブルの隅に一人だけでいる。そしてその周りには誰もいない。

 

アンジュは一口食べるとスプーンを置いた。そして顔をしかめている。どうやらアンジュにとってアルゼナルでの食事は不味いようだ。

 

「よぉイタ姫様。好き嫌いは良くないぜ」

 

そこにヒルダとロザリーとクリスがやって来た。

アンジュが気に入らないらしくちょっかいを出したりして絡んでいる。

 

「しっかり食べないと、いざって時に戦えないぞ」

 

そう言いつつロザリーはアンジュのトレーを取り上げ、料理を奪い取った。そして奪い取った料理を口に入れようとした。

 

「よくそんなモノが食べられますね」

 

「!!!」

 

アンジュのその発言がロザリーの中の何かに触れた。

 

「おやおや。イタ姫様のお口には会いませんか」

 

「テメェ!なめてんじゃ・・・」

 

ロザリーは手元に持っていたプレートを投げつようとした。その手を誰かに強く掴まれた。驚いて見て見るとそれはシルフィーであった。

 

「なにしやがる!」

 

「食べ物を粗末にするな」

 

「やめなロザリー。今回はシルフィーの言ってる事は正論だ」

 

ヒルダにいわれロザリーは渋々だが落ち着いた。

 

「イタ姫様よ。一つ忠告してあげる。ここはもうあんたのいた世界じゃない。その事に気がつかないと。死ぬよ?」

 

「それとシルフィー。こいつの肩を持つとあんたも

同類だよ」

 

「別に持つわけじゃない。ただ食べ物を粗末にする事が許せないだけ。ただそれだけよ」

 

そう言うとシルフィーはアンジュも軽く睨んだ。

 

「・・・」

 

アンジュは何を言わずに席を離れた。シルフィーもテーブルに置いたプレートを持ち上げると、その場を離れた。

 

「ナオミ達。ココ。ミランダ。席が空いたわよ」

 

見るとココとミランダがアンジュと会話をしていた。

 

「あの。よかったらこれを」

 

ココがアンジュにプリンを差し出した。暫くアンジュは惚けていたが、やがてそのプリンを受け取った。

 

「分からない事があったら、是非聞いてください!」

 

「・・・では、連れて行って欲しい所があるのですが」

 

アンジュとココとミランダの三人は何処かへと歩いて行った。

 

「ナオミ。シルフィー。私達を待たなくていいよ。先に食べてて」

 

廊下の角を曲がる際、ミランダのその様な声が聞こえた。

 

とりあえず二人とも空いた席に座ると食事を摂り始めた。

 

「それにしてもシルフィーは凄いよね。真っ先に

仲裁に向かって」

 

「言った通りよ。食べ物を粗末にされるのは我慢できないだけ」

 

「島ではどうだったの?食べ物とか」

 

ナオミの一言にシルフィーの顔色が曇る。

 

「・・・正に運次第だったわ。魚とかが獲れる日もあれば、何も取れずに数日我慢した日もある。まぁ基本は食べ物を探そうと海や森を駆け回って探してたし」

 

「じゃあ島での生活が、ここでの訓練に活かされてるんだね」

 

「そう言えばナオミ。貴女はシュミレーター訓練。まだガレオン級を突破してないの?」

 

「ううっ。スパッと聞くなぁ」

 

シルフィーはナオミの訓練を見ていて気づいていた。ナオミはスクーナー級などは問題なく倒しているが、ガレオン級には未だ白星が付いていないのだ。

 

その理由は簡単。ガレオン級と対峙した時ナオミの身体は硬直しているのだ。彼女自身、墜落した時の原因がガレオン級なのだ。その事に無意識の内に

恐怖を感じているのだろう、あれでは戦う事が難しいだろう。

 

「大丈夫なの?実戦で出会ったら」

 

「大丈夫だよ」」

 

そんなナオミだが、本人の気づかないうちに恐怖という感情は芽生えるものだ。そしてその事にナオミ自身はまだ気がついていない・・・

 

「そう言えばシルフィー。今後の出撃の時の機体はグレイブだって」

 

「グレイブ?」

 

「うん。新兵用の。そう言えばシルフィーの機体。あの後どうなったんだろ?」

 

不意に湧き出た疑問。ナオミもあの機体に乗った事のある存在だ。それ故にどうなったのか、興味があるのだろう。

 

「ジル司令が知ってるんじゃないかしら」

 

そう言うとシルフィーはコップの水を飲み干した。

 

 

 

やがて食事が終わり、二人は部屋へと帰った。

 

シルフィーは窓の外を見てみた。そこは海が果てしなく広がっている。それは名もなき島で見てきた

風景となんら変わりはなかった。見ている場所以外は。

 

(・・・変わったわね。私は)

 

海で魚を捕り、森で木の実などを集める。決して楽な生活ではない。悪い時には何も手に入らずお腹を空かす日もあった。

 

それが今では沢山の人と出会った。食事においても、最低限出される以上、餓死する事はない。何より、自分が何も知らなかった事を知れている。少なくてもここでの生活に今は満足である。

 

「風に飛ばん el ragna〜♪」

 

シルフィーはあの歌を歌い始めた。コックピットで見たあの風景。そしてそこで何者かに抱かれる形で聞いた優しい歌。あれを歌うと、気分が落ち着くものである。

 

(そういえばこの歌。歌だけじゃない。あの光景も・・・確かコックピットで見たんだっけ・・・あれは一体・・・)

 

【カチャ】

 

扉が開いた。その事にシルフィーは気がつかずに歌い続けた。

 

「なっ!貴女・・・」

 

背後から呼ばれたので振り返る。するとそこにはアンジュがいた。手にはプリンと紙。そしてペンなどを持っていた。

 

「今の歌は・・・」

 

「知ってるの!?」

 

シルフィーからしたらこの歌は謎なのだ。その為、何なのか知りたいものだ

 

「・・・いえ、知りませんね。ただうるさいので、静かにしてもらえます?」

 

「・・・」

 

このまま歌い続ければ争いに発展するのは目に見えた。シルフィーは黙ってベットに横になり、壁の方を向いた。

 

アンジュは窓際に座り込むと何かを書き始めた。シルフィーは気にする事もなく壁を見続けている。

 

【ゴト。コロコロ】

 

不意に何かが落ちて転がってくる音がした。見てみるとプリンが自分のベットの下へと転がって来るではないか。

 

「落としたわよ」

 

シルフィーはプリンを拾い上げるとアンジュの側に置いた。

 

「落としましたか。すいません」

 

【ゴト】

 

次の瞬間、アンジュはプリンを側にあったゴミ箱へと捨てた。どうやら先程落としたのもゴミ箱に捨て様として落としたのだ。しかも捨てたプリン。それはココのあげたプリンだ。

 

「・・・何してんのよ」

 

流石に異常を感じとりシルフィーが尋ねた。

 

「ゴミをゴミ箱に捨てたのです」

 

「それ、食べ物よ」

 

「こんなのは食べ物ではありません。仮に食べ物だとしても、穢らわしいノーマの触れた食べ物など、口にしたと想像しただけで・・・」

 

【パチン!】

 

乾いた音が部屋に響いた。無意識に手が出たと言っていい。シルフィーがアンジュにビンタした。

 

「なっ、何をする!」

 

「・・・粗末にするな」

 

そう言うとシルフィーは部屋を出て行った。食べ物を粗末にした事以外の不愉快さも湧いている。一緒にいたくなくなった。おそらくこの現場にココがいない事は良かったと言える。

 

アンジュは引っ叩かれた頬を擦りながら、何かを書き続けた。

 

(こんな所とも、これでおさらばです!!)

 

その思いを目の前の紙に文章として書き出した。

 

(それにしてもさっきの歌・・・似てた・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

行くあてのなかったシルフィーは司令部に来ていた。どうせ暇なのだし、あの機体がどうなったか知ろうというわけだ。

 

「何の用だシルフィー。ルームメイトの苦情か?」

 

ジル司令がタバコをふかしながら聞いてきた。アンジュのノーマの偏見の目に対してはかなりの苦情が来ている。それがルームメイトともなれば毎日誹謗中傷されるものだ。

 

もっともシルフィー自身はさっきの件を除いて、そんなもの気にしていないが。

 

「別に。それより私の乗ってきた揺り・・・パラメイルだけど、あれって結局どうなったの」

 

「あぁ。以前言ったと思うが、ノーマである以上

お前の所持品は全て没収だ。あの機体とて例外ではない。腕輪に関しては、外すとしたらお前の腕を斬り落とすしか方法がないから諦めただけだ」

 

シルフィーは自分の右腕を見た。アルゼナルの制服はノースリーブに近いので、腕が全部露出している。腕輪は右腕に装備されていた。

 

「まさかお前。機体を返せとでも言う気か?」

 

「返せと言ったら返すの?」

 

「まさか。まぁ機体がお前を選んだのなら話は別だかな。で、話はそれだけか?」

 

「まぁあの機体がどうなったか、少し気になっただけだから。それでは失礼します」

 

そう言い帰ろとした時、司令部の扉が開いた。そこにはアンジュがいた。アンジュはシルフィーの横を素通りしてジル司令の元に行った。

 

「これを」

 

そう言いアンジュは手にしていた紙をジル司令に渡した。ジル司令はじっとそれを眺めていたがやがて口を開いた。

 

「・・・なんだこれは?」

 

ジル司令の言葉にオペレーター達も振り返る。一体何が起きているのか。興味が湧いたのだろう。エマ監察官も何事もかと思いその紙を見ていた。シルフィーも足を止めて振り返った。

 

「嘆願書です。私の皇室特権の適用と即時解放を求めた内容です。これを各国元首に届けてください。今すぐに」

 

どうやら先程の窓際での作業は嘆願書の制作だったようだ。

 

「貴女まだ解ってないの?」

 

エマ監察官など呆れ返っている。

 

「いやはや困りましたよそいつの頭の固さには」

 

また扉が開いた。そこには赤のバスローブに身を包んだゾーラ隊長がいた。

 

「教育がなってないぞ。ゾーラ」

 

「はっ!申し訳ありません!」

 

ゾーラ隊長がアンジュとシルフィーをジロジロ吟味している。その目はまさに獲物を狙う野獣の目であった。ゾーラ隊長がライオンなら、さしずめ二人は小動物と言った具合である。

 

「お前達でいいや。部屋をお借りしますね」

 

「許可する」

 

ジル司令からの許可が降りた途端。ゾーラ隊長は

二人の手を掴んだ。

 

「はっ離してください!」

 

「なっ何を・・・」

 

戸惑う二人を無視してゾーラ隊長は二人を連れ司令部を後にした。

 

「・・・・・・」

 

エマ監察官が黙ってジル司令を見つめていた。

 

しかし次の瞬間。

 

【ジリリリリリリリ!!】

 

「!!」

 

司令部の電話が鳴った。その場にいた皆がそれに

反応した。

 

エマ監察官が慌てて電話を取った。

 

「はい!アルゼナル司令部!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

電話が鳴る数分前。ゾーラ隊長に強引に連れられる形で、アンジュとシルフィーは取り調べ室へと入れられた。取り調べ室に入るなり、二人とも机の上に押し倒された。慣れた手つきで二人の手を枷で簡単に拘束する。

 

「状況認識が甘いと戦場では生き残れんぞ。シルフィーもだ。同じノーマ同士、仲良く手を取り合わないと戦場では戦えんぞ」

 

「私は皇国に帰るのです!!」

 

「べっ、別にそんなつもりは」

 

二人とも枷をを外そうとガチャガチャしている。

アンジュの方はもうひと頑張りすれば枷は外れそうである。

 

「言ってわからないなら身体に教え込むしかないな」

 

次の瞬間、ゾーラが二人にキスをした。しかも舌を絡めるタイプのキスである。

 

舌同士を繋ぐかの様に、細い糸が引かれている。

 

「素直になれば、お前達の知らない快楽を教えてやるぞ」

 

耳元で囁く様にゾーラ隊長が言う。そしてゾーラ

隊長がシルフィーの胸を揉み始めた。

 

「あっ。あっ・・・」

 

「おやおや。随分と可愛らしい声を出すじゃないか。期待のスーパールーキーもこっちの方はまだまだお子様なんだな」

 

「ちっ、ちが・・・」

 

シルフィー自身、未知の感覚に戸惑っている。

 

「さてと。平等にしてやらないとな」

 

すると今度はアンジュの胸を揉み始めた。

 

「!!」

 

指が胸の先端に触れた瞬間、アンジュの手枷が外れた。

 

【パチン!】

 

反射的にアンジュはゾーラ隊長の頬にビンタした。

 

すると床に何かが落ちた。見てみると、なんとそれは目玉であった。

 

「いいねいいねぇ。やっぱノーマはそうでなくっちゃ」

 

ゾーラ隊長が興奮した目でこちらを見た。そのうち右目は空洞となっている。

 

「わっ、私は・・・ノーマでは・・・」

 

アンジュは目の前の存在に怯えている。

 

「目玉が吹っ飛ぼうが片腕捥げようが闘う本能に血が滾る!!それが私達ノーマだ!!」

 

そう言うとゾーラ隊長は床に落ちた義眼を拾い上げ、一舐めすると右目に入れた。

 

「昂ぶってんじゃねぇか。私を吹っ飛ばして」

 

「ちっ、違・・・」

 

「お前も不満だったんだろ?偽善に塗れたあの世界が・・・」

 

ゾーラがアンジュの首筋を舐める。

 

【ガチャガチャガチャ】

 

シルフィーの方はなんとか手枷を外そうとする。しかしそれは音を立てるだけで外れる様子が見られない。アンジュの手枷が偶然ボロボロだったから外れただけの様だ。

 

「落ち着けシルフィー。お前にもちゃんとしてやるよ」

 

ゾーラが平等に両者の首筋を舐めた。身体が軽く跳ねた。

 

「さてと。両者共そろそろ身体がほぐれてきたろ?いっちょやるか」

 

ゾーラ隊長の指が二人の秘部に迫ってきた。遂に禁断の扉のドアノブに手を掛けている。後はドアノブを回し引くだけである。

 

 

 

しかし、その時である!

 

【ビービービービー】

 

突然警報が室内に鳴り響いた。赤ランプが煌々と点灯している。

 

突然の大きな音にアンジュはシルフィーは驚いた。

 

「まさか・・・来たってのか。ちっ!これからだってのに!」

 

そう言うとゾーラ隊長は二人の手枷をきちんと外した。

 

「アンジュ!シルフィー!出撃だ!ドラゴンが来たんだよ!」

 

そう言うとゾーラ隊長は走って部屋を後にした。

シルフィーもそれに続く。

 

アンジュは唾を吐き捨て、腕で口を拭うと後に続いた。

 

 




今回色々とフラグが乱立してる様な気がしなくもない。後久し振りにエッチな描写を書いた気がする。

本編ではゾーラ隊長は最初はヒルダとしてましたね。

なお、メビウスの方は書くネタが現段階ではまだ
確立してない為、当分こちらの話が進行するかな。

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