シロガネ山————カントー地方とジョウト地方の間に位置するこの山は、野生のポケモンたちにとって弱肉強食の世界である。
故に生き残るポケモンたちは、並のトレーナーなど軽く蹴散らしてしまうほどの猛者ばかり。そのため、この山はごく一部のトレーナー以外の入山は許されていない。
山の山頂は常に雪が降りそそぎ、積もった雪に足を取られ、かつ極寒という、とても人が生きていける環境では無い。
しかし、そんな場所に佇む一つの人影があった。だが、その格好はこの過酷な環境を生き残るには相応しくないものだった。
まず山だというのに半袖である。正直山をなめているとしか考えられない。さらにズボンも防寒具でなく、町で売ってるようなあまりにも一般的なものだ。そして、風も吹いているというのにどこかに飛んでいく気配も無い、赤い帽子を被っていた。帽子から飛び出ている外ハネの茶髪に、まだ少し残る少年らしい顔つき、周囲を睨みつけるかのように警戒する黒い目。
何を隠そう、元チャンピオン、伝説のトレーナー、実は幽霊などと様々な異名を持つレッドである。もっともレッド本人はそんな風に呼ばれていることは知らない。なにせ3年も下山していないのだから。
3年前にポケモンリーグ優勝を果たし、しばらくはチャンピオンとしてチャレンジャーたちを相手にしていたが、次第に物足りなくなってしまった彼は、当然のようにチャンピオンを辞退し、自身の修行も兼ねてシロガネ山の山頂に籠ることにしたのだ。
シロガネ山を突破してくるトレーナーならば、かなりの強さを誇るだろうと楽しみに待っていたレッドだが、そもそもここに辿り着くトレーナーが少なすぎてあまり戦えないでいた。たまに辿り着くトレーナーがいても、自分のポケモンがさらに強くなっているのであっさりと終わってしまうこともあった。最近は自身と良い勝負をする少年と少女が良く来るようになったので、退屈はしていなかったりするのだが。
そんな、彼の耳に入る雪を踏む音。3年も暮らしているからか、足音で人間がポケモンかは軽く分かるようになっていた。———この足音は人間だ。どうやらまた誰か来たらしい。またあの少年か少女かと身構えるレッド。
足音は少しずつ近づいていき、その姿をレッドに見せる。その姿はレッドの期待を裏切るものであった。が、同時に新たな期待を抱かせる姿だった。——初めて見るトレーナーだった。
「———ようやく見つけたぜ!赤い帽子のやつ!」
はて?自分は目の前のやつとは初めて会うはずだが?と思案するレッド。全身緑の服———それも半袖半ズボンという自分以上に山をなめているといえる——を着て、オレンジ色のネクタイを首から下げ、緑の帽子を被った少年。キャンプボーイだろうか?ならどこかで会ったことあるかもしれない。と考えるレッド。まぁ、全く覚えてないのだが。
「覚えてないって顔してやがるな!?よし!今から思い出させてやる!」
なるほどバトルかと自分のモンスターボールに手をかけるレッド。
「あれは3年前のことだった———」
急になにやら昔話を始めるキャンプボーイ。だがまぁ大人しく聞いてやろうと腕を組み聞くことにしたレッドであった。
———3年前、俺はまだニビシティのジムトレーナーだった。
タケシさんに挑もうとする新米トレーナーたちをまだ早い!と蹴散らしてきた俺は慢心していた。
そして、今日も挑戦者がやってくる。最初は短髪のツンツン髪だった。
「おおっと!挑戦者だな!だけどタケシさんに挑むなんて1000年早いぜーッ!」
と俺はイシツブテを繰り出す。ジムバッジを持ってない相手用だけど、それでも十分だと踏んでいた。
「いけ、ゼニガメ」
「げぇ!?ゼニガメ!?」
くっ、まさかタイプ相性を理解しているとは……この挑戦者出来る!岩タイプは水タイプに弱い!
「ゼニガメ、あわだ」
目の前のゼニガメから繰り出されるあわによって、俺のイシツブテはワンパンされた。
「あぁ!?イシツブテ!?」
「1000年早いだって?君が俺に勝つ方が1000年早いんじゃないか?」
「うぐっ!?」
試合前に言ったセリフを言い返されて何も言えなくなる。まぁ、当時の俺は調子に乗ってたからな。……まさかこいつが後のトキワジムリーダーグリーンだとは思わなかったけどな!!
とまぁ負けた俺はタケシさんとグリーンの戦いを見守る。結果はグリーンの勝ちだった。まぁ、タイプ相性理解してたしな!
そして、その日はもう一人挑戦者がいた。だがさっきも言ったが俺は当時調子に乗っていた。当然、また同じようなセリフを吐いてしまう。
「タケシさんに挑戦なんて10000光年早いんだよ!!」
と、赤い帽子を被った挑戦者——そう当時のお前に挑んだんだ。
「………ヒトカゲ」
「ヒトカゲだとォ?タイプ相性も理解できて無いやつに負けるかーッ!」
と意気揚々とイシツブテを出す俺。フラグにしか聞こえない?今思うと俺もそう思う。
「……メタルクロー」
俺のイシツブテがヒトカゲの爪で引き裂かれる。鋼のように硬い爪はイシツブテの硬さなどものともしなかった。当然のようにワンパンされた。
「いやおかしいだろ!?」
確かに効果抜群で急所に当たったとしてもワンパンされるか!?と当時思っていた。
「認めてたまるか!いけサンドッ!」
たまらず本来の手持ち——といってもまだレベルの低いサンドを出してしまう俺。
「……メタルクロー」
「すなかけだサンド!」
メタルクローでまた攻撃されるが今度は耐える。地面タイプだしな。が、サンドのすなかけも当たる。…命中下げたらどうにかなるとでも思ったんだろな。ならなかったけど。
「……もう一度メタルクロー」
命中が下がっているというのに容赦なくメタルクローがサンドにあたる。そして負けた。それと同時に間違いに気づく。
「光年は時間じゃない……距離だ!!」
と間違いに気づいてるあいだにお前はタケシさんに挑んでたけどな!ちなみにサンドを出したことはめちゃくちゃ怒られた。
「とこれが俺とお前の出会いだ!思い出したか!!」
首を傾げるレッド。完全にいたっけこんなやつって感じである。
「俺ってそんなに雑魚だった!?だがな……今はそんなことどうでもいい!!」
ショックを受けたそぶりを見せるが、すぐに指をレッドに向ける。
「俺はな!お前に開けられた10000光年を埋めにきたんだ!」
さっき自分で間違いだって気付いてなかった?という顔をするレッド。それに気づいたのかちゃんと説明する。
「今、俺とお前との実力差がある!だから距離で表現したのは間違っていない!」
そんなものだろうか。そうなんだろうなと無理矢理納得するレッド。
「俺はこの3年間色んな地方を回って色んなポケモンを見て、たくさん修行した!バッジもカントーとジョウトだけならずホウエンも集めた!他の地方は行ったけどまだ集めてないけどな!」
ホウエン——そういう地方もあるのか。と自分もいつか行ってみようと思うレッドだが。今はどうでもいい。自分のボールを投げてピカチュウを繰り出す。ポケモンを出せば自然とその振る舞いは強者のそれに代わる。———御託はいいからかかってこいと目だけで訴えることも忘れない。
「……あぁそうだな!勝負だ最強のトレーナー!行けゴローニャ!!」
戦いの火蓋は切られた。
バトルとかないです(無慈悲)
ポケモンの設定あんまり覚えてないからね仕方ないね。