───鐘の音が聞こえる。
私を呼ぶ声がする。
───鐘の音が、聞こえる。
いつかのように、私を呼んでいる。
嗚呼、どうやらまた行かねばならぬらしい。
再び
───鐘が、私を呼んでいる。
良いだろう。それほど私を呼ぶならば、
これは、遠い過去に置き去られた一つの薪の物語。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「これが俺のサーヴァント...!!」
蟲蔵で召喚したサーヴァント。緊張で身体が強張っていくのがわかる。
其は煤けた鎧を着ていた。
両手で持てるかも怪しい巨大な槌と、まるで岩盤のように分厚いこれまた巨大な剣を、背で交差するように背負っている。
貌は窺い知れないが兜のスリットから垣間見える眼光は全てを憎む復讐者のよう。
その憎しみが解放されたなら、その激情のままに戦うのならば、正しくバーサーカーだと想像するに難くない。
その眼光に気圧される。総てを呑み込む闇のように光のない瞳にジッと見つめられる。
────だが、何故だろうか。俺はこの戦士がとても
「───」
其の声が聞こえる。
怨嗟に塗れた呻き声。狂うほどの憎悪を抱えているのだと察するに容易いその声。
俺には助けを求めているようにしか聞こえなかった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
私がその騎士と出会ったのは冬木に到着した日の夜だった。
傲慢極まるアーチャーの黄金に輝く宝具が射出される瞬間、その騎士は現れた。
煤けた鎧を着て、総てを憎むと言わんばかりに
───全てを知った今思えば、彼は睨んでいたのではなくただ怯えていたのだろう。
マスターの命令か、その背にあった巨大な
まるで先が読めない洗練された攻撃だったが、アーチャーは余裕綽綽と避けていた。
きっと私が襲われていたなら、なす術なく地に伏していただろう。
まるで
アーチャーが怒りの声を上げる。
先程射出しようとしていた2振りの宝具を彼の騎士に放つ。
彼は向かってくる宝具を粛々と叩き伏せると再びアーチャーに躍りかかった。
セイバーたる私でもギリギリ目で追える敏捷さ。
気づけばアーチャーはいなくなっていた。
脱落したのではなく、マスターに呼び戻されたのだろう。
怒りのままに黄金の粒子となって去っていくその姿は暴君のような威圧感に満ちていた。
その場に残ったのは彼の騎士とライダーと私。
ランサーはいつのまにか去っていた。
ライダーが彼の騎士に誰何の声を投げる。
彼の騎士は声を発することなく燃えた灰を散らして去っていく。
ただ、
兜の隙間から見えた瞳は、どこか安堵しているように見えた。
☆ ★ ☆ ★ ☆
斯くして置き去られたはずの薪が一つ。
呼び起こされた現代で火を求める。
全ては、
第4次聖杯戦争は、こうして始まった。