MAN OF THE STEEL 作:COTOKITI JP
イメージとしては、マッド・マックスからヒャッハー!成分を引っこ抜いてそこに東側兵器をドバーッとぶち込んだ感じですね。
第四次世界大戦の終結から百年余りの時が過ぎ、世界は破滅への道を進みつつあった。
地球上の陸地の凡そ50%が砂漠へと変貌し、環境汚染と夥しい数の核兵器が齎した放射能によって人類の生息域は大きく減少した。
世界人口は嘗ての75億から度重なる核兵器の使用により僅か数億程度となり、古代から地球を支配していた人類は既に絶滅の危機を迎えている。
残された数少ない人類は、国家としての形を捨て、唯一の安全圏である要塞、『シティ』を荒れ果てた大地の上に築き上げ、80mの壁に囲まれた大都市に新たな希望を見出した。
しかし、それは滅びゆく地球と人類への延命処置に過ぎなかった。
時すでに遅し。
地球は今や大地も、海も、空すらも汚れ、最早修復など出来たものではない。
シティでは環境保全を訴えるような者も既にいなくなった。
地球に住まう皆が理解したのだ。
「滅亡は避けられない」と。
「おっ、標的発見。 11時の方向、距離は800m」
半分が砂漠に埋もれた廃ビルの屋上には、二人の男が揃って寝そべり、屋上から顔を出していた。
その内の一人はレーザー測距儀付きの双眼鏡で目の前の標的の情報を伝えており、もう一人は、狙撃銃を構え、隣の男の指す方向に銃口を向け、標的を視認した。
「形状や大きさ的にハウンドクラスって所か」
「みたいだな、やれるか?」
「殺れなきゃ銃なんて持ってない」
呼吸を整え、ライフルスコープのレティクルの中心に標的を置き、引き金を絞る。
真上から太陽が容赦なく照り付けてくるせいで汗が滴り、それを鬱陶しく思いつつも拭うことはせず、ただ射撃の機会を待ち続ける。
スコープを通して彼の目に映っているのはとても地球に住む生物とは思えないような見た目をしていた。
動物というよりあれは正しく『化け物』だろう。
皮膚は赤黒く変色し、角のような物が背中から飛び出ており、オレンジ色に光る四対の目はギョロギョロと蠢き、辺りを隈無く見渡している。
彼等は数多い化け物の中でもあの犬のような見た目をしている物を『ハウンド』と呼んでいる。
奴らはとても獰猛であり、小型のバギーカーやバイク等といった小型車両にすら襲い掛かり、中の人間を引きずり出しては食い殺す。
そしてハウンドは主に5〜10頭程の群れをなして行動している。
「よし、トラップを鳴らすぞ……」
スポッターをしていた男が、懐からリモコンのような物を取り出すと、そこに付いていたボタンを押した。
すると、ハウンドの群れから少し離れた場所に置いてあった車のエンジンが始動したのだ。
何時も車両などを標的にしていた奴らは直ぐに音の方を向き、エンジンのかかった車両に飛び付くように急接近した。
車両の扉をこじ開けようと必死に扉を引っ掻いたり、噛み付いたりするハウンドを見ながらスポッターの男、『アリフ』は鼻で笑った。
「よーし、今がチャンスだ。 撃て!」
絞っていた引き金が完全に引かれ、銃口から放たれた7.62mm×54mm弾は風を切り、距離減衰によって少しずつ速度を落としつつも、高速で車に張り付いていたハウンドの胴体を貫いた。
銃弾が貫通したことによって撒き散らされた鮮血は車体にベッタリと付き、赤黒く塗装した。
「ヒット」
「次」
突然の攻撃にハウンドは戸惑い、八つの目を余計にギョロギョロと動かし、攻撃がどこから来たのかを必死に探していた。
その光景は彼等からしたら滑稽であり、ハウンドが動きを止めている間に狙撃銃のボルトを引き、空薬莢が軽やかな金属音と共にコンクリートの上で跳ねた。
嘗て自分が幼少期から行ってきた動作をそつなくこなし、二匹目に照準を定める。
二発目も問題無く命中し、頭から脳髄をぶちまけながら倒れるハウンドを確認し、すぐさま三匹目を狙う。
「ヒット」
「次」
「ヒット」
「次」
何匹もの群れはたちまち二匹、一匹へと減っていき、遂に最後の一匹の胸部を撃ち抜いた。
「これで最後だ」
「もう終わりか。 エンジン切っとけよ」
狙撃銃、『SV-98』を背中に背負い、廃ビルの屋上から垂れ下がっていたロープに自分の体を固定するとラペリング降下でゆっくりとビルから降りた。
「あっつ……」
額から流れ落ちる脂汗を袖で拭いながらハウンドの死体の元へと近付く。
死体を銃口でつついて生死確認を行いながらその重さに苦戦しながらも横一列に並べる。
弾一発で済んだお陰で死体には大した損傷も無く、部位の回収は可能だった。
「俺は剥ぎ取りをするから見張り頼むぞ」
そう言ってアリフはハウンドの死体を捌き始めた。
今の時代、こんな化け物の部位を買い取ってくれる物好きがいるものだからこちらとしても有難い話だ。
ハウンドの肉は食えるらしいが、自分で進んで食おうとは決して思わない。
それ程にハウンドの見た目は気持ち悪い。
解体は順調に進み、日が傾き始めた頃には粗方解体が終わった。
内蔵は種類ごとに袋に分けて詰め込み、残りの肉と一緒に先程トラップとして使っていた車両に乗せた。
「よし、後はこれを車両に積み込むだ―――」
「伏せろ!誰か来るぞ!」
「ブッ!」
遠くから聴こえてきた車のエンジン音に気付いた彼はアリフの項部分をひっ掴むと地面に伏せさせ、自分も伏せた。
結構強い力で地面に叩き付けてしまったがそんな事を気にしている場合ではない。
暫くして砂漠の奥から一台のバギーカーを改造して作られたであろう装甲車が近付いてきた。
双眼鏡で除けばその装甲車は上部分に重機関銃を備え付けている。
もしこちらに来るならば間違いなく狙いは自分達だろう。
エンジン音は次第に大きくなり、敵は間違いなくこちらを狙っていると分かった。
砂に体を埋めながらSV-98を構え、伏せ撃ちの体勢を取る。
敵車両を狙撃しようと試みるが、如何せんここら一帯は高低差の激しい砂漠地帯だ。
故にバギーカーは大きく揺れ、中の搭乗員なんて狙えたものではない。
ならばと今度はエンジンに狙いを合わせる。
幾ら装甲を施されているといってもそれは所詮そこらの廃車や瓦礫から拾った廃材が多く、拳銃弾を防ぐ程度の防御力しかない。
狙撃銃の弾なら充分に貫く事が可能だ。
バギーカーの揺れがある程度収まったタイミングを狙い、車体前部のエンジンを狙う。
引き金を絞る間もなくすぐさま発砲し、子気味のいい金属と金属が衝突する音が遠くから聴こえた。
確かにエンジンルームは貫いた。
事実、エンジンを守る装甲板には小さな風穴がポッカリと開いている。
しかし、当たり所が悪かったのか、それとも単純に威力不足か、バギーカーが止まる気配はない。
「ダメだカス当たりだ!」
即座にSV-98をアリフに押し付け、肩から下げていたAK-108のグリップに手を掛ける。
「アリフ!車両に隠れてろ!それと荷台に軽機関銃があるからそれで援護を頼む!」
「分かった!」
アリフのやや焦り気味の返事が聴こえてきたと同時に敵の装甲車も上部の重機関銃の押金を親指で押し、重々しい銃声を響かせる。
「来やがれ!」
AK-108に装着されたPSO-1照準器を覗き込み、装甲車の走行速度を考慮してそれなりの偏差を付けて引き金を引いた。
あの装甲車が撃ってくるブローニングM2の銃声には劣るが、高い連射速度によって軽快な銃声と共に飛んでくる5.56mmの威力も馬鹿にはできない。
「何をしてる!早く機関銃の用意をしろ!」
「分かってらァ!!」
狙いが定まっていないとはいえ、ばら撒かれる12.7mm弾による砂煙と着弾音は中々に恐ろしい物だ。
機関銃座には鋼鉄製の装甲板が取り付けられており、5.56mmでこの距離では貫通出来ない。
機関銃座を倒す事は無理と判断した彼は、即座にタイヤに照準を定め、バースト射撃で右側のタイヤをパンクさせた。
タイヤから間抜けな音を発しながらバギーカーはドリフトするかのように回転し、砂煙を撒き散らし、停止した。
「今だ撃てっ!」
AK-108とアリフの構えるPKPペチェネグによる集中砲火。
それを側面から喰らえば結果など明らかだ。
トタンに僅かな金属板を施しただけの装甲板はいとも容易く貫かれ、中の乗員は次々と鮮血を散らしながら息絶えた。
といっても中の様子はこちらからは見えないのであくまで予想だが。
用心深く銃を構えながらゆっくりと亀のようにバギーカーに近付き、半ば乱暴に重たい扉を開け放った。
「……クリア、か」
機関銃による集中砲火を喰らった車内など、言うまでもない。
血塗れの死体を物色し、装備品等を衣服のポケットやハーネスから引っペがす。
「やっぱり所詮は野良の無法者か」
手に入った装備品はどれも安値で売られているような粗悪品ばかり。
弾薬は使い物になるが、銃に関しては弾だけ抜き取って車内に放置しておく事にした。
「ガソリンと、あと重機関銃も持って行こう。 使えなくともパーツと弾薬は売れるかもしれい」
車内からガソリンの入ったポリタンクを手に取り、車外に並べる。
アリフは工具箱片手に重機関銃を外している最中だ。
彼は物資を車外に放り出しながら、これまでの事を何となく振り返ってみた。
今思えばあの最終戦争・・・・とまで言われた第四次世界大戦が終結してから大分経つが、それ以降からは、個人又は少数同士のいざこざ程度しか怒らなくなり、少なくとも国家間での戦争はこの世から確実に抹消されていた。
そう考えると、彼自身も今まで実現は不可能だと考えていた平和が、別の形・・・で実現したとも言えるかもしれない。
平和の定義等、とうの大昔に皆忘れてしまったが。
人類の運命は第三次世界大戦が起きたその日から決まっていたのだろう。
当時の文献をたまたま見漁っていた時があったが、それによると第三次世界大戦の時点で世界中で国家による統治体制が崩壊しかけていたそうだ。
第四次世界大戦はそれに比べれば世界大戦と呼ぶには大分小規模な戦争だったようだ。
核兵器によって戦力は互いに壊滅状態。
戦う理由も、その戦いを止める理由も忘れた彼等は互いに銃口を向け合った。
そして生まれたのが今のこの世界だ。
しかし、昔の本などを読んでいると今のこの世界の方が昔よりも生きやすいように感じる事がある。
大昔はシティの外、世界全体で法律による統治が行われていたそうだ。
人間の自由意志すらも、法律によって縛られていたのではと考えると、今の方がずっとマシだ。
路上で煙草を吸っても誰にも咎められないし、麻薬を堂々と売り捌いても誰も捕まえに来ない。
物を盗んでも持ち主を除いて誰も追いかけて来ないし、何より自由が彼等にはあった。
一応、シティは誰でも入れてくれるのだが、わざわざ法律のある場所になんて行く理由は無いし、それにあそこは武器の持ち込みは厳禁な為、愛銃を取られてしまう。
「……やっぱり今の方が良いな……」
「ん?なんか言ったか?」
「何も」
「いやいや、絶対何か言ったね。 教えろよ」
「断る。 教える理由が無い」
「何だよ、教えてくれたって良いじゃねえか」
「俺が駄目なんだよ」
ここは