MAN OF THE STEEL 作:COTOKITI JP
〈2159年 5月 21日 旧ヨーロッパ大陸南東〉
あの無法者達から分捕った装備はマーケットで全て売り捌いた。
はした金しか手に入らなかったが、それよりもハウンドの部位の方が高く売れたので消費した弾薬費も合わせて元は取れている。
ここは『ロイヤルシティ』という名前のここ辺りではまあまあ大きめな街だ。
ロイヤルシティの特徴としては、商業区が大きく、だいたいここではなんでも揃う程だ。
それに、最近は店を開く為にロイヤルシティに移り住む者達も増えてきている為、居住区も増設しているらしい。
但し、街並みはロイヤルのロの字も無いが。
砂漠のド真ん中にある街なので風が吹けば砂埃が舞い上がって目や口に入るし、酷い時には食事を取っている最中にサソリやらなんやらが襲いかかって来たりする。
それでも、他の地方の街よりかはかなりマシだが。
そんな街の中で彼は一人飲食店で飯を食べていると、そこへ一人の女がやって来た。
「よう、元気してるか? 『モズ』」
モズと呼ばれた彼は、食事の手を止め、彼女の方に振り向いた。
ここいらでは余りみない美形の女であり、肌は褐色、天然パーマの赤髪は肩まで伸ばされ、身長は約180cmのモズと同じかそれより少し高いぐらい。
体型に関しては、出るには出ているが出過ぎてはいない、どちらも最低限の大きさはある。
「『リーシャ』か、マックスロードでの仕事はもう終わったのか?」
彼女、リーシャとは昔からの同業者であり、嘗ては依頼や物資の調達を共にこなしたり、こんな感じでプライベートでも会う事が多かった。
リーシャはマックスロード付近を跋扈していたあの馬鹿でかい芋虫みたいな化け物を討伐するという依頼を受けて暫く帰って来られないそうだったが、モズが予想していたよりもかなり早く彼女は帰って来た。
「もう一週間以上生息域に潜伏してたからなぁ。 だけど仲間が手際よくやってくれたお陰で直ぐに討伐は完了したし依頼主からは報酬を弾んでもらった」
「それは良かったな」
コーラをの瓶を呷りながら彼女の話をじっと聴き続けた。
やはりあの芋虫の討伐はかなり苦戦したようだ。
無理も無い。
アレは地面に潜っているから姿は見えないし、寝床もコロコロ変えるので居場所の特定も難しい。
話に拠れば最終的には何台ものピックアップトラックに搭載したハープーンガンで動きを封じ、無反動砲で頭を撃ち抜いたそうだ。
話を聞く限り、仲間はかなり手際が良く、ハープーンガンも一発目で全弾命中し、即座にトドメを刺せている。
確かにそれ程なら早く帰ってくるのも納得出来る。
と頷きながらまたコーラを喉に流し込んだ。
「隣、座れ」
このまま彼女をずっと立たせたままにするのも気が引けるので、テーブルを囲むように置かれていた三つの椅子の内の二つ目に座るよう促した。
ちょうど椅子に腰掛けた所で、向こうから慌ただしい足音と共に人が全速力で突っ走って来た。
目を凝らせばアリフだったので、何事かと息を荒くしながら席に座る彼に聞いた。
「あぁ、それがだな……朗報だ。 『シティ724』による『シティ726』への物資の輸送が何故だか知らねえが予定より大分早く行われる事になったらしい!」
「本当か? だとして、日時は?」
「いや、もう大量の物資を積んだコンボイが既に出発してる。 決められた輸送ルート通りなら二、三日後にはここの近くを通過する」
『シティ726』
数多く存在するシティの中でも特に旧ヨーロッパ大陸の中では危険な状態になっていた。
度重なる無法者集団や、武装勢力による襲撃によって隔壁の自動防衛システムは壊滅。
しかも武装勢力が所持していた迫撃砲や榴弾砲、ロケット砲等の曲射兵器による壁内の市街地への被害どころか、無人攻撃機まで飛来し、街を瓦礫の山へと変えた。
それらの武装勢力等は粗方駆逐されたが、今も尚復興作業が続けられており、その支援を『シティ724』から受けていた。
その大量の支援物資を運ぶコンボイは、壁外に住む全ての者達にとって格好の標的だった。
とは言っても、国家の末裔とも呼べるシティから送られてくるのだからそのコンボイの護衛は強力であり、最近ではMBTまで導入しているとのことだ。
モズ達はそのコンボイを襲撃しようと企ててはいるが、ただ攻撃を仕掛けて略奪と言うにはあまりにも無謀な話だった。
なので、モズ達の手段としては側面からの奇襲攻撃をすることとなった。
輸送ルート上を通るコンボイの先頭車両をトラップで無力化したタイミングで奇襲をかけ、物資を我が物にするというかなり単純な内容だったが、今の所これぐらいしか具体案が思いつかないので仕方がない。
具体的な作戦内容としては、コンボイの輸送ルートとされている旧高速道路上にIEDを仕掛け、コンボイがやって来るタイミングで起爆。
コンボイの護衛にはMBTが二両いるらしい。
出来ればそこでMBTを一両無力化しておきたい所だ。
その次はテクニカルの制圧射撃で敵の行動を制限しつつ、その隙にモズとリーシャが携帯式対戦車無反動砲、『RPG-29』で即座に二両目のMBTを撃破、その後にテクニカルの援護を受けつつ肉薄し、敵残存部隊を制圧する。
かなり無茶な作戦だが、勿論反対の意見も出た。
強く反対していたアリフが提案した作戦は、他の武装勢力が攻撃を仕掛け、敵を無力化した所で突入し、物資を持ち逃げするという漁夫の利を狙った作戦だった。
だがこの作戦もいつ武装勢力が攻撃を仕掛けるか分からず、確実性に欠ける為に却下となった。
結局、最初に提案された作戦がコンボイの襲撃に採用される事となった。
「んで?肝心の起爆装置を用意し忘れた感想は?」
「まさか携帯のバッテリーが壊れていたとは……まずい」
アリフの運転するトラックの荷台の上で揺られながら、モズはそこに積み上げられた大量の弾薬と本作戦で使う筈だったIEDを見つめ、顔を両手で覆った。
IEDの起爆には一番安価な携帯電話を使用する予定だったのだが、彼らが持っていた携帯は全部バッテリーが経年劣化で駄目になってしまっていた。
オマケにそこらの市場では携帯用のバッテリーなんて売ってるはずもなかった。
そういう物を売ってる場所なんて、廃れたジャンクヤードに群がった浮浪者が経営している廃品売場位だ。
結果的に、IEDは使えなくなってしまった。
「クソ、こうなったらコイツで強行突破だ」
「オイオイ大丈夫かよそんなんで?」
心配そうに顔を向けてくるアリフに見せ付けるようにRPG-29を肩に立て掛け、すぐ側にあった弾薬箱を叩いた。
「ここには合計六発のロケット弾が収納されている。 それにタンデム弾頭だから
自慢げに語るが、不安は募るばかり。
反撃にあったことも考えるとリスキーにも程がある。
とはいえ、彼等も今までリスクを冒しながら生きてきた。
そうポジティブな思考に切り替え、半ばヤケクソながらもモズ達と行く事を決めた。
「しゃーねぇ!付き合ってやるよ!その馬鹿げた作戦に……ってん?」
突然言葉が途切れた事を不審に思い、運転席に顔を覗かせるとアリフが神妙な顔付きで目前の風景を見つめていた。
「アリフ、どうした?」
「いや……俺の目の錯覚なら良いんだけどよ……」
「あの先にある地面、やけに黒くなってないか?」