MAN OF THE STEEL 作:COTOKITI JP
猛暑が日常の旧ヨーロッパ南西の砂漠(と言うよりヨーロッパの殆どが砂漠)の真ん中に、幾人かの人が群れていた。
その者達は大破したトラックを取り囲み、何かを話している。
「トラックにゃあ、補給物資のほの字もねぇヘンテコな機械が入ってただけだったよ」
「機械?補給物資じゃないのか」
疑問を露わにする彼等に、アリフがじゃあ中に入って確かめてみろ、と促す。
大穴の開いたコンテナに入り込むと、そこにあるのはやはりあの未知の機械。
勿論彼らがその機械の用途等知るはずも無い。
一体何に使う機械なのかは分からないが、分かる事と言えばひとつしかない。
「まぁ、MBTを2両も持ち出す位には価値があるって事だな」
「だが、これの使い方を知っているのはシティの連中だけだろう。 こんなもの市場で売ってもガラクタ扱いに決まってる」
この機械をどうするのかと話している間に、モズの目線は中央の窪みにはめ込まれた赤く光る石に向けられていた。
モズの目線は釘付けにされ、しかしそれは好奇心によるものではなくまた別の感情によるものであった。
それが何かなど、分からない。
だが
他の者達にモズの奇行に気付く素振りを見せる者はいなかった。
誰にも気付かれる事無く、その手は赤い石を掴もうとしている。
赤い石にちょうど指先が触れようとした時、突然声を上げたのは一時間ほど前にモズ達に狙撃をお見舞いしたあの女兵士だった。
「何かが来る!多分音からして攻撃ヘリ!」
その言葉を聞いた彼等、特にフォルゴーレ戦闘団を名乗った者達は弾かれたように動き出し、両手に各々の銃を持ってコンテナの外に駆け出した。
アリフらもそれに続いて外に出ていく。
石を手に取ろうとしていたモズも共にコンテナの外へと飛び出す。
廃域の結晶に身を隠しながら音のする方の空へと双眼鏡を向けると確かにそこには三機の攻撃ヘリ、『Mi-24 ハインド』が編隊を組んで向かってきているのが見えた。
それらに向けられているモズとあの黒人の兵士と女兵士の視線に込められていたのは焦り、しかし恐怖から来るものではなく、嘗て自らが味わった
「ハインド……ここら辺のシティはあんなの使っちゃいねえ!」
「エンブレムが見えた……おいおいありゃあ……!」
機体の側面に描かれたその
数あるエンブレムの中でも特に恐れられたあのエンブレムを知らぬ者などいるはずもない。
「なんでよりによって
『レッドアーミィ』。
3年前に終結した幾つものシティを巻き込んだ大規模クーデターの後に突如活動を活発化させ始めた武装勢力の一つである。
各地のシティや他の武装勢力を襲撃しており、大昔に存在した国家、『ソビエト社会主義共和国連邦』の復活を目標に掲げている。
レッドアーミィとはソビエト労農赤軍を意味しているのだが、彼等は既に形骸化していた共産主義というイデオロギーを棄て、ソ連崩壊後に誕生したロシア連邦と同じ資本主義社会の道を歩もうとしていた。
そしてそのレッドアーミィを構成しているのは、殆どが大規模クーデターに参加していたシティの軍隊か、武装勢力の残党であり、その武装勢力の中にはフォルゴーレ戦闘団とストレルカ機甲大隊も含まれていた。
モズも嘗てはストレルカ機甲大隊に所属していたが、今は抜け出した身、即ちレッドアーミィとの関係は一切無い。
「どうすんだ!?このままじゃ俺達殺されちまうぞ!」
「どうするって……降伏するしか無いだろ」
「アイツらが捕虜の待遇なんて保証してくれると思うか!?」
「少なくとも機銃でミンチ以下の何かに成るのは避けられるかもしれない」
そう言いながらモズは愛銃をハインドの目の前で放り捨て、両手を上げた。
一瞬身構えたアリフだったが、ハインドから銃声もロケットが発射される音も聞こえてこず、目を開けるとハインドが二機とも着陸していた。
未だローターの回り続けるハインドの兵員室から歩兵がゾロゾロと出てきてこちらに銃口を向けながらレッドアーミィにしては珍しく降伏勧告を行った。
「この場にいる武装集団に告ぐ、所持している武器を捨て、両手を上げてこちらへ来い」
行動に悩むアリフ達だったが、モズが顎でしゃくり、フォルゴーレの連中も急かしてきたので大人しく武器を捨ててモズの左へ並ぶ。
全員が横一列に並び終えるとレッドアーミィの兵士はモズ達の背後に回り、その手に持っていた手錠で一人ずつ拘束した。
後ろ手に拘束された彼らは兵士に促され、ハインドの傍まで歩み寄った。
「その場で跪け」
大人しく命令に従い、地に膝を着いた。
すると一番左にいるあの黒人から順番に手に何かしらの機械を押し当てられた。
当然最後のモズも押し当てられたのだが、その時に兵士の様子がおかしかった。
解析結果を見た兵士は急いでハインドへと戻っていってしまった。
「総統、やはり予測通りでした。 彼で間違いありません」
「そうか」
今度はハインドから先程の兵士と共に今時珍しい軍服を着用した男がモズの目の前へと来た。
しかしモズは彼の顔を知っていた。
あの黒人も同じようで驚いた顔で彼を見ていた。
「やっぱりお前だったとはな、モズ」
「クリメント……レッドアーミィを率いていたとは知っていたが何故ここに……?」
「話すと長くなる、まずは落ち着ける場所に着いてからだ」
クリメントがハインドを指さすと兵士はその一機にモズ達を押し込んで離陸させた。
もう一機のハインドは機体下部から垂れ下がったワイヤーとあの輸送トラックの貨物を繋げて飛んでいる。
あれに関する事もきっとこの後聞かされるのだろう。