この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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スズハが15歳くらいの話。


番外編8:スズハをマッサージ。

(最近、身体が痛い……)

 

 身体凝っていて辛い。

 軽く腰や肩などをゆっくりと動かすが、嫌な音がなった。

 

「この街、按摩屋とかありましたっけ?」

 

 流石に放置するには辛すぎるので、何とかしようと考える。

 自分でやるにも限界があるので、やはり誰かにやって貰うのが良いのだが、数年暮らして按摩屋など見た事がない。

 アクアが居れば、回復魔法とかでどうにかなったかもしれないが、生憎と彼女の来訪する日時は完璧に不規則だ

 商店街で買い物する時に訊いてみようと思った。

 モップ掛けを終えて杖代わりにしていると、部屋から娘のヒナが出てきた。

 

「おかーさま?」

 

 4つになったばかり娘が辛そうにしている母を見る。

 

「あぁヒナ。お昼はもう少し待っててね」

 

 そう言うスズハにヒナは心配そうな目を向ける。

 

「おかーさま、ぐあいわるいの?」

 

「ん。ちょっと肩とか凝ってて……大丈夫だから」

 

 辛いのを堪えて笑って見せるスズハ。

 取り敢えず、やる事をやってしまおうとモップを片付けてお昼の支度に入ろうとする。

 自分の肩を揉んだり首を回すスズハを見て、ヒナが近くにある椅子を引っ張ってくると、ロビーにあるソファーの後ろに置く。

 

「ヒナ?」

 

「おかーさま、ここにすわって。肩、トントンしてあげる」

 

 椅子が置かれている前の位置のソファーをポンポンと叩きながら言う。

 どうやら肩叩きをしてくれるらしい。

 

「あぁ。ありがとう、ヒナ」

 

 せっかくの娘の好意を断る理由も無い為、スズハは指定されたソファーに座る。

 

「うんしょっと」

 

「椅子から落ちないようにね」

 

「は〜い!」

 

 一応椅子によじ登る娘に忠告する。

 母の肩で一旦バランスを取るヒナ。

 

「じゃあ、トントンするね! トントン────」

 

 声に合わせて握った拳を左右順番に振り下ろす。

 

(アイリス様が見たら、羨ましそうに歯切りするかも……)

 

 と、ここに居ない友達の王女の姿を想像してちょっと笑いが込み上げる。

 

「おかーさま、きもちいいですか?」

 

「えぇ。とっても」

 

 実を言うと4歳児の力で叩かれても大して効果はないが、それでも娘の気持ちが嬉しくてそう答える。

 しかし、やはり幼子の体力だ。頑張っているが1分ちょっと続けていると疲れてペース遅くなる。

 それを察してスズハが首を後ろに向ける。

 

「うん、ヒナ。大分良くなったわ。ありがとう」

 

「ほんとうですか?」

 

「えぇ。これで午後からも頑張れそう」

 

 そう言って肩を回すとヒナがパッと笑顔になる。

 そこでカズマがロビーにやって来る。

 

「あ? どうしたんだ?」

 

「カズにいさま! おかーさまに肩叩きしてました!」

 

 褒めて褒めてと言わんばかりに手を上げるヒナ。

 

「お〜。偉いなぁ。そういや俺も、ガキの頃は父さんにやったなぁ。肩揉んだり、背中を踏んだり」

 

 日本での家族との想い出を振り返るカズマ。

 小遣い目当てだったし、飽きてすぐ辞めるのだが。

 ヒナが椅子から降りると、ちょっと気になってカズマはスズハの肩に触れる。

 

(いや(カッタ)ッ!?)

 

 鉱石でも揉んだのかと思った。

 それ程までにスズハの肩は硬かった。

 口にしなかったのは、今しがたスズハの肩を叩いたヒナが居たからだ。

 

(これ、相当辛いんじゃないか?)

 

「カズマさん?」

 

「おう悪い」

 

 手を離すとスズハがソファーから立ち上がって軽く伸びをする。

 

「それじゃあお昼の準備しちゃいますね」

 

「おてつだいします!」

 

「お願いね」

 

 2人が厨房の方に向かって行くのを確認した後に、カズマは冒険者カードを取り出す。

 

「マッサージのスキルなんてあったかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、スズハはカズマに呼ばれて部屋に訪れていた。

 着ているのはいつも着てる寝間着用の浴衣ではなく、薄いシャツと短パン。ここ数年で伸びた髪も団子状に纏めている。

 

「それで、マッサージですか」

 

「おう。冒険者カードにスキルとして記載されてたからな。ポイントで修得した」

 

「……マッサージまであるんですね」

 

 ここ最近は冒険に出る事も無いので、貯まっていたスキルポイントをほぼ全部マッサージスキルに費やした。

 

「まぁなんだ……お前もそのままじゃ辛いだろ?」

 

「少し……」

 

 最近は凝りが酷くて動くと痛かったのは事実だ。

 

「とにかく座れよ。今の俺なら全身の凝りほぐせる筈だ」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて?」

 

 指定された椅子に座る。

 後ろに立ったカズマは先ず、軽く肩を擦る。

 いきなり力を入れて揉むと痛いので、擦って血流を良くする為。

 

「ハァ〜」

 

 血流が良くなると目を閉じて肩の力が抜ける。

 

(デカくなったな……胸とか……)

 

 出会った頃はめぐみんより少し大きなくらいだったが、今は初めて会った時のゆんゆんくらい胸が育っている。

 普段の和装ではなく、マッサージする為に薄いシャツを着てもらっているので、余計そう感じた。

 エロい目で眺めてたが、頭を振ってマッサージに集中する。

 

「本格的に揉むぞー」

 

 肩を上からグリグリと親指で押す。

 

「いたたたた……!」

 

(いや、ホント(かて)ぇ……)

 

 これだけで指が痛くなりそうだった。

 スズハもほぐされている痛みで身動ぎし、大きく息を吐く。

 首の肉を摘んだり擦ったりして血液がちゃんと流れるようにする。

 

「あ〜……血が流れてる感じがします……痛いけど気持ちいい……」

 

「こうなる前に言えよ。めちゃくちゃ硬いぞ」

 

「……これが常態化してて、気にしないようにしてて……あ〜でも、肩が辛くなったのは胸とか大きくなってからかもです〜」

 

「それ、めぐみんには絶対に言うなよ?」

 

 口を滑らせたら最悪癇癪で爆裂魔法をぶっ放しかねない。

 そんな恐ろしい可能性にうんざりしていると、スズハが思い出したように言う。

 

「カズマさん。これ、使えます?」

 

 何処から取り出したのか、手には瓶が握られていた。

 

「以前、アイリス様から頂いた香油です。あんまり使う機会も無くて」

 

 置きっぱなしにしていたと言う。

 それならとありがたく使わせて貰う事にした。

 香油をスズハの首や肩に馴染ませるように塗る。

 

「あ〜いい香り……」

 

 確かに、香油は良い香りだった。

 柔らかい匂いと言えばいいのか、何らかの花の香りだが、匂いは強くなく、嗅いでいて不快感が無い。

 自然と鼻に入り、リラックスさせてくれる。

 香油を塗りながら首と肩をほぐす。

 

「んで次は……ベッドまで歩けるか?」

 

「すみ、ません……身体の力が抜けて……」

 

 久し振りに血流が良くなったせいか、疲れが一気に抜けて動くのが億劫らしい。

 

「しょーがねぇなぁ」

 

 苦笑してスズハを椅子から抱き上げた後にベッドに置く。

 腕を上げさせたり、肩を回したりしてほぐす。

 腋の下のリンパを流す感じに指圧していく。

 首から肩、腕のマッサージを終えると、スズハをうつ伏せにさせて腰の施術に入る。

 

「あ〜……」

 

 腰を少し強めに押すと、スズハの口から気持ち良さそうな声が漏れた。

 肩もだが、腰も相当凝っている。

 ゆっくりと手の平で圧をかけつつ握り拳で押したり、肘でグリグリしたりして固くなった腰をほぐす。

 

「はぁ……腰があったかくなってきました……」

 

「そりゃなにより、だ!」

 

 上から下へとトントンと叩いたり、揉んだり、手の平での圧を繰り返し、要所要所で指圧をする。

 体の奥に響く感覚で、大分楽になる。

 そこまで施術が進んでカズマが躊躇いがちに質問する。

 

「あー。尻とか揉むと腰に良いらしいんだが、やるか?」

 

 腰までならともかく、異性のお尻を無許可で触れるのは流石に抵抗がある。

 しかしその心配は杞憂だった。

 

「ふぁい……おねがいします……」

 

 気持ち良さに頭が回ってないのか、ボーッとした顔で許可が降りた。

 

「じゃ、いくぞー」

 

 スズハの体を横向きに寝かせ直し、2本の親指で押す。

 ほぐれたら前腕を回して均す。

 反対向きにして同じように施術する。

 それを終えると再びスズハをうつ伏せにして、太腿やふくらはぎを指圧した。

 マッサージを終えるとカズマは思いの外、体力使うんだなと汗を拭った。

 

「お〜い、終わったぞースズハ」

 

 そう話しかけるが返事はない。

 見ると、小さく寝息を立てている。

 

「眠っちまったか。どおりで途中から静かだと」

 

 疲れていたのだろう。気持ち良さそうに眠っている。

 ヒナは今日めぐみんと寝るらしいので、このまま寝かせて置こうと決めた。

 カズマはスズハの頭を撫でる。

 

「お疲れさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、ソファーでスズハがヒナに縫い物を教えている。

 教えてもらっているところが難しいのか、難しい表情で手にした針と布ににらめっこをしているヒナ。

 それを自分の作業に集中しつつも見守っている。

 カズマがやって来たのに気付いてヒナが挨拶してくる。

 

「お……よ……ます! カ……さま!」

 

「ん?」

 

 やけに聞き取りづらい。

 最近は近くに寄らないと相手の声が聞こえない時がある。

 スズハも挨拶してきたが、すぐに心配そうな顔をする。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、最近聞き取りづらくてな」

 

 ポンポンと自分の耳を叩く。

 

「詰まってるんじゃないです?」

 

「かもなー」

 

 耳かき何処だっけ? と思っていると、スズハが何処からか木製の耳かきを取り出す。

 自分の膝をポンポンと叩きながら問いかける。

 

「それじゃあ、昨日のお礼に耳掃除しましょうか?」

 

 それは、とても魅力的な提案だったのだ。

 

 

 




ヒナがスズハの下から巣立つ番外編を書こうとしたらこれになってる不思議。

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  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
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  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
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