「どういう事だ!」
イレギュラーハンター本部にて、それは起こった。
事の発端は、シグマを倒し、今や海の底に眠る残骸となった基地でのイオの捜索任務が発令された事から始まる。
「どうして、こんな……イオが生きていたら破壊しろだなんて指令が!?」
その指令内容は、基地の内部で行方不明となったイレギュラーハンターのイオ、その残骸で残っているパーツがあれば回収せよという任務……だが、もしもそのイオが生き残っていた場合、イオを破壊する事で任務完了とする、という内容だったのだ。
エックスにとって、イオは仲間であり、友人であり、そして自分ですら知り得ない何らかの情報を握っている、キーマンとなる人物である。
シグマを倒すのに協力してくれた功績だってある。
なのに、どうして生きていたら救助ではなく破壊なのか。
エックスは納得がいかないという表情で激昂する。
だが、同じ思いなのはエックスだけでは無かったようで、オペレーターとしてエックス達を支援していたレプリロイド達の表情もどこか暗い。
「その、エックス……実は、私達……いえ、この街の人達は皆、イオとシグマのあの会話を見ていたの。」
「え……?」
「シグマはね、あの基地から電波をジャックして、我々の支援を妨害するだけでなく……街頭放送やラジオ、他の様々な放送媒体を経由して、あの時の貴方達の会話を放送していたんだ。」
「それとイオが殺されなきゃいけない事になんの関連性……が……。」
反論しながらエックスは「まさか」と自身の頭で導き出した推論に悪寒を覚える。
そう、シグマが街の人々へと向けて放送した内容、それは……。
「街の人々は皆、イオというレプリロイドがシグマと同じ、自らイレギュラーに成る事のできる素質があるレプリロイド……IRREGULAR ORIGINだという事を知ってしまったのよ……。」
「そ、そんな……でも、イオはその後ちゃんとイレギュラーに成る事を否定して……シグマを倒すことに協力だってしてくれた……俺たちの仲間じゃないか……!」
「だが、その為に人々を見捨てたという事実……何より、今回問題を起こしたシグマを含むイレギュラー達のデータが残っているという事実が問題となっているんだ。」
「それは、今までだってずっとそうだったハズだ! だけど今までずっとイオはイレギュラーになんてならなかった! そうなる可能性があるってだけで殺さなきゃいけないなら……イオは……イオは、生まれてきてはいけない存在だったとでも言うのか!?」
その激昂に、ミーティングルームの全員が顔を背け、沈黙する。
それは全員が、それを否定するだけの材料を持ち得ない……肯定するしか出来ない事を意味していた。
エックスは思わず一歩後ずさる。
それは何を思っての行動だったのか……現実からの逃避か、仲間へ銃を向けなければならないという絶望か。
そして、隣で聞いていたゼロがエックスの肩を叩き、深刻な面持ちで首を横に振る。
「……エックス、そもそもイオはあの爆発に巻き込まれ……基地の崩壊と共に海の底に沈んだんだ。現地はレプリロイドの反応一つ無いと聞いている。
……パーツは回収され、これから新たに製造される後続達が、イオの意思を引き継いでくれる。そうやって今までも俺達は戦ってきたんだ。」
「それ、は……。」
「それになエックス。もしもイオが生きていたとして……そしてイレギュラーになっていたとしても、なっていなかったとしても、これからイオに待ち受けている展開を思うと、ここで……俺達の手で、終わらせてやる必要がある。」
「終わらせるって……それは、ダメだ! 彼女は……!」
「それとも、お前はアイツがイレギュラー化して、人々を襲うようになったとしてもいいのか?」
「彼女は、イレギュラーになんか……。」
「だが、可能性が0な訳じゃ無い。そうだろ? 自分の意思一つで、シグマのようになることが出来るレプリロイド……その危険性はお前にも分かっているハズだ。」
実際、イオがもしもイレギュラーになったとしたら……その危険性はシグマ程ではないにしろエックスやゼロのような実力者でなければ対応できない程の危険を孕んでいる。
いや、エックスですら知り得ない情報を手に入れている謎の情報網の事や、他のレプリロイドでは到達し得ない結論に到達する事の出来る頭脳の事を考えると、もしかしたら、シグマ以上の……。
「……分かった。もしも……もしもイオが生きていて……イレギュラーに成る事を選択していたら、その時は、俺が彼女を、倒す。」
しばしの思考の末、エックスはそう決意した。
だが、もしも彼女が本当に生きていて、かつ、イレギュラーになっていなかったとしたら、その時は……どうにか彼女を説得して、彼女が持つ危険性をどうにか出来るようになるその時までは投獄するなりスリープしてもらうなりして……とにかく、破壊だけはどうにか避けようと考えていた。
任務内容では生きていたら破壊、とあるが……これは要するに、彼女がイレギュラーになってしまう可能性が明確であるからであって、無力化し、後でこの危険性を孕んだデータさえどうにかしてしまえば良い、そう考えたのだ。
任務に逆らうかのような思考だ、と自分で理解していながら、だが、彼女も救い、人々を救う為にはこうするしかないと確信していた。
「それでは、エックスさん、ゼロさん……予定された時刻に基地へ……。」
出向してください、とオペレーターのレプリロイドが指示を出そうとしていたその瞬間……ミーティングルームに警報が鳴り響く。
「何事だ!?」
「き、基地へ出向していた捜査班から連絡! ……そんな、信じられない! イ、イオが生きていたようです! 現在交戦中!」
『こちら捜査班……! 報告した通りです! 海底から該当個体のイオが出現! 指令に基づいて一部の隊員が彼女を攻撃中! 至急救援求む!』
「交戦中!? 戦っているのか!?」
『し、指令では生きていたら破壊との事ですから……。』
「馬鹿な……! 捜査班のお前らでは戦闘に特化したイオに勝てる訳がない! 直ぐに撤退させるんだ! 攻撃も今すぐ中断しろ!」
『む、無理だ! やらなきゃこっちがやられ……ウワアアアアアアアーーーーーッ!!!』
隊員の断末魔の後、一瞬、音声にノイズが走ったかと思うと、ブツリと通信が途絶える。
「そ、捜査班20体の反応ロスト……全滅です。」
「そん……な……。」
「……現時刻をもって、イオをイレギュラー判定……任務内容を変更。現在彼女は捜査班から奪ったライドチェイサーで何処かへ移動中です。各隊員は、彼女を追跡し……破壊して下さい。」
エックスは……思わず膝から崩れ落ちそうになる程のショックを受けていた。
あのイオが……イレギュラーではないレプリロイドを、殺した……。
つまり、彼女は……イレギュラーになってしまったと考えて良いだろう。
「……クソッ。」
ゼロは苦虫を噛み潰したような表情で拳を握りしめる。
そして、そのまま足早に部屋を飛び出し、その場を後にした。
エックスはそれを見て、いつまでもここに居ても仕方ないと考え、色々な感情に押し潰されそうになりながらもゼロの後を追い、ライドチェイサーに乗ってイレギュラーハンター本部から出向した。
= = = = = = = =
「こちらゼロ……アイツは今どこに向かっている?」
『こちら本部……どのような目的があるかは不明ですが、彼女は今、ゴミ処理施設へと向かっています。』
「ゴミ処理施設……?」
どうしてそんなところに……と二人は考えるも、目的は分からず仕舞いだ。
あの場所には、イレギュラーとなって破壊されたレプリロイド達の残骸や、廃棄されたメカニロイドの部品が廃棄され、超高温の焼却炉による焼却処分を行っている場所だが……逆に言えばそれだけだ。
「……まさか……。」
ゼロは、もしやと思い当たる可能性を導き出したらしい。だが、それは……あまりにも……あまりにも残酷な悲劇。出来れば外れていて欲しい可能性。しかし、考えれば考える程……そうとしか思えない。
「ゼロ……?」
「……いや、何でもない。これからそのゴミ処理施設へ向かう。」
『了か……待ってください! 今、本部に通信! い、イオからです!』
「何!? 本人か!?」
『間違いありません! 彼女が事件発生前から使っていた物と全く同じ物です。今、そちらにも繋ぎます!』
= = = = = =
『あー、あー、テステス。聞こえますか?』
「イオ!」
『あ、聞こえているみたいですね。どうもどうも。』
「お前、どうして……。」
『どうして、ですか……それはこっちも聞きたいんですけどね? 何故、私が破壊対象になっているのか……。まあ、大体想像は付きますけど。』
「シグマが、お前と自分との会話を街に流していたんだ。お前がイレギュラーになる素質がある事、イレギュラーのデータを持っている事、目的の為、人々を見捨てた事を……。」
『……そうですか。もう、遅いんですね。なんでこうなっちゃったのかな。』
通信の先の声は、少し震えていた。
イレギュラーとなり、暴走していると思っていた彼女は、まだこうして話が出来るだけの理性があり、後悔し、恐怖している。
だが、それならどうして……。
「イオ……どうしてだ。何故あいつらを殺した? 今のお前は……本当にイレギュラーなのか?」
『……私はただ……何者かに襲われたと思って……襲われたので反撃して……攻撃が止まないので、止むまで反撃を繰り返していたら……それが、何故かイレギュラーハンターの仲間で……私……私は、イレギュラーなんか、じゃ……。』
「……そうか、やはりな……。」
「どういう事だ……?」
「エックス、指令を思い出せ。元々の指令は、イオは生きていた場合破壊せよとの指令だったんだ。捜査班はその指令に従っただけ……そしてイオは……恐らく、爆発のダメージで識別センサーか視覚センサーのどちらか、あるいは両方がイカレている。だから、目が覚め、地上に上がってすぐ……イレギュラーか何かに襲撃されたと誤認したんだろう。」
まさに、運命の悪戯とでもいうべきか……どこかで歯車が狂ったのか、何もかもが悪い方向に噛み合い、何もかもが最悪の方向へと進んでいく。
『エックス、ゼロ……私は、許されない事をしてしまった……みたいですね。』
「ああ……イオ、今そっちへ向かっている。だから……投降するんだ。そうすれば投獄だけで済むかもしれない。」
『ダメです。ダメですよ……私は、やっぱりこのままここで死のうと思います。』
「な、何でだ!」
『私はあの爆発の後、再起動までに自身の身体をチェックした結果……システム内部に把握しきれない程多くのエラーを孕んでいる事が分かりました。つまり、このまま生きていてもいつか頭がおかしくなってイレギュラーになるか……機能停止するだけです。』
「そ、そんな……なら、尚更!」
『実は……もう、間に合いそうにないんです。今も……頭の中で、奴の声が聞こえる……「イレギュラーになれ。」と……「ここで終わってしまっていいのか」と……。私は……今にもその言葉に負けてしまいそうです。……だから私は、まだ、正気でいられる内に……私自身を焼却処分します。』
「そ、そんな……そんな……。」
「……それが、お前の選択なのか。イオ。」
『……はい。今まで、本当に、ありがとうございました……貴方達と出会えて本当に良かったです。……そろそろ着きそうです。それでは、これで……。』
―――さようなら。
イオがそう残したのを最後に、通信が切断される。
「イオ……。」
エックスは、彼女の決意と、最後に彼女が遺した言葉を胸に抱いて噛み締める。
彼女という仲間の犠牲はあったものの……事件は収束を迎えるだろう。
エックスは……様々な感情を背負いながらも、けれど、これでようやく全てが終わったのだと……そう信じて疑わなかった。
……しかし……悲劇はこれで終わらなかった。
= = = = =
そこは戦場、と呼ぶにはあまりにも淀んだ空気で満ちており、周囲はスクラップ……それも、主に破壊されたイレギュラーの残骸で埋め尽くされていた。
ここはゴミ処理場だ。周囲にもそれ以外のものは何も無く、処理するための施設は今や無人の廃墟と化しており、作業用及び警備用のメカニロイドは全て電源がOFFになっている。
人が居ないのは、今から数日前にとあるイレギュラーの暴動によって、街全体にイレギュラー達が攻撃し、街や人々を破壊して回っていた為、市民達やここの作業員たちは、安全な場所へと避難していたのだ。
そしてその一人のイレギュラーハンター、イオは、そのまま焼却処理施設へと向かう。だが、そこで彼女を待っていたのは残酷な運命だった。
「嘘でしょ……? なん、で……。」
彼女が向かった焼却処理施設……そこには超高温でレプリロイド達の残骸を処理する為の施設が稼働しているハズだった……だが、そこで一つ……いや、そこでもまた一つ、歯車が狂っていた。
「どうして、停止して……いや、そうか……作業員の誰かが、避難する前に電源を落として……制御装置は、どこに……?」
そこは本来赤く光るマグマが満ちているハズだが、制御装置により加熱機構が停止していた。その上に、クレーン型のメカニロイドが大量のレプリロイド達の残骸を落としており、数日もそのまま放置されていた焼却炉は、マグマの熱が急激に冷めており、表面は黒く変色した機械片で覆われている。
……機械片ですらその原型を留められるほどの熱である。
耐久性に優れた戦闘用ボディを持つイオを焼却できるに足る火力があるようにはとても見えない。
「もう一度作動させて、その上で中に入れば……次第に熱が上がり、機能を取り戻すはず……まだ、間に合……あ?」
不意に、彼女の視界に一瞬ノイズが走ったかと思うと、目の前が暗闇に包まれる。
停電だろうか? 避難した人の誰かが、電源を落とした? だとしたら拙い、制御装置へ送る電気が無いと動かせない。
……そこまで考えて、避難するような人がわざわざそこまでするだろうかと思い直す。しかし、だとしたらこの暗闇は一体なんだろうか。
「とにかく、明かり……明かりをつけないと……そうだ、ブレードのエネルギーを明かり代わり、にすれば少しは……あれ?」
腰に持っていたブレードを取り出すも……何も、見えない。
起動音も、ブレードのエネルギーが迸る音もするハズなのに……どうして。
「…………まさか……私、目が……あ。」
―――……そしてイオは……恐らく、爆発のダメージで識別センサーか視覚センサーのどちらか、あるいは両方がイカレている。だから、目が覚め、地上に上がってすぐ……イレギュラーか何かに襲撃されたと誤認したんだろう。
「あ、う、嘘だ、そんな……い、嫌だ! 何で! どうしてだよ!? どうしてこんな……がっ!?」
突如、彼女を襲う、頭が割れそうだと錯覚するほどの頭痛。
それは、彼女にいよいよ
「嫌だ、嫌だ……死に方すら、選べ、ない、なんて……こん、な……。」
耐え切れず、その場に倒れるイオ。
程なくして、イオはピクリとも動かなくなった。
===DATA===
結局俺は何がしたかったんだろう?
ただただ生き残りたいがためにここまで強くなって、結局出来たのは、ゼロさん一人助けたぐらいか?
……まあ、ぶっちゃけ俺が助けなくても続編で復活するし、ほぼ無意味だよな。
……本当に……何がしたかったんだろう?
ただ生き残りたいだけだったのだろうか?
何のために……?
何か目的があって、その為に生き残りたいというならまだ分かる。
だけど、何の目的も無く、ただただ生き残りたいんだったら……こんな事しなきゃ良かったんだ……。
でも、そうしなかったのは、訓練場であった奴らの死を見て、やるせなくなって……。
思えばあの時からだな、こんなに暴走してるのは。
あの時から……強くなった俺なら、何かできるかもって思ってたのかな……。
何か……何かって……何だろう?
何がしたくて俺は戦っていたんだっけ……?
……よく、思い出せない。
誰かを……救いたかった……?
この力に、意味を持たせることが出来たら……。
俺がこの世界に来たことに、意味を持たせることが出来たら……。
そんな事が出来たなら……きっとこんなに暗い気持ちで死ぬ事無かったんだろうな……。
「……本当に、こんな終わり方で良いのか?」
良いんだよ、だって、イレギュラーになる訳にも行かなかったし、このまま死ねば……ホラ、パーツとかそのまま使えるだろうしさ。
むしろ燃えちゃわなくて良かった、みたいな……。
「それが、お前の本心か?」
……本心な訳、ねーだろ……俺だって、もっと……もっと生きたかったよ。
だって、せっかく憧れのヒーローが居る世界に来たんだぜ。
もっと色々話したかったよ。
もっと戦っていたかったよ。
もっと色んなキャラと会いたかったよ。
もっと笑いたかった! もっと泣きたかった! もっと楽しみたかった! もっと苦しみたかった! もっと、もっと……。
「……なら、もう手段を選ぶ必要もあるまい?」
だから、それはダメなんだって! 俺はイレギュラーになりたい訳じゃ無いの!
「だが、イレギュラーになりさえすれば……お前の願望は、全て叶うように思うが?」
そんなわけ無いだろ。
「いいや、ある。例えば現状だが……お前はエックスのような善なる者達とイレギュラーへと至った悪の者達、両方のデータを同時に持っている事から、常に矛盾を抱えて生きてきた。これは自覚があるか?」
うん。
だからシグマは俺に「お前は望めばいつでもイレギュラーになる資質がある」なんて言ったんだろ?
「矛盾というのは要するにエラーだ。エラーが蓄積するとどうなる?」
そりゃまあ、頭がおかしくなって暴走しちゃうか、そもそもシステムがうまく働かなくて動けなく……ん? もしかして、俺って今そのせいで身体がどんどん壊れていってんの?
「……今更気づいたのか?」
う、うるさいな。
それどころじゃなかったんだから仕方ないだろ……俺はてっきりシグマと爆発に巻き込まれたときのダメージとか、メディカルセンターでしっかり整備をしておかなかったからそのせいで、とか、なんかそんなんだと思ってた。
「先ほどは矛盾といったがな、お前はその両者の丁度中間で、細い糸で綱渡り、あるいは綱引きをしている状態だったんだ。故に、今回の事件で善と悪の心が揺さぶられ、その均衡が崩れ、結果として身体のシステムは急激にエラーを蓄積していった。まあ、大きなダメージを受けたのもその要因の一つではあるがな。」
うーむ、なるほど……まあ、要するに、今までは悪と善の間で上手くやれてたけど、そのバランスが崩れておかしくなってるって事ね?
「……まあ、そうだな。で、これを解決する方法は一つ。お前がイレギュラーになる事だ。」
なんでそうなんだよ。そもそもエラーまみれでロクに動けねえんだっての。
「まだ分からないのか? 要は悪と善、どちらかに最適化すれば良いだけの話だ。善の心を殺し、悪に堕ちれば、矛盾は消えてなくなる。つまり、エラーも解消され、お前はこの暗闇から自由になるという訳だ。」
……いや、でもやっぱりダメだろ。
だってイレギュラーになったらどうせあの二人に殺されるし。
そもそも俺はイレギュラーになってまで生きていたいわけでもない。
……つか、さ。
その話を聞く限りだと、俺からシグマや他のイレギュラーになった奴らのデータを全部除去して、善の心だけで最適化すれば……問題無いんじゃね?
「……はぁ……お前は頭が悪い癖に妙に勘がいいな。確かにお前の言う通り、それが出来ればお前はイレギュラーにならなくても済むし、エラーも解消され、その上イレギュラーになれる資質を失って、誰も不幸にならない大団円だ。実に愉快で素敵なイイ作戦だ……不可能と言う点に目を瞑ればな。」
は? 不可能って、なんで……。
「何故ならここに私がいるからだ。」
は……え……なん、なんでおま……ああ、そうか……そうだよ、そりゃ俺の中にも居るよな、アンタなんだから。
「諦めろ。お前では私に勝てない。大人しくイレギュラーになれ。」
それは……あー、なんだっけ。
俺が諦めるのを諦めろ、だったかな?
どうせイレギュラーになったら身体を乗っ取るつもりなんだろ、騙されんぞ。
「……なら、このまま消えろ。」
= = = = = =
イオの決意を聞き届けた後のエックスとゼロは、二人でイレギュラーハンター本部へと戻っていた。事の結末を本部に伝えた結果、二人がそれ以上彼女を追う必要は無い、という結論に至ったためだ。
だが、ライドチェイサーで帰還中、ゼロは不審な反応をキャッチする。
「……どういう事だ……!?」
「ゼロ……? どうしたんだ?」
「……イオの反応がおかしい。反応があったり消えたりと、まるで……まさか……もしかすると、
「そ、そんな……! じゃあ、今彼女は……!?」
「……手遅れになる可能性がある。」
「急いで戻ろう! ゼロ!」
「ああ……!」
『矛盾』
ロックマンXシリーズでは続編でアイリスとカーネルという二人の兄妹のレプリロイドが登場する。
彼らのCPUは元は「平和を願う心」と「無双の戦闘力」を両立させた「伝説のロボット」を再現させた一つのCPU」だったが「戦闘」と「平和」という二つのプログラミングに矛盾を起こして暴走する形になってしまった。
なのでCPUを二つに分け、アイリスは平和を基礎に、カーネルは戦闘を基礎に、二人のレプリロイドとして生まれた為、二人はレプリロイドでありながら「兄妹」である。
イオは現在、『善』と『悪』のデータで矛盾を引き起こした結果、生まれたその時から常にエラーを蓄積し続けてしまう性質となってしまう。
この性質で済んでいるのはむしろ奇跡で、他の19体は全てこれが原因で起動失敗または暴走またはイレギュラー化、という結末に終わっている。
彼女の過去のデータがエラーまみれになったりしているのはこの為。
彼女はずっとこの性質で常に善と悪の綱渡り(綱引き?)状態になっていた。
そして今回の戦いでその二つのバランスが揺さぶられ、そして身体的にもダメージを負った事で今までとは比較にならない速度でエラーが沈殿し、身体のシステムが停止に至ってしまう。
これを直すには『善』か『悪』かどちらかを選び、どちらかを消去し、残った方にシステムを最適化すればシステムの復元が可能。
だが『悪』のデータ内には「あのウィルス」が含まれており、「あのウィルス」はイオをイレギュラーにした後、その身体を乗っ取って復活するつもりでいる。