すみません。
12【Io】
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===DATA(※最も古いデータです!※)===
俺はその日の前日も特に変わった事はしていない。帰りに女の子を庇ってトラックに轢かれたり通り魔に刺されたりなんていうイベントは特に無く、神様にもあった記憶も無い。
だが、次の日に目覚めると俺は、レプリロイド製造所で、母親ではなく多くの研究者達に見守られながら、赤ん坊の身体ではなく、【戦闘特化型レプリロイド】という、わっかりやすい名前のボディで生まれ、「
最初は困惑したが、しばらくして聞こえてきたレプリロイド、イレギュラー、エックスといった単語が脳裏で点となり、俺が何かを考える前に頭が全てを線で繋ぎ合わせ、ひとつの解答を導き出した。
ここロックマンXの世界やんけ、と。
俺は深刻化するイレギュラー問題をどうにかする為に計画されたプロジェクトの内の一つ、数々のイレギュラーハンター達がイレギュラーとの戦闘で培った記録データから計算し、戦闘に特化した自立思考システムと、同じく戦闘に特化させたボディを作り、有能なイレギュラーハンターを作ろう、という物だ。
しかしその結果、同時に製造されていた20体の内、無事に起動したのは俺だけだった。
膨大な量の記録データと戦闘に特化したボディが、戦闘を求め過ぎて暴走したり、プログラムに何らかの矛盾が生じて起動に失敗……と、結果は散々だった。
そして唯一の成功例と言える俺も、実は完全な成功だったとは言い難い。
先述したこのボディだが……この身体、戦闘特化と名乗っている癖に、何故か女性型のボディなのである。
女性型なのである。
念のため言っておくが、俺は前世では……気持ちは今でも男だ。
女性らしく膨らんだバストパーツ。きゅっと引き締まったウェストパーツ。やたら造形に凝った太もも。そして無邪気な少女を思わせるクリクリした目とつやつやしたショートカットの髪型。まぁ全部ただのパーツに過ぎないのだが。
一応、頭にはゴツイヘッドパーツと、手足はロックマンよろしくなゴツいアーマーが装着され、胸にも当然アーマーが取り付けられているのだが、それでも、勝気で快活な女の子、みたいな印象がどうしても拭い切れない。
俺は研究者達にすぐに男の身体に代えてくれと頼み込んだのだが、同じ精度で作られたボディは今の俺のボディしか現存せず、仮に作ったとしても今までの事を考えるとプログラムに矛盾が生じてエラーが発生する……人間でいうところの拒絶反応のようなものが起きる可能性があるとの事。
細々としてオプションパーツを組み替える分には問題は無いらしいが、根本からとなると話が変わってくるのだとか。
その可能性、サクッとコンピューターに計算させて弾いた結果は驚きの87.79%という高確率。その内死ぬかもしれない、下手したらイレギュラー化する可能性は60%超えだと言われた。
そんな博打を打ってまでして男の身体になりたいかと言われ、ほどなくして俺は諦めて今の身体を受け入れることにしたのだった。
そうして女レプリロイドとなった俺がある程度落ち着いた後、俺はイレギュラーハンター見習いとして訓練の日々を過ごす事となった。
訓練、と言っても、鍛えて筋力が上がる訳ではなく、システムが戦闘をしていくうちに学習して処理速度が上昇し、より効率的にエネルギーを扱う事が出来るようになる……まあ要するに、戦ったり訓練したりすれば戦い方を学習して強くなれるって事だ。
もちろん身体が成長するわけではないので限界はあるし、そこはより強いパーツに取り換えて扱い方を覚えるしかないのだが、流石は戦闘特化というべきか、その必要性は殆ど感じなかった。
訓練と称された耐久力チェックだとか戦闘能力テストと称したメカニロイドとのガチバトルも、実際に起きた事件をシミュレーションで追体験し、見事作戦を成功させればテストクリアとみなされる試験も、難なくクリアしていった。
この身体、見た目より有能である。
同輩から張り付き壁キックのコツを教えてくれとせがまれたり、戦闘訓練で手本を見せてくれと言われたりして、それくらいなら、と軽くやってみせてちょっとした人だかりが出来たりする。
……まあ壁キックというより壁駆け上がりだし、戦闘訓練も訓練生用に調整された難易度のビギナーでは物足りず、段々難易度を上げていたのだが、それが注目を集めたらしく、期待の新人と呼ばれた。戦闘特化なんだからこれくらいできて当然、だと思っていたが、そう思う者ばかりではないみたいだ。
俺も褒められたりおだてられたりするのに弱いので、すぐいい気になってホイホイ周囲の人と交流を深めていってしまう。
……彼らの多くは今後起きる事件で死ぬこととなるのに、と考えるとやるせない気持ちになる。いい奴らなのに。
俺はそんな感情から逃げるように、仮想イレギュラーを相手に皆よりも遅くまで一人で訓練を続けていた。
……この世界じゃいつ誰が死んでもおかしくないし、明日隣に居た奴がイレギュラーになってた、なんて事もあり得ないとは言い切れない世界である。
今、何も大きな事件が起きていない今のうちにしっかりと訓練しておく必要があると俺は思い、積極的に自身の戦闘力向上に努め、本来持っているスペックを最大限まで引き出すつもりで訓練した。
元々努力家でもなく、なんならめんどくさがりな性分だったが、やらなきゃ死ぬとなれば誰だって必死になる。
それに、頑張った甲斐はあった。
潜在能力が開花してメキメキと戦闘能力は向上したし、俺が「性能はピカイチだが扱いが滅茶苦茶難しい」と言われたパーツやウェポンを初めて自転車に乗る程度の心境で練習したりしている内に、気付けば同期の中どころかここ数年でぶっちぎりの成績を残していた。
と、大体は訓練生としてイレギュラーハンターになるため訓練を積んだり研究チームから新しいウェポンやパーツを貰っては次々モノにしていく生活をしていたが、半年程度経ったある日、唐突にその生活は終わりを告げる。
「あの子は何だ?何故あのような人材がここに居る?」
「ええと、何故と言われましても……彼女は訓練生なので……。」
「ほう?あの動きでか?」
いつものように訓練に励む俺は、トレーニングルームの外から強烈な視線を感じ、一旦戦闘を止め、そちらに顔を向ける。
「ああ、邪魔をしてしまったかね? 私の事は気にせず続けてくれたまえ。」
「えっ……。」
そこに居たのは、スキンヘッドにケツアゴ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、緑色に輝くごっつい筋肉質な大男を思わせるボディアーマーを身にまとったレプリロイド。……イレギュラーハンター第17精鋭部隊の隊長を務めている、シグマ隊長その人であった。
念のため説明しよう。
シグマとは、シリーズのほとんどの作品にてラスボスを担っている最重要キャラクターの一人……というかシリーズ通して大抵はコイツがストーリーの黒幕である。
Dr.ケイン(レプリロイドを製造し量産化に成功した歴史的な科学者)の最高傑作とも評価される高い戦闘能力と優秀な頭脳、多くのレプリロイドを引きつける高いカリスマ性を持つレプリロイドである彼だが、この後、なんとイレギュラーになってしまい、名実ともに最強最悪のイレギュラーとなるのだ。
その後なんやかんやあって主人公にぶっ倒されるものの、桃の姫を攫う亀の王様よろしく何度も何度も何度でも復活して黒幕として暗躍する、それがシグマだ。
「どうかしたかね? 私は続けたまえ、そう言ったのだが。」
「い、いえ! はい! 訓練を再開します!」
唐突なラスボスの登場に流石に面食らった俺は、取り繕う事も出来そうにないと判断し、取り敢えず言う通りに訓練を続けた。唐突に現れたラスボスからの恐怖から逃れたい一心で。
しかし俺が訓練を続けていてもずーっと執拗に見てくるので、気が散るどころの騒ぎではない。これはアレか?回避不可イベントってやつか?
俺はずっとここに居られても迷惑なので、腹を括り、ガチガチに緊張(というか恐怖)しながらトレーニングルームの外に出ると、早速シグマが俺の持つ武器を指さしながら話を切り出して来た。
「その武器は?」
「はっ! “ガンブレード”という、中威力のバスターとブレードが融合した武器であります!」
「ほう。これが。直接見たのは初めてだな。これは扱いが難しいと聞いたが?」
「確かに扱いは難しいですが、使いこなせれば便利です。」
「そのようだ。恐らくあのような器用な使い方が出来るのは、今は君しかいないかもしれないがね。」
「恐縮です!」
単にカッコ良くて個人的に使い勝手がいいからお気に入りなのと、原作キャラと相違点を作りたかったからだなんてとても言えない。俺はそれ以上何も言えず、敬礼したまま真っすぐとシグマを見つめるしかなかった。
シグマはそんな俺を、何かを見定めるようにじっと見つめた。いや、怖い。威圧感が半端じゃないんですけど?目力が半端ないとかいうレベルじゃないんですけど?
「フフ、気に入った。名前は?」
「イ、イオです。」
「そうかイオ君。君、私の隊に来なさい。」
「はい!…………はい?」
え?今なんて?
「うむ。一週間後に迎えを寄こそう。楽しみに待っているよ。フフフ……。」
驚愕でポケッとしている俺をよそに意味深な笑みを浮かべながら去っていくシグマ。ずっと離れてみていた上司と教官達が「出口まで案内します!」等と言いながら、彼の後をぞろぞろと付いていった。
ぽつん、と残された俺と、訓練生達はただその背中を眺める事だけで、見えなくなってから次第に「嘘だろ」「こんなことってあるんだ」「うわ~……」と、周囲がざわつき始めてから我に返り、その場を後にした。
俺、異例の形でイレギュラーハンターになっちまうみたいです……。
この後どうなっちゃうの……。
用語を作者がかいつまんで説明するコーナー
【レプリロイド】
平たく言えばまあヒューマギアみたいなもん。
……何?よくわからない?貴様ニチアサ見てないのか!?
もっとかいつまんで説明すると、自分で物事を考える思考回路を持ったロボット。
ドラ●もん。ア●ム。
【メカニロイド】
レプリロイドの自立思考回路持ってない版みたいな奴。ただのロボットだが、プログラムに細工されたりして人を襲うようになったりする。これもイレギュラーとして処分される。いわゆる雑魚敵。
【イレギュラー】
ううっ……できません……私の仕事は……人々を笑わせる事だから……ッ!!
理由は様々だが、人類や他のレプリロイドに危害を加えるようになった上記二つの総称で、あまりに賢過ぎて自分の意思で反旗を翻すパターンやウィルスで思考回路がバグったパターン等理由は様々(理由は結局分からず仕舞い)で、要はロボットで犯罪者だったらイレギュラー。要はマギア。