TS転生者が隠しステージのボスになる話   作:政田正彦

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11【Io】

 

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 ===DATA(※記録の一部が破損しています!※)===

 

 

 

 シグマが来てから一週間が経過しようとしていた。

 

 やはり。かなり異例の事態だったのだろう。周囲からの目が痛い。……だがそんな生活ともこれでオサラバだ。……オサラバ出来るよね?もし正式に入隊してもこのレベルでいちいち注目されるんだとしたら、俺、ストレスでイレギュラー化しちゃうかもよ?大丈夫?

 

 なんて下らないことを考えながら周囲の視線にも負けずに仮想イレギュラーとガチバトルして思考を無にしていると、最後の日に教官から呼び出しがかかった。

 

 俺の、いや、俺と俺の同期達の教官として、壁キックのやり方とか武器の使い方、任務における流れやイレギュラーについて等を教えてくれた人物である。

 ……原作じゃ見たことない人だけど。

 

 

「……来たか。重ね重ね言うようだが、本当におめでとう。君は我々の誇りだよ。」

 

「そんな……大袈裟ですよ。私より強い人なんか幾らでもいますし。」

 

「謙虚なのは良い事だが……君が他のレプリロイドより優れたスペックと優しい性格の持ち主である事は事実だ。もう少し自分に自信を持ちなさい。」

 

 

 君はどうにも自分を過小評価するきらいがある、と教官は言う。

 いや……でもアルティメットアーマー着けたエックスと比べたら雲泥の差だろうし、ゼロ、いやゼロさんなんかはもっとすごい人だ。なんなら、同じように戦闘特化として作られたレプリロイドなんてのはザラに居る。

 

 特A級ハンターなんて呼ばれている人達は軒並みそうだ。

 

 そして、彼等の中からもイレギュラー化したり、シグマに脅されて人類に牙を剥かざるを得なくなった、なんていう人が出ることになる。

 

 そんな彼らと戦う、となった時……その時の事を考えると「今のままでいいのだろうか」という焦燥感に駆られる。

 

 しかも、一回倒して終わりならまだしも、肝心のラスボスのシグマって何度も何度も復活するし……。8回で終わるのかなあ……ああ、やだやだ……憂鬱になってきた。

 

 

「まぁ、強さを探求しようとするのは良い事だ。私からはこれ以上お前には何も言わない。……だからせめて、最後は教官らしい事をしよう。」

 

 上司殿はそう言うと、おもむろに黒いトランクケースを取り出して俺に差し出す。

 

「これは……?」

 

「君専用の武器だ。開けてみたまえ。」

 

「えっ!?」

 

 俺は驚いてそのトランクケースを開ける。そこには、訓練の際に使っていたものさらに洗練されたデザインの、実戦仕様となったマイフェイバリットウェポン、ガンブレードが入っていた。それも、しっかりと「Io」とエンブレムが付いている特注品、見ただけで性能も段違いだと分かる。

 

「い、いいんでしょうか?私なんかがこんな……。」

 

 まだ新入りにもなっていない俺なんかが専用の武器を持っていいのだろうか。あまりに優遇されすぎじゃないか?

 

「君にはこれがあった方がいいだろう。それに……実は前々から君の成績を、君の生みの親である研究者達に随時報告していたのだが、知っての通り君は優秀だから……随分と喜んでいた。私が君専用の武器を彼等に頼んだら、ものの二日でこれが出来上がってきたよ。」

 

「そう、ですか……」

 

 ……マジか。何か、むず痒い。そして照れくさい。勿論嬉しいのだが。恥ずかしい。もにょもにょする。別に褒めてほしくて頑張っていた訳ではないんだけども。

 

 

「……そんな顔も、出来るのだな。」

 

「えっ?」

 

「いや、なんでもない。これを使い、正式にイレギュラーハンターとなった後もこの調子で頑張ってくれたまえ。」

 

「はっ!」

 

 思えばこのビシッとした敬礼も最初はこの人に教えてもらったんだよな……。

 

「……教官」

 

「どうした?」

 

「短い間でしたが、今までありがとうございました。」

 

 俺は、転生してから今の今まで最もお世話になったと言えるその人に、心から敬意を送り、その部屋を後にした。背後から、小さく笑う声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 その次の日の朝、俺は訓練生を一足先に卒業し、イレギュラーハンターとして正式に入隊する事になり、教官達に見送られながらイレギュラーハンター本部へと向かった。

 

 これはきっと、俺にとって波乱と苦悩の両方の始まりなのだろう。

 

 漠然とそんな事を考える。

 

 

 ……最初は正直、興奮した。なんせ子供の頃やってた思い出の深いゲームの世界だし、自分もそのゲームの登場人物に成れるかもしれない。登場人物に会えるかもしれない。俺の選択がこの先の展開を変えるかもしれない。変えられるかもしれない、と。

 

 そんな事を考えていた当初の俺は、正直、調子に乗っていたんだと思う。

 

 ある時、訓練で腕を破損した同輩を見て青褪めた。というか、目が醒めた。あ、俺も戦えば死ぬ(こうなる)んだ、と。

 

 それからはあまり覚えてない。とにかく必死だったことだけ覚えている。脳裏に浮かぶこれから訪れるであろう災難は、もはや災害といって差し支えない。下手をしようがしまいが死ぬ。そんな事がこれから、そう遠くない未来で起こるのだ。

 

 訓練中はまだ良かったが……戦うのは正直、怖い。

 

 だがやらないと……だって、やらないと死ぬかもしれないんだ。

 だったら、戦って生き延びてやる。

 

 何もせずに死ぬのは嫌だ。

 

 俺は車の中で、ようやく少しだけ慣れ始めた近代的な大都市が流れていくのを眺めながら、受け取った俺専用のガンブレードが入った黒いトランクをそっと撫でた。

 

 

 

 

= = = =

 

 

 

 

 ……などと決意を新たにした、ほんの数時間後だ。

 

 けたたましいサイレンがそこら中で鳴り響く。無数の救助用メカニロイドが道路と空を駆け、住人やレプリロイド達が逃げ惑っているハイウェイに俺は居た。

 

 

 ……何故?

 

 

 そう複雑な話ではない。世界的に見ればいつもの事だ。ただ、ハイウェイの先で工事用メカニロイドが暴走しイレギュラー化するという事件が発生した。……そう連絡が入り、緊急避難警報が鳴らされ……現在に至る。ファ●ク。

 

 どのくらい深刻な状況かあまり分からない人の為に、これがどのくらい深刻かと説明すると、「工事などで使われる超巨大なクレーン車とかトラックとかが暴走して人を襲うようになった」……って位深刻だ。B級パニックホラーかよと言いたい。

 

 しかもそういう工事用のメカニロイドって大抵どんな環境でも動くように頑丈に作られている事が多くて厄介な事極まりない。

 

 俺は「こんな所に居られるか!俺は逃げるぜ!」とすぐに車から降りて暴走の中心地から逃げようとしたのだが、その瞬間背後のハイウェイが大爆発。たまたま可燃性の物質を積んだトラックでも走っていたのだろうか。

 

 そのせいで、ハイウェイの上で俺たちは綺麗に孤立状態になってしまった。下を見るととても降りられるような高さでもない……つまりは退路を断たれていた。そして、前方からはイレギュラーの大群。これでは、イレギュラーハンターの助けは絶望的だろう。

 

 俺と同様に退路を断たれて絶望的な状況にある人間やレプリロイド達が大勢取り残されているのが見える。絶望の声が聞こえる。助けを求める声が聞こえる。

 

「いやだあ、死にたくない……」

 

「これじゃあハンター達も助けにこれないじゃないか……!」

 

「怖いよお!ママー!」

 

 

 俺は……。

 

 

「えっ!?君、どこに行く……」

 

 俺は、ほんの少し迷って……迷っているうちにいつの間にか、ガンブレードを手に、暴走メカニロイド達が居る方向へと駆け出した。俺を制止する声が背後から聞こえたが、このままここに居たって、逃げ遅れた人達と死を待つしかできない。ならばもう、意を決して戦うしかない。

 

 前方に見えるイレギュラーの“波”を相手にするよりかは、その方が生き残れる確率は高いハズだ。

 

 あまりに唐突な実戦だが、実戦デビューが早くなっただけだと自分に言い聞かせて、ハイウェイを全速力で駆け抜けながら抜き放ったガンブレードが赤紫色の光を放つ。鋭い風切り音が鳴り響き、腕に振動が伝わる。

 

 その後、すぐに暴走したメカニロイドの内の一体を目で捕捉する。ゲームでも良く登場したホイール型(車のタイヤにスパイクがついたようなメカニロイド。狭い場所に物資を運搬するのに良く使われる。)だ。

 

 俺はソイツに向かって一直線にダッシュして……勢いを殺さないままガンブレードを“振り下しながら撃ち抜く”。

 

 それは何度も見た、ガンブレード特有の攻撃の痕跡だ。斬撃による溶断跡と、同時に放ったバスターによる大きな風穴。

 

 訓練と違うのは、それがホログラムや仮想イレギュラーではない、本物のイレギュラー化したメカニロイドだという事だ。

 

 俺は訓練通りの結果となったメカニロイドを尻目に、真っすぐと迷い無く走り抜けながら、イレギュラーを次々と破壊していく。

 

 そうだ。もっと早く、もっと倒して数を減らせば良い。このまま突き進めば、イレギュラーハンター達と合流出来るかもしれない。合流さえ出来れば後は彼等に頑張ってもらおう。置いていく形になってしまった彼等を保護してもらえれば良い。

 

 いや……そもそも彼等に関してだけ言えば、俺がこの道を守っていれば安全だ。幸い飛行艇とか巨大な蜂型のメカニロイドは出てきていないようだし。

 

 

 ふぅ、よし、よし、現状確認終了。

 

 あー、こわ……。

 

 いや落ち着け、大丈夫だ。

 

 出来る出来る。

 

 

 

 ギリッ、とガンブレードを握る手に力が入る。

 

 

「かかって来いよ、イレギュラー!俺が相手になってやる!!」

 

 

 ハイウェイで一人の女レプリロイドがイレギュラーに吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

= = = =

 

 

 

 

「今、何か……?女の子の、声……?」

 

 

 同時刻、同じハイウェイ上の別の場所で戦っていた青色のレプリロイドが、誰かの声を聞いた気がした。




【エックス】
原作主人公。青いレプリロイド。他のレプリロイドにはない「悩む」という機能を持っており、それが他のレプリロイドではたどり着けないであろう解答を導き出すことがあるとされているが、逆にそこを突かれて何度も窮地に立たされる事もある。優しい性格の持ち主なので、前述の特徴もあることから「あまちゃん」だの「だからお前は甘いんだ」とか「お前のそういう甘いところが嫌いなんだよ!」とか言われがち。

【ゼロ】
もっぱらエックスの相棒として登場する赤いレプリロイド。ファンからは真の主人公と言われたり、エックスの嫁と言われたり、破壊神と言われたりその人気は絶大であり、彼を主人公にした外伝ストーリー、ロックマンゼロが作られるほど(なんなら、作者はこっちのが好みだったりする)エックスとは対比であまり悩まないクールで冷静な、それでいてアツい性格。しかも強い。好き(告白)

【時系列】
現在はX1のちょっと前らへんで、シグマがまだ行動を起こしていない状態。

【ハイウェイ】
結構な割合でシリーズ通して出てくるステージ。The day of Σで上空から落ちてもバスターで勢い殺して生き残れるならここから落ちても平気じゃね?という突っ込みをしてはいけない。
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