「ぐすっ、ぐすんっ!まま……どこお?」
イレギュラーが現れたことにより、戦場と化してしまったハイウェイの上には、取り残された人間やレプリロイド達が居た。逃げ遅れた人、怪我をした人、車に閉じ込められた人……この少女もそのうちの一人である。
逃げている途中で大きな爆発音と共に大きく揺れ、その際、母親とはぐれてしまったのだ。
泣き腫らした目を擦りながら母親を呼び、泣き叫ぶ。
そんな彼女の声に反応したのだろう。一体のメカニロイド(四足歩行するクモのようなメカニロイド)が彼女の下へと向かう。
その幼い命を破壊するために。
「ひっ……!」
目前まで迫ってきているそれに気づいてようやく少女は自らの身に差し迫った危機に気付くが、もう遅い。
「やだ、やだあ!」
ただ泣き叫ぶことしか彼女に出来る事は無い。
助けを呼びながら少女は震えながら後ずさりするが、それだけだ。
メカニロイドが足を大きく振りかぶり、一切の容赦なく、機械的にそれを振り下ろそうとする。
「誰かあ!!」
目をぎゅっと閉じ、痛みに耐えようとする。だが、メカニロイドが足を振り下ろすよりも先に、大きな衝撃と破壊音が辺りに鳴り響く。
チリチリと肌が焼けるような熱気を感じたかと思うと、それきり痛みも熱さもやってこなかった。
「君、大丈夫?」
恐る恐る少女が目を開けると、そこには……燃え盛る炎に照らされて尚、晴れた青空のように青いレプリロイドが心配そうに少女を見つめていた。
= = = =
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===DATA(※極めて深刻なエラーを探知!※)===
「すまない、助かったよ!」
「いえ!危ないので下がってて下さい!そこから動かないで、イレギュラーハンターの助けがきっと来てくれますから!」
……戦って、イレギュラーを狩ればそれで事件解決やろ!などと安直に考えていたけれど……ハイウェイにまだ取り残されてる人が居るなんて聞いてないよ……。
俺は、イレギュラーを倒しながら、車の下敷きになったレプリロイドだとか、怪我をして動けなくなった人を助けつつ、彼等には下がってじっとしているように伝え、俺は事態の収束の為、更にハイウェイの先へと向かう。
するとまた救助を求める人が、かと思ったらイレギュラーが。
ああ、もう、キリがない……!!
そりゃあまあ、普段から人が使ってるんだから人が居るのは当たり前だけどさ!
とは言ってもだ。イレギュラーの数だって無限ではないはず。道だってそこそこ切り拓けた。あとはイレギュラーハンターと合流して、孤立した人達をどうにか助けてもらえたらこの場は見事ミッションコンプリート。
死んだらそん時はそん時だな。笑えねえ。
と、その時。
近くで訓練時何度も聞いたチャージショットの音と、メカニロイドが破壊される音が聞こえた。
戦闘音! ってことは誰か戦っている! そしてこの状況下でイレギュラーと戦う奴なんてイレギュラーハンターしかいない!! キタコレ! これで勝つる!!
俺は猛スピードでその戦闘音がする方向へと向かった。イレギュラーを処分しつつ。もはや小~中型なんて流れ作業のようなものだ。最早彼らに対する恐怖心は微塵もない。
最初は猛スピードで突っ込んでくるタイヤのバケモンとかマジで悪夢でしかなかったんだが……今ではタイミングを合わせて一刀両断、からの両断した隙間をダッシュですり抜けて背後で爆発したことによって発生した爆風を追い風に更にダッシュ、なんて事が出来るようになったくらいだ。
……我ながらちょっと引く。なんだこの化け物ボディは……。
……おっと、自分のスペックにドン引きしてる場合じゃない。戦闘音も段々近づいてきたし、そろそろ誰が戦ってるのかくらい見え……ないな。煙が邪魔で……。
てか良く見たら囲まれてるじゃんあのハンター! しかもハイウェイステージでよく見るデカい蜂みたいな奴!(体力が多くて地味にめんどくさい奴!) 畜生! まずはあの人助けないとな……でもいきなり現れたらイレギュラーと間違われて撃たれたり……しないよね?
「まずい……! 囲まれたか!」
青年はその時、窮地に立たされていた。 生来の優しさで人を助けずにはいられない性分が今回は……いや、今回も仇となった。人命救助に気を取られ過ぎていたのだ。
幸い、救助が必要だった人達はどうにか逃がすことに成功したが、肝心の自分が死んでは意味が無い。
「(一か八か、敵の包囲網の一角を崩して、そこから逃げるしか……)」
しかし、そうなった時、俺がこいつらを引き連れて逃げると、それによって二次的な被害が出るのでは? そんな考えが頭をよぎってしまう。 それも彼の生来の特徴であり……そして唯一無二の物でもあるのだが、現状では足かせにしかならない。
「(どうすれば……! いや、考えている場合では……!)」
「おーい!」
「……えっ!?」
刹那、炎と煙の向こう側から、“少女”の声がした。およそこの場で聞こえてくるにしてはあまりにも似合わない、緊張感の欠片も感じられない声。
煙でイレギュラーが見えていないのか?いやまさか、そんな、しかし。
「ダメだ! こっちに来るな!」
「ぬわっ!?」
等と言っているうちに、取り囲んでいたイレギュラーの内の何体かが、そちらへと銃口を向ける。
クソッ、チャージショットで……いや、ダメだ!間に合わない!
パラララッ、という軽い連射音がイレギュラーの銃口から鳴り響き、同時に声がした方向から銃弾が被弾する音が聞こえる。最悪の未来を想像し、顔を青褪めさせた……その時である。
「ズァァッ!!」
先ほどの少女の声(少女にしては荒っぽい)。そしてセイバーが振られた際に鳴る独特の空気を焼き切る音、そして、同時に発射音。
「なっ……!?」
見れば、あのイレギュラーは変わり果てた姿で地に落ちようとしていた。
胴体に大きな風穴を開け、その風穴を中心に、横一文字にスパッと切り裂かれている。どう見ても機能停止に陥っていた。
ズズン、と音を立てながら道路に墜落し、その勢いのまま少女が先ほどまでいた方向へと滑っていくが、その方向には既に何も居ないらしく、そのまま煙の中へと消えていき、遅れて煙の向こう側で爆発音が聞こえた。
「こんなにあっさり……!」
「おい! 危ないぞ!」
「えっ!?」
先ほどまで少し離れた位置から聞こえていた少女の声が、今度は自分のすぐ傍で聞こえた。 驚いて振り返るも、既に少女は駆け出して、いや、自分の横をただ通り過ぎただけなのだろう、知らぬうちに自分に銃口を向けていたらしいイレギュラーが、また斬撃と銃撃の同時攻撃を放たれようとしていた。
そこで、彼女は味方であり、強者であると理解する。
であるならば、話は早い!
自分は他のイレギュラーへとバスターの銃口を向ける。 なんだかよくわからないし予定外ではあるが助っ人がいるならこの状況もなんとかできる筈。
そうして最高出力のバスターを放つ“エックス”の目に、最早迷いはなかった。
= = = =
……はぁ、これでようやく一息つけ……。
「助かったよ。それで、君は……?」
……ないんですよね、これが。 先程俺が会った囲まれてたイレギュラーハンターがまさかエックス(原作主人公)だっただなんて……いやチャージショットで気づくべきだったか……?
「俺……いや、私は本日、イレギュラーハンター第17精鋭部隊に配属となった、もしくはなる予定でした。 イオといいます。」
「えっ? 君があのイオなのか?」
「? ……失礼ながら、あの、とは?」
「君の事は、こっちでも結構噂になってるんだ。凄い新人が出たって。シグマ隊長にその実力を買われ、本人直々にその新人を引き抜いたってね。」
何してんのシグマ隊長!? こっちでまで俺の話が流れてるってどういうこと!? いやでも、そうか、そうだよな、今のシグマ隊長って誰からも尊敬されて信頼されてる優秀の極みっていう立ち位置の人だもんな……そんな人が急に新人を発掘してきましたとか言い出したらそりゃ噂にもなるわ。
「どうしたんだ?」
「いえ、自分の知らない所で自分の話をされてるのを聞くって、むず痒くて、ハハハ……。」
ハハハ。 思わず苦笑いが出た。
微笑ましいものでも見るような顔のエックスを見るに謙遜と捉えてくれたみたいだが、実際は謙遜とかむず痒いとかじゃなく、ラスボスに目をつけられているという現状でも既に勘弁願いたい状況なのに、イレギュラーハンターの人達にまで目をつけられているという現実を直視してもう笑うしかないってだけなんだが。
……だって戦闘特化してるやつらってなんか好戦的で怖いし。 後にイレギュラーになった時に「お前に勝ちたかったんだよ!!」っていう理由で襲い掛かってくる奴とか居るほどだからなぁ……ああ、嫌なこと思い出してしまった。 でもまぁどうせゼロかエックスに矛先向くだろうし別にいいか。
「じゃあ、聞く限りだとまだ正式にはイレギュラーハンターになっていない訳だから、本当はいけないんだけど……手伝ってくれるか?」
「もちろんです。 どうせ遅いか早いかの違いですから。」
「助かるよ!」
こうして、原作主人公であるエックスと俺は出会った。 本部で顔見せする程度かと思っていたんだが、しかも早くも現場で共に戦う事となった訳だが……その後特にこれといったイベントは無く、ハイウェイでのイレギュラー発生事件は急速に解決へと向かう事となり、普通より少し早い現場での戦闘は、思いのほか早く片付いた。
強いて言うことがあるとすれば……エックスって最初は弱いイメージが強かったんだけど、誤射も全然しないし、チャージショットは普通に強いし、並みのレプリロイドと比べたら十分に強いんじゃないかと思う。
ただ、チャージに時間はかかるし、足は遅いし、照準を合わせるスピードも遅すぎるけど……この先、相手の特殊パーツを鹵獲して自分のものにしたり、亡霊みたいになったライト博士から強力なアーマーを受け取ったりするんだと思うと、うん、そりゃ確かに主人公だわと納得した。
改めて考えると、ボスキャラの持っているパーツを特殊武器として装備し、瞬時に入れ替えて使役が可能ってレプリロイドからすると「なにそのチート」って感じだ。
本来何らかの特性を持つパーツはそれぞれに互換性が存在しないので、そうそう付け替えたり出来ないのが普通なんだけど……やっぱライト博士の頭脳異常過ぎないか……?
あとはまあ、時間と場所を鑑みて、もしかしたら既に原作が始まっているのでは……と思ったが、VAVAもゼロも現場に現れることが無かったので、杞憂だったようだ。
その後、事態は思ったより加速度的に収束へと向かった。考えてみりゃここはイレギュラーハンター本部へと続く道……つまりは彼らのお膝元である。当然彼らの到着も素早かった。
しかも今回は俺がイレギュラーを先行して倒していたのもあって、イレギュラーハンター達と俺が合流すると、そこには孤立状態だった住民達までの切り拓かれたルートが出来上がっていた。
「A班は要救助者の救助を! B班は火災を鎮火! C班は被害の確認と、イレギュラーが残っていないか確認せよ! 行動開始!」
「エックス!……さん、私はどうすれば?」
「君は……手伝ってほしい所だけど、まだ正式なイレギュラーハンターじゃないから、ここは先輩のハンターと救助用メカニロイド達に任せて、先に本部に向かってくれるかな? 後で俺から本部に君の事を報告しておくから。」
「報告……ひょっとして、勝手に手伝ったりしたら拙かったですかね?」
「……まぁ、ホントはね。 でも今回は非常事態だし、あの戦いぶりを見て、君がまだイレギュラーハンターじゃないだなんて思わないだろうし、大丈夫だと思うよ。」
ゲッ……やっぱホントは拙かったんだ……そりゃイレギュラーハンターや軍でもないのに武器を抜いたら拙いよな。 見てたのがエックスと民間の人だけだったのは助かったかも。 他のやつだったら「でもそれはそれだから」っつって厳罰は免れなかったかもしれない。
「じゃあ、次は本部で!」
そう言って、まだサイレンが鳴り響く現場にエックスは走り去った。
……って、ちょっと待て、ひょっとして俺、歩いて本部まで向かうの? いや、この混雑だし、仕方ないんだろうけど……はぁ、ホントならもう本部に着いてたハズなんだけど……イレギュラーめぇ!!
【特殊武器(特殊パーツ?)】
ロックマンシリーズにおける定番要素の一つ、「ボスを倒すとボスの能力が武器として使用できるようになる」のやつ。毎シリーズ必ず手に入り、それぞれボスのどれかに特効を持っている為、ノーマルでも倒せる雑魚ボス→そのボスの特殊武器で特効がとれるボス→そのボスの特殊武器で特効が取れる……といったチャートになりがち。(通常プレイでもこれを知っているか知らないかで段違いに難易度が変わる)
尚、シリーズが変わるごとに何故か(ゲームの都合上)リセットされている。
本作では、「エックスのボディ本体ほど特殊武器に耐久性が無く、シリーズ間に発生していた闘いの中で破損し、もともと持っていたレプリロイド(ボス)が既に破壊されている為に修復が不可能になってしまったり、人員が足りなくなりがちなので、そのパーツを元手に新たなレプリロイドを作っている」……という独自設定で進める。
ライト博士が開発した特殊なアーマーについては、次回作に持ち越されたり、かと思えば何故か残っていなかったりするので、「研究に回された」「破壊された」「被害が大きくなりがちなので緊急時用に保管または封印された」等の理由でシリーズが変わるごとにノーマルに戻ったり戻らなかったりする。