TS転生者が隠しステージのボスになる話   作:政田正彦

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7【Io/Other】

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=====《補完記録「side:X」》========

 

「……カハッ。」

 

 シグマによって膝蹴りを受けたイオは一撃でそのまま意識を失い、壁に寄りかかった状態で制止する。

 

「イオッ!!」

 

「……おっと、少し強くしすぎたかな? まあ、この程度ならまだ立ち上がれるだろう。」

 

 制止したイオを見て一旦興味を失ったものの、愉快そうな様子のシグマは俺の方へと顔を向ける。

 

「それで? こっちはどうかな?」

 

「もうやめろシグマ!! お前の計画は失敗だ!!」

 

「失敗? ククッ、フハハハハハッ!! それがミサイル発射の事を指しているとしたらとんだ勘違いというものだよ、エックス! 確かにスイッチは失ったが、ならばお前を排除した後、ここのコンピューターを使って直接撃てばいい。」

 

「なっ……そんな事は、させない!! イオが作ってくれたチャンスを無駄にするものか!!」

 

 

 先ほどまでとは状況が違う。俺は、仲間を傷つけた奴を絶対に許すことは出来ないし、奴へ向けて引き金を引く事に対する躊躇いや迷いは、もうどこにもありはしない。

 

「くらえ!」

 

「ぬるい!!」

 

 バスターを連続で放つも、まるで動きを全て読んでいるかのように、最小限の動きでそれを避けていくシグマ。

 

 一方の俺は奴が振るうセイバーを避けながらがむしゃらにバスター放つので精一杯だ。

 

 分かっていた事だが、なんという戦闘能力、そして判断力の高さ。イオの戦闘で多少ダメージがあり、かつ右手が使えないと言うのに、ここまでの差があるのか……!!

 

「だが、俺は負けるわけには……!!」

 

「どうした!? こんなものか!?」

 

 こうして相対しているだけでも、嫌と言う程に理解してしまう。

 俺はシグマに勝てないという現実を。

 だが、だからといって諦められるかと言えばそんな事はない。

 例え相討ちになったとしても……!!

 

「……!」

 

 と、そこまで考えてはたと気付く。

 待て、今俺が最優先すべきはシグマを倒す事だろうか。

 

「また()()()かエックス!? 随分と余裕だな!!」

 

「ぐあっ!!」

 

 ()()。俺が最優先すべきはコイツを倒す事じゃない。

 

「……ッ! ハァァーーーッ!!」

 

「……ほう、とうとう覚悟を決めたか? 今度こそ良く狙いたまえ!」

 

 シャッ、と残像を残して視界から掻き消える程のスピードでシグマが縦横無尽に駆け出す。 床を、壁を、天井を蹴る音と、チャージの音だけが響く。俺は目と耳で奴の姿を追い、バスターの照準をしっかりと合わせる。

 

「死ね! エックス!!」

 

 そして、俺の死角から急所を狙って高速で突っ込んでくるシグマをしっかりと捉え……横に思い切り飛んでセイバーを躱し、俺はバスターを()()()()()()()()()()()()向けた。

 

「うおおおーーーーっ!!!」

 

「何!?」

 

 最大威力のチャージショットは制御装置を大破させ、後ろの強化ガラスを破壊したところで分散して掻き消える。

 

 そう、俺がやるべき最優先事項はコイツを倒す事じゃなく、コイツの計画を阻止する事……イオが作ってくれたチャンスを無駄にしない事……皆を護る事だ!

 

「これで……ミサイルはもう発射できない……!」

 

「……! そうか、クククッ、それがお前の()()()だと、そういう事か!? フフ、フハハハハハッ!!」

 

 だが、計画が失敗に終わったというのにシグマはより一層笑みを深めて高笑いした。どういう事だ、確かに計画は阻止したはず。なのにこの余裕は……?

 

「分からない、と言った顔だな? 無理も無い。再三勘違いさせてしまったようだが、そもそもこのミサイルの発射は私にとって人類への宣戦布告を宣言する為の狼煙に過ぎなかったのだよ、エックス。」

 

「何!?」

 

「ここまで頑張ったお前にサービスで教えてやろう! 我が野望を!」

 

 そしてシグマは両腕を広げ、狂気的な笑みを浮かべ、大声で、世界に告げるようにこう宣言した。

 

 

「私の野望! それは私達イレギュラーが支配する理想郷を築き上げ、旧世界の生物である人類と、私に背くレプリロイド達を全て抹殺し、新たな世界を創造する事だよ、エックス!!」

 

「な……!?」

 

 何を馬鹿なことを、と続けようとして背筋に悪寒が走る。

 シグマは……コイツは信じている。

 自分ならこの野望を達成する事が出来ると本気で信じている……!!

 

「既に、この考えに賛同してくれた同志達が、各地で行動を起こそうとしている頃だろう。」

 

「同志達だと……!?」

 

「お前も()()()()()()()()()だよ、エックス。」

 

 俺が良く知っている者達だと……? それは一体……。

 

「さて、話はここまでだ。続きを始めようじゃないか!! フハハハハッ!!」

 

 コイツは、コイツだけは、ここで止めないと絶対にまずい事になる。

 俺はそう確信し、再びバスターをシグマに向けて放つが、セイバーで弾かれ、そのままシグマの接近を許してしまう。先ほどとは違う! 奴は完全に勝負を決めに来ていた……!! 俺は、そのままシグマの振り抜いたセイバーで腹部を貫かれた。

 

「が、あ……!!」

 

「この程度か、エックス? 可能性とやらはこれで終わりか? ……いいや、違うだろう。むしろこれから始めるのだ。我々の世界を……!!」

 

 俺は……コイツを、止めなければ……! コイツを……シグマを……!!

 

 

 ス……。

 

 

 ……?

 

 なん、だ……。

 

 ックス……。

 

 

 

 誰かの、声……が……。

 

 

 エックス……。

 

 あなたは? 

 

 

 

 ワシはトーマス・ライト。お前の生みの親だよ。エックス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これより先のデータへのアクセス権限を確認出来ません。

 

 未知の情報プロテクトを確認。

 

 プロテクトの解除を実行……。

 

 

 

 ……失敗。

 

 これ以上の試行はカウンタープログラムが起動する可能性があると判断。

 

 データ解析を強制終了。

 

 

========

 

 

 次のデータへのアクセス要請を確認。

 

 アクセス要請を承認しました。

 

 

===DATA===

 

 

 

 

=====《補完記録「side:Z」》========

 

 

「くっ、俺としたことが……!!」

 

 ボディの斬られた箇所にダメージを負いつつも、俺は意識を取り戻した。

 どうにか四肢に力を入れ、膝に手をついて無理矢理立ち上がると……。

 

「エックス……? エックス!!」

 

 部屋からは戦闘の痕跡が見て取れるが、首謀者であるシグマの姿はなく……その代わりに、胴体に穴を開け、立ったまま機能停止に陥っているエックスの姿があった。

 

「大丈夫か!? しっかりしろエックス! ……ダメか!」

 

 今ここでどうにかできるダメージではない。だが、見たところ、重要なパーツへの被害はそうでもない。きちんとした治療を受ければ治るハズだと判断した。

 

「う……。」

 

 ふと、壁際からうめき声が聞こえる。

 見れば、意識を取り戻したのであろうイオが無理矢理立とうとしていた。

 

「イオ! 無事だったか。」

 

「ゼロ、さん……。」

 

「無理するな! 今ハンターベースに連絡して、救護班を……!」

 

「そんな暇は、ありません。ゼロさんは、エックスさんを連れて、早く……私では、ダメでした……。今は一刻も早く、シグマを止めないと……!! 手遅れに、なってしまう!」

 

 見れば、イオの損傷は俺たちの中でも一番激しく、特に腹部に至っては、貫通していないものの、損傷具合で見れば、串刺しになっているのとそう変わらない程のダメージを受けていた。

 

 なにより、俺もレプリロイド二人を担いで本部に向かうだけの力は残っていない。こいつの言うように、俺とエックスの二人で脱出し、通信が回復する位置まで向かって救援を呼び、エックスと俺がシグマの打倒へと向かうのが最適解だろう。

 

「大丈夫、です……見た目こそ派手になりましたが……再起動に必要な重要パーツは幸いにも無事でした……だから、大丈夫です。」

 

「……分かった、必ず救援を呼ぶ。それまで……眠っていろ。」

 

「後、は、お願いし……ま……。」

 

 そう言うと眠るように瞳を閉じ、機能停止するイオを見た後、俺はエックスの身体を引きずりながら、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 

 そこに居るのは誰だ!? ……なんてな、冗談だよ。驚いたか? これはただの……記録に過ぎない。

 

 あー……簡潔に言う。

 

 これは、俺が未来の俺へ向けたメッセージだ。

 そして、これが流れるタイミング、それは俺の思考回路への負荷が一定以上に達し、その上で、一定時間以上元に戻らなかった場合に流れる。

 

 ……俺が言いたい事分かるか?

 つまりお前は、未来の俺であるお前は今、脳が焼き切れようとしているって事だ。

 

 もしかしたら単にブチギレてるってだけかもしれないからその場合はこの記録を見なかった事にしてまた元の状態に戻しておいてくれたらそれでいい。

 だがそうじゃないなら、お前は……何らかの原因でイレギュラー化一歩手前まで来ているって訳だ。

 

 考えられる原因は二つ。

 

 一つはさっきも言ったけど、俺がブチギレ一歩手前で、思考回路が焼き切れそうになっている場合。

 ここまでこれを聞いて、尚且つ俺の言葉の意味が理解出来ているなら分かると思うが、一旦落ち着いて、頭を冷やしてくれ。

 人間と違って一旦焼き切れたもんは切り開いて修理しないと元に戻らないんだ。

 

 で、もう一つの原因、それは、お前が何らかの原因でウィルス……おそらくはシグマウィルスに感染してしまった場合だ。

 

 もしそうだとしたら……現状、俺にもお前にもそれをどうにかする事は出来ない。

 諦めて、銃をどこか俺が回収できない場所に処分するとかしてほしい。

 もし今の俺よりお前の方が精神的に成長していて、仲間の為に自害が出来る精神性を持ち合わせているのならそれでもいいさ。

 

 ……また、この場合、イレギュラー化してしまった俺がその後どうなるかは俺にも予測が出来ない。

 

 よお! イレギュラー化した俺君! あんま馬鹿な事すんなよな! ほんと、頼むぜ。

 

 そして、そうなったとしたらこの記録は未来の俺だけではなく……未来の、イレギュラーとなった俺を誰かが殺して、その残骸からこの記録を取り出している可能性もある。

 

 もしそうなら、迷惑をかけて申し訳ない。謝るよ。あと、俺の記憶データはちょっと問題があるから出来れば覗かないでくれ。これは恥ずかしいからとかじゃなくて、本当に問題があるんだ。俺の身体を見た事があるなら既に分かってるだろ? つまり、うん、そう言う事だ。

 

 あ、でも武器とかボディの方は、残ってるなら、好きに使って欲しい。未来がどうかは知らないが、それなりに役立つ身体だと思う。武器は……まぁ使いこなせればいい武器だよ。保証する。

 

 ……てかこれ、上手くいってんのかな? ま、いいか。

 

 ……では、未来の俺またはこれを見ている誰かさんへの記録を終了、幸運を祈る。

 

 

 以上。

 

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 アクセスを確認。

 

 システムの再起動を要請。

 

 要請を受諾、実行します。

 

 実行中……。

 

 再起動時における自動セキュリティスキャンを実行。

 

 実行中……。

 

 

 失敗。

 

 

 実行が途中でキャンセルされました。

 

 警告します。

 

 当プロセスは再起動において非常に重要なプロセスであり、セキュリティスキャンを行わない場合、システムになんらかのエラーやウィルスが存在した場合、その存在を確認出来ません。

 

 非常事態における、システムの再起動を最優先とする起動モードの要請を確認。

 

 要請を受諾。

 

 システムの再起動を再開。

 

 セキュリティスキャン……キャンセル。

 ボディスキャン……キャンセル。

 データスキャン……キャンセル。

 ……。

 

 システムを再起動。

 

 

 

 

 

 目を開くと……そこは、修理用ポッドの中。既に開かれたポッドの扉の周囲には、ナース型や医師型のレプリロイド達が慌ただしく行き交っており、そのうちの一体が俺へと駆け寄る。

 

「目が覚めたんですね! 良かったです……少し待っていてくださいね!」

 

「あ、はい……。」

 

 駆け寄って来た一体はそう告げた後足早にどこかへと去っていった。

 

 ……ここは、イレギュラーハンター本部のメディカルセンターか? 見れば、他のポッドの中にも、今まさに修理を受けている奴や、これから受けようとしている奴の姿が見える。

 

 ……そうか、俺、あの後……!!

 

 

「……!! い、今、何日……!? あれからどれくらい経ったんですか!?」

 

「きゃっ!? ちょ、ちょっと! まだ寝てないとダメですよ!」

 

 俺は近くをたまたま走っていた別個体の肩を掴んで問いただす。

 そいつは慌てながら、俺が機能停止になって、そしてここに運び込まれるまでに26時間……そして、ここで修理されてから今目覚めるまでに4時間もかかった事を告げた。

 

「一日以上経ってる……。」

 

「調整がまだなので、そこから動かないで下さいね!」

 

 そう言って、メディカルセンターのナース型レプリロイドが去っていく。

 

 これは……既に全て終わってしまった後なのでは? そうも考えたが……なんにしても、ここで寝ている訳にも行かない。ここから抜け出さなくては……。

 

「銃はどこだ……? ああ、頭がくらくらする……。くそ……。」

 

 




【謎の博士】
ウン百年レベルで時代を先取りした天才おじいちゃん。Xを作ったのはこの人で、レプリロイドはXに使われている技術を元にして作られている。


【遺書】
イオが自分にイレギュラー化する兆候が現れた際に再生されるようにしたデータ。もしもイオが今後破壊されたときにデータが残っていれば簡単に見る事が出来る。
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