サイコ・ダイバーズ 〜彼らは人類救済のため前世の歴史を改変する〜   作:多比良栄一

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第25話 そろそろ正体、現してくれるかなぁ

 利三の振り降ろした一撃は、とてつもなく重たいものだった。セイはその一の太刀を正面から受けきることこそできたが、そのまま地面に叩き伏せられていた。

「うはははは。小童(こわっぱ)。よく受けた。だが、次はない」

 セイは次の攻撃にそなえて、刀を身の前で構えた。だが、先ほどの打擲ですでに限界をむかえていた刀身は、ひび割れた漆喰のようにばらけ落ちた。

 セイは柄だけになった刀をいまいましげに投げ捨てると、すぐに空中から新しい刀を現出させて、再度身構えた。

「刀は何本でも出せるようだが、そんな(なまく)ら刀、何万本あっても無駄だわ」

 セイは利三にむかってニコリと笑って言った

「なんでだろ。自分が強いと勘違いしているヤツって、必ず負ける前に同じようなことばを吐くんだよね」

「なにぃ」

 利三が気色ばんだのを見てセイがさらに言う。

「そう、それそれ。煽ると今度はその反応だ。まさか自分が死ぬフラグ……知ってる?」

「フラグだと。ばかにするな」

 セイは自分の額に手をあてて、苦笑いした。

「ごめん。二十一世紀の外来語を使った……。でもあんた、この意味わかってるよね……」

「じゃあ、そろそろ正体、現してくれるかなぁ」

「いいだろう」

 そう言うと、利三の白目と黒目がくるくると、めまぐるしく入れ替わりはじめた。人間がやれる芸当からはすでにおおきく逸脱している動き。しばらくすると、山羊の目のような四角い瞳孔が現われた。

「我が名は……ザレオス」

 その名を叫ぶと、体がむくむくと膨れあがり、どんどん肥大化しはじめた。鎧や防具はその変化に耐えきれず、弾け飛んでいく。

 その体は人間の大きさの範疇を越え、さらにおおきくなっていく。

 

「ついに『トラウマ』が正体をあらわしたね」

「なにをおっしゃるの、セイ。あれはたんまりお金が稼げるお宝。『トレジャー』と呼ぶべきですわ」

「セイ、エヴァ、おまえらは馬鹿か……」

 大剣をずるずるとひきずりながら、マリアがセイの方に歩いてきながら叫んだ。

「あいつ、ザレオスと名乗ったよな。つまり、あいつは正真正銘の『悪魔(デーモン)』だ」

「へー、そう言えば、なんか言ってたね」

 

 冷静な表情で答えるセイに、ピストル・バイクのエヴァが上空から声をかけた。

「セイさん。これちょっとまずいんじゃありません」

「そうかい?」

「すくなくとも、あのドナルド・カードさんのときと同じくらいは巨大化してますわよ」

「バカが!。あれと一緒にするな。このザレオスは65番目の悪魔だぞ。格が違う」

 マリアはそう指摘すると、エヴァのピストル・バイクの後部座席に飛び乗った。エヴァは無言のまま、すぐにバイクのハンドルを反転させ、信長たちがいる本殿のほうへむかう。

マリアが後方をふりむくと、ザレオスはすでにビルの三階ほど大きさにまで巨大化し、このあたりの建物のすべてを睥睨するまでになっていた。

「残念だがエヴァ、あれはオレたちの手には負えない」

 それを聞いたエヴァはスロットルを引き絞りながら、かがりの魂が宿る若い女性にむかって大声をあげた。

「かがりさん、あなたの出番です!」

 かがりが頭のうえに現れた。

「エヴァ。なにをするの?」

「セイさんに力を貸してください」

「セイに力を?」

 

 そのとき、セイの叫ぶ声が聞こえた。

「かがり、元の時代に戻りたいって願え!」

 セイは巨大化しているザレオスに背をむけ、こちらにむかってきていた。

「21世紀に戻りたいって願ってくれ」

「でも、信長様が……」

「かがり、その思いは君のものじゃない!」

「きみは21世紀に生きている、ただの女子高生だ。ヒップホップ・ダンスに夢中で、英語がちょっと苦手で、アイドルに興味があって、駅前にできたSNS映えするスイーツ店が気になってる、ふつうの女子高校生なんだ……」

「えぇ。でも……」

「かがり、信長の天下統一なんかよりも、そっちがずっと大事だろ』

 セイがにこりと笑ってみせた。

「さぁ、帰ろう」

 かがりが素直にうなずいた。

「うん」 

 

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