サイコ・ダイバーズ 〜彼らは人類救済のため前世の歴史を改変する〜 作:多比良栄一
マリアは廊下から状況を見守っている信長たちの上空にくると、ピストル・バイクの後部座席から飛び降りた。
「マリア殿。よくぞご無事で」
森力丸が心配そうな顔でマリアの元に駆け寄ろうとしたが、マリアはまっすぐ信長の元にむかっていく。
「おい、信長。ここを離れろ」
「マ、マリアどの、どうされた?」
「セイは本気を出すつもりだ。逃げねえと危ねぇ」
「なんと。それならば、わしはセイどのの本気を見てみたいぞ」
「このうつけ。おめぇが巻き添えくっては元も子もねぇだろうがぁ」
「そうはいかぬ」
マリアはちっと舌打ちをすると、脇でどうしていいか判断しかねている蘭丸たちに声をかけた。
「おい、森兄弟。弥助。この馬鹿を連れ出すのに協力しろ!」
「許さん。わしをここから引き離そうとしたものは、切腹を申し付けるぞ」
信長が先制して家臣たちを
「くそ!。この馬鹿野郎が」
頭にきたマリアは信長の
「マリアどの、おやめください」
あわてて蘭丸以下家臣たちが、信長の
セイがおおきく息を吸って、かがりに力強く叫んだ。
「かがり、もう一度言うよ……」
「元の時代にもどりたいって願え!」
かがりが指をからだの前で組んで、目をつぶって強い思いを叫んだ。
「元の時代に……、聖ちゃんたちがいる時代にもどりたい!」
その瞬間、太陽が落ちてきたかと思うほどの目もくらむような光が、セイの手の中から立ち昇った。その光をセイがぐっと掴む。
「こい。『
すぐにその光が刀の柄となって具現化する。
そしてその柄から刀身が伸びはじめる。のたうち回る光の渦が、刀身となって肉づいていく。長く、おおきく……。
セイは刀をふりあげて肩越しに振りかぶった。圧倒的な光量に、信長も、マリアも、家臣たちもみな目を開けていられず、思わず動きがとまる。
「マリア殿。あれはなんじゃ」と信長が叫んだ。
「あれは『心残り』を晴らしたいという、あの女の思いだ。セイは、あいつには、その『思い』を手にすることで、無敵になれる能力がある。まったくチートだよ」
「ちぃと?」
「いや…;、だが、これは、まずいな」
マリアが呟くと、マリアの下に組み敷かれていた信長もさすがに、これは一大事とばかりにからだを起こして、マリアに尋ねた。
「マリア殿、どちらに逃げればよい」
マリアは再度舌打ちしてから、家臣にも聞こえる声で言った。
「みな、とりあえずこの本殿から出ろ。この寺は砕け散る」
目の前で巨大化を続けていたザレオスのからだは、『五重の塔』ほどの高さほどになったところで、とまった。
目の前で手を背中にむけたままのセイを睨みつける。山羊のような四角い光彩が、生き物すべての精気を奪いとるような力をはらんでいく。飛んでいる鳥すら、その場で命をうしなって落ちてくると思われるほどの、圧倒的な凶気。
「どうした。あまりの恐怖に動けなくなったか」
ザレオスが邪悪な笑みをうかべて、セイをあざ笑った。
「いいや。あんたの最大級のまぬけ面をみたくて待ってた」
「貴様ぁ、この後に及んで愚弄するとは……」
「『大男、総身に知恵が回りかね』ってね。でかくなると、まぬけになるンだよねぇ」
「なにぃ。おまえなど一撃で消し飛ばしてやる」
ザレオスが前に足を踏みだし、セイに殴りかかろうとする。
「トラウマ、おまえを
セイがうしろに振りかぶっていた刀の柄を、正面のザレオスにむけて振りあげた。
まず最初にかなたで雷鳴のような音がした。そして地震のような地響き。ばりばりという破壊音が近づいてくる。本能寺の本殿の天井が真っ二つに割けたかと思うと、奥の間から光の刃が姿をあらわした。
セイが手を真上にもちあげると、手のひらから伸びる光の剣が天空をも貫こうかという高さまで達していることがわかった。それはまるで地上から天にむかって駆け登った
ザレオスがその場に固まったかのように立ち止まった。上を見あげる。その場のすべてを圧倒するような光の凶器に声をふるわせた。
「き、貴様、なにを……」
セイはザレオスの言葉を無視して、そのまま剣を振り降ろした。上空にとてつもなく大きな光の円弧が描かれると、ザレオスめがけて光の刃が振り降ろされてくる。
ザレオスは右に向き直ると、巨躯を揺らしながら走り出した。
「セイさん、ザレオスが逃げますわ」
エヴァがピストル・バイクの上から叫ぶと、マリアも信長たちと
「セイ、逃げられンじゃねぇぞ」