サイコ・ダイバーズ 〜彼らは人類救済のため前世の歴史を改変する〜 作:多比良栄一
ザレオスは『下京総構』と呼ばれる防壁を蹴破り、民家を踏みつぶしながら、一気に数百メートルを駆け抜けていた。尋常ならざるスピード。
走りながら上を見あげるザレオス。その顔が恐怖にゆがむ。
光の剣はいつのまにか扇状に広がっていた。光の刃の到達位置から逃れていたはずなのに、真上にはまだ光の剣があって空を完全に被っていた。
ザレオスが遥かむこうに垣間見える青空に気づいた。遥かかなただったが、光の剣の切れ目がそこにあった。ザレオスがそこにむけて渾身の力で爆走しはじめた。その顔にはセイを
だが、ザレオスがどんなにあがいても、剣が横に広がっていくスピードのほうが速かった。さきほどまで見えていた光の剣の切れ目は、すでに遥か彼方になっていた。
ザレオスが、悲鳴とも咆哮ともつかぬ雄叫びをあげるのが聞こえた。
「くそぉおぉおぉおぉ、にげきれんんんんんん……」
「セイ、あいかわらず、エゲつないな」
満足そうな笑みを浮かべてマリアが呟く。
セイが地面にむけて剣を振り降ろした。剣はすでに横に広がりすぎて横幅数キロに及ぶ『扇』と化していたが、ザレオスはその『扇』の傘の下からとうとう逃れきれなかった。
地面に叩きつけられた光の刃が、ザレオスを、京の街を、林や森を、田畑を、叩きつぶした。轟音があたりに響き渡り、大地を揺らしたが、彼方で『ぷちっ』となにか生き物が潰れる音がかすかに聞こえた。
セイが刀を振り降ろし終えたあとも、その太刀は数キロ先にもおよび京の街を上から押しつぶし続けた。遥か彼方でなにかが壊れる音が聞こえ続けた。
しばらくして音がやむと、エヴァがピストル・バイクを上昇させて、その方角を俯瞰すると、あきれ返ったような声をあげた。
「セイさん、やりすぎです。『二条城』がぺしゃんこになっていましてよ」
セイは上をみあげるとエヴァに弁明した。
「ぼくじゃない。かがりの帰りたいという『思い』が強すぎるんだ」
セイは頭をかきながら、うしろを振り向いた。若い女性の上に浮かんでいるかがりの魂のほうに目をむけて、ため息交じりに言った。
『かがり。帰りたいにもほどがあるよ』
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信長は跡形もなく崩れた本殿を横目で見ながら、立ちあがった。マリアに促されて本殿から飛びだしたおかげで、下敷きにならずに済んだことで胸をなで下ろした。
「いや、マリアどののおかげで助かったわ」
「おまえが駄々こねたおかげで、たっぷり埃はかぶったがな」
悪態をつくマリアの脇にいた家臣たちも顔をあげて立ち上がりはじめた。
そのとき、信長が庭に横たわっている明智光秀に気づいた。
「光秀!! 」
玉砂利に足をとられ、つんのめりそうになりながらも信長が必死の形相で、光秀に駆け寄った。光秀は血だらけだったが、そんなことに構わず、信長が光秀を抱き起こす。
「光秀!」
その訴えかけに、光秀がうっすらと目を開けた。
「おや……かた……さま……」
「光秀、なぜじゃ。きさま、なぜわしを討とうと思った」
「し、四国征伐でございます……」
「一度は長宗我部に、四国は切り取り次第と約束しておきながら、突然翻意され、無理難題をおおせになりました」
「私の家臣、斉藤利三と石谷頼辰は長宗我部と親族の間柄でございます。ですからわたしは何度も説得し、長宗我部も秦順の意を示してくれました。四国も御屋形様の領地となったのです……」
「ですが、御屋形様は長宗我部を討つと申されました。これではわたしも利三らも立場がございません」
「そうじゃったか。わしがお主を追いつめておったか……。光秀、許せ」
「わたしこそ……長年御恩を賜りながら、謀反などと……」
光秀の目からつーっと一筋の涙がつたい落ちた。
「御屋形……さま……。どうかおゆるし……を……」
そこまでだった。光秀の腕がだらりと落ちると同時に、からだが弛緩した。
織田信長は光秀の
「是非に及ばず(しかたがないことだ)」