レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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明けましておめでとうございます。



第三十九話 『動き始めた天邪鬼』

 

 人里・秘密結社のアジト――

 

 人里には幻想郷を人間のものにしようと考えるいくつかの秘密結社が存在する。その中でも、ここに集っている者たちは、妖怪への積極的な攻撃も辞さないという、かなりの強硬派である。

 

 そんな反妖怪組織の集まりの中に、明らかに人外の存在がいた。

 頭に小さな二本の角を生やした少女。鬼のようにも見えるが、似て非なる天邪鬼という妖怪である。

 

「さあ、始めようぜ。我ら虐げられし者たちの逆襲をな!」

 

 天邪鬼の名は鬼人正邪。

 彼女の望みは弱者と強者の立場をひっくり返すこと。

 

「天邪鬼よ。はしゃぐのは結構だが、我らの最終目的は支配者たる妖怪を排除し、幻想郷を人間のものとすること。そのために貴様とは一時的に手を組んでいるに過ぎん。そのことを忘れるなよ」

 

「ふふ……まあそう言うなよ。我ら力無き妖怪、そしてお前たち人間。どちらも強者によって虐げられる被支配者だ。仲良くいこうぜ」

 

「そこまでにしておけ。妖怪とはいえ、今は利害の一致から肩を並べて戦う相手だ」

 

「はっ。申し訳ありません」

 

 秘密結社のリーダーに窘められて、幹部の男は正邪を睨むのをやめる。

 

 

「では我らの決意と実力を見せつけるため、最初の目標を定めるとしよう」

 

 リーダーの宣言に続いて、幹部たちが次々と意見を述べ出す。

 

「相手は誰もが知るような大物でなければならない」

 

「それでいて人里を脅かすような、わかりやすい悪が望ましい」

 

「命蓮寺のような里人から支持のあるところは不味いであろうな」

 

「だが鬼のように所在が不明な相手はどうすることも出来んぞ」

 

「妖怪の山にはまだ手が出せんな。さすがに勢力が違う」

 

 

「大物妖怪かつ、所在がはっきりしている相手。人里に害をなした過去があり、抱える人員も少数――その条件ならば、あそこしかあるまい」

 

 各々からの意見をリーダーがまとめ、結論を出す。

 

 

「狙いは紅魔館! レミリア・スカーレットだッ!!!」

 

 

「クックック! 夜の女王を自称して調子に乗っている吸血鬼がターゲットか! これは面白く――いや、つまらなくなってきたな!」

 

 

ーーーー

 

 

「今日もいい天気ね~。良いことがありそうだわ」

 

 レミリア(変装中)は勝手にターゲットにされているとはつゆ知らず、本来は吸血鬼が苦手な太陽を機嫌よく眺めつつ人里を歩いていた。

 

「いいか? 吸血鬼という種族は日光が大弱点だ。だから、昼間に出歩くときは必ず日傘をさしている」

 

「なるほど」

 

「つまり、あそこで暢気に歩いてる子供のようなのは除外できるってわけだ」

 

「日傘か……。簡単に見つかりそうだな」

 

 

 秘密結社の構成員に暢気な子供と言われるレミリアだが、聞こえなかったようで鼻歌を歌いながらお気に入りの団子屋に入っていった。

 

 尚、天界の武道会で彼女が日光下でも活動していたという情報が彼らに伝わるのはしばらく後の話である。

 

 

「ダメです、リーダー。人里をくまなく探しましたが、レミリア・スカーレットらしき存在は見つかりませんでした」

 

「そうか。かなりの頻度で人里に侵入しているという情報だったが、巧妙に姿を隠しているか、それとも今日は来ていなかったか……」

 

「おのれ、妖怪め。いったい人里で何を企んでいやがる」

 

「どうします? リーダー」

 

「では第二案でいくか。人間でありながら吸血鬼の走狗となっている哀れな少女――十六夜咲夜の動向を追うとしよう」

 

「あのメイドですか。確かに最近、人里で目撃情報がありますね」

 

「おそらく、吸血鬼が自ら里に足を運んでいるのは獲物とする人間の品定め。そしてメイドの仕事がその獲物を誘拐、ないしは血を奪ってくるといったところだろう」

 

「血を……なるほど。吸血鬼の食糧ですか」

 

 その言葉に他の幹部たちが騒ぎ出す。

 

「連中は人間を襲わないと約束していたはず。悪魔にとって契約は絶対ではなかったか?」

 

「おそらく契約に抜け道を用意していたのだろう」

 

「許せねえ。俺たちの里で好き勝手しやがって」

 

 それまで黙って話を聞いていた正邪がしびれを切らして声を上げる。

 

「おいおいおいおい! 何やってんだ!? 『狙いは紅魔館!』って啖呵を切ってたじゃないか。襲撃をかけるんじゃないのかよ?」

 

「慌てるな、天邪鬼。まずは情報収集の段階ということだ」

 

「然り然り」

 

「戦いとは始める前こそが肝心なのだ」

 

「情報を制する者が戦も制す」

 

 彼らが理解しているか定かではないが、組織の構成員が無策で紅魔館に襲撃をかけた場合、門番の美鈴で全滅することだろう。ゆっくり情報収集をすることは正解といえた。

 

「まずは推測だけでなく、十六夜咲夜の里での行動を明確にするべきですね」

 

「然り。目撃情報のあった付近に人員を配置するべし」

 

 

「こ、こいつら……くっそー!」

 

 威勢のいい言葉とは裏腹に、秘密結社の慎重さに業を煮やしたか、正邪はアジトを飛び出していった。

 

 

「長命な妖怪の割に堪え性のない奴よ」

 

「然り然り」

 

 構成員たちは特に気にせず会議を続けていたが、しばらくすると訪ねて来る者があった。

 

「どうもー! 清く正しい射命丸でーす!」

 

「む。もう取材の時間か」

 

「ブン屋には我らの活動の正しさを新聞にて知らしめてもらわねばならんからな」

 

「然り然り」

 

 彼らの妖怪に関する最新の情報源は主に射命丸文の『文々。新聞』であり、情報の大切さが云々と言っていたが、実のところ、かなりの情報弱者である。

 

 




前回の投稿日を見てびっくりしました



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