篠ノ之束になったので配信しながらアベンジする   作:BBBs

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久しく


新人

S.H.I.E.L.D.の崩壊、世界各地でヒドラの一斉蜂起。

世界にとって最悪な日から一ヶ月弱、今後の事を話し合うためにアベンジャーズ・タワーにメンバー全員が集まっていた。

場所はリビング、そこで幾つかの方針を決めていた。

 

アベンジャーズの活動資金は崩壊したS.H.I.E.L.D.に代わってトニー・スタークが出すこと。

アベンジャーズのサポート兼ニック・フューリーとの連絡役としてマリア・ヒルがスターク・インダストリーズに入ったこと。

最優先目標としてヒドラに流されたセプターの確保に、世界中にあるヒドラの基地を壊滅させること。

 

「さて、ここまでは確認事項だが、ここからが差し迫った議題だ」

 

セプター確保とヒドラの壊滅を最重要目標としていながら、"本題"として切り出したのはトニー・スターク。

 

「まだ何か問題が残っているのか?」

 

ナターシャ・ロマノフを除いて、超人故に短期間で怪我から復帰したスティーブ・ロジャースが残りのメンバーの心を代弁する。

 

「そうだ、これは解決しておかなきゃならない」

 

神妙に、眉間に皺を寄せて言うトニー。

懐から取り出した端末を操作し、データをテーブルへと投げると問題が表示される。

三次元投影で映されたのは一人の少女、一見すると可愛らしい東洋人の少女で終わるが……。

 

「おいおい、随分と……やんちゃな娘だな」

 

 表示されたこれまでの経歴を見たブルース・バナーが言葉を選んで言うが、ナターシャが茶々を入れる。

 

「気が付いた時にはS.H.I.E.L.D.のシステムを7割も掌握、とってもやんちゃだわ」

「ナターシャ、なぜこんな重要な話を黙っていたんだ?」

「スティーブが漏らすとは思えないけど彼女の安全のためよ、S.H.I.E.L.D.でも彼女の存在を知っているのは30人も居なかっただろうし」

 

 超先進的なパワードスーツを作成するトニー・スタークと同等の頭脳。

 もしかすると、人類の限界に一番近いスティーブ・ロジャースと同様の超人。

 どちらか片方でも問題が起きると言うのに、後ろ盾の無い良い所取りの欲張りセット未成年など邪な考えを持つ者には丸々と太った鴨がまな板の上に寝転がっているように見えるだろう。

 

「だが、全世界に知られてしまった」

「あれは必要だった」

「わかっている、おかげでヒドラに大きなダメージを与えることができた」

 

 ヒドラのメンバーが載っているアルファレベルの極秘情報をネットに流してから世界各国でヒドラ信者やヒドラと繋がりのある人物は次々と拘束され、捕縛を逃れた者は水面下に潜って表舞台からどんどん消えていった。

 

「……だからと言って、流石に放ってはおけないな」

「どう考えても問題になるのは目に見えているわ」

 

 彼女の利用や抹殺を実行しようとしていたヒドラは動けなくなっても、他の人物や組織が利用しようとする可能性は十分にある。

 それだけの価値がある、個人や組織だけじゃなく国家すらも動くには十分すぎる。

 

「放置はできない、だからこのまま監視を継続した方がいいと思う」

「その監視はいつまで続ける?」

「安全とわかるまで」

「その安全と判断するのは誰なんだ? 君か? それとも怪しいと判断したフューリーか?」

 

 ナターシャとスティーブの間に割って入るのはトニー。

 

「8か月だ、その期間フューリーがS.H.I.E.L.D.職員を使って調べさせて何も出なかった」

 

 トニーはワインセラーから取り出したワインをテーブルに置き、空いているソファに座りながら話を続ける。

 

「ヒドラだって彼女の事を知りたがっていた。 もし本当に超人だったとしたらどうやって超人になったのか、その手段を抑えておきたいはずだ。 それに、アーマーの作り方も手に入れておきたかっただろう」

 

 身辺調査にヒドラが混ざっていても手は抜かないだろう、もし超人化の方法が見つかっていたら悪いキャプテン・アメリカが量産されていたかもしれないし、アーマー技術が盗まれていれば悪のアーマー軍団が誕生していたかもしれない。

 

「だがなにも見つからなかった、彼女とその家族から親族まで疚しい所は一つもなかった。 背後にヒドラのような秘密結社の影も形もない、少しは君も調べただろう?」

「ええ、怪しいと言えるところはなかったわ」

 

 トニーはワインのコルクを飛ばし、別のグラスにコルク片を流してからワインを注いで口にする。

 

「……外れだったな、このワインも、調査結果も」

 

 ワインを見ながら渋い顔のトニー。

 怪しいと見たニック・フューリーは、篠ノ之 束の怪しさを示す客観的な証拠を見つけることは出来なかった。

 音が拾えない謎の男との会話の映像はあるも、音が拾えなくしたのが篠ノ之 束と示すものはない。

 見方を変えれば篠ノ之 束が関与しているのではなく、タイミングが悪く巻き込まれただけとも取れる。

 

「結果はグレー寄りの白だな。 怪しいと言えば怪しいが、その怪しさを示す具体的な証拠は一つも無い」

 

 トニーがボトルをテーブルに置き、他のメンバーにワインを勧めるが受け取ったのはソーだけ。

 

「それで、この娘はどうするんだ?」

 

 ワインを受け取ってラッパ飲みで一気に飲み干してのソー。

 

「いい質問だ」

 

 ソーを指さしてトニーが言う。

 

「僕は、彼女をアベンジャーズに入れたいと思っている」

 

 その発言に全員がトニーを見た。

 

「本気?」

「面白い冗談だろ?」

 

 トニーが笑うもナターシャは眉間にしわを寄せたまま。

 

「彼女、何するかわからないわよ。 行動力は人一倍でしょうし」

「世界征服? それとも人類滅亡? そのために邪魔になるアベンジャーズの壊滅を狙ってるかもしれないな。 そうだな、もし僕が彼女の立場ならまずアベンジャーズで一番最初に排除するのは距離が一番近かった僕だろうな」

 

 篠ノ之 束はアベンジャーズと言うチームを支えているのはトニー・スタークであることを理解している。

 皆の心の支え、という事ではなく金銭的大黒柱であり、今のアベンジャーズの活動で発生する金銭の全てをトニー・スタークが支払っている。

 身に着けている装備も、迅速な移動を可能とするクインジェットを飛ばすのもタダではない。

 アベンジャーズのメンバーは誰もが必要であるが、アベンジャーズの活動と言う点ではどのメンバーよりもトニー・スタークの比率が大きい。

 故に、邪魔なアベンジャーズの中でいの一番に居なくなってほしいのはトニー・スタークであると理解しているだろうと当たりを付ける。

 

「あのS.H.I.E.L.D.の騒ぎの中なら、ヒドラが殺したって事にもできそうだ」

 

 ヒドラの殺害予定にも入っていたトニー・スターク。

 トニーは束と直接会って話す機会は何度もあった、それと同じ数だけ殺害する機会もあった。

 スーツを着ていない状態で、キャプテン・アメリカに比肩しうる超人に襲われたら呼び出したスーツが到着する前に殺される可能性の方が高い。

 だが行動に移していない以上、少なくとも今までにトニー・スタークを排除する気はなかったと受け取れる。

 

「……トニー、貴方何か知っているんじゃないの?」

 

 やけに束の事を擁護するトニーを訝しむナターシャ。

 

「いいや、何も知らないぞ? なんならチーズバーガーに誓ってやってもいい、僕は彼女の狙いや真意は本当に知らない。 君こそなぜそこまで疑う? フューリーの言いつけでも守っているのか?」

「トニーがさっき言った通り怪しさを示す証拠がないから何とも言えないわ、単純に信用の問題よ」

 

 信用がどうのこうのでトニーとナターシャが言い合いをしている光景を他所に、スティーブは表示されたままの束のデータを一文字も逃さずに読み取る。

 

「そこまでだ」

 

 眉間にしわを寄せたスティーブが、二人を強めの声で止めた。

 

「僕は彼女を、子供をアベンジャーズに入れることに賛成はできない」

 

 スティーブのその一言に全員が納得した、スティーブ・ロジャースならそう言うだろうと。

 事実、日本よりも成人年齢が低いアメリカの州でも未成年に分類される。

 

「僕もだ、戦えると言ってもまだ子供なんだ」

「俺も同感だ」

 

 ブルース・バナーとクリント・バートンはスティーブに続く。

 

「私も同じよ」

 

 ナターシャも同意してこの時点で4人、多数決なら半数を超えてアベンジャーズ入りは無し。

 

「ソーはどうだ?」

 

 だがトニーは特に気にしたような素振りを見せず、ソーに聞く。

 

「俺はどちらでも構わない」

「どうしてそう思う?」

「子供ながら度胸がある、鎧があったとして死ぬかもしれない戦場に身を投げ出せる子供などそうは居ないだろう」

「勇気と無謀は違うわ」

「だが多くの民を救い、生きて帰った。 力を示した、戦士としては十分だろう」

 

 戦闘能力だけで見ればアイアンマンと同等だろう、中身を考慮すればそれ以上。

 なにせ超人であったなら、専用に調整したアイアンマンスーツを纏った女版スティーブ・ロジャースのようなもの。

 アベンジャーズと一緒に戦えるかと言えば戦える、それだけの戦闘能力を持っている。

 それはつまり、アベンジャーズ『と』戦えるという事でもある。

 勿論、6対1なら話にならないが、1対1なら打破出来うる能力。

 その上彼女はトニー・スタークと同じエンジニアでありプログラマーでもある、既に『千冬』と言うJ.A.R.V.I.S.と同様の超高度な先進的A.Iの作成に成功している以上、情報化社会の現代で猛威を振るうこともできる。

 

「ソーは賛成、推薦した以上僕も賛成、多数決で決めたわけじゃないが否決ってところか」

「そうだ、だが彼女の今後の進退は気を付けなければならない」

 

 このまま放りだすと言う話は無い、かと言って今までのように軟禁状態を続けていく理由がない。

 篠ノ之 束の頭脳はトニー・スタークに匹敵する、篠ノ之 束の身体能力はスティーブ・ロジャースと同等もあり得る。

 そんな理由で軟禁しておけるなら、アベンジャーズの大半は軟禁されることになる。

 

「放っておいたらいつの間にか居なくなってそうね」

 

 ナターシャが肩をすくめる、その姿を横目にスティーブはトニーに聞いた。

 

「彼女と話をしてみたい」

 

 軽くトニーが頷き、J.A.R.V.I.S.に彼女を呼ばせた。

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、スーツ無しでは初めまして」

 

 アイアンマンスーツのJ.A.R.V.I.S.に呼ばれてリビングに向かえばアベンジャーズとご対面。

 それぞれが別々のソファに座り、私に6つの視線が向けられる。

 

「最初に君に言っておきたいことがある」

 

 挨拶を返す前にスッと立ち上がったのはスティーブ・ロジャース、身長190cmの分厚い肉体が歩み寄ってくる。

 

「二年前のニューヨーク決戦の事だ」

 

 身長差からスティーブ・ロジャースは見下ろし、私は見上げる。

 

「ありがとう」

 

 何を言われるかと思えば、出てきたのは感謝の言葉。

 

「君の行動によって多くのニューヨーク市民の命が救われた」

 

 右手を差し出してきて、感謝の意味を語る。

 

「……感謝されるとは思ってもいませんでした」

 

 一回りどころか二回り以上も大きい右手を握り返して握手。

 2012年のチタウリが侵攻してきたニューヨーク決戦で私が何をしていたかは動画配信サイトにたくさん載っている。

 ある動画ではチタウリが侵攻してきた時に、逃げ遅れてビルの中に居た人たちは部屋の一室に隠れていた。

 その時にスマホで何が起きているのか録画して居る最中に侵入してきたチタウリ兵に襲われ、殺されそうになった時に壁をぶち抜いて現れた白騎士を着た私がチタウリ兵をぶっ殺している姿が映っている動画が投稿されていた。

 1つや2つではなく違う状況での動画が多く投稿されており、当時私が何をしていたかは第三者が証明してくれたことになる。

 

 その事があったから私が人助けをしていたと、感謝の言葉を述べてきたのだろう。

 ちなみに白騎士自体に録画機能は付いているが、その時は作動させていなかった。

 作動させていたら未来の4人も映っていただろうから、最悪敵の攻撃でスーツが損傷したとかで色々と壊さなければならなかった。

 

「少なくともあの時に君は感謝されることをしていたと、僕はそう思っている」

「それはそうですが……、面と向かって言われるとむず痒いですね」

 

 ニック・フューリーを筆頭に、疑惑の視線ばっかり向けられていたんで言葉にし難い感覚を覚えた。

 スティーブとの握手を終え、手を離して一つ思い出した。

 

「そういえば感謝で思い出しました、アベンジャーズの中で私に感謝するべき人が一人居たような?」

 

 少し体を傾け、スティーブの体越しにワイングラスを傾けるアル中を見る。

 

「………」

 

 赤ワインを飲んでいた社長と目が合うも、すぐに別の人物へと視線を向け。

 

「ナターシャ、彼女の言葉に身に覚えは?」

「無いわね」

「ブルースは?」

「無いよ」

「空飛んでたし、ソーと空中で交通事故でも起こしたんじゃないか?」

「いや、すれ違ってすらいない」

「クリン……」

「どう見てもお前だろ」

 

 取りつくしまもなく、皆から否定され。

 

「そうだ、キャプテンだろ?」

 

 足掻くように一回手を叩いて、スティーブを指差す社長。

 

「一度だけ話したが……、あの時のか」

 

 私とスティーブが話したのは一回だけ、その時は気絶した社長をワームホールから引っ張ってきて地面に下ろした時だ。

 

「ロジャースさんに気絶したアイアンマンを連れ戻してくれてありがとうと言われるのも吝かではないですが、ねぇ?」

 

 この場合誰が一番感謝の言葉を述べる必要があるのか、私に集中していた視線が動く。

 

「ニュートンの第三法則だ、それくらい君ならわかってるだろ?」

 

 空に開いたワームホールの先で核ミサイルを手放した後、社長はアークリアクターがエネルギー切れを起こす直前に肩のマイクロミサイルポッドをパージ。

 その反動でワームホールへと戻るだけの力を得て、ギリギリでワームホールを通って地球に戻れた。

 ただワームホールを閉じる判断をしたのはナターシャさんなので、閉じるのがもうちょっと早かったら遠い遠い宇宙空間で社長は核熱で蒸発していただろう。

 ギリギリまで待った感じだったので、私が居なければ社長は戻ってこれなかったかもしれないと言う印象を持っていてもおかしくはない。

 

「ま、そういうことにしておきましょう」

 

 空気を和ませる、事情からそんな空気になる筈もなく。

 

「それじゃあ、呼び出された理由は尋問ですか?」

「いや、尋問と言うほどじゃない。 いくつか君に聞きたいことがあるんだ」

 

 座ってくれ、ロジャースさんが手で指し示したソファに向かって座る。

 

「いくつか質問がある、正直に答えてくれると君も、我々も助かる」

 

 反対側の、対面のアベンジャーズ側のソファに座ってのスティーブ・ロジャース。

 

「ええ、わかりました」

 

 喋れることは正直に話すつもりで返事をして頷く。

 

「まずは僕から、いくつかのデータから君が僕に類する超人じゃないかと疑われているが、君は超人と呼べる身体能力を持っているのか?」

「はい、簡単なものを見せましょうか?」

「見せてくれ」

 

 頷いてゆっくりと立ち上がる。

 屈伸、体を沈み込ませてから足の力を解放する。

 体が伸び上がると跳ね上がり、身長の倍以上、頭頂部が4メートルに届く。

 記録としては2.4メートルはあるだろう、世界記録よりも1メートル以上高く飛べる人間は超人と呼んでもおかしくはない。

 

「……本当のようだな」

 

 なんだか残念そうなロジャースさん、なので右腕を力こぶを作るようなポーズを取ってみる。

 

「ベンチプレスで800キログラム位は持ち上げられると思いますよ、キャプテンは1トン位いけるんじゃないんですか?」

 

 軽めの軽自動車なら持ち上げられる位の力はある、筋肉量で私よりでかいキャプテンなら私を上回っていても不思議ではない。

 

「僕のことはいい、君がどうやって超人になったのかを知りたい」

「私の出生は調べてありますよね? ヒドラのようなくそったれな組織が私を実験台にして超人を作ろうとした痕跡は見つからなかったんじゃないですか?」

「ええ、まったくね」

 

 ナターシャさんが答える。

 

「なら一つ消えましたね、じゃあ次に怪しいのは私自身」

 

 力こぶポーズを止めて、右手の人差し指を立てる。

 

「私が超人血清を作成して自分に投与して超人になった可能性、これもないです」

 

 信じられないかもしれませんが、と付け加えて中指を立てるもアベンジャーズの猜疑心は晴れない。

 

「物心付いた時からこれでしたよ、お陰で本当に苦労したんですから」

 

 他者とは違う、隔絶した身体能力。

 小学生で世界のトップアスリートと肩を並べ、中学生で世界記録を大きく凌駕する。

 騒がれぬよう平均的であろうとして、常に一生懸命に力を抜いて運動するのは中々に骨が折れた。

 

「……本気?」

「疑うのならそちらが証拠を出すべきでは? 疑いを掛けてきて、そうじゃないなら証拠を出せなんて非常識にもほどがあると思いますが」

 

 合法、非合法関係なく調べて偽造ではない証拠が出れば認めざるを得ないが、超人血清を作成したと思わしき場所なんてあるわけないし、私が超人血清を作成した事実はどこにもない。

 自分でも調べたがはっきり言って疑わしい所は微塵もない、両親もそうだし、私が生まれた病院も怪しいところなどなかった。

 その上で実は両親がヤバいやつと関わりがあって……、実は病院に秘密結社の地下研究施設があって……、みたいな事があったらお手上げだ。

 S.H.I.E.L.D.の諜報能力でもそれらしい事が見つからなかったなら、もう暴き立てる手立てはないと言える。

 

「超人かどうかと聞かれれば『イエス』、超人血清に類するものを自分で作って投与したかと聞かれれば『ノー』、誰かが作ったものを投与されたかについては『わからない』と答えるしかありません」

 

 物心付いた時から超人であったので、予防接種などでの薬剤投与で超人化したのではないのは確か。

 あり得る可能性としてはもっと小さい頃、物心付く前に何らかの形で投与された可能性はある。

 だが、両親や親類、病院なども疑わしい所はなかったので可能性は低くなる。

 

「そうなると最も可能性が高そうなのは?」

 

 逆に問い質す、人為的では無い、ロジャースさんと同じ後天的ではないとすれば?

 

「あり得るのか、そんな事が……」

 

 眉間に皺を寄せてロジャースさんが呟く。

 

「J.A.R.V.I.S.、S.H.I.E.L.D.とヒドラのデータから先天的超人が居たかどうかを洗い出せ」

『検索中』

 

 社長とJ.A.R.V.I.S.の応答、数秒の沈黙の後にJ.A.R.V.I.S.が答える。

 

『該当データ、及び類似するデータは見つかりませんでした』

 

 ですよねー、と言う感想しか無い。

 アカシックレコードのような世界の全てを記録した情報体でも無けりゃわからない話。

 あるいは、インフィニティ・ストーンを全部集めて使ったり、聞けるなら全知全能のコズミック・ビーイングにでも聞いたほうが良い。

 過去に超人と目される人は居ただろうが、実際は当時のトップアスリート程度であろう。

 もし居たとすれば、地球人ではなくソーのような地球外知的生命体の方が可能性はある。

 

「私が超人であることに私の意思は反映されていませんので、私からは先程の答え以上のものはありません」

 

 私を超人にした者が居ればその組織や人物を探してくれ、私はその組織や人物のことなど全く知りませんので、私に超人化の答えを求めた所で『わからない』としか言えない。

 

「私が怪しいと言うのはわかりますが、それなら社長の天才的な頭脳も怪しいじゃないですか? 小さい頃に超人血清的なものを投与されたからその頭脳を手に入れたんじゃないんですか? 父親のハワード・スターク氏もSSRに所属してたんだし、多少なりとも超人血清と関わりがあったんですから! 社長! 違うと言うなら皆が納得する証拠を出してくださいよ!」

 

 社長を指さし、早口でまくし立てる。

 

「おい! 君の話をしてるのにこっちに矛先を向けるんじゃない」

「私が言われているのはこれと同じですよ、疑うのは良いですがそうではない証拠を私に求めないでください」

「……そうだな、君の言うとおりだ。 君が超人であることは別に調べておこう」

「そうしてください、私の事はいくら調べてもらっても構いませんので。 他に質問は?」

 

 どこか呆れた空気感、その中でソファの肘掛けにもたれ掛かるナターシャさんが口を開く。

 

「次の質問よ、貴女はなぜトニー・スタークのもとに来たの?」

「その1、金持ちだから。 その2、アイアンマンを製造できる設備を持ってるから。 その3、これが一番大事で、社長がスーパーヒーローになったから。 それだけです」

 

 接触が一番簡単だったのもあるが、社長は必要なものを持ってる。

 

「スーパーヒーローか……」

 

 それを聞いて少し笑ったのが、クリント・バートン。

 

「まあ、ヒーローって感じじゃないことは確かですが、誰かのために身を挺して守るのはヒーローだと思いますよ」

 

 襲われた所にいの一番にスーツをポッツさんに着せたりしてましたからね。

 そう注釈を入れた。

 

「そいつはヒーローだな」

 

 当のヒーローは不機嫌そうな表情。

 またクリント・バートンは笑い、逆にナターシャさんはため息。

 

「あの白いスーツを作ったのは貴女?」

「はい、製造設備は社長のを使わさせてもらいましたけど、設計は全て私がしてます」

「白いスーツは彼が作ったと言っていたけど?」

「それはスタークさんに聞くべきでは?」

「面倒なことになるからだ」

 

 ぶっきらぼうに社長は答える。

 

「トニーとは寝たの?」

「いいえ、肌に触れたこともないです。 そもそも好みじゃないですし、社長は好きな人が居ますからね」

 

 矢継早に質問に答え、現状に当てはめた返答を繰り返す。

 そうしてアベンジャーズがわかったことは、篠ノ之 束がスティーブ・ロジャースと同様の超人であること、トニー・スタークに匹敵する頭脳を持つこと、調べた範囲ではその超人性は後天的ではないこと。

 いくつか怪しい所はあるが、本人が意図したことかはわからないグレーの判定。

 

「……他に質問は?」

 

 ある程度の応答を終えると、室内は沈黙が訪れる。

 ロジャースさんが聞くが、質問はないのか誰も口を開かない。

 

「これ以上はないようだ。 質問に答えてくれてありがとう、助かった」

 

 ロジャースさんが締めくくる、解散の流れになった所で私は一言。

 

「いえ、私は邪魔するつもりはありませんので何かあればまた聞いてください」

「そう言ってくれると助かるよ」

 

 私は頷き、社長を見る。

 

「そういえば社長、あの話は皆さんにしました?」

「なんだ、あの話というのは?」

「ゲームですよ、ゲーム」

「……いや、話してないな」

 

 まあ、忙しそうだしアベンジャーズが全員が集まるのは少ないだろう。

 

「なら今ここで、皆さんにお願いしたいことがありまして」

 

 少し謙る。

 

「私のことで信用もない状況でお願いをするのも大変恐縮なんですが、アベンジャーズを題材としたゲームを出させて欲しいんです」

 

 当然社長以外はなぜゲームを出すのか、頭に疑問符が浮かんでいるのが分かるので説明する。

 

「ちょっとした世間の印象操作をしたいので、その手段としてゲームを全世界に売り出したいんです」

「……すごくきな臭いんだけど」

 

 少し嫌そうな表情でナターシャさんが言う。

 

「それはそうですが、これからのアベンジャーズとして印象操作は必要だと思いまして」

「なぜそう思った?」

 

 ロジャースさんがまっすぐ見つめてきて問いてくる。

 

「今までのアベンジャーズはS.H.I.E.L.D.の隷下にありましたが、今回ヒドラのせいでS.H.I.E.L.D.は壊滅してテロ組織扱い。 今のアベンジャーズはどこにも所属していません、言うなれば非政府組織(NGO)になります」

 

 話を知っている社長以外は私の言葉に耳を傾ける。

 

「世間一般的には特に問題を感じないでしょうが、これからのアベンジャーズの活動において嫌がる存在が居ます」

「……国や非合法組織か」

「ええ、アメリカは今のところ活動を容認するでしょうが、今後は間違いなく問題視してくるでしょう」

 

 ソーやハルクのような戦術級の超パワー持ちや超人兵士にスーパーエージェント、世界有数の金持ちかつ天才発明家。

 そんな奴らがヒドラを撃滅するためとはいえ、国内に入ってきて暴れられると国家上層部は嫌がるのは目に見えている。

 とくに後ろめたいことをしている奴らは大声で騒ぎ立てるだろうし、政治家でヒドラのような秘密結社と繋がっている奴らも居て、アベンジャーズが動きにくくする工作をしてくるのも想像に容易い。

 

「もし、他国でちょっとしたミスをしたら? 絶対にアベンジャーズは危ないから管理されるべきだって騒ぎ立てて、活動を抑制しようと統制下に置きに来ますよ」

「……なるほど、だから民間にアベンジャーズの支持者を増やそうって訳ね」

「そうです、民主主義を採用している所にはそれなりに効果はあるでしょうね」

 

 世界で力を持つ国家は民主主義を採用しているところが多い、つまり国の上層部を決めるのは国民であって、悪い奴らをぶっ飛ばして困っている人達を助けるアベンジャーズを都合が悪いからと抑圧しようとすればSNSは盛り上がることになる。

 流石に政治家が率先してアベンジャーズの支持を打ち出すことは少ないだろうが、アベンジャーズの人気が更に高まれば利用しようとする政治家も出てくるだろう。

 打算ありありだが、無いよりも有ったほうが良い、やらかしたら速攻で支持を取り消すだろうけど。

 

 あとアベンジャーズはもっと世間にアピールする必要がある。

 例えばアース616、シビル・ウォーでブロック・ラムロウの自爆を抑えきれず、被害を出したワンダ・マキシモフがTVニュースやネット上で危険視されていたはず。

 キャップやヴィジョンは彼女に言動でフォローをしていたが、キャップや社長がメディアに露出して彼女のお陰で被害を減らせたとアピールすべきだったと私は思っている。

 ワカンダの人たちは死ぬべきではなかっただろうが、自爆を上空に逃さなければキャップを含め、周囲に居た更に多くの人たちが亡くなっていたのは明白。

 

 そもそも人類のガン(ヒドラ)がやらかさなければ被害は出なかったのだから、ワンダ・マキシモフは責められるべきではないはずだ。

 そういった面で主張しながら支持者を増やすべきだし、謂れのない誹謗中傷などは堂々と反論しなければならない。

 反論しないから本当の事なんだ! みたいなクソのような解釈する奴は一定数居るから、アベンジャーズが一つのチームとして活動し続けるためにはそっち方面をフォローしたい。

 

「もしどこか、おそらく国連の管理下に置かれると思いますがある程度の自由は必要でしょう? そのための工作の一つとしてボランティアのゲームを出したいんです」

「確かに、そういったことになれば貴女も無関係では居られないでしょうね」

 

 一方的に管理下に置かれるのではなく、交渉する余地を作りたい。

 ソコヴィア協定が調印されたとしても長くは続かない、それでも統制下に置かれるのであれば妥協をさせる必要がある。

 

「信頼というのは言葉ではなく行動だと思ってます、多くの人はそれまでの行動を見て判断します。 そのためにアベンジャーズは悪い奴をぶっ飛ばし、困ってる人を助けるスーパーヒーローチームであることを強調させる必要があると思っています」

 

 S.H.I.E.L.D.という後ろ盾が無くなった以上、新たな後ろ盾か支持者を得るしか無い。

 

「……君はアベンジャーズではないのに、どうしてそうも気にかけるんだ?」

「地球の全人類は当事者だからですよ、もうアベンジャーズは居なきゃいけない存在になっているんです」

 

 ネットを見てみ? ヒドラのインサイト計画を防いでお祭り騒ぎだよ?

 国連やら国の軍隊よりも頼りにされてるんだよ、今もこれからもアベンジャーズは必要とされてるんだよ。

 

「皆さんの誰か一人でも欠けていたら人類は終わっていたんです、だったら助けてくれる存在を支えるべきだと思って行動してるんです」

 

 私は死にたくはないし、支配されて不自由な生活を送りたくない。

 あと並行宇宙の私が関与してるので、関わらないでいるのは難しいから。

 

「ただそれだけです、私がアベンジャーズに入っているかどうかの話ではないんですよ」

 

 そう言えば、私とソーを除いた5人は難しい表情をして顔を見合わせる。

 

「それじゃあゲームの話をしましょうか、やるかやらないかは話を聞いてから皆さんが決めてください」

 

 私はニッコリと笑って、ボランティアゲームの話を切り出した。




ソーは話半分聞きながらワインを飲みつつチーズをムシャってました。
正直ソーが威厳が有ったのはここらへんまでじゃないかなぁ。

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