やはり反恋愛主義青年同盟部は間違っている   作:田んぼ二キ

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第一章-Ⅰ 恋愛という名の集団催眠と捻くれぼっちの邂逅

もしも出会っていたのが高砂ではなく八幡だったら……というifです。

とりあえずの一話ですがクロスオーバーの『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』はともかく『いでおろーぐ』は知らない方も多いと思うので後で基本設定を紹介します。早く知りたいという方はググってください

 

それではどうぞよろしくお願いいたします。

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その日、俺は世界から完全に見捨てられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスマスイブの夜、我らが千葉駅は珍しい殺人的混雑だった。

とにかく歩きにくい。

折しも初雪。

それに……

 

 

「今日、一緒にいられてよかった」「僕もだよ……」

 

 

これである。ところ構わずいちゃつくカップルが周囲を気にしないものだから、余計に歩きづらいのだ。一瞬異世界に来てしまったと勘違いしてしまった。あれ? ここほんとに千葉?

 

 

『お兄ちゃん、チキン取りに行ってきてー。私クリスマス会に出てくるから……でもお夕飯には帰ってくるよ。クリスマスはお兄ちゃんと過ごしたいなとかなんとかテレテレ。あ、今の小町的にポイント高い!』

 

 

小町ホイホイであるところの俺はまんまとこんなところに来てしまった。

 

 

「まあこんなところに小町を連れてくるわけにもいかないか」

 

 

俺は自分にそう言い聞かせて目的の場所へと進む。

 

今年の入学式に事故に遭い、一か月後に登校する頃には既にグループが出来ていた。もともとは知り合いが誰もいない総部高校に進学したのだ、一人になることを選んだのだ。友人と呼べる存在が出来ないことを、いわゆる青春が出来ない理由を事故のせいにして俺は一人になった。事故が無くても多分一人だった。希望的観測は捨て孤独に慣れたつもりだったが、クリスマスに独りで歩いている俺をあざ笑うように幸福そうな顔をして誰もが手をつなぐ。そんな光景に心が折れかけていた。

 

これでも中学生の時分には、誰かを好きになり、アプローチをかけ、告白もした。結果は実ることはなくそれ以来青春そのものを毛嫌いするようになった。

 

早く帰って小町に癒されよう。

人の波を避けてケ〇タに向かっている、そんな時だった。

 

 

「えー、ご通行中のみなさまー」

 

 

拡声器を通した声が頭上から降ってきた。見上げると少し高い、オブジェの上に人影が仁王立ちしている。

 

ああ、宗教の勧誘か。この時期は多いしな――

 

そんなことを考えながら目をそらした俺は、視界の端で捉えた演説者の姿に、思わず二度見した。

 

制服姿の女の子だった。それもうちの高校の制服だ。リボンの色から彼女が俺と同じ一年生、同学年であることが知れた。

 

真っ白なヘルメット。顔の下半分がタオルで覆われて口元を伺うことはできない。しかし、その鋭さを感じさせる瞳がうごめく群衆を見下ろしていることは分かった。

 

俺はただ興味本位で近づいた。決して彼女の揺れ動くスカートに目を奪われたわけでない。

 

後から冷静になってみると俺はこの時考え違いをしていた。拡声器をしっかりと準備しているような女子高生はちょっとおかしい。いや完全に気が狂っている。

 

俺が人混みの中でもがいている最中、彼女の演説は始まった。

 

 

「えー、ご通行中の皆様。こんなくそ寒い雪の中、こんなくそ混雑の中、いちゃこらしくさってくれやがりまして、どうもご苦労様です! 悲しいことにキリスト教徒でもないのに『クリぼっち』を回避しようと行動している頭の弱い皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

 我々、()()()()()()()()()()はただ一点の主張のために、こうして立っているのです。お前らは間違っている! 恋愛という癌を植え付けられ今日のクリスマスのために無駄な着飾り、強引なアプローチ、失笑モノの背伸び、空虚な妥協、そういった行動で、疲弊し必死でもがき『何か』を手にする。そしてそのあとの充実した生活を実現するため、さらに労力を費やし、また疲弊する。この負のスパイラルに自ら入っていこうとするその精神はマゾヒストと言わざるを得ない。

 もう一度言おう、いや何度でも言おうお前らは完全に間違っている!

 『雪……綺麗だね』『ん~まあまあかな』『え~すごい綺麗なのに』『お前と比べるとどんなものも霞んで見えるからな』『……バカ』などと言う輩や、降る雪を幸いとし相合傘をして『ホワイトクリスマスだね……』『ベットの上でもホワイトクリスマスしようね』などと囁く阿呆には鉄槌を下さなければならない。

 リア充爆発しろ! 爆発四散しろ! 貴様らが骨の髄まで浸かりきってしまっている恋愛至上主義は、儚い幻想にすぎないのだ」

 

 

彼女の演説を聞いて俺は―――頭を抱えてうずくまった。

 


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