やはり反恋愛主義青年同盟部は間違っている   作:田んぼ二キ

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第二章-Ⅱ 年間行事寄生型の恋愛生物の解剖と面倒な足枷を持つ者達

「とりあえずこれでいいか」

 

 

女子と、夜中にそれに初詣という俺史上初めてが盛りだくさんのイベントに着ていく服をようやく決めることができた。とはいえ、セーターの上に黒コート、それにジーパンというのはあまりぱっとしない服装ではある。色々考えすぎてむしろジャージが良いのではと思い、いざ外に出ようとした瞬間、小町の「お兄ちゃんコンビニ行くの?」の一言に我に返った。その後小町はリビングで炬燵に誘われてしまったわけだが、何も気にしていない辺りますます女児の能力というか人知を超えた力を実感させられた。

ならなぜ女児はその能力を領家に使わないのだろうか、彼女の力は一過性のものにすぎないのだろうか?疑問は尽きない。いくら考えてもしょうがないか。

俺は部屋の暖房を切り、リビングへと向かう。

 

 

「あれお兄ちゃん外行ってたんじゃないの?」

 

「ああこれからな」

 

「じゃ、ハーゲン〇ッツ買ってきてよ、お兄ちゃんのおごりでいいからさ」

 

「なんで高いものをしかもおにいちゃんが買ってくる前提なの? ていうかお兄ちゃんコンビニ行かないし」

 

「……じゃ初詣とか?」

 

「そうだけど」

 

 

一応小町のファッションチェックもかねてリビングに居るわけだが、それについて何も言ってこないということは問題ないのだろう。俺はこの会話に見切りをつけて、玄関に向かう。

すると小町はもそもそと炬燵から這い出てて来て、俺のコートに袖をつかんだ。

 

 

「お兄ちゃん、ニ十分待ってて」

 

「え、お前もくんの?」

 

「だって、お兄ちゃんが一人で初詣なんて小町の合格祈願のためでしょ? なら小町も行かないと」

 

「なんで一人で行く前提なのしかも行くなら来年行くし、待ち合わせ……」

 

「ぜーんぶ分かってるから。じゃ待ってて」

 

 

俺をリビングへ押し戻すと、手をひらひらさせながら、部屋に向かっていった。

 

 

「……どうしたもんかな」

 

 

時計を見れば十一時丁度。今から行けば余裕で間に合うが……。

俺は領家に遅れるとメールをして、炬燵にもぐりこんだ。

返ってきたのは「了解」の一言。

どったんばったんと、階下に響く音を聞きながらうつらうつらと船を漕いだ。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、起きて」

 

「一瞬寝てたわ……今何時だ?」

 

「十一時半だけど」

 

 

最悪の事態になっていないことに安堵し、俺たちは千葉駅へと向かった。

 

 

「千葉神社に行くんじゃないの?」

 

「だから言ったろ待ち合わせしてるって」

 

「はあ」

 

 

小町の疑いの目を無視して、領家が待っているという場所へと向かう。

年の瀬ということもあり、千葉駅周辺は閑散としていた。いや、あのクリスマスのように人が多くても彼女の姿を見つけられたそんなことを思ってしまう。

彼女は一人そこに立っていた。白いニットのワンピースの上に紺色のチェスターコートを被り、白いニット帽を何度も被りなおしては、誰かを待っていた。

俺は彼女の姿を認めると、小町と二人近づいていく。やがて五メートルほどになると彼女も俺たちを見つけたようだった。最初に俺を、そして小町へ視線をずらす。花が咲いたように大きく開かれた口元が、段々と小さくなり心なしか目も細くなっているような気がする。

 

 

「領家遅れて……」

 

「私の待ち合わせ相手は女同伴で来るような不貞の輩ではない。しかし今日はもう来ないようだ私は帰ることにしよう」

 

 

言い終える前に、足早に去ろうとしていた。何だろうこいつ何か勘違いをしているのではなかろうか。

 

 

「領家あのな……」

 

「くどいぞ、私はもう帰る」

 

 

寒さのせいかそれとも怒っているせいか耳も真っ赤になっている。どうしたもんかな。

 

 

「もういいってお兄ちゃん私に見得はらなくて、ごめんなさい」

 

 

立ち去ろうとする領家に小町が頭を下げた。すると動きがぴたりと止まった。

 

 

「君今、比企谷くんのことをお兄ちゃんと呼んだな?」

 

「ええ、呼びましたけど……え? ほんとに待ち合わせしてたの?」

 

「見得はって、知らん人に声かける兄だと思ってたの? 完全に危ない奴なんですがそれは……」

 

 

どうやらうまい具合に誤解は解けたらしい。だが待ってほしい。何だろう二人とも近づくの辞めてもらっていいですか? 俺のひろゆきもむなしく、小町もプンプン丸になっている。ていうかこれヤバいやつだわ。

 

「お兄ちゃん?」

 

「比企谷君?」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬の千葉駅で正座をしている男子高校生の姿があった。というかまたしても俺だった。

 

 

「ごめんなさい領家さんうちの愚兄がご迷惑をお掛けしまして」

 

「待ち合わせしてるって言った気が……」

 

「いやいや小町さん、私が勝手に勘違いして二人に迷惑を……」

 

「俺の話を聞いておけば……」

 

「お兄ちゃん?」 「比企谷くん?」

 

「ヒッ」

 

 

完全に悪くないとは思うのだが、何を言っても仕方あるまい。受け止めるのもお兄ちゃんの技量というものである。

 

 

「それで領家さんと兄はどのようなご関係で?」

 

「か、関係か……改めて問われるとそうだな」

 

 

ひとしきり自己紹介を終えた後、早速小町は世話焼きモードを発現させた。あまり見ない外向きの顔とその内にある興味を隠しきれていない様子はまだまだ子供なのだと感じる。

領家は視線を自分の手と俺の顔を何度も行き来させている。

そういう反応をされると困る。屋上でもそうだったが……こっちが素なのかもしれない。

関係か。

部活仲間、同志、知り合い。関係性をあてがう言葉はいくつかあるけれど、俺と彼女の関係性をどんな言葉で飾り立てるのが正解か俺はまだ知らない。そもそんな言葉は存在しないとさえ思う。とはいえここでだんまりを決め込んでは家に帰ってからの俺の身が危ない。

 

 

「普通にクラスメイト」

 

「ふーん」

 

「そうだ」

 

 

てっきり、烈火のごとき追及があるものかと思ったけれど一転してスマホを取り出しポチポチし始めた。

おお、すっかり空気の読める大人になったものだ。まあこの兄にして空気を読むスペシャリストである。昼休みはそそくさと立ち去り女子に席を譲り、またある時は、「ごめんえっと、ひ、ひきたくん、私これから部活だから変わって貰えないかな?」と掃除を申し出たこともある。女子によわよわなんだよなぁ。かといって男子にもよわよわ、ヒエラルキーとしては最下層。ということは伸びしろしかない、伸びしろの化け物。

ふいにスマホが振動を伝える。

 

 

「帰ったら、く・わ・し・く」

 

「り」

 

 

領家はなおも「悪い男ではないとは思う……私のために……活動も彼がいれば……」などと呟いていた。あまりに小さい声だったので幸いにも内容は聞こえていないみたいだが、動揺しすぎで色々漏れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千葉神社にてすぐお手洗いに向かった女子陣。着いた頃には領家も落ち着いたようで、小町とつたないながらも話ながら一緒に列に並んでいた。

女子はトイレと買い物が長いのがネックだよなぁ。

俺も済まして待っていると、周りの騒ぎ声で気づく。

 

 

「あ、年明けてるじゃん」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

俺ガイル終わってOVA発表とアニメ化の噂が立っていますね。というか年明けてもう一か月たったのか……。

楽しみが減らんなぁ

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