やはり反恋愛主義青年同盟部は間違っている   作:田んぼ二キ

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第一章-Ⅴ 恋愛という名の集団催眠と捻くれぼっちの邂逅

考えないようにうつらうつらしていると、いつの間にやら昼休みになっていたようで俺はいつものようにベストプレイスへと向かった。

 

千葉市立総武高校の校舎は少し歪な形をしている。

 

上空から見下ろせば、ちょうど漢字の口、カタカナのロによく似ている。生徒たちは主に教室棟を利用しておりその向かい側は特別棟とよばれ、別名文化棟とも呼ばれている。それらを二階の渡り廊下で結んで、これが四角形を形成する。

 

総武高校は進学校だが生徒の自主性を大事にしている。そのため部活の数が多く教室棟とは別に新たに文化棟が建てられたという話が俗説である。たぶん? クラスメイトがそんな話をしていたから間違いないだろう。

 

教室棟の一階。保健室横、購買の斜め後ろが俺の定位置だ。位置関係でいえばちょうど、テニスコートをみることになる。

 

昼休みの間は女テニの女の子が自主練をしているようで、いつも壁に向かい、打っては帰ってくる球をかいがいしく追いまた打ち返している。

 

( ^ω^)

 

安らぐひと時だなぁ。

 

(´・ω・`)

 

イケメンそうな男が入ってきたので、女の子は自主練をやめてしまいました。あいつのせいです。

あ~あ。

 

俺は最後のひとかけらを口に入れ、それをコーヒーで流し込むとその場から離れた。

 

教室へは向かわず、真っすぐ階段を上がっていく。教室は俺の席ねえから状態なのでいたしかたない。居場所がないわけではない。げんに雨の日はいたたまれない空気の中自分の席で食べているからだ。急いで文科省に問い合わせなきゃ!

 

ちらりと自分の席を伺うと、やはり占領されていた。廊下にもまばらに人がいたが、ある少女は立ち止まって俺の席のほうを見ていた。その少女は、桃色の髪を結っておりその奇麗な鎖骨があらわになっていた。友達でも呼びに来たのだろうか、そう思ったが手元を見てある考えに行きつく。手には弁当を携えて、しきりに鏡をみては髪をいじったり、にこっと笑みを浮かべる。

 

 

「男と待ち合わせかよ」

 

 

リボンの色から俺と同じ学年であることが知れたが、そんなことはどうでもよかった。俺は小さく呟いて屋上へと向かった。一瞬その少女と目が合ったが、彼女は固まるだけで特に何も起きずに屋上へと着く。

 

基本かぎがかかっているとされる屋上は錆びついていて実は誰でも出入りが出来る。この時期は寒いのでおそらく誰もいないだろう。

 

予想通り、人影はない。

 

見上げると、雲が点々とあり快晴と言えた。そのおかげで陽が直接差し、思ったよりも暖かい。

 

少し横になろうと膝をつく。

 

喧騒の音は小さく居心地は悪くない。食べてすぐ寝そべるのは一般的に悪いという風に言われている。牛になると。しかしこんな天気のいい日に寝ないのはかえって悪いというか罪だ。外国ではシエスタとも呼ばれている。もし俺の国があれば真っ先に取り入れるだろう。もっとも、俺がトップではクーデターを起こされギロチンからの一家殲滅。小町のためにも俺は働かないという意思を固くする。

 

そんなことを考えていた俺の耳に声が入り込んできた。

 

 

「ほら、ワタル! そっちいったよ」

「おしきた! 行くぞ、ミホ、それ!」

「ちょ、アタシ!? ユ、ユミ!」

 

 

声のしたほうを見ると、男が一人、女が二人、校舎で四方を囲まれた空間のリア充どもの聖地・中庭でバトミントンをして遊んでいた。

 

さっ、と心が陰り、反射的に「クソッ」というつぶやきが漏れた。

 

後から思うにこの時の俺は平時とは違い、リア充の戯れを再三見ていた。イケメンに指導を乞う女テニ。男を待つ女学生。極めつけが眼前に広がるまるで絵に描いたようなまっとうな青春。

 

だからだろうこんな暴挙に出たのは。

 

俺は今まで努力してきた自負がある。

 

積極的にアプローチも行った。

 

話しかける努力も行った。

 

中二病も卒業した。

 

だが結果はどうだ。俺の一世一代の告白は晒され、優しい女の子に勘違いし、陰では馬鹿にされた。そして俺は理解した。誰も理解しないなら、そんな願望じみた希望は捨てようと。

 

 

「ワタル、ナイス!」

「ミホ、ケツ汚れてんぞ」

「うっさい!」

 

 

目の前が真っ暗になっていく。どうしようもないどす黒い感情が、俺の心臓を(おさ)えつける。

 

と、俺の手は知らずのうちに、ズボンのポケットに伸びていた。その中には、くしゃくしゃに丸められたアジビラ。

 

開いて眺める。

 

昨日の雪降りしきる中での大演説が、よみがえってくる。

 

 

「―――そうだ」

 

 

瞬間、スッ、と頭の中がクリアになった。

 

その後には、「どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだ」という自分への呆れと笑い転げたい衝動が同時に襲ってきた。

 

実際、俺は口の中で八ッと笑った。

 

自分にこんな発想ができることに、驚いた。ちょっと自分を褒めてやろう。そんな気分にすらなった。そして囁くのだ。

 

「やれ」と。

 

俺は屋上を見まわして適切な位置を見つけ、移動した。

 

本当にやってしまうのか? 自分の中で問うてみるも、その答えなどとうに決まっていた。

 

 

息を吐く。

 

 

息を吸う。

 

 

叫んだ!

 

 

()()()()()()()‼」

 

 

さっ、と物陰に隠れ彼らの動向を頭半分だして伺う。

 

彼ら彼女らは声の主を探してか、キョロキョロとしていた。先ほどまで小突かれて舞い上がっていたバトミントンの羽根は、ゆっくりと落下して、三人のつくる三角形の真ん中にポトリと落ちた。

 

空中を楽しそうに泳いでいたその羽根が、今や力を失って地面に倒れ伏し、ゴミクズ同然に転がっているのだ。

 

見事に調和がとれた、平和の崩壊だった。

 

ちょっとチャラメな女子、運動部っぽい女子、爽やか系男子。

 

三人の青春は、バトミントンの羽根を中心に奇妙なバランスを保って、抑止されたのだ。

 

その奇妙なストップモーションは、ひどく滑稽で、そしてそれがゆえに、ひどく(はかな)く、美しかった。

 

重く圧迫されていた心は、嘘のように晴れやかになった。こんな気分になったことは、高校に入ってから一度だってなかった。

 

「よしっ」

 

俺は珍しく前向きにそういうと、立ち上がって尻をはたいた。

 

 

「おい! お前‼」

 

 

ガッ、と肩を掴まれ、後ろに引かれた。

 

心臓が止まる。

 

勢いで体が半回転。

 

目の前には、目があった。

 

 

 

「今、叫んだのはお前だな」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

いい感じにモチベーションも上がっております今日この頃。

俺ガイル完が延期になり萎えていたんですが、opが配信されたということで早速聞いてみようと思います。

外出が出来ない分、書ける時間が増えたのでこれからも頑張りたいと思います。

挿絵むずいっすね(笑)

あとこっちの方でも更新しております。お見知りおきを

https://twitter.com/@1oRurJEWKFLjEnA

 

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