少年は道具として扱われた。特異な力を持つ少年は兵器としてしか見られなかった。
少年は壊れ他者をも壊した。特異な力は暴走し視界に映る悉くを蹂躙し破壊した。
望まぬ破壊をもたらした少年はいつしか荒唐無稽な願いを望んだ。
特異な力が遍在し自分が暴走してもなお届かないほどの力を持つ者たちがいる。そんなあり得ない世界に行きたいと。
叶うはずのない願いはしかし、何の偶然か今まさに叶われようとしていた。
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「うーん、これからどうしようか」
穏やかな春の日差し、心地良い春風が草原に寝転がる少年の肌をなでる。ともすればこのまま寝てしまいそうになるほど心地よく、それも良いかもしれないと思わせるくらいにはそれは魅力的なものだった。
数秒の間目を閉じてどうするか考えていたが、結局少年はとりあえずこれからの方針を決めようと思い上半身だけ起こすと軽く目を閉じて考え出す。しばらくうんうん唸っていたが、特に良い案が出ることもなく、よっていつも通り気ままに旅をしようという結論に至った。
「さてと、結論も出た事だし、とりあえずはこのまま寝ようかな」
じゃあ寝ようかとゆっくりと目を閉じていると、途中で何かが落ちてきていることに気がつきもう一度目を開けた。寝ようとした矢先に邪魔をされ若干不機嫌になりつつもそれに目を向ける。すると、自分の元へと不規則な軌道を描いて落ちてきた。何が落ちてきたのかを確かめようと手に取ってみるとあまりにも想定外のものがそこにはあった。
「...手紙?いったい何処から...それに俺宛?」
手にあるのは一枚の封書。そして宛名はなぜか自分。その証拠に達筆な字で『八神朧殿へ』と書かれている。
「どうやってここに気づいたんだろう。人の気配はしなかったけど」
言いながら周囲を確かめる。確認してみるがやはり人の気配はなく、どうやって届いたのかはわからなかった。もう一度手元の封書を視る。注意深く様々な方法で視てみると封書に術式らしき何かがかけられていることに気がついた。しかし、それ以上のことはどれだけ視てもわからなかった。出所不明なうえ何が起こるかわからないこの手紙をあけるかどうか悩んだが手に取ってしまったものは仕方ないと諦め半分好奇心半分で封を切った。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むのならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの"箱庭"に来られたし』
「“箱庭”?って、あれ?」
気がつけばそこは見たこともない世界で、そしてなぜか地上から遠く離れた空中に放り込まれていた。
その光景を見て少年は思った。
どうせ放り出すなら地上にしてよ。