あと、主人公の心情描写と三人称視点が混ざっています。一応一マスあけて分けています。あいてても分かれてないところもありますが。
一話 「ここが異世界か。暇つぶしくらいは出来るだろうな?」
さて、どうするか
朧はこの意味不明な現状を解決するために頭を働かせる。
ここは何処?──おそらく異世界。さらに言えば上空数千mを現在進行形で落下中。
周囲には何がある?──近くには人が三人に動物が一匹。落下先には水膜が幾重にも重なり最終落下地点は湖。あとなんかいろいろ見える。
生存確率は?──このままならまあ確実に助かる。ただし確実に濡れる。
結論は?──濡れたくない。
さて、方針も決まったことだし動きますか。向こうの人達もついでだしサービスで助けようかな。
心の中で呟くと同時に朧はその身に宿る超常の力を発動させる。しかし落下速度は変わらず上がっている。何が変わったのかと見てみれば先ほどまで風でもみくちゃにされていた髪や服が落ち着いているのだ。先程までの圧力は感じず、代わりに心地良い風が周囲を漂う。
しかしそんな状態にもかかわらずそのままぐんぐんと落下していき、やがて水膜にたどり着いた。本来なら全身びしょ濡れになるところを彼らは水膜を押しのけて通過し難を逃れた。やがて地上が近づくと徐々に速度が落ち、湖の真上まで来ると一時停止した後ゆっくりと地面に降り立った。
朧は地上に降りられて安心しほっと息をついた。ほかの面々はしばらくの間何が起きたかわからずポカンとしたり冷静に状況を見極めようとしたりしていた。しかし、黙っていたのは少しの間だけですぐに不満を口にし始めていた。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙げ句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「……。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
いきなり喋り出していきなり言い合いをしている少年少女をよそにもう一人の少女はポツリと呟いた。
「此処…どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
その呟きに律儀に返す少年はもしかしたら紳士なんじゃないかと妄想する朧をよそに少年達は話を進めていく。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正して───私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。じゃあ、一人だけ会話に混ざらずこちらを見ている貴方は誰かしら?」
「ん?ああ、僕の名前は八神朧。自称問題児の自由主義者だよ。黙ってたことについては謝るよ。なんせ僕は臆病者だからね。見ず知らずの人といきなり会話はハードルが高いのさ」
その物怖じしない態度に彼らは一様にどの口が言うのかと思いはしたが大したことでもないため誰もそのことに触れなかった。
「気にしてないわ。よろしくね八神君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
ケラケラと笑う十六夜。
傲慢そうな態度の飛鳥。
我関せず無関心を装う耀。
無表情で微動だにしない朧。
さてさて、彼らはどんな人たちなのかね。願わくば僕の嫌いな人種じゃないことを祈っておこうか。
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そんな彼らを物陰から見ていた人物(?)がいた。疑問系なのは仕方がない。それもそのはず彼女は人型ではあったが、頭には偽物とは思えないウサギ耳がついていたからだ。
彼女の名前は黒ウサギ。ビックリするほどそのままの名前だ。黒いかどうかは各々の裁量に任せるが。
まあ、とにかくその黒ウサギは空から落ちてきた四人を見て思った。
(皆さん問題児みたいですねえ)
そんな彼女の心証とは別に四人の話は進んでいく。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「…君達って人の説明聞かないタイプだよね。よくもまあぬけぬけとそんなことが言えるね」
「……。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」
(全くです)
黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。
パニックになってくれれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているため出るに出られないのだ。こんなことならあらかじめあの場に居ればよかったと思わなくもない黒ウサギであった。
そんなこんなで出るタイミングを見失い内心パニックになっていると朧と名乗った少年が爆弾発言をした。
「さて、案内人も現れる気がないみたいだし、僕はそろそろここを抜けるよ。運が良ければまた会おうね。じゃ、また」
(な、何言ってくれてるんですかーーッ!!)
まさかそんな事を言うとは思っていませんでした。さすがにここでばらけられると困りますし、ここは覚悟を決めるしかないですね。
「お、お待ちください、御四人様方!」
「あ、釣れた」
「釣れた!?ま、まさか計られたのですか?」
「うん、まあ。だっていつまでたっても出てくれないから」
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「うん。皆も気づいてたんでしょ?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「なるほどなるほど。…というわけで、なーんでずっと隠れてたのかな、ウサギさん?」
理不尽に呼び出された上に空中に放り出し、さらに今の今まで何の説明もしようとしなかったことに四人は怒りも露わに殺気を込めつつ黒ウサギを睨む。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「ウサギが孤独で死ぬのってガセだよね」
「あっは、取り付くシマもないですね♪後最後の方はそんな冷静にツッコまないでください!」
意外と冷静だね。人を騙すにはやっぱりそういう部分が必要なのかな?
そんな風に考えながら朧が傍観していると耀が黒ウサギの横に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
うわー、痛そう。まあ、同情はしないけど。
その後さらに興味を持った十六夜と飛鳥が悪乗りして黒ウサギの両耳を引っ張り絶叫が辺りに響き渡ったのは余談である。
しばらくして復活した黒ウサギから聞いた話をまとめると
○まず、この世界は箱庭と呼ばれる異世界である
○僕達四人には、ギフトと呼ばれる特異な力が宿っている
○この箱庭はそのギフト保持者達がその恩恵を用いて競う『ギフトゲーム』の為に造られたステージである
○箱庭には"コミュニティ"と呼ばれるグループごとの集団があり、箱庭の住人は必ずどこかに属さなければならない
○ギフトゲームは様々な形で開かれ、形式も賭けるものも賞品も様々
こんな所かな。正直ここのルールとか僕は興味ないんだけど知らないよりはいいよね。あ、そうだ。どうせならここで聞いてみようか。返答次第でどうするか変えないといけないしね。
「黒ウサギ。僕からも一つ聞いて良いかな?」
「はい。何でも聞いてくださいませ」
「じゃあ遠慮なく。黒ウサギ、この箱庭にはどうあっても
その質問に対し黒ウサギは微かに体をビクリと震わせたが、動揺を押し隠して静かに告げた。
「Yes。この箱庭の創始者に始まり幾多もの修羅神仏などの存在はその区切りに納まるかと思われます」
「…そっか。ありがと黒ウサギ。僕からはもう何もないよ」
どうやらこの世界には化け物が跋扈しているみたいだね。ならしばらくはこの世界に留まろうか。ここなら僕が