魔砲少女プリズマフェイト ~dulce espejismo del destino~   作:上城麟32

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第9話 ~トレーニング~

一志と出会った日。なのはは、すぐに模擬戦を申し込んだ。

回復もしてもらったから、大丈夫!とは本人談だ。

 

一志達は半ば呆れていたが、なのはの強引さに負けて、

渋々といったかたちで、模擬戦に付き合ったのである。

 

結果から言うと、なのはは一志に惨敗した。

ハンデとしてルビー抜きでの戦闘だったにも関わらずである。

 

「Shooting mode.

 Divine buster Stand by.」

 

「当たって!」

 

「だから……何度も同じ手を見せるな!

 一撃の威力は確かに凄そうだけど、

 直射砲撃を何度見せても高速機動型は捉えられないぞ。

 バインド制御すらままならない状態では、ただの隙になるだけだ!」

 

そんなやり取りも、もう何十回目である。

 

バインドで一志を拘束してから魔力砲の一撃によって、KOする。

戦略としてはシンプルで分かり易いが、今のなのはには致命的な欠点がある。

 

まず、複数の思考行動・魔法処理を並列で行う(マルチタスク)能力がない。

今の段階でシングルアクションで全て終わってしまっていて、

次に繋がる攻撃になっていないこと。

攻撃方法がパターン化されていて、とても対人戦をやるレベルにないこと。

 

上げれば、まだまだありそうだが……。

 

一志はルビーと相談しながら、なのはの行動・戦闘データを分析し、

そのように考えていた。

 

それを踏まえて、レイジングハートと話し、なのはのトレーニングを組み立てる。

まず、マルチタスクは必須だろう。

射砲撃型に最も必要とされる能力の一つだ。

 

まぁ、型に限らず、魔法戦をやるなら必須なんだが……。

 

ともあれ、方針は決まった。

肝となるのはバインドで相手を拘束してから魔力砲の一撃によって、KOする。

この戦術事態はなのはに適しているのだから。

 

そこがまず軸になる。

あとはその軸となる攻撃パターンを増やすこと。

 

そこを重点的に強化していけば、フェイトを捉えることもできるかもしれない。

 

この日、なのはは一志を一度も捉えることもできないまま、

模擬戦は終了したのである。

 

 

━━トレーニング初日

 

一志は前日と同様に攻撃を行わないで回避に徹していた。

驚いたことに、なのはは一日で、一志の回避行動に付いてくるようになっていた。

まだまだ、荒削りな部分は確かにあるし、攻撃も相変わらず当たらなかったが。

 

初日とは打って変わって、

確実に一志の動きを目で捉えて、攻撃してきたのである。

最後のほうは攻撃を掠めるくらいになっていた。

成長速度が本当にチートである。

 

「一志さんが言えることじゃないんですけどね~」

 

なんてルビーに言われながら……。

 

 

 

 

━━トレーニング二日目

 

さすがに避け続けるのも限界が近くなってきたため。

この日から攻撃を加えるようにした。

 

「レイジングハート、お願い」

 

「Protection.」

 

「だから!防御しただけで満足するな!

 そこから攻撃にいかに繋げるかが問題なんだろうが!」

 

「ふと思ったんですけど~。一志さん。キャラ変わってません?」

 

なんてことをルビーに言われながら……。

だって、頼られること少なかったから、

なんかテンションが変な方向にヒートアップしてしまって……。

 

そうこうしながらも、なのはの成長は著しく。

最後のほうでは一志の攻撃を防御しながらも、

持ち前の空間把握と目の良さを活かしたカウンター攻撃をしたり、

バインドを試みたりと、一志を驚かせていた。

 

ただ、如何せん直感がアホほど高いチート転生者相手では流石に荷が勝ちすぎたようで、ついに捉えることはできずに二日目の模擬戦も終わってしまった。

 

 

 

 

「ねぇ、カズ君。私、下手くそなのかな……」

 

「なんだよ。落ち込んでるのか?」

 

「だって、今日も頑張ってレイジングハートと戦術立てて来たけど、

 まったくカズ君に当てれなかったんだよ?」

 

となのはは何か自信を無くしているようだった。

 

「というかだな、なのははすげーよ。ほんとに。

 俺はほんとは攻撃加える気なかったんだよ。

 この三日間はただ、回避に専念して、

 対人戦で人に攻撃を当てることの難しさを徹底して教えるつもりだった。

 なのに、なのはときたら、持ち前の目の良さと空間把握能力で、

 俺を目で追えているだろ?それって普通ありえないからな」

 

「そうなの?カズ君は確かに速くて、追いつけないけど……」

 

「実際、一志さんを捉えることができる魔導師なんて限られますからね~」

 

「えぇーカズ君ってそんなスゴイ人だったの?!?!」

 

「まぁ、魔力量もセンスも人とは思えない部類に入りますからね。

 そも人なのかを心配したほうが、いいんじゃないですか?」

 

ルビー言い過ぎだろ……俺だって心までは鋼じゃないんだぞ。

って二回目だったかコレ。

 

「まぁ、いい。ともかく。なのは。

 お前は規格外の俺にちゃんと付いてきてる。

 確かにまだ攻撃は当たっていないけど、

 それだって明日にはどうなるかわからないよ。

 それだけ、なのはの成長は早い。自信持て」

 

<なんだかんだで、美少女に甘いですよね~一志さんて。>

 

<たしかに……でも、これはしょうがなくないか?!>

 

<はぁー。というか、他のジュエルシード集めのメンバーには、

 そろそろサボってることバレますよ?>

 

<それね……明日どうしよう。まぁ、なるようになるさ。>

 

そんなやり取りを念話で二人がしている間、なのはあることを決意する。

 

「あのね!カズ君。もし、明日の模擬戦で私の攻撃が一撃でも当たったら、

 なんでジュエルシードを集めるのか理由話してもらえないかな?」

 

「よし、わかった。ただし、俺が逃げ切ったら、

 なのはは俺とサーヴァント契約を結ぶこと。いいな?」

 

「サーヴァント契約?よくわからないけど、わかったよ!明日絶対だよ!」

 

「え!?あっおいちょっとなのは!?」

 

なんていいながら帰路に向かうなのは……。

 

「なぁ、ルビー」

 

「なんですか鬼畜外道の一志さん」

 

「……すんませんっした!!だって冗談だったのに、普通に帰るんだもん!」

 

「あぁーもうこれだからアホマスターなんですから!」

 

なんていいながら、転移魔法で帰還するルビーと一志。

明日はまた大変そうである……。

 

━━トレーニング三日目

 

 

「おはよう。なのは」

 

「おはよう。ユーノ君」

 

「今日も早いね」

 

「うん!今日もレイジングハートとトレーニングした後に、

 カズ君と模擬戦なの!」

 

 

なのははトレーニングを順調にこなしていた。

 

ただ、明らかになのはの成長速度は一志の予想を超えていた。

……さすがは白い悪魔である。

 

今日は総仕上げとして、朝から模擬戦をするつもりだった一志だが……。

思わぬ展開になっていた……。

 

「なぁ、リニス……本当に付いてくるのか?

 いつもはプレシアと家で留守番してるのに」

 

「何をしているのか真相を確かめるべきだと思いまして」

 

笑顔が怖いよリニス。

なぜ怒っているんだ……。

 

そうこう話しながらも目的の場所についた一志達。そこへ……

 

「カズ君?そのネコさんは?カズ君のネコさんなの?」

 

「あ~えっとだな……。今日は特別講師にお越しいただいた。

 俺の使い魔、リニスだ」

 

なのはが首を傾げていると……。

 

「一志の使い魔がネコだというのは不思議なんですか……?」

 

なぜか苛立っているリニスさん。コエー。

 

「ふぇぇぇー!?ネコさんが喋った!」

 

「いや、待て。ユーノだって喋ってるだろうが。

 なぜネコが喋ったらそんな反応なんだ?というかリニス、

 そろそろ機嫌治してくれよ」

 

頼むと言いながら一志は頭を下げる。

カズ君がネコに頭下げてる……。と、なのはは何か驚愕していたようだが。

 

「仕方ないですね。この件はキッチリ後で問いただすとして。

 さて、なのはでしたか?初めまして。一志が大変お世話になっております。

 私は一志の使い魔、リニスと言います。以後、お見知りおきを」

 

人型に戻り、きちんとおじぎするリニス。

なぜか一志の使い魔部分がかなり強調されていたように聞こえたが、

あまり触れると大変なことになりそうなので、放っておくことにした。

 

「さて、なのは。今日はリニス先生も加わっての模擬戦だ。

 昨日よりもハードになるが。準備は万端か?」

 

「うん!気力も体力も満タンだよ!カズ君!」

 

「そうですね。私が扱くのですから、

 それくらいの気合でなければ、生きて帰れないですよ?」

 

あれ……リニスがなんか怖いことを言っている気がする……。

俺なんか怒らせることしただろうか……。

 

「これだから一志さんはダメなんですよね~。まったくダメダメですよ~」

 

なぜかルビーにも非難されまくりなわけだが。

誰か俺に優しくしてくれないだろうか……。

 

「か、カズ君?なんか私、リニスさんに失礼なことでもしたかな?

 笑顔が、さっきからなんか凄い威圧感があるような……気がするんだけど……」

 

「やっぱり、そう思うか?俺もさっきから考えているんだけど、

 なぜかわからないんだ……」

 

小声でコソコソと話す二人にリニスは益々笑顔になっていく。

こめかみをヒクヒクさせながら……。

 

「さて、もう準備はいいのですよね?

 なら始めましょう。まず、私がなのはの実力を見るということでいいですね?」

 

 

有無を言わさぬとはこのことか……

 

 

「えっとよろしくお願いします。……いくよレイジングハート!」

 

「stand by ready.

 set up.」

 

「さて、一志が鍛えたほどを見せてもらいましょうか」

 

高速機動型の魔導師であるフェイト以上のスピードを誇る一志。

その一志を捉えるようになったというのは偶然ではありえない。

ならばとリニスは思考する。

 

まず、こちらが先手を取る。

 

 

「ジェットスマッシャー!」

 

「flash move.」

 

「これを躱しますか。

 本当にこれでトレーニングを始めて三日目とは……恐れ入ります。

 ですが、私も一志の使い魔として主の前で醜態を晒すわけにもいきません」

 

<えーと。これ模擬戦だよね。ルビー……>

 

<そうですね~。一志さん。>

 

<なんかリニスの気合の入り方おかしな方向にいってないかい?>

 

<一志さんのせいですよ~。きっと。

 自分に秘密にして、こんな可愛い子とイチャイチャしていたとなれば、

 それはリニスさんとってはイイ気分じゃないでしょうからね。>

 

<いや、それはおかしいぞ、ルビー。だって、模擬戦してただけだし……

 それにイチャイチャしてたことないだろ?>

 

<ほら、あれですよ。朝もトレーニングで最近はあまり話してなかったですし、

 夜は夜でなのはさんのトレーニングメニュー考えたりで、

 話せてなかったですし、なんか鬱憤でも溜まっていたんじゃないですか?>

 

<そうだったか?至って普通に会話していたような気がするが……。>

 

なぜかため息をつくルビー。

念話中にも戦闘は継続中である。

 

巧みな戦術で、自分に有利な場所へなのはを誘導し、

トラップバインドをそこかしこに設置したリニス。

 

対して、防戦一方ながらも、目の良さと空間把握の上手さによって、

危機を間一髪で躱すなのは。

 

しかし、それもそろそろ限界か。と予測する一志とルビー。

確かに、ジュエルシードの異相体クラスなら、なんなく倒すことも可能だろう。

ただ、いくら危機を回避しても防戦一方では勝てないのだ。

 

それは、なのは自身も気づいているのか、

ようやくバインドでリニスを捉えることに成功する。

 

 

だが、これはきっと……

 

「撃ち抜いて――ディバイン!」

 

「Buster!」

 

「甘いですよ!なのは!」

 

リニスは、一志との契約により、魔力量がAAAを軽く超えてしまっていた。

このような魔力量を得たことにより、

前々から試したかったことをリニスはやってみることにした。

それは、一志が前にリニスのバインドを無理やり破った、

魔力に任せたバインド外しである。

 

要は力技にて枷を外す行為である……。

 

それを見ていた一志は、

 

「え~~~!?」

 

「一志さん……アレ一志さんのやった無理やり罠外しですよね」

 

「魔力に任せたヤリ方だったから、後でリニスに凄い怒られたのに……」

 

そうまでして勝ちたいのかリニス……。

そして、なのはは凄いな。

それほど、強くなっているリニスを、

一瞬とはいえ追い詰めるに至ったということだろう。

 

リニスの罠にハマった、なのははバインドで拘束される。

 

そして……

 

「では、これで終わりです!プラズマ……」

 

 

 

 

 

 

 

突如、アルフとサファイアから念話が入った。

 

 

 

 

 

<リニス!一志!大変だ!フェイトが……!!!>

 

<姉さん、一志さん緊急事態です!セイバーのクラスカードが暴走を……!>

 

 

 

━━━━アルフとサファイアから突然の念話がくる少し前。

 

ここは海鳴市付近にある海の上空。

 

フェイトとその使い魔であるアルフは、

地上ではあらかたジュエルシードを回収してしまったため、

他のジュエルシードを求めて海上からの探索に切り替えていた。

 

すると、ここでアルフの探知魔法に複数の反応が現れる。

それを見たフェイトが魔力雷を打ち込んでジュエルシードを一旦暴走させて、

位置を割り出してから、複数同時封印を試みる。

ということをアルフに提案したところである。

 

 

「ね、ねぇフェイト。やっぱり、危険だよ。

 確かに、一志が来てからフェイトは随分強くなったよ。

 でも、複数あるジュエルシードを一斉に封印するなんて……。

 そんな無茶しなくても、一志を待てばいいだけじゃないか」

 

「フェイト様、ここは一志さん達を待つのも手です。

 これだけのジュエルシードを、

 フェイト様達だけで回収するのは危険だと、私も思います」

 

 

「ごめんね。アルフ。サファイア。でも、早く回収したいんだ。

 これさえ終われば、アルトセイムでゆっくり皆と暮らせる。

 これさえ回収すれば、アリシアも帰ってくるから……」

 

だから!と、フェイトは魔力雷を海中へ打ち込む。

 

 

サファイアはなぜか落ち着かなかった。

さっきから、セイバーのクラスカードが、

妙にフェイトの魔力に反応しているようなのだ。

どうにもおかしい。未だインクルードさえしていないのに、

なぜカードが反応するのか。

 

だから、サファイアはジュエルシードの回収を待って欲しかった。

一志達が合流するまで……。

 

 

アルフはわからない。

どうしてフェイトがこうも必死なのか。

いや、なぜ辛そうなのか考えたことがないわけじゃない。

 

たしかに、フェイトの生い立ちについて自分も聞かされている。

そのとき悩むしぐさこそなかったけど、

ここまで思いつめたような感じはなかった……。

 

それに、一志が来てからは兄ができたように慕っていたし、

フェイトに姉までいることがわかって、すごく嬉しそうだった。

 

それは、アタシの勝手な思い込みだったのかい……?

 

「フェイト……」

 

アルフの呟きは落雷と共に掻き消えた。




更新頻度が結構不定期になりそうです。

なかなか進展しませんが。

次回「フェイト vs なのは」

こんなタイトルにするかな?思案中です。
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