魔砲少女プリズマフェイト ~dulce espejismo del destino~   作:上城麟32

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お待たせしすぎております。ボチボチラスト近い感じです。


第13話 ~呼声~

ホロウインドウに映る姿はかなり疲れてみえた。

汗を拭った後、焦燥した表情が浮かび上がる。

こんなにも疲弊している彼を見るのは初めての経験だった。

 

<エイミー。こちらクロノ。目標の追跡に成功した。位置を送る>

 

<了解!>

 

<艦長には知らせないでくれ。僕一人でやる>

 

無理してるのかなって思う。

腐れ縁というのかなんというか、ずっと一緒だから彼がこういう時に独りで無理するのはよっぽどのことだと理解できる。言いだしたら聞かない性格なのを知ってるから。

 

<クロノ君……>

 

ちょっと融通がきかない頑固なところがある友達。

 

私は止めようとした言葉を飲み込んで、頭を切り替える。

彼がしたいことを全力でサポートするんだ。だって、それが私だから。

 

<しょーがない。私が座標固定して結界張るから、それに合わてバインドを仕掛けて。そしたら、数名の局員を補助に向かわせるから>

 

<助かる。すまないエイミー>

 

<さ、そうと決まれば、行動あるのみだよ。気をつけて、クロノ君>

 

<あぁ。わかっているさ>

 

<そういえば、クロノ君は覚えてる?訓練校にいたころ毎日自分より強い相手と模擬戦してたよね。魔力運用さえしっかりできれば、どんな相手とでも渡り合えるって言ってさ>

 

<あぁ。あの時から今まで、ずっとそう思って訓練もしてきた。実戦でもそうやって対応してきつもりだ。ただ、黒い騎士を倒した二人。あの二人はそれでも通じない相手なのかもしれない。こちらの、結界魔導師数十名を一瞬のうちに吹き飛ばした魔砲。あれだけの魔砲を放ち、その上で黒騎士を打倒した。信じられるかエイミー?僕の追跡を躱すためにも随分な距離を全力で飛んでいたはずだ。それなのに未だにこの魔力量だ。正直、艦長でも手こずる相手だと思う。だから>

 

だからこそ、艦長には教えられない。僕らだけで彼らを捕まえるんだ。

 

<うん。わかってるよ。クロノ君。確かにあの二人も凄いけど、他のメンバーも凄いよね。なんで辺境の惑星にこんなに原石がいるだろうって感じ。全員すぐにでも管理局で働いてくれないかなー。そして、私の後輩として育てていきたい>

 

エイミーはおちゃらけた風に言って場を和まそうとしてくれている。

本当に彼女には頭が上がらないかもしれないな。

いつもサポートしてくれて、そのくせ尻拭いさえもなぜかやってくれてる。

そんな彼女に応えるためにも、彼らの危険な行動を黙って見過ごすわけにはいかない。

 

<こんな辺境にいるのはまず間違いなくロストロギア絡みだろう。どういった事情があるにしても、ジュエルシードをなぜ集めるのか。なんのためにあんなものが必要なのか。あんなものを集めるくらいだ。理由だってろくなものではないかもしれないが。あれを理解せずに用いればどれほど危険なことが起こるか。彼らの真意を確かめる必要がある>

 

<そうだね。まずはどういう状況かあの子達の話も聞かないとね!結界固定準備できたよクロノ君! >

 

程なくして彼の声が響きわたる。

それは、さっきまで話していた不安なんて、まるでなかったかのような透き通った声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてあの二人は気づいていたかのような反応ができるんだ!?

今、結界の準備ができたと同時に仕掛けているんだぞ!

おかしい。エイミーの結界を張るタイミングを読んでいたとしか思えない。

 

そんなことあり得るのか?

 

落ち着け。今はそんなことよりも反応が遅い他のメンバーからバインドをかけて拘束する!

あの二人に構っている暇はない。

 

「そこまでだ! 時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━時空管理局、次元航行艦船アースラ内(応接室)

 

 

捕まった一志達は丁重にアースラへ連行されていた。

 

道中、一志がまず艦長と話がしたいとクロノに打診。

 

それを聞いていたリンディがすかさず、ホロウインドウを通じて話に参加。

 

チーム年齢不詳と(一志・リニス・リンディの年齢は不詳)チーム子供(雰囲気的に若い)

 

このチーム編成で分かれて、交流をしようと一志提案。

 

リンディ艦長が面白そうね。と了承。

 

クロノ・アルフ反対といった流れがあったが、最終的には渋々了承し、今にいたる。

 

その後、フェイト達はメディカルチェックと精密検査のため、

管理局付きの医療スタッフにより別室へ移動。

 

拘束なしでいいのかと一志が尋ねるも、拘束については艦長の意向らしく、

お話をするのに拘束なんてしていたらせっかくのお話もできなくなってしまうかもしれないでしょ。とクロノがしかめっ面で説明してくれた。

 

だがしかし、通された部屋にて。

現地の風習に習うのが交流の近道だと信じてやまない艦長の意向により用意された純和風の部屋(なぜかメタリックな壁が見えている。なぜか日本風の茶器や鹿威し、抹茶がある。いかにも和な設備が所狭しと置いてあるような場所)へ案内されて、一志達は困惑を隠せないでいた。

 

 

 

捕まった当初の予定としては「フェイトの兄の座は渡さんぞクロノ! 」

と言うことが俺の目的だったと言っても過言だ。

 

まぁ、たしかに、原作通りなら、和風チックな場所に案内されるんだろうなー。

なんて安易に考えていたけど。

知ってるだけってのと、実際目にするのでは違うんだよねー。

今の俺の気持ちは、かの首領・クリー●のような気分だった。

 

あ、あれはただ知らなかっただけなんだっけか。

 

<一志どうするんです?予定通りと言えば、たしかにそうですが>

 

<なのはやフェイトまで捕まるのは予定外とかって言うなよ。「いちいち追い回されるのも面倒だから。一旦捕まって、管理局がどういう対応をしてくるか探ってみるのも一興じゃね」って提案した時には、俺たち以外全員バインドで拘束されてたんだからな。つーかさ、誰もアレに突っ込まないのはなぜなんだ。どうして桜が艦内に!? とか、なんでそんなに抹茶に砂糖入れるのとか。テュッティのパクリなのか!? とかイロイロあるだろ! >

 

<正直私だって気になるところはありますが、今はそれよりも今後のプランをどうするかです! 他のメンバーが捕まってしまった要因はあの騎士を打倒した直後でしたからね。勝利直後は気が緩んでしまうものです>

 

<そうですね~。なのはさんとフェイトさんの魔力はそこそこ回復できましたけど、精神的なところはなかなかケアできないですからね。なんにせよ、この状況は私達にとって渡りに舟ということですかね>

 

<!? ルビー!お前なのはに付いてたんじゃなかったのか?>

 

<なのはさんの回復力は一志さんと似たようなレベルみたいですね~。魔力はもうかなり回復しましたよ。それに、向こうは向こうで、メディカルスタッフが付くみたいですし。サファイアちゃんと相談した結果こっちに来ました。そういえば、向こうにはユーノさんもいたみたいですよ>

 

<つーかさ。なんでオコジョまで捕まってるんだよ。チルチルみたいに可愛いアホの子なら許すけど。なんなの?チルチルみたいに寝てたら捕まっちゃったみたいなことなの。いったいどういうことなの>

 

<なぜかユーノには辛辣ですよね一志。ユーノなら、トレーニング中もずっとなのはの服の中で休んでたじゃないですか。それもこれも一志が原因でしょう。なんだか、おかしなことをブツブツと呟いていると思ったら「そんなのチルチルじゃない」とか意味不明なことを言ってユーノを昏倒させたじゃないですか。そんなことよりも、チームを分けた意味なんてあるんですか?>

 

チルチル発言はスルーかよ。二人共。

しかし、あのエロオコジョめ!

 

チルチルじゃないオコジョなんていらない!

という俺の心の叫びが、まさか行動に出てしまっていたなんて。

なんてこと!

 

あのオコジョとはいつかキッチリと話をつけないといけないだろう。

 

<ま、チーム分けについては特に理由ってほどのもんはないが。俺らは連戦でもほどなく戦えるからな。そういうのでもあるし、あっちはあっちで人選的にも間違ってないはずだ。管理局的にも厄介な俺たちは同じ空間でこの艦で一番強い人の近くにいさせたほうが安心なんだろう。そこらへんの兼ね合いがお互いにマッチした感じだったから提案したし、相手もなんだかんだと了承したわけだ。お互いの理由についてはたぶんそんなとこだろ。ともかく、この妙齢の美人さんとの交渉は俺に任せておけ>

 

美人という言葉になぜかリニスが反応した気がしたが気のせいか。

さっき自己紹介した時もなんかこっちをチラチラと伺っていたんだよなー。

自己紹介のときに俺を見てどうするんだリニスよ。

せめて、相手の艦長さんを見なさいと念話したらなぜか足をつねられるし。

 

うーん。

 

<一志さん。それフラ>

 

グとルビーが言い終わる前に、目の前にいる女性が話し始める。

 

 

「さて、貴方達の目的は当然ジュエルシードの回収よね。知っていると思いますが、ジュエルシードは次元干渉型のエネルギー結晶体です。流し込まれた魔力を媒体として次元振を引き起こす可能性のある危険物」

 

「ああ、知っているさ。あれを複数個集めて魔力を流し込んだ時。その被害は次元振どころか次元断層を引き起こす危険性があるってこともな。そうなると、世界の一つや二つ簡単に滅ぶだろうな」

 

しれっと危険なことを言ってのけるこの少年。先程の自己紹介の時にも感じたことだが、彼の言い方はどうにも上から目線のきらいがある。

それなのに、なぜかその尊大な物言いもしっくりくるような不思議な少年だなと思う。

 

「それがわかっているなら、なぜ貴方達はあれを回収するの? 理由を教えて欲しいわね。私の仕事はそんな危険な事態を起こさないように、起きないように、ロストロギアを正しく管理すること。だからこそ今貴方たちが回収しているジュエルシードは正しく封印処理を行ったのちに、しかるべき場所に保管させてもらいます。それが私達の目的です。ですから、今後ジュエルシードの回収は私達が担当します」

 

まるで自分達こそがロストロギアを回収するに相応しいとでも言うつもりかよ。

 

「論外だな。危険な物だから管理局が管理するなんて正論のように言うなよ。百歩譲って、お前たちを信じたしても、お前らの上の連中がそれを悪用しないとは限らない。つまりどうあっても今の状態でお前たちに任せるという選択肢は有り得ない」

 

「それはどういうことでしょう? まるで、管理局の誰かが悪用すると言っているようにしか聞こえないのだけど」

 

「さてな。そう聞こえるならそうなんだろう。 要するにお前達を信用も信頼もできないのに危険だから任せろ。はいわかりました。なんてことにはなるはずないだろ」

 

<一志。本題からそれていますよ。すぐに熱くなるんですから>

 

<わかってる。だけど、自分たちこそ正しいんだ。なんて言われるとなんかイラっとくるだろ。口論することが目的じゃないから、ちゃんとするけどさ>

 

<ほんとに大丈夫なんですかね~>

 

ルビーからは疑いの視線を感じるが。

 

きっと、たぶん、めいびー。一石二鳥な展開になるはずだ。いや、そうに違いない。

 

「とにかく、ここで言い合っててもしょーがない。あんたらが目の色変えて回収したいロストロギアの件。俺が提示するある条件飲んでくれるなら、回収を任せてもいい」

 

「?! どういうつもりなの? さっきと言ってることがチグハグな気がするのだけど。それに条件というのは? 」

 

「艦長さんもなんで俺たちがあんなものを集めるのか興味はあるだろう。しかも、危険なものと知っているのに、どうしてそれを利用しようとしているのか。今言う条件を飲んでくれるなら、その辺の事情も説明する。どうだろう? これから言う俺の条件を飲んでくれる気になったかい? 」

 

「それは……。どういう条件かにもよりますが」

 

「もちろん。そうだろうな。条件は単純なことだ安心するといい。俺と結婚を前提に付き合ってほしい」

 

「はっ? 」

 

という言葉が重なった気がした。

 

「というのは、じょ」

 

「一志」

 

な、なんだろう。振り向くのが怖い。いつもよりなんかドスの聞いたような声が。

 

「はぁ~まったくも~。一志さん。冗談もほどほどに、さすがに擁護するのが大変な状況になるのだけは勘弁ですからね」

 

ルビーの一言で一瞬リニスが止まる。

 

「い、いや冗談って言ったつもりなんだけど、なんかリニスの威圧感ハンパじゃなくて。ちょっと言葉に詰まった」

 

「もう。とにかく続きを話してください」

 

「コホン。俺と模擬戦をしてほしい。万が一、いや億が一俺が負けたら、艦長さんの言うとおりにしよう。ロストロギアからは手を引くし、今回収してるロストロギアも渡す。だが、俺が勝ったら、俺達がロストロギアを回収して、使用するのを黙認してくれ」

 

どうだ? となぜか勝ち誇ったような顔でリニスとルビーを見る一志。

 

そんな一志を見た二人何とも言えない表情のまま固まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━アースラ内(食堂)

 

クロノとエイミー。フェイトとなのは。

アルフ・サファイア・ユーノ組はお互いの自己紹介を終え、

まったりと食堂で休憩していた。

 

その間、自己紹介前にユーノが人型になったせいで一部混乱が起きたり、なのはの自己紹介の時、一志の弟子であると付け足したことにアルフが難癖をつけたりと、まるで話が進まなかったものの。

 

捕まった当初の予想とはだいぶ違う対応を受けたせいで、概ね良好な関係を保てたようである。そのため、なのはやアルフ、ユーノはそれなりに警戒心を残しつつもリラックスムードを漂わせていた。

 

その間、なぜかフェイトだけは自己紹介もしなかったため、アルフやサファイアが代わりに話をしてフェイトを皆に紹介した。フェイト以外は気楽に話せているようで、なのはに難癖つけていたアルフもなぜかなのは膝の上にちょこんと座っていたりする。

 

もちろんアフルから座ったわけではなく、なのはが力業(撫でたり、モフモフを実行することでアフルをメロメロにした)でアルフを膝の上に座らせているわけだが。

 

サファイアはエイミーやユーノと話をしているようで、時折そちらからも笑い声が聞こえてくる。クロノは少し離れたところから監視している体を保ちながらもエイミー達の会話に時折混ざっている。

 

ただ、そんな雰囲気をよそにフェイトだけは会話に参加せずに終始無言を貫いていた。

 

 

 

 

 

なんで。

 

どうして、あの子はあんなにも楽しそうに話しをするんだろう。

 

何が嬉しくて管理局の人達に事情を話すの。

 

わからない。

 

一志の弟子って言ってた。

 

それなら私だって一志とは模擬戦をたくさんしてきた。

数で言ったらリニスよりも多いくらい。

あの子よりずっと傍にいて一緒に過ごしてきた。

 

「なのはとユーノの事情は把握した。次にフェイト達がジュエルシードを集める理由を教えてくれないか?」

 

ジュエルシードを集める理由もあっさりと管理局の人に話したみたい。

 

どうして簡単に思いを話せるの。

 

どうして、私はアリシアのためにジュエルシードを集めるんだろう。

 

お姉ちゃん。嬉しかったはずなのに、どうして迷ってるんだろう。

 

母さんも喜んでた。笑顔が増えて、私とお話してくれることも多くなった。

 

一志もずっと一緒だと思ったのに。

 

なんでこうなったんだろう。

 

お姉ちゃんが出来たからお母さんと上手くいったはずなのに。

 

でも、お姉ちゃんがいなかったときのほうが一志とリニスとアルフとの時間はあって。

 

ずっとあの場所で皆一緒だと思ってたのに。

 

今はこんな遠くにいる。

 

なんでだろう。どうして上手くいってるはずなのに気持ちが悪い。

 

私はなんでジュエルシードを集めてるんだろう。

 

最初は確かにお姉ちゃんのために、母さんのために。

 

そう思ってた。一志もいてアルフとの時間もあってジュエルシード集めは楽しかった。

 

今思えば、三人でピクニックしてるような気分だったのかもしれない。

 

私の気持ちはなんなんだろう。

 

どうしたかったんだろう。私は……

 

 

 

「あの、フェイトちゃん達も事情があってジュエルシード集めてるってカズ君が言ってたの。だからその」

 

何も話さないフェイトを心配してか、しどろもどろになりながらも、

なのははフェイト達のフォロー入れるようとクロノの話に割り込む。

 

いよいよい反応しないフェイトをサファイアとアルフが心配そうに見つめていると、

フェイトがおもむろに口を開く。

 

「理由はある。アリシアを、私のお姉ちゃんを生き返らせるために私達はジュエルシードを集めてる」

 

「フェイト(様)! 」

 

「フェイト! なんでこんな奴らに事情を話すんだよ! 一志達だって言ってただろ?管理局に事情を話したって理解されないって」

 

「でもアルフ、一志はそのジュエルシード集めをサボったうえに、あの子と修行してたんだよ。しかも、ジュエルシードを回収するとき対峙した相手を弟子にとるなんて」

 

「フェイト様。一志さんは確かにサボっていましたし、なのはさんとトレーニングしていたのも事実かもしれません。しかし、それ以外にも理由が」

 

「そうだよ。フェイト。一志だって、なにもジュエルシード集めを軽く見てたわけじゃないと思うんだ。だから」

 

アルフとサファイア。皆驚いてる。

誰かを生き返らせるためにジュエルシードを集める。

危険な思想の持ち主として拘束されるだけの発言を今私はしたんだから。

 

「でも、一志はこっちに来てから一回も回収してない。私と行動するのも減った。その理由はその子がいるからだよね!? 私よりもアリシアやリニスよりも、その子が大切なんだよ一志は」

 

私達がジュエルシードを集める理由。

 

あの子が一志から話してもらうはずだった理由を私が話したんだから。

 

なんだか清々しい。さっきまでの陰鬱した気持ちが嘘みたい。

 

ずっと思ってた。私の気持ちやっと気がついた。

 

私はきっと誰よりも皆とアルトセイムの森でただ静かに暮らしたかった。

 

一志と一緒に模擬戦したり、一緒に勉強していたかっただけだったんだ。

 

なのに、近くにいなくて。他の子と一緒にいて。

 

ジュエルシードが集まったら、今以上に会えなくなって、

 

お姉ちゃんが生き返ったら、皆お姉ちゃんに取られるかもしれない。

 

私を必要としてくれた人達、皆取られちゃうのかな。

 

それだけは絶対に……。

 

 

「フェイトちゃん?」

 

 

フェイトの顔を覗き込むようにして心配をした様子のなのは達。

だが、フェイトの思考は止まらない。

 

 

この子がいなくなって、このジュエルシードさえ無くなれば、

 

皆とずっと一緒にいられる。もうどこにも行かなくてもいいんだ。

 

この邪魔な子をどうにかして、私が今持ってるジュエルシードさえ渡さなければ、

 

アリシアに皆取られなくて済む。

 

この子にもアリシアにも私の大切な人達を渡さない!

 

 

「誰にも私の居場所を渡すもんか! 」

 

 

 

 

 

 

そして、カードが黒く輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━アースラ内(トレーニング施設)

 

黒いカード出現前。

 

応接室での珍妙なやり取りをした後、紆余曲折はありつつも、なぜだか模擬戦はすることになった一志とリンディ。

 

一方、付き添いであったはずのリニスとルビーはモニタールームに待機させられていた。

ルビーを介してサファイアにこの模擬戦の映像を送る役目を頼まれてしまったので、しぶしぶ待機を了承したようである。

 

一志はリンディにジュエルシードを集める理由話しながらトレーニングルームへと向かっていた。

 

「まぁ概要としてはこんな感じだ。正直信じてもらえるなんて思ってないから安心しな」

 

「それもそうですね。何より突拍子がないにもほどがあります。流石に誰も信じないでしょう。貴方が言わないかぎり」

 

即興で結界魔導師数十人を集めて作らせた擬似空間は思いのほかよく出来ていた。

 

船の内部とは思えないほどの出来だ。近代都市風の設定なんだろうな。まぁ、結界内だし多少の無茶はご愛嬌だろ。これなら、アースラを焼き払う憂いもない!

 

なんて、誤魔化してみたものの。

 

あの説明じゃ、流石にご納得いただけないだろうな~。

 

ん?あれ?

 

「へぇ~案外信じてくれてるってことかな?」

 

「ふふ。どうかしら?ただ、信じないと断言するだけの要素も考えつかないだけかもしれないわね」

 

「こっちとしてはどっちでもいいさ。やることは変わらない」

 

「そう?では始めましょうか?」

 

最強はやっぱり初撃必倒! と意気込みたいんだけども。あの人アースラからの魔力供給あるんだよな。

 

まぁ、俺もルビーと離れているとはいえ魔力供給はされてるんだけど。

 

問題はディストーションシールドなんだよな。基本は初撃必殺「龍拳爆発! 」っていきたいところだけども。

 

あっちは模擬戦とはいえ本気っぽいし、なんせデュランダル持ってきてるし。

 

はぁ~。さすがに凍結させられるのも癪だ。最初からアレで行くか。

 

「いつでもどうぞ」

 

クラスカード、ランサーをインストールする。

 

デュランダルの対策はいいとしても、問題はやっぱりディストーションシールドか。

空間歪曲を用いた広域型空間防御。アレを発動されると流石にめんどーだ。

 

ゆっくりとナイトウォーカーの魔槍を構える。

 

間髪入れずリンディは魔砲を発動する。

 

「エターナルコフィン! 」

 

「おいおい。相手の姿勢も崩さずに最大魔砲か? 焦りすぎだろ。エクスプロージョン! 」

 

エクスプロージョンにより、リフレクターに反射するはずだった氷結の魔力は斬撃によって霧散する。そこから一志が畳み掛ける。

 

「爆裂演舞! シルファードライブ! 」

 

メルフォオースで加速したのちエクスプロージョンとシルファリオンを同時に発動。

 

一瞬にして怒涛の爆撃がリンディを襲う。

 

すかさず、リンディはディストーションシールドを展開。

 

空間を歪曲させて一志の攻撃を防ぎきる。

 

「やっぱりそれが難題だな。魔槍だけでも充分だと思ったんだけど」

 

「貴方を過小評価するわけにいかないもの。私の全力でお相手するわ」

 

「それはまた随分光栄な話しだね。まぁ、だとしても万が一にも俺の負けは有り得ないわけだけどね」

 

カードに影響されたからか。そもそも傲慢だったかは不明だが。

 

不遜な言い方でリンディを挑発する一志。

 

ともあれ、ディストーションシールドのおかげで、

なんとか一志の攻撃を防いでいるリンディ。

アースラからの魔力供給があるから魔力切れの不安が無いとはいえ。

 

話しながらも一志の攻撃は繰り返される。

手を止めることは相手に攻撃のチャンスを生む。

一志は今は攻める以外の選択肢がなかった。

 

エクスプロージョンで近代ビル群が次々と破壊されていく。

 

 

今戦ってる彼はなぜか必死だった。リンディからしてみれば、ただ闇雲に攻撃を繰り出しているように映った。模擬戦前の飄々とした感じは消え、デバイスは使わないと強がったり、

私に冗談を言ったりもしたおちゃらけた雰囲気もなく。

ただ必死にこの防御を崩そうとしている。

 

不思議な子だなとつくづく思う。

 

私達を説得しようと材料を出してきたつもりなんだろうけど、

変わった交渉だったせいもあって、あまり上手く乗せられた感じはない。

 

私はただ興味があった。彼らがジュエルシードを集める理由に。

 

あれほどの危険なものを人を助けるためだけに使うと信じてやまない彼。

そんな言葉を信じる信頼関係でもない。

ジュエルシードで誰かを救えたなんて情報も持ち合わせない。

それを話しても彼は折れるどころか、おちゃらけてさえいた。

 

本当なら私はあの言葉を聞いて怒るべきだったのかもしれない。

 

「誰もできなかったからって、俺ができないなんて誰が決めたんだ?」

 

おちゃらけたもの言いだが、逆面白くって笑ってしまった。

 

「ふふふ。そうね。あなた達なら出来るのかもしれないわね」

 

そうやって、からかったらなぜか不思議そうな顔してた。

 

まさか怒るでも止めるでもなくて笑うなんて

選択肢でくると予想していなかったのでしょうね。

 

時に傲慢に不遜にそして生意気に。

 

だけど、必死な顔をして今模擬戦をしている彼は、

ただ我を通したいだけの子供みたいにみえる。

ちょっとしか言葉を交わしていないのに、不確かな確信を私は感じた。

 

飄々として見せてるのはこんなことたいしたことないと虚勢を張るため。

 

そうしないと心配する人がいるから。

 

だから、彼は強がる。だからきっと彼の言葉は強く聞こえる。

 

だから、きっと彼がなぜ必死なのかわかった気がした。きっとこの錯覚は確信だ。

 

きっと彼は必死にここまでやってきたんだと思う。

 

なぜかわからないけど、自分と血も繋がってない子を助けるというその一心で。

 

そんな不確かな確信を。

 

そんな不確かな彼の想いを。

 

ある種親近感にも似たような不思議な感情をこの模擬戦で今尚感じている。

 

そして、勝負は決する。

 

彼は風を巻き起こす。

 

「印空連携! メルフォース! 」

 

距離を取ったあと、槍を捨て呟いた。

 

上書き 夢幻召喚(オーバーライトインストール)クラスカード『アーチャー』」

 

なぜかわからないけど、破られるはずのないこのシールドが破られる気がした。

 

I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)

 

偽・螺旋剣(カラドボルグ)! 」

 

直撃をさけるためにビルまで凍らせ、間に幾重にも氷塊をつくり行く手を阻む。

 

矢はまるで暴風のように吹き荒れ氷塊を貫いてくる。

 

マルチディフェンサーも展開して防御を固める。

 

しかし、矢はそのことごとくを貫通し。最後にディストーションシールドを貫いた。

 

 

 

 

 

模擬戦の決着は案外早かった。

 

そんな状況をモニタールームから見守る二人はなにやら複雑そうな顔をうかべていた。

 

リニスの心配は一志の体のこと。

そしてルビーの心配も一志の体のこと。

 

だが、ここで決定的に違うのは、リニスが模擬戦の疲れや連戦について心配しているのとは別に、

ルビーは上書き 夢幻召喚(オーバーライトインストール)の多用していることに心配をしていた。

 

あれの多用をしているのに負荷がかからないなんてありえませんね。

明らかになんらかの負担がかかっています。

それが見える部分なのかそうでない部分なのか。

後でサファイアちゃんと検査してみないとわかりませんね。

 

なにせ次元断層に放り込まれてもへっちゃらな子でしたから。

その祝福っぷりはカンパネーラ。かみまみた。

 

コホン噛みました。

 

ともかく、祝福は凄いとしてもあれほどの連発に体がついてきているかどうか。

 

あのようなランサーの英霊聞いたこともない。

サファイアちゃんと話してもわからない英霊。

 

いったいどこからカードを手に入れているんでしょうか。

 

それに、あやふやにされてしまいましたが、ツヴァイフォームといい。

 

なぜか答えを知っている。いえ、そこに至る過程全て省くことで結果を導き出す。

 

まるで大師父から聞いたことのある「答えを出すもの(アンサー・トーカー)」のような能力ですね。

 

あらゆる事柄に対して即座に答えが浮かぶ。

 

確かに一志さん曰く直感力はハンパないとかって話しでしたけど。

 

ピンチになるというか集中力が高まったり魔力的に昂ぶるとそういう感覚があるということでしたが。

 

まさかそういった能力なんですかね……。

 

全くもって興味のつきない人ですね~。

 

 

<ザザ姉さ……姉さん! >

 

<サファイアちゃん?どうしました?>

 

<カー……が! 黒い━━━━>

 

<サファイアちゃん?サファイアちゃん! >

 

なんでしょうね。またセイバーのクラスカードが何かあったのか。

 

なんにしても、早くフェイトさん達がいる食堂に向かわないとですね。

 

<一志さん! リニスさんも緊急事態です! 早くフェイトさん達のところに向かいますよ! >

 

 

 

 

━━━━アースラ内(食堂)

 

「フェイト様!?」

 

サファイアは状況もわからないままフェイトに掴まれる。

 

黒く光りだしたカードがジュエルシードを取り込んだように見えた。

 

そして、サファイアが異常に気がついた時には、すでに念話さえも困難な状態になっていた。

 

そこにスプライトムーブをさらにブーストしたような速さでリニスと一志(ルビー装着済)が突然食堂に駆け込んでくる。

 

「フェイト!セイバーのクラスカードを今すぐ手離せ!!」

 

一志やリニスの尋常じゃない焦り具合からも不穏な空気がいち早く周囲に伝達される。

 

「お願いだフェイト一志の話を聞いてよ!」

 

「フェイトちゃん!」

 

懇願するような使い魔の言葉。

 

自身の敵と改めて認識した相手の言葉。

 

フェイトにとってどちらの言葉も今は等価値であった。

 

ひとつ明確な行動理由は、自身の居場所を奪うものの排除。

 

それのみを彼女はジュエルシードに願い、そして呟いた。

 

「セイバー夢幻召喚(インストール)

 

ここが食堂であるに関わらず、問答無用で膨大な魔力が溢れかえる。

 

その瞬間、一志とリニスは食堂を結界で閉じ込めた。

 

そこへクロノやアルフ、ユーノが加勢、結界をさらに強化。

 

リンディ提督も念話でエイミーに結界強化を施したのち食堂空間ごと地球へと転移させるように指示。

 

エイミーはすぐにブリッジに戻り結界内の全てを先ほど座標固定しておいた。

地球、海鳴市の海上へと転移させることに成功。

 

そこにいたものは、もはや英霊だったのかもしれない。

 

黒い鎧を身に纏い、黄色い線の入ったようなバイザーをつけた。

 

セイバーの英霊が佇んでいた。




大変お待たせ致しました。

またまた何ヶ月も経ってしまった。

夏っていつ終わったんだろう。

まるでAirのようですね。

さてラスト近いです。どうなるか続くのか。

それともラブライブやらけいおんにいくのか。

悩んでます。ではまた気長にお待ちください。
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